陰キャのソムリエ三日月ちゃん   作:不知火勇翔

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三日月の入り込む隙間が少ないんだが・・・。


第3話

 頭の足りないスペーシアンが、それこそアリのようにウジャウジャといる学校で、アイツだけは真っ向から反抗していた。

 今もそう。

「なぁお前。『ヒューマンデブリ』って知ってるか?」

「止めてあげましょうよ。学が無いんすから」

「あっ、そうか。字も読めない猿だったなそう言えば!」

「そうっすよ」

 背中に大きなエンブレムの付いたダサい緑色の上着を制服の上から羽織り(校則違反)、1人で黙々と食べていたアイツにまたバカが絡み出した。

「かー、もったいないよな。その『顔』で学が無いなんてさ」

「俺が『色々と』教えてやるしかないのかもなぁ?」

 アイツは男だ。にも関わらず容姿が女の子っぽいからという理由だけで、連れて行こうとしている。今ですら人間扱いをしていない奴らに付いて行く奴なんて誰もいないだろうに。

「おいおい何だよその顔は!このお方はスリアの御曹司様なのだぞ!むしろ誘われたことに喜ぶべきじゃないのか!?」

 スリア?聞いたこともない企業だ。

「おい聞いているのか!?」

「そっか」

 アイツが一言言って、席から立ち上がった。

「・・・・・・じゃあ、死ぬ?」

 その殺気は遠くで見ていた私でも分かる程に強く、そして不気味だった。

「は、は?殺人が良いワケないだろバカか!」

 殺人が悪くて連れ込むのは良いとか頭沸いてるんじゃないだろうか。

「えい」

 アイツは絡んできた男の1人を掴むと、綺麗な背負い投げをキメた。ガシャンッ、と大きな音が鳴り誰かが叫ぶが、アイツは止まらなかった。

 そのまま馬乗りになるとひたすら顔面を殴り続けた。

 取り巻き連中は状況が飲み込めず固まり、殴られた男の顔はどんどんと変形していく。

 あのままじゃ『死ぬ』と、私の本能が叫んでいた。

「いい加減にしろよ!」

 私も席から立ち上がり、アイツ、『三日月・オーガス』を頭の無いスペーシアンから引き剥がした。

「?」

 コッチにも殺意を向けてきたが、もう止まれない。

「スペーシアンがスペーシアンと喧嘩するのは構わないけどさ!流石に殺すのはダメだろ!!!」

「コイツは、・・・それだけのことを、言った」

「それとコレとは話が別だろうが!殺人は飛躍しすぎだバカ!」

「君も、そう言うの・・・?」

 三日月が脱力したので私は離れると、タブレットを取り出して字を打ち込み、私に見せてきた。

『ここの連中は覚悟が足りない。『死』の無いお遊びの決闘で人生が左右すると本気で思っている。その結果がコイツらだ』

「言いたいことは分かるけどさ・・・」

『あと『ヒューマンデブリ』と一括りにして差別するのも気に入らない。二束三文で売られる孤児を差別するなんてマトモじゃないよ。その2つ含めて親や周りに対して素直な子供なんだろうけどさ、『痛み』を知らない子供はただの子供だよ』

「だからアンタが痛みを与えるって?アンタこそ大層なご身分じゃねぇかよ」

 三日月は静かに私を睨んだ。

 今度はタブレットを見せてこなかったが、その目は有無を言わせぬ凄みがあった。

 

 

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 僕の陰キャライバルことスレッタさんが帰ってきた。エアリアルはガンダムだ、とか勝ったら退学無しとスレッタさんには色々あったが、ミオリネさんの尽力で全てが丸く収まった。

 だがしかし。

 スレッタさんは今日も新たな問題に直面していた。

「えええええん!!!」

 大泣きするスレッタさん。

 パイロット科の実習で『モビルスーツを歩かせて地雷を避ける訓練』が始まったのだが、誰かに細工されて前が見えないらしい。そのためリトライ可能な試験で何度も失敗し、しかしミオリネさんに諦めないことを強制されて、長い長い失敗の連続で遂にスレッタさんが泣き出した。

「水星に学校を造るんでしょ!!!」

 ミオリネさんが発破をかけるが、スレッタさんは泣き止まない。延々とスレッタさんが泣く時間が続くが、教師は止めない。

 この教師、決闘でのモビルスーツの性能差を加味して『バックに誰がいるなどの全てが本人の戦力』というスタンスらしい。だからスレッタさんは一回目の実習で、サポーターみたいな人がいなくて不合格となっていた。ふーん。

「えええええん!!!」

 いい加減、僕もイライラしてきた。

 スレッタさんが泣くのは百歩譲って許すが、遠くでゲラゲラ笑っているあの女子達は何なのだろうか。

 イライラしていると、実習中のモビルスーツから1人の少女が降りてきて、彼女達に殴りかかった。

 ・・・・・・祭りの予感がした。

 僕はすぐさまモビルスーツから降りると、ウッキウキな気持ちで現場に向かった。

「テメェ!」

 現場では朝のピンク髪の子が少女逹をボコしていた。

「ちょっとお前!!!僕の婚約者に何してるんだよ!!」

 するといきなりモブ顔の奴が現れ、ピンク髪に殴りかかろうとした。これはいけない。

「ほい」

「ブヘッ!!!」

 乱入した僕がその乱入男を殴ると、その男は案外軽くて吹っ飛んでいった。

「・・・?」

 ピンク髪が僕を見上げて疑問の表情を浮かべていたので、僕はカッコ良く言ってみた。

「喧嘩・・・加勢、するよ?」

 僕がピンク髪に殴られていた女子2人を見下ろすと、僕のパンチの威力が分かったのか2人とも顔を真っ青にした。

「実行犯・・・「ちょっと待て!!!」・・・ん?」

 さっきのモブ男が立ち上がり、僕を睨んでいた。

「そういうのは決闘で決めるんじゃないかな!?」

「・・・」

 は?これはただの喧嘩だけど?

「俺は彼女逹を守る!!!だがお前に殴り勝つ自信は無い!!!だから『お前に決闘を申し込む』!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえず、コイツが素直なのは分かった。

 

 

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「モビルスーツの性能で決まら・・・お前!ちゃんと言えよ!」

「・・・フィックスリリース」

「そこだけかよ!!」

 決闘前の口上、あれ何なのだろうか。つまりバックでは決まらないから頑張れってこと?草。

「・・・・・・・・・ここまで俺をコケにした奴は初めてだ」

 コイツの顔。変形してたから分かりにくかったけど、多分朝僕がボコした奴だ。はー、やっぱり恨みをかっていたらしい。

「おらぁ!!!」

 ディランザ、だっけ?ザク(前世のアニメに出てきたモビルスーツ)扱いのやつ。それが正面から突っ込んできた。

 戦場ではバルバトスに突っ込んでくる奴なんていないから、自分から追いかけて狩るのがデフォルトになってたんだよね。だから、なんだか新鮮だ。

 左右に横移動を繰り返しながら接近して来たのだが、お粗末な動きなので何だかカッコつけているだけに見えてしまったのは内緒だ。

「ほい」

 バルバトスが握っていたトンファー(持ち手が長いタイプ)を片手で振ると、リーチ差でトンファーが先に当たり、相手が吹き飛んだ。えぇ・・・避けろよ・・・。

 バカな!?みたいなこと言ってるが大丈夫かコイツ。

「俺はパイロット科の上位なんだぞ!!ヒューマンデブリごときに!」

 あー、だから決闘とか言い出したのか。なら宇宙ネズミの戦い方を見せてあげようかな。

 俺は思いっきりトンファーを投げた。

 トンファーはバルバトスのエイハブリアクターの出力によって高速で飛んでいき、相手の足の1本を抉り取った。

「なっ!?」

 下を向き、悠長に倒れる準備をする相手。バルバトスは倒れる前に接近して相手を右手で持ち上げ、左手で相手の右手を千切った。

「おいお前!!!何してるんだよ」

 持ち上げていた手を持ち替えて、今度は右手で相手の左腕をもぎ取った。このまま頭部の角を折れば勝ちなんだけど、コイツは恐怖を知らないとね。あと、これから先で絡んでくる奴に対する見せしめも兼ねよう。

 拳を握り締め、コクピットの部分を軽く殴りつけて震動させ、持ち上げていた手を離して落下する敵を蹴り上げる。蹴りの勢いで相手が地面をバウンドしたので、落ちていたトンファーを拾い、寝転がっている敵に軽く叩きつけた。

 凄い音がしたが気にしない。鍬を振り下ろすかんじで何度も何度も軽く叩くと、周囲のブザーが鳴り『終了が宣言された』。・・・こういう所も、お遊びみたいで気に入らないんだよなぁ・・・。

 

 

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 3日間の停学をくらった。

 

 

 

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「オタクの団員がウチの息子に手をあげたのです!」

「そうですか」

「何を当たり前のように言ってるのです!」

 オルガは机を挟んで反対側に座っている男を見ながら、淡々と告げた

「三日月は誰よりも強い。そして力の行使を躊躇わない。だが・・・理由も無く殴る奴じゃないんすよ」

「ウチの息子に非があったとでも言うのですか!?」

 激昂する男。それを制すように、オルガは数枚の紙を机の上に放り投げた。

 パサッ。

「これが、ウチの親会社が集めた『お宅の息子さんがやった悪行の数々』です。いや~、これは将来有望な小悪党になりそうだなと思わず感心しちまいましたよ」

 ザッと見た男は、顔を青ざめた。

「こ・・・これは・・・何だコレは・・・。こんなこと聞いてないぞ・・・」

 予想通りの返答に半ば呆れながら、オルガは締めくくった。

「その資料は差し上げますんで、じっくりと親子で話し合ってください」

 ボソボソっと何かを言った男が退出すると、オルガは窓から外に見える空を見上げ、呟いた。

「・・・ミカ。頑張れよ・・・」

 

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