陰キャのソムリエ三日月ちゃん   作:不知火勇翔

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 三日月ちゃんが旅行には連れて行ってもらえなかったため、その分はカットです。
 マルコシアスが格好良すぎたので書きました。


第9話

「やっぱさ、『ヤり場の無い憤り』ってエッチな言葉だと思うんだよね」

 深夜。誰もいないグラスレー寮の大型モニターを(無許可で)貸し切り、僕は鉄華団の皆と談笑していた。

「お前さ・・・コッチがどれだけ心配したと思ってんだよ。それで?『ヤり場の無い憤り』?」

 最初は『オルガ』だけに相談しようと回線を繋いだのだが、『ユージン・セブンスターク』,『昭弘・アルトランド』などの古参組や『ハッシュ・ミディ』などの新参組など鉄華団の中の幅広いメンバーが割って入ってきて、あれよあれよという内に社長室は一杯となったためもう鉄華団の皆と喋っているかんじになっている。

「そうそう。いやさ、とある歌詞でそのフレーズがあってさ。いやエッチすぎだろ!ってツッコんだんだよね。分かる?」

「いやそうはならんやろ」

「いや成るだろ。ヤり場、の!無い憤りだぞ!?」

「だよねシノ!流石!機体をピンクに塗ってる人は違うね!」

「今ピンクの話は関係無いだろ!」

「そもそもヤり場って何なんすか?」

「そりゃあ、アレだよ。ピーしてピーするアレだ」

「ピー?」

「セッ○スする場所のことだよ」

「おい止めろ三日月!」

「別に良くない?今じゃ小学生にも最低限の教育はするみたいだよ。まぁ実技指導はまだらしいけど」

「実技指導があったら世界が終わるだろ・・・」

「実技指導・・・」

「ただのエロ漫画の世界じゃねぇか」

「僕はまだまだ性教育には不満があるけどね!だってゴムの実物を学校で見せないんだから!」

「お前の倫理観はどうなってんだよ」

「男子なんて年中エロいことを考えてるものだし、それくらいOKでも良くない?ねー、シノ」

「俺をエロ担当みたいな扱いにするなよ三日月!俺は、まぁ確かにそのテの店には、」

「マジかよシノ!?」「マジっすかシノさん!?」「お前童貞じゃねーのかよ!?」

「オルガ!シノが卒業しちゃったよ!?」

「いや俺に言われても・・・」

「エッチなのはいけないと思います!」

「「「どの口が言ってんだよ!」」」

 ちなみに僕は、昼間からAVを大音量で試聴するぐらいには紳士である。

「で?何の電話なんだ?」

 気を取り直して。オルガは本題に入ってくれた。

「アステなんたら、とにかくこの学校でオープンキャンパスがあるみたいなんだけどさ、鉄華団のブースも作ろうと思うんだよね。でもさ、やっぱり普通のブースじゃ鉄華団じゃないじゃん?だからAVを大音量で流そうとしたんだけど瀬名さんに止められて「当然だろ」手詰まりなんだよねー。目隠しさせて、おっ立てた既製品のディルドに輪投げさせる「「「絶対止めろ!」」」実質セックス体験・・・とかも考えたんだけど、ほんと全部却下されてさ。代案とか無いかな~って。あとは定期報告もかねてるかな」

「ブースか・・・」

「火星ヤシとかを売ってもなぁ」

「三日月ちゃんのブロマイドなら爆売れするんじゃね?てか俺が買う」

「嫌だよブロマイドとか」

「だそうだぞシノ」

「んだよつっかえry」

「ブースなぁ。アンパイで火星産の手芸品で良くねぇか?」

「おっぱい?はぁ、ライドさぁ・・・」

「誰もおっぱいなんて言ってねぇからな!?」

「気を付けろライド。それっぽく聞こえるヤツは全部拾ってくるぞ」

「マジかよ三日月ちゃん怖えぇ・・・」

「あ、哺乳瓶なんてどう?火星産ってシール貼って、中に牛乳入れただけのやつ」

「マニアしか買わないだろ」

「まぁ、最悪僕が飲ませるぐらいならしようかな・・・」

「三日月。俺絶対その日行くから俺の分は取って置いてくれ」

「親友の性癖がバブみだった件・・・」

「え、嫌だけど」

「うわ・・・」

「ヤるならオルガに頼んだら?」

「ムサい男同士・・・何も無いハズもなく」

「オイ今言ったヤツ誰だ出てこい!!!」

「鉄華団にゲイがいるのかよ!?」

「一応お前ら!ゲイは悪いことじゃねぇからな!」

「俺まで巻き込むなよ・・・」

 

 

 その後。議論百出の大会議になったが何も決まらず、グラスレー寮の警備員に見つかったことで会議はお開きとなった。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 陰キャモードをすっかり忘れきった三日月を、物影でじーっと眺める影が1つ。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 オープンキャンパスの前日。僕は瀬名さんと出店についての最終討議を公園のベンチに横並びに座って行っていた。

「でぃ、ディルド輪投げ・・・」

「ダメです」

「絶対もうかる」

「ダメです」

「でーるど輪投げ・・・」

「無視して良いですか?」

「あ、ごめんなさい・・・」

「というか、私見ちゃったんですけど。三日月ちゃんって鉄華団の人には普通に喋れるんですね」

「え、いや、それは・・・その、」

「私にも普通に喋ってくれませんか?」

「む、ムリ」

「どうしてですか?」

「どうしてって・・・・・・」

 そう言えば、どうして俺は陰キャだったのだろうか。いかんせん、前世の記憶なのど曖昧な部分が多くなってしまっている気がする。歳をとるって怖いね。

「ねぇ三日月ちゃん。陰キャに必要なのは自信と安心って知ってますか?」

「ふぇ?」

 瀬名さんが、僕の両の頬を両手でガッチリと押さえてきた。

「ねぇ三日月ちゃん。こっち向いて下さい」

「え、」

 顔を強引に引かれ、僕と瀬名さんの視線が交差した。そして、、そのまま。

 ちゅっ。

「へ?ひ、ひゃ、ひゃああ!?ちょ、なになになになに!?!?」

 僕は強引に瀬名さんから離れると、溢れ出るリビドー?のままに大騒ぎした。

「へぇ。そんな大きな声が出るんですね」

「え、いや、き、」

「安心して下さい。歳星ではキスなんて挨拶みたいなものなので(大嘘)」

「え、いや違くない?」

 ラフタさんを見るかぎりだと違う気が・・・。

「もう一回、しますか?」

「っ・・・いや、ダメでしょ。挨拶なんでしょ?ほら、挨拶とは言っても、」

「三日月ちゃんはさ、凄くヤバめな構ってちゃんですよね。だからグエル先輩に無理矢理関わったり、今日も地球寮に行くんですよね。・・・もう、そんなことはしなくて良いですよ。私が、一緒にいてあげますから」

 瀬名さんが抱き締めてきた。それだけで心臓がバクバクと高鳴り、意識が朦朧とする。あれ、えっと?

 

 

「ねぇねぇ。何してるの?」

 

 

 背後から声がかかった。その声とともに瀬名さんがピタリと動きを止めた。

「これ、注射器だよねぇ?もしかして、眠らせようとでもしてた?だったらゴメンねー、邪魔しちゃった☆」

 これは・・・メスガキの気配!?バカな!メスガキが実在しただと!?

 僕は瀬名さんから強制的に離れると、背後に立っていた人物を見た。よく見たら暫定メスガキが瀬名さんの腕を掴んでいて、その掴まれた瀬名さんの手には小型の注射器があった。

「軽率でしたね。ヒューマンデブリの三日月・オーガスさん」

「あ、三日月さん。瀬名さん。・・・お久しぶりです」

 メスガキの背後から、無口系美少女とスレッタさんが登場したことで更に僕は混乱した。

「え、つま、り?」

「なーに言ってんのよ。コイツが三日月ちゃんを眠らせようとしてた。以上!閉廷!議論の余地ナシでしょ?それで?処すの?できればヒューマンデブリのやり方ってやつを見せてもらいたいなー」

 つまり、瀬名さんは僕を注射器か何かで眠らせようとしていた、と。ふ~ん。へー、そうなんだ。

「どう、して?」

 (人前なのでいつもの陰キャ喋りになってしまったが)ちゃんと日本語で理由を聞くと、瀬名さんは思い詰めた様子で話し始めた。

「MA(モビルアーマー)は知ってますか?」

 知らないハズがない(食い気味)。前世の僕は熱狂的なガンダム信者だった。だからユニコーンにもZにも0083にも出てきたMAの存在は当然知っている。

「え、あるの?」

 しかし、この世界にもMAがあるのは初耳だった。モビルワーカーなら知っているが。

「あります。MA(モビルアーー)。天使の名を持つ人類の厄災。厄災戦時代に、当時の人口の約四分の一を殺戮した怪物で、効率的に人を殺すことだけに特化した怪物です」

 へぇ・・・。つまり鉄華団の敵か。

「それがこのアステカシア付近の宙域に運び込まれたという噂が私の元に入りました。そして、今度のオープンキャンパスでソレを暴れさせることも」

「強い、の?」

「強いです。多分、三日月ちゃんでも赤眼にならないとムリだと思います。そして三日月ちゃんがまた赤眼になったら、今度は半身不随じゃ足りない可能性が高いので、その、オープンキャンパスの間は眠ってもらおうと、思いまして」

 禁じ手を使わない僕より強いなら確かに厄介だが、しかし。多分それぐらいならいける。

「大丈夫」

「?」

「僕、最強だから(五条悟風)」

「最強でも代償が、

「へ~?じゃあお姉ちゃんにも勝てるの?」

 瀬名さんが何かを言ったが、割り込むようにしてメスガキちゃん(呼び名決定)が会話に入ってきた。

「私も気になります。ハッキリ言って、あのビットに勝てる未来が見えない」

 無口ちゃんも聞いてきたので、僕はとりあえずお姉ちゃんについて聞いた。

「お姉ちゃん?」

「スレッタお姉ちゃんのこと。三日月ちゃんも見たんでしょ?あのビットは」

 あー、あれ。

「スレッタさんなら、多分、大丈夫」

「何故?」

「ビット(ファンネル)は(恐らくユニコーン以外)、その、物理に、弱いのが、定石。だから、一つずつ握り潰す」

「だ、ダメです!」

 スレッタさんが抗議してくるが、あくまで戦ったらの話である。

「へぇ・・・、確かに飛道具を持たないバルバトスならそうなるかぁ・・・。ふぅん。へぇー?」

「・・・呆れました。ただのゴリ押しじゃないですか」

 メスガキちゃんと無口ちゃんがやんややんや言ってきたが、なんでさ。ファンネルの歴史を知らない人は黙っていて欲しい。エアリアルの疑似サイコフィールドを潰すなら一つずつ潰した方が絶対に良いと思うんだけど。

「まぁ確かに、アレを銃で狙うのは至難のワザですが」

「えーそうかなぁ~?」

 メスガキちゃんと無口ちゃんが楽しく会話し、スレッタさんはさっきからずっと僕をガン見していた。いやゴメンて。(鉄華団の敵にならない限り)しないから。絶対。

「そっか。じゃあ三日月ちゃん。オープンキャンパスでは楽しみにしてるね!」

 メスガキちゃんはそれだけ言うと、行くよお姉ちゃん!と言ってスレッタさんの手を引くとその場を後にした。

「では。これにて」

 無口ちゃんも去ろうとしたところで、瀬名さんが無口ちゃんに声をかけた。

「もし、戦うことがあったら容赦はしませんから」

 無口ちゃんは眼を細めると、「そうですか」とだけ言って去って行った。

 ・・・・・・え?

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「行くよ。『マルコシアス』」

 オープンキャンパス当日の交流戦。地球寮はスレッタさんチュチュ、そして僕と、それから瀬名さんがパイロットとして参加した。

 マルコシアス?なるガンダムフレームに乗って会場に入ってきた時はビックリして色々と瀬名さんに問い詰めたが、僕が陰キャすぎるあまり話が進まず、瀬名さんが話し始める前に開始のブザーが鳴った。

 そして。

 ガンダムが二機。地下から登場した。

「今日は私もガンビットを連れてきたんだぁ!」

 敵2匹を投げて遊んでいた僕に、紫色の閃光が降り注いだ。慌てて避けると、ガンダムXで登場したような人型の無人機が一斉に僕に照準を向けていた。ガロード、元気かなぁ・・・。

「三日月ちゃん!!!」

 瀬名さんが叫ぶが、流石にその程度で僕は死なないので安心してもらいたい。

 余裕で避けた僕にまた弾幕が張られるがソレも全て避けると、今度は会場の天井に大穴が空き、その穴から機械でできた怪物が姿を現した。

 竜に似たその姿と巨躯でソレがMAだと分かった僕は、瀬名さんの制止も聞かずにバルバトスのリミッターを外した。

 MAの喉元に一瞬で距離を詰めると、そのまま雑巾を絞るようにして首をグシャグシャにし、そのまま引きちぎる。頭部を失ったMAの身体は何もできないまま力を失い、会場に倒れ伏した。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 ・・・ぶっちゃけ、サイコガンダムくらいのが来ると思っていたのだが、貧相な体つきをしていたので拍子抜けも良い所だ。

 バルバトスのコクピットから『自力で』降りると、隣に格納されたマルコシアスから瀬名さんが飛び出してきた。

「み、三日月ちゃん!!!大丈夫で、え、普通に立ってる。え?」

 よくぞ聞いてくれました。

 僕はドヤ顔で瀬名さんに駆け寄ると、今までじっと隠してきた左目の眼帯を取り去り、左目の眼球を瀬名さんに見せた。

 それから、早く説明できないためいつものようにタブレットに文字を打ち込み、瀬名さんに見せた。

『この左目はね。とある変な人(神様)が『原作のバルバトスは未完成だった。まだ出力は上がる』って言って渡してきたやつなんだよね。なんでも、スーパーコンピューターが内蔵されてるとかで、これを使ったら、多分半身不随みたいなことにはならないと思うから、大丈夫だよ』

 心配してくれて嬉しかったよ(本音)。陰キャながらにそれだけ言って笑うと、瀬名さんは言葉を失ったままひたすらに僕の目を凝視したまま固まっていた。

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☆☆☆☆☆☆

 その眼は血のように赤黒く、そして怪しく光り輝いていた。

(イメージは真っ赤に輝く『神々の義眼』。)

 





ハシュマル(MA)「あんさんら、この穴ちと狭すぎるんとちゃうか?」
プルーマ(子機)「大丈夫大丈夫。ワイらの計算に狂いなんてあらせんのやから、安心して入りーや」
ハシュマル(MA)「ホントかなぁ~?(黄色熊風)あ。いやハマっとるやないかい!エロ漫画みたいに壁穴にハマっとるやないかい!」
プルーマ(子機)「うせやん。あんさん太ったんとちゃうか?」
ハシュマル(MA)「太っとらんわ失礼な!は~あ、ホントあんさんらはさ、」
プルーマ(子機)「ちょ、敵来ましたぜ?」
ハシュマル(子機)「え、ちょ待てよ(アイドル風)。え、いやホント待って。今ちょっと諸事情で尻尾を前に出せないからさ。聞いてる?あ、速っ、え、首、え、そんな雑巾みたいに、止めて止めて止めて!あああ!逝く!逝くぅう!!!」


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