陰キャのソムリエ三日月ちゃん   作:不知火勇翔

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◎鉄華団はクーデリア事件があった後ぐらい。あとあと、タグに三日月ポジションって書いたので三日月ポジションでいきます。
※オリキャラを出します。→どうしてもテイワズが関わらない未来が見えなかったってのもあります。テイワズに高校生なんていたっけ・・・、となってオリキャラを作ることになりました。スパイの線も考えましたが、正直便利なキャラが欲しかったってのはあります。
※クッソ長いです。書いててビックリしました。



第2話

 『アスティカシア高等専門学園』。企業の御曹司が多く在籍するその学校では、生徒どうしが『大切なもの』を賭け合って『決闘』する。賭けるものは色々で、お金、権利、謝罪、結婚相手などなど。

 

 色んな意味で子供な『鉄華団』の面々はそれを聞いて、妄想の翼を天高く羽ばたかせた。

 

 『鉄華団』というのは『オルガ・イツカ』という1人の男が率いる民間会社のことで、とある一件で急速に規模を拡大させている新進気鋭の企業だ。『宇宙ネズミ』やら『ヒューマンデブリ』などという蔑称を与えられた子供達が母体となっている企業なため(急速に大きくなったのもあって)足元がシッカリしておらず、今は団長『オルガ・イツカ』の采配と『ガンダム』という武力が全面に立って物事を沈静化させていっている、そんな状態だ。

 

 色々とバタついているためオルガの心労は凄いことになっているが、末端の子供達には関係の無いことだった。彼らは最近読み書きを覚えてきたため、今日は知った知識を友人たちに伝え合っていた。

 

「つまりアステカなんたらは「『アスティカシア高等専門学園』」そうソレ!その学園で『決闘』ってのに勝てば何でも手に入るのか!?」

 

 『ライド』という名前の少年が、『チャド』という名前の黒人の青年に期待の目をしながら聞いた。

 

「あ、あぁ。そうなるな」

 

 ここでライドは天才的な閃きをした。

 

「・・・あれ?てことは、御曹司を叩くだけで金が出るってことか?」

 

 話を聞いていた『昭弘・アルトランド』は真剣な表情で、顎に手を当ててライドの案を肯定した。

 

「そうなるな」

 

「え?じゃあさ。『三日月ちゃん』出せばガッポリ稼げんじゃねぇの?」

 

「・・・お前、天才か?(思考停止)」

 

 真剣な顔で驚く昭弘。

 

 話が謎な方向へ飛んでいったため我慢していた常識人代表の鉄華団団長『オルガ』が口を挟んだ。

 

「待て待て待て。そういうのはオジキに話を通してからだな・・・」

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「・・・分かった」

 

「・・・え、すんません。今何と・・・」

 

「分かった、と言っている。2度も言わせるな」

 

「(ちょっと待ってくれよ・・・OK出ちまったぞ・・・)」

 

「ただ、バルバトスのパイロットにはウチからも人をつける。良いな?」

 

「ありがとうございます!(・・・なのか?)」

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 という訳で。やって来ました『アスティカシア高等専門学園』。どうも。『三日月・オーガス』に転生した転生者です。転生特典で『美形な顔』を願ったので原作の三日月とはかけ離れた美少女(だが男である)ですが、よろしくお願いします!

 

 宇宙港からモノレール(?)を乗り継ぐこと数十分。アスなんたらに到着した。モビルスーツの学校なだけあって、敷地内は沢山のモビルスーツが闊歩していて新鮮だった。火星にいるとモビルスーツなんてあんまり見ないんだけど、流石だねー。学生が計器類を触ってるよ・・・。あれ?僕って結構なおのぼりさんなのかな?

 

 ヒヤヒヤしながら歩いていると、「三日月ちゃーん」と僕を呼ぶ声がした。振り返ると、美少女が手を振ってコッチに駆け寄ってきた。あー、たしかテイワズの・・・。

 

「こんにちは!こうやって会うのは久し振りかな?」

 

 この人はテイワズの監視役で、たしか名前は・・・。

 

「改めて!『瀬名・アルモンド』です!よろしくね!」

 

 あ、はい。

 

 僕が心を込めて頷くと、僕の陰キャを察した瀬名さんはスッと僕の隣に移動し、そして歩き出した。・・・ありがたい。陰キャに対面での話し合いはほぼ不可能なのだ。

 

「授業、どこでやるか見た?」

 

 瀬名さんが聞いてきた。あいにくと鉄華団には個人用タブレットを持っている人なんて少ないため(最近増えた)、僕もその例に漏れず操作ができない。一回触ったけど、アレ日本のスマホなんて目じゃないくらい複雑だったので諦めていた。正直ありがたい。

 

 僕が首を横に振ると、瀬名さんは「そっか」と言って持っていたタブレットの画面を見せてくれた。

 

 そこには、『第12戦術試験区域』という文字が書かれていた。・・・これも名前が長いね。戦術試験って何するんだろ。ヤン・ウェンリーが学校でやってたやつかな?

 

 モビルスーツが通るような大きさの通りを歩いていくと、ほどなくして『第12戦術試験区域』と書かれた施設を見つけた。あ、ここか。

 

 中は、バカかな?ってくらい広かった。コンクリートのスペースが手前にあって、奥に広大な砂地が広がっていた。コンクリートのスペースには生徒が複数集まっていて、

 

何かの実習がこれから始まるらしかった。

 

 ほえ~っと声をあげながら辺りを見回していると、背後からコミュ力の怪物が話しかけてきた。

 

「『三日月・オーガス』さんと、『瀬名・アルモンド』さん、で合ってるかな?」

 

 突然話しかけられたので、ビクッとしてしまった。対して瀬名さんは「あ、はい。そうです」と普通に返していた。

 

「あと、そこの人は『スレッタ・マーキュリー』さん?」「はっ、ほい!?」

 

 話しかけてきた女性が、僕と瀬名さんの近くにいた女の子にも話しかけた。『スレッタ・マーキュリー』と呼ばれた女の子は、僕と同レベルの陰キャをカましていた。

 

「実習。見学なんだよね。メカニック科2年の『ニカ・ナナウラ』です。分かんないことあったら聞いてね」

 

 インナーカラー(髪色の話)が青色な黒髪の女の子『ニカ・ナナウラ』さんが話しかけてきた。

 

 名前を知っている、編入生に対して気軽に接する、笑顔、分かんないことあったら聞いてね。この4点を押さえる人なんて火星だとチャドか・・・・・・・・・メリビットさんか・・・、あと誰だろ。とにかく、明らかなコミュ力強者だった。

 

 陽キャの波動に打ちひしがれていると、スレッタさんが一歩前に出てきた。

 

「ひっ!ひぅえれ!よろろろ、よおぅれ!」

 

 勢いのまま頭を下げるスレッタさん。分かるぞ・・・。波動にヤられたんだな。それか僕よりもコミュ力が低いか、トラウマか・・・。

 

「緊張してる?」

 

「が、が、学校、来たの、初めて、だから・・・」

 

「初めて?」

 

 あまりのパワーワードにニカさんが聞き返した。そうか。学校初心者か。やるじゃないか(謎の対抗心)。

 

 関心していると、

 

「ねぇ。水星から来た人がいるって本当?」

 

 また陽キャが来た。今回は3人。明るい口調で、向こう側からしたら挨拶のようなものなのだろうが陰キャには攻撃にも等しいので止めてもらいたい。

 

「水星?」

 

 僕は火星から。瀬名さんは多分『歳星』から。残るのは・・・。

 

「私、です」

 

 スレッタさんだった。

 

「へー。水星って人住んでたんだー」

 

「専科は?」

 

「パイロット科・・・です」

 

「エリートじゃ~ん。ソッチは?」

 

 うわ、コッチ向いてきた。僕、じゃないな。こういうのは僕の後ろの・・・。

 

「三日月ちゃん。アナタだよ」

 

 瀬名さんが言ってきた。ちなみに、僕の背後には誰もいなかった。

 

「あ、えっと、パイロット、科・・・です」

 

「へ~」

 

「パイロット科に2人かー」

 

 マズい。会話のテンポが・・・。

 

「あ、私は『経営戦略科』です。よろしくね」

 

 すかさずとばかりに、瀬名さんがテンポを戻してくれた。流石はテイワズの人・・・。これからも助けてください・・・。

 

「へー。なんで編入してきたの?」

 

 陽キャトリオの真ん中にいる黒髪の女の子が、スレッタさんに聞いた。するとスレッタさんはボソボソっと話し出した。

 

「お母さんが・・・行きなさいって・・・言うから・・・」

 

「お母さん?」

 

 一瞬で陽キャ3人の顔が険しくなった。すぐに嘲笑うような顔をすると、言った。

 

「じゃあ、その古そうなヘアバンドもお母さんが言うから付けてるの?」

 

「ははは。止めなよー」

 

「ははははは」

 

 トリオの真ん中がイジメへの分水嶺を作り、しかし止めない2人。恐るべき陽キャのテクニック。口を挟もうかなと思っていると、スレッタさんは元気に言い返した。

 

「もちろんです!」

 

「・・・マジ?」

 

 陽キャさん、これにはドン引きです。お前・・・・・・やるじゃないか(二回目)。

 

「・・・で、ソッチは?」

 

 さっきの通り、話が僕に飛んできた。

 

「僕・・・?」

 

 ・・・・・・・・・言えない!ボンボンから金を巻き上げようとしてるなんて絶対言えない!

 

「えっと・・・・・・」

 

 僕が陰キャとかでなく言い淀んでいると、僕を置いて全員がある一点を見た。僕も吊られてその方向を見ると、そこには白髪の美少女が歩いていた。

 

 雰囲気がツンツンしていて、白髪と謎のタイツが特徴的な女の子だった。

 

「ぁぁ!?」

 

 スレッタさんが驚愕の表情を浮かべた。

 

「『ミオリネ・レンブラン』。事情は聞いている。すぐに授業に参加するように」

 

 咎めるような、しかしルールか何かを守っているのか連絡事項のようなテンションで教師らしき人が言った。それに対して『ミオリネ』と呼ばれた少女は「はい」と端的に返した。

 

「・・・責任・・・」

 

 この場にいる全員がミオリネさんに注目する中で、スレッタさんがタブレットで顔を隠しながら話しかけに行った。・・・あれだね。陰キャだが学生生活には前向きなタイプのようだ。・・・漫画とかで夢想してて、痛い目を見る人に多いパターン。協力的と積極的は違うっていうアレだ。

 

「責任、とりますぅ!」

 

 話しかけられ、歩み寄るミオリネさん。タブレットで顔を隠して後ずさりするスレッタさん。ガールミーツガールの一場面みたいだなと少し思った。

 

「わたっしゅ!私、手伝います!ととどとどうすれば良いですか!?」

 

「あー、あの時の邪魔女!」

 

 責任、というフレーズに場がざわめき、ミオリネさんは目を三角にしてスレッタさんを注意した。

 

「バ カ なの?こんな所で・・・」

 

「せきにーん、とってもらったら良いじゃないですかー。逃げたいんですよね~。地球(ちきゅ)~に」

 

 嫌な奴のテンプレみたいな人がヤジを飛ばした。・・・『決闘』がまかり通る学校なら、こういう怨恨も色々多そうだ。

 

「授業中だぞ。私語は慎め」

 

 先生が注意を挟んだため嫌な空気は少し和らいだが、多分どこかでバトルするんだろうなと僕は思った。

 

「地球・・・」

 

 スレッタさんがタブレットの後ろからチラッと盗み見た時、ここにあるスピーカーのほとんどがアラート音をかき鳴らした。同時に天井が宇宙の映像を映し、砂地の奥にあるゲートからモビルスーツが2機飛び出してきた。

 

「なっ!?」

 

 1機が銃を撃って牽制するが、もう一機のピンク色の機体は余裕をもって銃撃を回避する、という激しい高速戦闘を行っていた。

 

「赤い『ディランザ』・・・。『グエル・ジェターク』か・・・」

 

 双眼鏡で見ていた教師が憎々しげに呟くと、イケメンな声が至る所の拡声器から響き渡った。

 

「実習中失礼する。これは『決闘委員会』が承認した、正式な『決闘』である。立会人は、この『シャディク・ゼネリ』が務める。各自手出し無用に願いたい」

 

 イケメンな声の主は、『シャディク・ゼネリ』というらしい。・・・決闘委員会。お世話になりそうだ。

 

 イケメンの声に僕達が気をとられていると、ピンク色の機体は持っていた槍で相手を吹き飛ばした。・・・決闘、だよな?機体性能違くないか?、と思ったけど僕も『バルバトス』使う予定だったわ(笑)。

 

「グエルせんぱ~い」

 

「やっちゃえ~」

 

 取り巻きらしき人が黄色い声を上げる。ふむ。どうやらグエルなんたらは相当な人気らしい。

 

 そんなグエルなんたらは槍を相手のモビルスーツの顔面に突き刺すと、そのまま刺したモビルスーツごと前進し始めた。

 

「!?」

 

 進路の先には、僕や瀬名さんや、スレッタさんやミオリネさん。他にも生徒が複数。全員を巻き込む勢いでコッチに迫って来ていた。おいおいおい!

 

「スレッタさん!」

 

 一番最初に巻き込まれる位置にはスレッタさんがいた。ニカさんが名前を叫ぶが、スレッタさんは驚きすぎて動けないようだった。

 

 

 

「バカ!巻き込まれたいの!」

 

 

 

 僕が助けに行こうか逡巡している内に、ミオリネさんがスレッタさんの手を引いて走り出した。

 

「走って!」

 

 これ見よがしに槍を抜いたピンク色の機体は、さっきまでスレッタさんが立っていた位置に相手のモビルスーツを倒した。破片が走るスレッタさんの後ろに落下し、強烈な音がした。

 

 そしてピンク色の機体が動かなくなった相手モビルスーツを見下ろすと、

 

「見たかミオリネ」

 

 という男の声が場に響き渡った。

 

「この『グエル・ジェターク』の決闘を!」

 

 ピンク色の機体のコクピットが開き、中からチャラ男みたいな奴が出てきた。

 

「俺はお前も会社も、全部手に入れてみせるぞ」

 

 ・・・とりあえず、色んな理由で僕はアイツを一発殴ると決めた。

 

「コイツは俺を笑ったんだ。花嫁に逃げられた男だってな」

 

 今度は独り言を始めた。

 

「花嫁?」

 

「最っ低・・・」

 

 ミオリネさんがきびすを返して去ろうとすると、グエルなんたらが後ろから言葉を浴びせた。

 

「待てよミオリネ。負けたら虫の言葉で謝るルールだ。コイツの謝罪を見ていけよー。ヒャハハハハ」

 

 ・・・子供、なのかな?お山の大将というか、何と言うか。・・・すごいね(小並感)。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「あ、あの!」

 

 自然公園のような緑溢れる場所。その一角に白い宇宙用コンテナみたいなのがあり、ミオリネさんはその中に入って行った。しかし入り口付近で止まると、ここまで付いてきたミオリネさんと僕と瀬名さんに向かって声をかけた。

 

「まだ何か用?」

 

 スレッタさんはオドオドしながら、しっかりと伝えた。

 

「さ、さささっきは、助けて、くれて、あありがとうございまました」

 

「は?」

 

「そ、その、ミオリネ、さんの、婚約者・・・」

 

「止めて。私は認めてないから」

 

 スッゴい嫌な顔をするミオリネさん。

 

「うぇ?じゃああの人、勝手に自分を、こ、婚約者って~!?」

 

 スレッタさんがベタな驚きをすると、ミオリネさんが語気を強めて説明した。

 

「『決闘』よ。この学園ではね、生徒どうしが大切なものを賭けて『決闘』するの。お金、権利、謝罪、結婚相手」

 

 改めて考えても、凄い制度だよね・・・。子供の喧嘩にそこまでの権利を与えて、学校側は何がしたいんだろ。

 

「・・・だから、結婚、するんですか?どうして・・・」

 

「ウチのクソ親父が決めたから」

 

 ミオリネさんは足元にある機械のスイッチを押すと、プシューっという音とともにケースが開き、中にあったトマトを取り出した。スレッタさんが吊られて中に入ろうとすると、ミオリネさんが言葉で制した。

 

「入らないで」

 

「ご、ごごごめんなさい!」

 

 速攻で謝るスレッタさん。

 

「さっきから何なのよ・・・」

 

 不機嫌そうなミオリネさん。そろそろヤバそう。

 

「・・・それ。何ですか?」

 

 しかし謎の精神で付きまとうミオリネさん。なんだか古○任三郎みたいだ・・・。

 

「何って。トマトに決まってるでしょ」

 

「それが、トマト・・・」

 

「水星人って普段何を食べてるワケ・・・」

 

「トマト味・・・なら」

 

 ここでスレッタさんのお腹が鳴った。ミオリネさんは呆れた顔をしながら、スッとトマトを差し出した。

 

「あげる」

 

 ・・・流石に優しすぎないか?と思ったけど、周囲の目を見るかぎりミオリネさんもボッチっぽいよね。だから同情?してるのかな?水星育ちのボッチ候補に。

 

「アンタのは無いわよ」

 

「?」

 

 僕の方を見て言うミオリネさん。

 

「ていうか、アンタはなんでいるのよ」

 

 なんでいるの、か。ぶっちゃけて言えば面白そ・・・ゲフンゲフン。決闘が起こって稼げ・・・ゲフンゲフン。心配だから、かな。

 

「え、えっと、えっと、・・・」

 

 まぁ言い訳を考えても言えないんだけどね。

 

 どもる僕からは一生何も出ないと悟ったミオリネさんは、今度は瀬名さんに話を振った。

 

「ソッチは?」

 

「私は三日月ちゃんの監視役みたいなものなので」

 

 ミオリネさんは眉をひそめた。監視役、というフレーズに何かを思ったらしい。少し離れた所にいる自分の監視役2人を見て、ミオリネさんは僕と瀬名さんにもトマトを1つずつくれた。え、優しい・・・。

 

「・・・はぁ。今日は変な奴ばっかりに付き纏われるわね・・・」

 

 頭を抱えるミオリネさん。日頃から心労が溜まっているのだろう(すっとぼけ)。

 

「あ、あ、あ、ありがとう、ございます!・・・えっと」

 

 トマトのお礼を言うスレッタさん。しかし全く口を付けず、トマトを眺めて考え始めた。

 

「そのままかぶりつく」

 

 察したミオリネさんが食べ方を教えた。

 

「あむ。・・・んん!おいしい」

 

 目を輝かせるスレッタさん。トマト苦手なんだよね・・・と思いながらかじってみると、確かに美味しかった。

 

「トマトならどれでも美味しいワケじゃないわ。そのトマトは特別」

 

「?」

 

「お母さんが作ったの」

 

「トマトを?」

 

「品種に決まってるでしょ」

 

「お母さんが・・・」

 

 今度は『お母さん』というフレーズにスレッタさんが反応した。

 

「・・・私も、同じ、です。お母さんが、水星を、豊かな、星に、するため・・・勉強してきなさいって・・・だから・・・」

 

 ・・・やるじゃないか(三度目)。いやさ、陰キャは自分による相手の時間ロスを気遣って早口になるものだから、こうやって節で区切ってしっかり喋る陰キャは結構凄い。ついでに言えば、僕でもまだマスターしていない技術だ。多分、同士諸君なら分かると思う。

 

「・・・そう。アナタのお母さんは生きてるのね」

 

「あ。ご、ご、ご、ご、ごこごごめんな、「生徒手帳、貸して」、?」

 

 言われるまま生徒手帳(タブレット)を差し出すスレッタさん。ミオリネさんは人のタブレットをガンガンに操作しながら話を続けた。

 

「帰り道分かんないんでしょ。学園マップ、入れてあげるからサッサと出てって」

 

 まぁ初対面の人と長々とは話したくないよね・・・。しかも陰キャだし。

 

「あ・・・」

 

 今生の別れみたいな顔をするスレッタさん。古畑魂が騒いでいるみたいだ。

 

「また土いじりか?」

 

 帰るか?みたいな空気が流れた時、その空気を突き破って例のグエルとかいうイケメン(ではある)が取り巻きを連れて、あろうことかミオリネさんの部屋にズカズカと入り込んできた。

 

「地球の真似事をして・・・何が楽しいんだか」

 

 嫌みったらしく喋るグエル、グエル、マジ何だっけ。

 

「グエル・・・。勝手に入らないで」

 

「良いアイデアを考えた」

 

 マジで話聞かないなこの人・・・。

 

「お前はこれから俺達のジェターク寮で暮らすんだ。脱出騒ぎは、もうごめんだからな」

 

「私は認めてないから」

 

「お前の父親が決めたルールだぞ?」

 

「親が決めたら絶対?アンタはパパの言いなりだものね!」

 

 鉄華団を見たら、この人倒れるんじゃないかな。どこの蛮族ですか?って。

 

 挑発されて、近くにあった植物にアタり始めるグエル。土をひっくり返し、植木鉢を落とし、やりたい放題だった。

 

 マジで子供だなコイツ・・・。

 

「!?何すんのよ!止めろ!」

 

 ミオリネさんが掴みかかって止めるが、グエルは振り払うようにしてミオリネさんを突き飛ばした。

 

「・・・」

 

 ・・・・・よし。殴って良いか悪いか冷静にジャッジしてみよう。まずミオリネさんの心情。話を聞く限りだと・・・

 

 親の決めた結婚。自分がトロフィー扱い。相手はこういう性格で、自分の領域に立ち入って物を壊している。あと機体がシノと同じピンク色。

 

 ・・・なんだろうか。無性に殺意が湧いてきた。

 

 クーデリアは『火星改革の旗頭』っていう立場があったけど、周囲の扱いからしてミオリネさんはそういうの全く無いみたいだし、多分苦悩がこれからも続くんだろう。

 

 あ、僕さっきトマトもらわなかった?もらったよね?で、ミオリネさん困ってるよね?

 

「ブヘッ」

 

「あ、」

 

「「「なっ!!??」」

 

 気が付いた時には殴っていた。

 

 ・・・まぁ良いか。気に入らなかったら殴る。CGS時代からの教えだ。最近のオルガは丸くなったけど僕は違う。迷ったらグー。それが答えだ。ワッカもそう言ってる。

 

 気を抜いていたのか腹を押さえてうずくまるコーラサワー君(空耳)。僕がついでとばかりに足蹴にしていると、瀬名さんが羽交い締めにして止めに入ってきた。

 

「ちょちょちょちょ!何してるの!?」

 

「何って・・・パンチ」

 

「キックもでしょ!じゃなくて!本当に何してるの!?」

 

 女の子をトロフィーと語った男が、少女然とした一回り背の低い子(僕の転生した時の外見)にボコされる。なんとも痛快ではないか。

 

「どうして得意げな顔してるの!?普通にヤバいよ!?」

 

 僕が親指を立てると、瀬名さんは信じられないような顔をした。

 

「君!そういうのは決闘で・・・」

 

 取り巻きの1人。スカしたイケメンが話に入ってきた。お?『決闘』っすか?『決闘』、やります?やっちゃいます?

 

 

 

「決闘、します!」

 

 

 

 ワクワクしていると、今まで黙っていたスレッタさんがあろうことか果たし状を叩きつけた。

 

「誰だよテメェ、ゲホッゲホッ!」

 

 腹パンが効いているのか咳き込むグエル。関わってくんじゃねぇ、と言いたかったみたいだが古畑魂を燃やしたスレッタさんは止まらなかった。

 

「私が勝てば、み、み、ミオリネさんから離れるんですか!?」

 

 勝つ前提の言葉。うずくまっていたグエルが凄い顔をした。

 

「わ、私が勝てば・・・」

 

 ここで陰キャ特有の、聞こえてるのに2回目を言う習性が発動した。

 

「どいつもコイツも・・・」

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

 

 瀬名さんが僕を押さえたまま聞く。するとスレッタさんは大声で宣言した。

 

「大丈夫です!私とエアリアルなら、負けません!」

 

 思わずニヤっと笑ってしまった。これでは火に油どころか、火薬をぶち込んだものだ。『\絶☆対☆誘☆爆/』。

 

「上等じゃねぇか!!!!」

 

 こうして、グエル君は決闘の誘いに乗った。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 『決闘』の会場が分からず、近くにいた教師らしき人に参加したいとタブレットを見せるスレッタさん。勝手が分からないため案内されるまま付いて行くと、到着したのは観客席だった。そして映像には、さっきのピンク色の機体(グエル機)が青と白の機体と対峙していた。

 

「え、どうして『エアリアル』が・・・」

 

 すると画面に、宇宙服を着込んでコクピットに乗るミオリネさんが映し出された。

 

「どうして・・・あ、」

 

「?」

 

 僕が首を傾げて聞くと、スレッタさんは慌てながら答えた。

 

「あ、あ、あの、さっき、生徒手帳、」

 

 あーね。生徒手帳(タブレット式)を、イジってたねミオリネさん。てことは、勝手に人のモビルスーツで決闘に出たのか。・・・それは最低だな。

 

「・・・あれ?スレッタさん?」

 

 聞き覚えのある声。振り返ると、さっき話したコミュ力の怪物『ニカ・ナナウラ』さんが声をかけていた。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「侵入者!?」

 

 足を止めるグエル機。スクーターで近づいたスレッタさんはエアリアル?に登ってコクピットまで到着すると、コクピットを開けて中に入った。

 

 ゴンッ、という鉄の塊がぶつかる音がゴングとなり、口喧嘩が始まった。それはもうヤカマシイものだったが、ここは学校であって戦場ではないため観衆は見守った。

 

 そして「私とエアリアルならあんな奴には負けません!」と陰キャ設定どうしたと言いたくなるようなハッキリした言葉で宣言したため、グエルがキレて対戦相手を再変更。

 

 なんだかグエル君に不穏な空気がした瞬間、グエル君の機体がバラバラになった。

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