Fate/paradise その小さな身に秘められし大望   作:そらからり

1 / 9
世界観とか分からないことが多いので色々と見逃してください
とにかくバトルが書きたかっただけなので


1話 その出会いは運命に囚われし

《メスト・ノル》

 

 美しいと、ただそれだけを思った。

 一輪の可憐な花だとか、月夜の川だとか、そんな言葉すら不要……いや、中傷として受け取られてしまうだろうと感じた。

 これまでの短い人生で経験したいずれの言葉も比喩にならず、ただただその美しさに言葉無く立ち尽くすしか無かった。

 

 彼女は呆然とする僕を見ると、にこりと笑う。

 

「小さなマスターさん。貴方が私を召喚したのかしら?」

「ます、たぁ?」

 

 声が震える。

 それは目の前の美しさに対してだけではない。

 単純な寒さが彼の身を震わせていた。

 いくら防寒装備やカイロを着用していても、氷点下50℃は極寒地帯だ。

 

「随分と寒そうね。ところでここはどこかしら」

「なんきょく、だよ」

「なんきょく……南極ね。ふうん、ここがそうなの」

 

 観光に来た客のように彼女は周囲を見渡す。

 だが、現在は雪が降り始めており、視界は不良。

 その中でも彼女の美しさだけは確認出来るのは何故であろう。

 

「随分と風が五月蠅いわね。少し静かにしてもらおうかしら」

 

 彼女が手を振ると雪が止む。

 そして、僕の周りの温度が少しだけ上がった。

 

「これで寒さに震えずに済むかしら」

「う、うん。……ありがとう」

 

 素直に礼を言うのが気恥ずかしくて、少しだけどもってしまう。

 だけどこの瞬間に自覚した。

 自分は彼女に対して一目惚れしていたのだと。

 

「さて、それではマスターである貴方の願いを教えてもらおうかしら」

「ええと、さっきも言っていたけどマスターって?」

 

 そういえば彼女はどこから来たのだろう。

 ここは人が生きるには難しい地だ。

 なのに、彼女は注視するのも恥ずかしいような薄着だ。

 ここまでどうやって……いや、先ほどの雪を止めた現象を含めて何者なのだ。

 

「ふふ。何も知らないで私を召喚したのね。私はサーヴァント。マスターである貴方と共に一つの願いの為に歩む、言わば同士のようなものよ」

「同士……僕と一緒に何かをしてくれるの?」

「ええ。だけど私達を邪魔する者もいるのよ。私達は力を合わせてそれに立ち向かわなければならないの」

「そうなんだ」

 

 僕と彼女の邪魔をする奴がいる。

 それは嫌だとはっきり思った。

 

「だけど私はあまり強くは無いの。貴方も魔力量は多いみたいだけど、戦闘の心得は無いわよね」

「生まれて一度も戦ったことは無いね……」

 

 いつもいつも逃げるために走っていた。

 誇れるものといったら、この健脚くらいだろうか。

 それもこの極寒の地では何の役に立たなかったが。

 

「構わないわ。戦い方なら私が教えてあげる。それに魔力があるのなら魔術の素養もきっとあるでしょう。きっと、強くなるわ」

「僕が強くなれる……」

「そうよ。私の騎士になるために強くなってね」

 

 彼女の騎士に……。

 それは姫を守るナイトということだろうか。

 なれるだろうか……いや、ならなきゃいけないんだ。

 

「それが僕と貴女の未来を守るためになるんだよね」

「未来? ……ええ、そうよ。私達が幸せになるためにも貴方には強くなってもらわなきゃ」

「……やるよ。僕、強くなる」

 

 いつの間にか震えは無くなっていた。

 彼女と対等になる。

 その目標が彼女に対してあった気後れを消していた。

 

「決まったところで、騎士さん。貴方の名前を教えてもらってもいいかしら?」

「メスト。メスト・ノルだよ」

「良い名ね。私は――」

 

 その日、南極は変貌した。

 生物の生存を否定する地から楽園へと。

 否、彼女にとっての楽園へと。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。