【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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柷 テレビアニメ『ゆるキャン△』第3期製作決定!!




野クルとの出会い 初キャンプ
 『野外活動サークル。通称、野クル』


 

放課後。

 

楽器片手に廊下を歩く。

 

「ったく。なんで今日なんだ……」

 

思わず愚痴(ぐち)(こぼ)れる。

 

今日は急遽(きゅうきょ)、補習で音楽室を使うことになった、とのことで音楽室が利用できなくなった。

 

昨日、というよりは朝の時点まで、放課後も大丈夫だって聞いていたのに……。

 

「放課後になってから急に言われても困るんだけど」

 

はき出す言葉はぐちばかり……。まあ仕方ない、諦めよう。

 

こういう場合、9割方可児(かに)は帰るので、一人校庭で練習することにしている。だから、今日もそうしよう。

 

下駄箱で靴を替え、外へ。

 

「寒っ!」

 

思わず声が漏れた。

 

11月も中旬となれば、ここ山梨はどんどん寒くなってゆく。

 

それでも日向は暖かい。

 

この時間ならまだ校庭には誰も居ないはずだから、暖かい場所を選んでそこで吹こう……。

 

 

 

と、思って校庭に来たら、先客がいた。

 

「って、()クルの面子が揃って焚き火か……」

 

よく見れば、各務原(かがみはら)さんの姿がある。

 

校庭の端で焚き火を囲んでいる。その上にはポットが吊るされており、近くのベンチには(びん)が見える。

 

お湯を沸かしてコーヒーでも飲むのだろう。

 

俺は気にせず吹くだけ……。

 

「あ! ブランケット先輩だ!」

 

そうといかないのが、御約束。

 

「先輩~!」

 

各務原さんに見付かってしまった。

 

まだ吹いてないのに! 音で気付かれたのなら諦めがつくけど、俺の姿に気付いたのなら、黙認してほしかった。

 

……って、ブランケット先輩だって?

 

駆け寄ってきて、

 

「えっ! ちょっと!」

 

俺の袖を掴み、引っ張ってゆく。

 

「待って待って待って!」

 

俺の止める声もむなしく、他の二人がいる焚き火の側へ連れてこられた。

 

「なでしこ。その人って、ま、まさか……」

 

眼鏡の子。確か、大垣(おおがき)さんが俺を見て、驚きの表情を浮かべる。

 

「『トランペットの人』やないの。なでしこちゃん知り合いなん?」

 

その隣の子。って、胸でかっ! 眉毛太っ!

 

おっと。そこに目を奪われている場合ではない。下手すりゃセクハラで死ぬ(別の意味で)。

 

大垣さんの隣にいる子。確か彼女は、犬山(いぬやま)さん。

 

この三人が『野外活動サークル(通称、野クル)』のメンバーだ。確か。

 

確か、が多いな……。知らないんだから仕方ないけど。

 

「各務原さん。俺は何故ここに連れて来られたんだ?」

 

「あきちゃん、あおいちゃん。この人がブランケット先輩だよ!」

 

俺の問いに答えはなく、勝手に俺のことを二人に紹介している。

 

紹介と言えるのか? これ。

 

それに、この二人なら俺のことを知っているだろう。理由(ゆえ)、逆も(しか)り。

 

「お、お、お……」

 

「アキどうしたん?」

 

大垣さんが『お』を連呼して変になってしまった。因みに、表情はさっきと変わらない。壊れた?

 

……仕方ない。

 

「犬山さん。俺は何故ここに連れて来られたんだろう?」

 

「あれ? 私のこと御存知で?」

 

名前で呼んだからか、おや? という感じの顔になる。

 

「そりゃあね。四月に野クルを立ち上げたんだよね? 大垣さんと二人で。大町(おおまち)先生から聞いてるよ」

 

「そうなんだ。アキちゃんとあおいちゃん、有名人なんだね。流石。凄いでしょ!」

 

何故各務原さんが得意気?

 

「そう言ってる先輩こそ、めちゃくちゃ有名人やないですか。『トランペットの人』ですよね。御高名はかねがね」

 

いや、そこまででは……。

 

って、話脱線してる!

 

「結局、俺が連れてこられた理由は?」

 

各務原さんは答えないし、大垣さんは壊れるし、犬山さんは話逸らすし(故意ではない?)。

 

この子ら一体何なんだ~!

 

 

 

 

 

 

「それでは、改めまして。トラ先輩!」

 

治った(?)大垣さんが俺に向き直る。

 

因みに、俺はコーヒーの瓶が置いてあったベンチに座っている。手には渡されたコーヒーが。

 

俺の前には三人が立つ。

 

なんか、これから尋問でもされるみたいで怖い。

 

「単刀直入に言います」

 

角度の問題か、メガネのレンズが光り、目元は見えない。

 

「トラ先輩、野クルに入ってください!」

 

そう言って頭を下げた。最敬礼だ。

 

「何で?」

 

頭を下げられたことにも驚いたが、言った言葉にはもっと驚く。

 

野クルに入れって。急に何なんだ?

 

「もう、あんな狭い部屋は嫌なんだよ!」

 

「四人以上集まれば、部に昇格出来るんですよ」

 

「大きい部室が手に入るかもしれないんです!」

 

頭を上げた大垣さんから順に、三人が口にする。

 

なるほど。

 

「そういうことか。理由は分かった」

 

しかし、それならこちらにも言い分はあるんだよ。

 

「でもね、俺……吹奏楽サークルは部室無いんだよね。顧問の先生も居ないし」

 

音楽室は使って良いことになってるけど、先述の通りなので、今日みたいに使えない日もある。

 

「俺は残念ながら君たちの部室を知らないけど、自分たちの部屋があるだけ良いんじゃない? それに、詳しい活動内容とか知らないけど、この間も中庭でテント張ってたし、今日もここに来てるだろ? 活動場所が外なら、部屋は狭くても大丈夫なんじゃない?」

 

少し長くなってしまったが、今の話を三人は黙って聞いていた。

 

一人だけ、表情が七変化していたけど……。

 

「ぐぬぬ……」

 

その大垣さん、またも表情が変わった。八変化目。この子意外と面白いかも。

 

「そうかなぁ?」

 

不服そうに唇を(とが)らせる各務原さん。この子、今の話理解できてる? なんか不安。

 

「まあ、部室に関しては先輩の言う通りですわ」

 

流石犬山さん。理解が早い。この三人の中ではそういう立ち位置だと思っていたけど、その通りみたいだ。

 

「でも、先輩を勧誘しとる理由は、それだけじゃないんですよ」

 

……ん?

 

「というと?」

 

「それをここで話すのもアレですし、コーヒー飲んだら一緒に部室へ行きましょ」

 

え……俺の練習は?

 

 

 

 

 

 

急かされるようにコーヒーを飲み、部室棟へやって来た。

 

「三人で来たけど、大垣さんは?」

 

昇降口を入るところまでは四人一緒だったが、ここまで来たのは三人だ。

 

いつの間にか、大垣さんが居なくなっていた。

 

「職員室です。野クルには顧問の先生居ませんけど、一応大町先生が監督してるんで、焚き火の報告に行ってます」

 

「ああ。あれ先生に言ってあるんだ」

 

校庭で枯れ葉を集めてやっていた焚き火。ここに来ることになって、ちゃんと消してきた。その事の報告らしい。

 

「当たり前やないですか。ちゃんと許可もらってますー。ウチらが無許可で焚き火してると思っとったんですか?」

 

「いいえ」

 

ごめん。本当はそう思ってた。

 

しかしこの子、関西弁上手いな。京都に居た頃を思い出す。

 

こっちきて一年ですっかり京都弁が抜けたけど、前俺はこんな言葉使ってたな、って懐かしくなる。

 

犬山さんも関西出身なんだろうか……?

 

「ブランケット先輩~! 着きました。ここが野クルの部室です!」

 

少し前を歩いていた各務原さんが、立ち止まってこちらを振り向いて、右手で示す。

 

『野外活動サークル』そう書かれた部屋は、部室棟の一番奥にあった。

 

「どうぞ。狭い部屋ですが」

 

そう言いながら各務原さんが扉を開く。

 

「って、確かに狭っ!」

 

「私も最初に来たときは『うなぎのねどこ』だって思いました」

 

狭い。縦長で幅は無い。

 

二人並んで立つのも大変だ。

 

「もともとは使っとらん用具入れだったんです」

 

各務原さんに続き、犬山さんも室内へ入る。そして、当然のように棚に腰掛ける。

 

「アキちゃんは?」

 

「そろそろ来るやろ」

 

二人、そう言いながら足をぶらぶらしている。

 

「俺はどうしろと? こんなところまで連れてこられて……」

 

「まあ、あき戻ってくるの待ちましょ」

 

しかしこの子、大きいな……。何が、とは言えないが。

 

ってか、その位置で足ぶらぶらしてたら、二人ともスカートの中が見えそうなんだけど。

 

ただでさえ短いのに……。

 

あ、でも京アニパワーでパンツが見えることはないのか。物理的に見えそうな角度でも、絶対に見せない。それが京アニクオリティー……。

 

あ、ここ京都じゃないじゃん! ということは、もしかして見えるの?

 

 

見え………………た!

 

「あたっ!」

 

慌てて顔を(そむ)けた拍子に、顔面を壁にぶつけた。

 

「えっ! 大丈夫ですか、ブランケット先輩!」

 

「どないしました?」

 

二人が心配そうに俺を覗き込んできた。

 

パンツが見え、顔を背けたらこうなった。とはいえ『君たちのせいだよ』なんて、口が裂けても言えぬ……。

 

「何でもないよ。この部屋が狭いから……」

 

誤魔化すだけで精一杯。

 

部屋に入ってすぐ、トランペットを棚に置かせてもらってて良かった。下手すりゃ落としてた。

 

 

 

 

 

 

 

犬山さんと各務原さんから、『野外活動サークル。通称、野クル』とは何か。普段の活動は。といった話をしていたら、職員室に寄ってきた大垣さんがやってきた。

 

「さて、全員揃ったことだ。改めて私たちがなぜトラ先輩を我が野クルへ勧誘しているか、説明しようではないか……!」

 

「前置き長いわ」

 

渾身(こんしん)の(?)、格好いいポーズを決めた大垣さんだが、犬山さんに突っ込まれる。

 

「先輩もご存じの通り、部員が四人になれば、部に昇格出来るんです」

 

「それは俺も知ってるよ」

 

去年、サークルを立ち上げたときに聞いた。

 

「流石ブランケット先輩! 物知りですね」

 

すかさず各務原さんの歓声。

 

「この度、各務原が入部して今は三人います」

 

「はい! 私が入部しました」

 

「お前ちょっと黙ってろや」

 

大垣さんに怒られて各務原さんがむくれる。まあ、喋ってすぐにいちいち突っ込まれてたから、気持ちは分からなくもないが。

 

犬山さんはこのやり取りを笑顔で見守っていた。

 

「そろそろ漫才やめや。あき、本音は何なん?」

 

が、我慢の限界なのか、続きを急かす。

 

「簡単に言うなら『部に昇格すれば部費が貰える』ってことだ~!」

 

「そういう理由かい!」

 

思わず突っ込む。

 

まあ、いろいろ端折(はしょ)ったみたいだが、ようやく本音が出たな。

 

部費か。確かにキャンプをやるんだと、テントやシュラフその他諸々揃えなければいけないし、当日もキャンプ場の利用料や薪代、現地までの交通費や食費……。とにかくお金が掛かる。

 

「まあ、そんなら構へんけど、俺」

 

何か、変な悪巧みを考えていそうだったから、慎重に聞いていたけど、理由は単純みたいだし。

 

大町先生も大垣さんのことを、『面白くてちょっと変わった奴だけど、悪い奴ではない』といっていたが、その通りみたいだ。

 

「マジで!」

 

大垣さん驚きすぎ……。

 

「ほんまですか! でも先輩、吹奏楽サークルの方はどうするんですか?」

 

犬山さんも驚く。しかし彼女は冷静だ。

 

彼女の言う通り、俺は今吹奏楽サークルに所属している。その上で野外活動サークルに所属することは出来るのだろうか?

 

「どないなっとるんかよう分からんけど、掛け持ち出来るんちゃう?」

 

部とサークルなら可能? サークル同士は? 全く分からない。でも、大丈夫な気がする。

 

「そもそも、この学校に部活って幾つあるんだろう?」

 

各務原さんが唐突に口にした。

 

「登山部とウチと、吹奏楽サークル……。イヌ子、他に知ってるか?」

 

「私も知らんなあ」

 

「俺も聞いたこと無いわ」

 

……ん?

 

ふと、視線をずらすと各務原さんが俺を見つめていた。

 

「なんや? 各務原さん」

 

「ブランケット先輩が関西弁喋ってる……!」

 

えっ? あ……。

 

「犬山さんのが移った……」

 

京都を離れ一年強。すっかり抜けていた京都弁が、犬山さんの関西弁に釣られて出ていたらしい。

 

全く無意識だったが。

 

 

 





前書きにも書きましたが、『ゆるキャン△』アニメ第3期の製作が決定しました。との発表が!!

嬉しいですね。というか、おめでたいですね!

3期、ということは、大井川キャンプも製作されるでしょうね。台風災害で大変な寸又峡界隈も登場しますから、今後の発表が楽しみです。

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