【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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お待たせしております。

週一ペースでの更新を目標に、頑張っております。

さて、今回は繋ぎの回です。○が付いていることからも分かるように、滝野以外の人物が視点のお話です。



 ○ほったらかし温泉

 

笛吹川フルーツ公園から20分少々。さっきの坂より幾分マシな登り坂を上がってきた。

 

「へぇー。ほったらかし温泉だって」

 

「おもしろい名前やな」

 

ほったらかし温泉に到着。

 

看板を見て、各務原(かがみはら)とイヌ子がそう言う。

 

確かにおもしろい名前だ。一度聞けば忘れることはないだろう。

 

この温泉はお湯と景色も良いが、もう一つ魅力的な所がある。

 

「そこの休憩所に大きな荷物置いて、入りに行くか」

 

そう。無料の休憩所が併設されているのだ。

 

まだ、ネット検索での写真しか見たことがないが、実物は如何程(いかほど)か……。

 

「おお……」

 

「このくつろぎスペース」

 

「ここで一度くつろいだら、二度と起きては帰れまい……」

 

想像以上だ。

 

(炬燵(こたつ)ではないが)テーブルに座布団、そして石油ストーブ。

 

湯上がりの客を落としにかかる、とんでもなく強力な力……。

 

外が寒くなればなるほど、どんどん強くなるだろう。

 

「せやな、お尻に根が張るなんてレベルやないわ」

 

「あ~! リンちゃんだ、これ!」

 

急に、座ってスマホを操作していた各務原が声を上げた。

 

「どうした?」

 

「リンちゃんがテレビに映ってるんだよ!」

 

そんなわけないだろう……。と思いつつ、各務原が差し出しているスマホを覗き込む。どれどれ。

 

ああ。ライブカメラか。おお、しまりんが手を振っているじゃないか。

 

えっと、霧ヶ峰カメラ?

 

「ほんまや‼ 志摩さん今霧ヶ峰におるんやね」

 

霧ヶ峰って確か……。

 

「これ、何処にあるの?」

 

考えていたら、各務原から質問された。

 

「長野県の諏訪湖の近くにある高原だな」

 

「長野かぁ。そんな遠くまで」

 

しかしこの時期、長野だと寒いはず。大丈夫なのか?

 

「にしてもライブカメラで返事なんて、おもしろい事すんねー」

 

「だねー」

 

イヌ子に各務原が感心している。

 

確かにおもしろい。

 

あ、でもこれって返事しないとまずいんじゃないか?

 

「各務原、そろそろ返事してやらないと。さすがに腕疲れるだろ」

 

「って、後ろから車来てるやん!」

 

「リンちゃん逃げて~!」

 

ここで叫んだって聞こえないだろ。

 

 

 

券売機でチケットを買い、温泉へ。

 

脱衣室で服を脱ぎ、手早く体を洗ってから露天風呂へ。

 

「わぁ~!」

 

良い景色だ。

 

さて、お湯はどうだろう。

 

……良いぞ、これ。

 

「冬の温泉たまらんわー」

 

「あきちゃん、ここからキャンプ場までどのくらいあるの?」

 

ここから……。

 

「一キロぐらいだったかな。管理人さんには昼過ぎに行くって連絡してあるから、まだまだここでのんびりできるぞ」

 

「そっかー」

 

「あかんわ、悪魔の囁きやー」

 

「しかし、本当に良い景色だねぇ。今ごろ、リンちゃんどうしてるかなぁ?」

 

各務原が眼下に広がる景色に目を向ける。

 

わたしも視線を追うが、メガネを外しているから、視界はぼやけている……。

 

だいたいあの辺に富士山が見えるはずだ。さっき、フルーツ公園の見晴台から見た記憶だと。

 

おや、こんなところにも立派な巨峰が……って、イヌ子じゃねーか。

 

 

 

 

 

 

 

風呂から上がると、『おんたま揚げ』を買い、休憩所に戻る。

 

危うくごはんにするところだったが、こんなところで食べたら、各務原のキャンプ飯が食べれなくなる。危ない危ない……。

 

と、いうわけで、おんたま揚げを噛る。

 

「「「んまー」」」

 

「卵揚げただけなのに、旨すぎる……」

 

「黄身がとろける~。何個でも食べれるよ、これ」

 

「あかん。湯上がりに食ったらあかんやつや~」

 

そう言い、イヌ子が寝転がる。

 

「うん、あかんやつや‼」

 

各務原が続く。

 

「あかんあかん‼」

 

わたしも続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あきちゃん‼ あおいちゃん‼」

 

各務原に叩き起こされる。何だ……?

 

「もう4時過ぎてるよっ‼」

 

4時……。4時!

 

何だって!

 

各務原のスマホには、『16:08』の表示。

 

「思いっきり寝過ごしたっ!」

 

「あかんてあかーん」

 

「おいイヌ子、起きろ! 今度こそ本当に置いていくぞ!」

 

 

 

温泉を後にし、キャンプ場へ向けて歩いて行く。

 

「なあ、あき。こっちで合っとるん?」

 

イヌ子が心配する理由も分かる。

 

確かに、さっきから下りが続いている。

 

「でも、地図はこっちになってんだけどな……」

 

スマホの地図を見ながら進んでいるから、道は間違っていないはずだ。

 

「わたし暗い森って苦手なんだよね……」

 

おいおい。それじゃあ林間キャンプ場全部NGじゃねぇか。

 

仕方ないな。

 

「各務原。あたしがついてる。安心しな」

 

各務原の方を向き、親指を立てる。

 

「あき、格好付けるのもエエけど、道に迷いかけてる今言っても、説得力ないで」

 

うっ。ダメか。

 

とにかく先を急ぐか。トラ先輩も待っているだろう……。

 

「迷ってないから! ほら、見えてきた。あれじゃねえか?」

 

前方に看板が見えてきた。

 

「ンプ場?」

 

「ンプ場やな」

 

『イーストウッド

 キャ    』

 

看板にはそう書かれている。

 

『ンプ場』と書かれていたであろう部分が無くなっているのだった。

 

 

 

 





前にも少しお話しした通り、今作執筆にあたり、少しだけ山梨県に取材に行っています。

地元(岐阜県)を深夜10時頃に出発し、夜通し車を運転して 東名高速→中部横断道 経由で、ほったらかし温泉まで。

完全にルート選択ミスしました。東名高速 ではなく 新東名 を通るべきだったと……。

着いたら既に温泉は開店済。というか、混雑で一時間待ち……。

長くなりそうなので、今回はここまで。続きは又の機会に。
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