Fate/paradise その小さな身に秘められし大望 作:そらからり
1話目のアイツ? ノーカン
《フレイ・ロット》
「私の眼だけが真実を映し出しているというのであれば……これがこの街の実態か」
嘘に惑わされない。
ただそれだけの魔眼。
それだけの使い方であれば、大した魔力消費もせずに真偽を見分けることが出来る。
戦闘には大した使い道も無いが、はったりや罠くらいは見抜けるため、防御に徹していれば何とかなるだろう……と支部長も思っているのだろう。
「……随分と悪趣味な」
写真では分からなかったが、毒々しいというか、派手な色で染まった街だ。
一際高いと思われていた塔……あれは聖堂か。
鐘も見える。
「それに……誰だ、こいつらは」
街に入った途端に視界に映り出した者達。
人間……と表していいのか。
……いや、使い魔の類だ。
この眼が人間ではないと映し出した。
となれば、ここは敵陣只中の上に敵に囲まれた状況となる。
何時襲われても良いよう心構える。
だが、私とは裏腹に彼らはこちらに興味が無いようで見向きもされない。
「……ひとまずは調査だ。どこか隠れるところは――」
と、右肩に疼きのような感覚が走る。
やがて疼きは痛みに代わり、治まった。
「……まさか」
急ぎ人気のない場所へと走り、痛みのあった場所を確認する。
20代半ばにしては少しばかりカサつき始めているのが悩みの種であった肌であるが、今はそんなのは問題ではない。
それよりも、そこには紋様があった。
「嘘でしょ……ちょっと……」
擦れども擦れども一向に消えることは無い。
これは単なる痣ではない。
令呪……聖杯戦争に選ばれたマスターの証。
7人の栄光あるマスターの1人に私は選ばれたということだ。
「えぇ……」
これ、ボーナス増額どころの話じゃないよね。
……。
不味い不味い不味い。
早いところ応援を要請しなくては。
無理だよ無理。
普段はクールビューティーぶってはいるけど、そんなのも崩れてしまうわ。
「えと、令呪が現れた時は……」
支部長伝てに時計塔に誰か優秀な人材を派遣するよう連絡する。
頼む……本当に頼むから君主とかトップ連中が出しゃばって欲しい。
私とかサポートに徹するから。
何だったらこの令呪を受け渡しても……いや、死を以てとかだと困るからやっぱりサポートで。
「と、とにかく英霊を召喚しないと」
幸にも空き家を発見出来たこと、支部長が予めこういった事態を想定していたためか、儀式に必要な供物、詠唱の書かれたメモがザックに入っていた。
見よう見まねで儀式を行っていく。
幸にもそう難しいものではない。
やり方さえ知っていて丁寧に進めていけば素人にも行える儀式だ。
「最後に触媒か」
……触媒?
ええと、どこに入っているのかな。
……おかしいな、見当たらないぞ。
「支部長ぅぅぅぅ!! 触媒入れ忘れるとかどうなっているんですかァァァ」
……ああっ、もう!
私の私物で勿論触媒になりうるものはない。
元々私は魔力が少ないから魔術も然程使えない。
この眼頼りの活動だったのだ。
「……ん?」
ザックのフロントパネルに何かが挟まっている。
それはA4サイズの封筒であった。
『困ったらこれ使って!!』
と、表には支部長の文字で書かれている。
「し、支部長!」
何だ、ただ分けていただけだったか。
封筒を取り出し、開けていく。
紙サイズ……少し分厚いな。
何だろう、古代の手紙とかかな。
古代で手紙を書けるとあればどこかの王様とかのはず。
「さー、支部長はどんな手練手管でこの触媒を――」
封筒の中身を見て思わず固まる。
『この冬一括大セール! テレビも安くなっています! 貴方もこの機会に買い替えてみては?』
「電化カタログじゃねーか!」
カタログを床に投げ捨てる。
マジでふざけるなよあの支部長。
「困ったら使うってどういうことだよ。むしろこれが入ってたことで余計に困っているんだけど!?」
……はぁ。
仕方ない。
駄目もとでこれを触媒にしてみるか。
私の着替えを触媒にするよりは幾分かマシだろう。
「素に銀と鉄――」
詠唱を唱えながら思う。
ほんの少しだけ希望を言わせてもらうのならば……出来る限り魔力消費量の少ないサーヴァントであればいいなと。
確か騎兵は宝具が多いんだっけ……宝具使用に耐えうる魔力を持っていないから却下。
狂戦士は言わずもがな。あんなの召喚した時点でこっちが死ぬ。
そうだな……後々に駆けつけてくれる援軍に剣士とか召喚して欲しいから私はアサシンかキャスターあたりでいいな。
どちらもサポート向きだ。
うん、私向きだしこれが最も合理的であろう。
「――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
詠唱の完了と共に召喚陣が光出す。
電化カタログとかいう間抜けな触媒にも関わらず応えてくれた英霊がいるのだろう。
感謝の念を抑えきれず拝みながら召喚を待ちわびる。
そして陣から現れたのは――1人の少女であった。
……同時に私の身体は床に倒れ込む。
「――ぐっ!?」
「召喚に応じ参上……っと、大丈夫か我が主!? えーと……魔力不足か。なるほどなるほど、ならウチに任せい!」
歪んでいく視界は当てにならない。
残された聴覚に少女の声が届く。
可愛らしい、無邪気な声だ。
「魔力も電力もコツは掴めば一緒だな! えーと、この機器を借り受けるぞ。ここを弄ってあそこを何とかして――」
あ、ダメだ。
もう意識が無くなる……。
多分ここで手放したらもう二度と返っては来ないだろう。
理由は多大な魔力を使用したことで起こった魔力不足。
……ここまで一気に持っていかれるなんて。
自身が誰を召喚したのか分からないが、何を召喚したかは分かった。
「ようし、完成だ! 微細な魔力を増幅する機器だぞ。我が主よ、これに触れてみよ」
手に冷たく固い何かを押し当てられる。
すると、先ほどまでの気だるい感覚が一気に失せ、目が開く。
「これは……」
「いよっし! またもウチは偉大なる発明をしてしまった! やはり天才……天才だウチは」
小さな拳を握りしめ、その場でガッツポーズをする少女。
傍目から見ればとても可愛らしい……が、その正体は英霊。
それも……私が最も危惧していた類が来てしまった。
「あ、ありがとう……確認だけど……貴女狂戦士のサーヴァントでいいのかしら」
「うむ! ウチこそは偉大なる発明家! 平賀源内である! 以後よろしくな、我が主よ!」
多大な魔力を食らう私にとって最も相性の悪いサーヴァント。
……だけであるならばまだ良かった。
その課題は、恐らくであるが先ほど平賀と名乗る少女が改造?してくれた手の中にある携帯電話がどうにかしてくれているのだろう。
問題はそこではない。
私は南極への道すがら、この英霊召喚を含めて聖杯戦争について最低限の知識は入れていたつもりだ。
こと召喚に関して、自身の魔力量という問題があるから尚更だ。
故に、狂戦士は2つの意味で召喚したくなかった。
1つ目は顕現するだけで消費する魔力量。
そして最も危惧すること……2つ目は、私が狂戦士を召喚するために必要な追加詠唱を入れていなかったということだ。
通常であれば狂戦士は英霊を狂化するための詠唱を必要としてから召喚される……らしい。
だが、私は決して唱えていない。
なのに、目の前に狂戦士がいる。
その理由は……残っている枠が狂戦士しかいなかったということだろう。
「……私が最後のマスターだったということか」
遅れて登場する援軍など期待できない。
7人のマスターのうち7人目が私なのだから。
「? 我が主? どうしたのだ?」
困り顔でこちらを覗き込む平賀。
どこが狂化されているのか分からない。
先ほども私を助けるために尽力を尽くしてくれたみたいだし、信用できる相手なのだろう。
「……問題ないわ」
私は立ち上がる。
女にしてはそこそこ長身であるため、平賀は私を見上げることになる。
小さな少女だ。
本当に戦えるのか疑わしくなる。
「フレイ・ロットよ。共にこの戦争を生き延びましょう」
「うむ! よろしくな!」
クールに合理的に。
私は平賀に右手を差し出した。
いつもの女体化
平賀源内も美少女であってもいいと思うんだ
私は平賀源内を抱きしめてよしよししたい