【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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長らくお待たせしました。

お待たせしたわりには短いです……。


〈3月26日追記〉

サブタイトル変更しました。

旧題 「まあまあかな?」



 「まあまあかな?」「まあまあだな」「まあまあだね」

 

「これ、凄いですね……」

 

演奏を聞いて、恵那(えな)ちゃんもなにか感じるところがあるらしい。

 

一年生……いや、高校生とは思えない上手さだ。俺も最初聞いたときには耳を疑った。

 

この子、相当な実力がある。なのに北宇治(うじ)に居る。

 

何故、これ程の実力がありながら立華(りっか)東照(とうしょう)(大阪東照)に行かなかったんだ? 推薦だって好条件で出てただろう。

 

「先輩、この子知ってるんですか?」

 

「いや、知らないよ。俺がこっちに来たのは、俺が高一の時だったから、その頃この子中三だよ」

 

「私と同い年でしたか」

 

可児(かに)。前にそう言っただろ」

 

えっと……。名前は確か、高坂 麗奈(こうさかれいな)。一番最初に名前を聞いたとき、もしやと思ったが、その通りだった。

 

しかし、本人がそれを気にしている可能性もあるので、これ以上は言わない。

 

 

 

「と、いうわけで。滝野(たきの)先輩にはこのソロパートを吹いてもらいます」

 

CDを途中で切り、俺にそう言う。

 

「嫌だと言っただろ!」

 

「あれー? 先輩吹けないんですか? これ、簡単な曲なのに」

 

おいこら!

 

「言ったな……」

 

こういう時のための用意がある。

 

俺は楽器ケースから、予備のマウスピースと譜面を出し、ペットに付け、譜面台に置く。

 

俺の動作を、恵那ちゃんは面白いものを見るような目で、可児はやっちまった……という顔で見ていた。

 

「準備完了! ああ言ったんだ、先ずは可児。お前が吹け」

 

「えっと……」

 

「問答無用。吹け」

 

そこまで言うと可児は、ゆっくり俺のペットを手に取る。

 

 

♪~

 

 

軽く試し吹き。

 

中学では、人手不足だったため、ペットとユーフォどっちもやっていたという可児だ。口にした通り簡単なんだろう……。

 

構える。

 

 

♪~

 

 

 

「まあまあかな?」

 

「まあまあだな」

 

演奏が終わると、恵那ちゃんが感想を言ったので、俺も続いた。

 

「二人揃ってなんなんですか! まあまあって!」

 

可児が悲鳴のような声を上げる。

 

「そういうお前はどう思う? 今の自分の演奏」

 

「どうって。そりゃあ勿論……」

 

「勿論?」

 

言い方に含みを持たせたな。気になって恵那ちゃんが聞き返した。

 

「まあまあだね」

 

ほれ。言った通りじゃないか。

 

恵那ちゃん、呆気にとられたような顔してるじゃないか。

 

「まあいい。可児、ペット返せ」

 

「はい」

 

差し出されたペットを受け取る。

 

マッピを付け替え、譜面台をこちらへ向ける。

 

「さて。今度は俺の番だな」

 

軽く試し吹き。

 

♪~

 

よし。良い感じだ。

 

構え、息を吐く。

 

 

♪~

 

 

 

「ミクちゃんよりは上手いです。でも、CD程ではないですね」

 

恵那ちゃんから感想が出る。

 

そりゃあそうだ。俺ごときがプロ奏者の娘に敵うわけがない。

 

「ありがとう。まあ、こんな感じだよ。……どうした?」

 

可児の方を見ると、何故か目を輝かせてこちらを見ている。

 

この顔、まさか。

 

「なんていうか、すごく言いづらいんですけど……」

 

やはり、この台詞。

 

「……あんまり上手くないですね!」

 

「ほっとけ」

 

「でもなんだか楽しそうな雰囲気が伝わってきました。私、この部に入部します!」

 

「既に入部してるだろ。いつの間に退部していたんだ?」

 

あーあ。恵那ちゃん笑ってるじゃないか。

 

「しかし、可児。お前このネタ本当に好きだな」

 

「はい! マネージャーとかどうかな……?」

 

「要らないよ。お前、俺が立ち上げたこれ、『吹奏楽サークル』じゃなくて、『軽音楽サークル』だったとしても、迷いなく入部してただろうな」

 

「はい!」

 

元気の良い返事だ。しかし、

 

「お前、ギターとか出来るの?」

 

「ユーフォとペット、それからチューバ位なら……」

 

吹奏楽だろ。

 

「軽音楽関係ないじゃないか」

 

「てへ!」

 

「おいこら。そろそろ真面目に練習しろ。恵那ちゃんに笑われて終わるじゃないか」

 

さっきから終始笑いっぱなしの恵那ちゃんを横目に、可児を(たしな)める。

 

「いやぁ。お二人のやり取りを見てるだけでも楽しいですね。その為だけに入部しちゃおうかな……。って、一瞬思いました」

 

思っただけ、か。

 

でも、そう思ってもらえただけでも有り難い。

 

 

 

 

 

「ところで。滝野先輩とミクちゃんは、お付き合いされてるんですか?」

 

「「は?」」

 

唐突に凄い質問来た……。

 

可児と顔を見合わせる。

 

「そんな関係じゃないですよ。ね、先輩?」

 

まあ、確かにそうだ。

 

「違うな」

 

「どちらかといえば、漫才コンビの相方、みたいな感じですね」

 

そんな風に思われていたのか……!

 

でも、そんな感じかもしれないな。

 

「先輩は私のことどう思ってるんですか? あ、先輩は私のこと、彼女と思ってましたか?」

 

「言っとけ。世話の焼ける妹みたいな感じだよ」

 

「妹って……」

 

不満か? そんな声だった。

 

「まあ、本当に妹がいるけどさ」

 

……。

 

…………あれ。

 

二人が急に静かになった。

 

「先輩、妹さんが居るんですね」

 

可児が、酷く冷たい目で俺を見ながら言う。

 

「居て悪いか?」

 

「私たちという妹が居ながら!」

 

恵那ちゃんまで乗っかってきた……。

 

「勝手に妹自称するな。妹は三人も要らない」

 

「まあっ! 妹自称するななんて、ヒドいザマス!」

 

「ひどいざます!」

 

「なんなんだお前ら!」

 

しかし、なんの真似だろう?

 

恵那ちゃんはともかく、可児はアニメやマンガのネタを真似することが多い。もちろん、俺の知っているものとは限らない。

 

そういうときは、その元ネタが分からないから、適当なツッコミ(返事)に困る。

 

「まあ良い。俺は練習続けるから、可児は好きにしろ。恵那ちゃんはまだ見てく?」

 

「はい。もうすぐ時間ですからそれまでいます」

 

時間? ……あ、もう予鈴10分前じゃないか。

 

漫才(なのか?)に付き合わされていたら、時間が無くなったよ……。

 

 

 

まあ、今日は放課後も音楽室が使えるし、今は時間一杯練習して、後は放課後だな。

 

って、恵那ちゃん演奏聞いていくんじゃないのか。スマホいじってる……。

 

 

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