放課後。
「あ、
図書室に入ろうとすると、
「恵那ちゃん。図書室まだ開いてる? 返す予定の本、こんな時間になっちゃってさ……」
「中にまだリンがいますよ」
閉鎖時間ギリギリにってしまい間に合うか心配だったけど、良かった。
「遅いですね。
……は?
「待って、
「あれ、本当に呼び出しだったんですか? 鎌掛けだったんですけど」
……マジか。見事に引っ掛かってしまったよ。
「やられたよ……。理由は伏せるけど、朝職員室行ったら、教頭先生に捕まったんだ。……あ、今遅くなったのは、単に部活だよ」
そう。
放課後は職員室で鍵を借りてから音楽室へ行った。
後から
「教頭先生ですか。先輩、悪いことするようには見えないですけど、何かしたんですか?」
「俺は悪くないよ」
教頭先生もそう言ってたし。
「あ、そうだ先輩。また今度、音楽室行っても良いですか?」
音楽室に?
「今朝の演奏、とても感動しました。それに楽しかったんです。また一緒に吹きたいです!」
「そう? じゃあ好きなときにおいでよ。まあ、こう言ったけど、毎日音楽室が使えるとは限らないから、その時はダメだけど……。あ、ラインで良いから連絡して。その方が確実だからさ」
「了解です! では、今日は失礼します!」
敬礼をして去っていった。
今朝のがきっかけで音楽が好きになってくれたら嬉しいな……。
あ、別に『吹奏楽サークル』に勧誘するつもりはないので。
扉を開けて入室。
「失礼します」
「あ、ブランケット先輩。先輩も一緒に食べますか?」
入るなり、
その方向を見ると、各務原さんとリンちゃんが二人、カウンターを挟んで向かい合っている。
食べるって何を? ……生チョコまんじゅう か。リンちゃんのお土産だな。
「ありがとう。戴くよ」
差し出されているまんじゅうを受け取る。
実は、俺もリンちゃんから同じものを貰っている。しかし、その事を今言うような不躾な真似はしない。
ん? カウンターに何か置いてある。これってもしや……。
早速まんじゅうを一つ食べ終えた
「なにこれ? ミニ
「おまえもか」
「コンパクト焚き火グリル、だろ」
賽銭箱って……。まあ、そう見えなくもないが。
おまえも、ということは、さしづめ恵那ちゃんも同じことを言ったのだろう。
それが何か、知っている俺は、透かさず突っ込む。
「へぇー……。これで焚き火や料理に焼肉が出来るんだ」
実物と添付の説明書を見ながら、
「すごい。こんなに小さくなる……」
組み立ててあったのを畳んだ。
畳めば単行本位になるんだよな。場所も取らないから扱いやすい。
「壊すなよ」
見ててなんか不安。
「そういえば先輩、昨日は何であんな所に居たんですか?」
グリルを
「ああ。むかわキャンプ場に届け物があったんだよ。あ、そうだ」
確か、この辺りに……あった。
「これ、もらったんだけど使う?」
「「無料券……?」」
「そう。むかわキャンプ場の利用料、無料券」
一グループ四人まで無料にしてもらえるらしい。
「リンちゃん、これありがとう」
各務原さんの興味は、グリルから無料券に移ったらしく、グリルをリンちゃんに返した。
「あのさ、それで今度肉焼いてみる?」
しかし、リンちゃんがそう言うと、俺の持つ無料券に向いた各務原さん視線が、再びリンちゃんに戻った。あれ……この券用無し?
「うん、やる! やろうよ、焼肉キャンプ」
「あ、いや。キャンプという訳じゃ……」
「先輩のその無料券で」
「いやいやいや。
さらっと凄いこと言うな。リンちゃん引いてるじゃないか。
だいたい、どうやって行くんだよ?
……あ、リンちゃんはビーノで自力で、各務原さんはお姉さんの送迎で。と、思えば無理ではないか? いや、そういう話ではなく。
「そうだ! リンちゃん今週の土日暇?」
「まあ。バイトは無いけど」
「じゃあ、
「それは……いいけど。でも、何処にするの?」
「うーん……。リンちゃん、何処か良い場所知らない」
「焼肉の出来るキャンプ場か……。買い出しが必要だから、道中にスーパーとかが無いと厳しいよな」
なるほど。そうなるよな。
そう考えると、
……仮に、リンちゃんの家から52号に出て、市川を回って来れば、幾つかお店があるな。
よし。
「じゃあさ」
すっかり
「
「えっと? 先輩のお家ですか?」
各務原さんの頭に、でっかい『?マーク』が浮かぶ。
「あ、言ってなかったっけ? 俺の家、
話の流れでリンちゃんには言ってあったけど。
「四尾連湖? デンキウナギでも居るんですか?」
あれ? 『家がキャンプ場なんて凄い!』って喰い付くんじゃないかって予想してたのに……。
四尾連湖を知らないのか。
「四尾連湖って言う名前の小さめの湖があるんだよ。ここと、
「ボート!」
「そう。因みに、木明荘の他にももう一軒キャンプ場があって、そっちはオートキャンプ場だな」
「オートキャンプ?」
再び、各務原さんの頭に『?』が。
リンちゃんが各務原さんに『オートキャンプとは何か?』説明している間に、俺は家へ電話する。
まあ、この時期満員になることは有り得ないけれど、念のため。
図書室を出て、電話を掛ける。
『はい。四尾連湖木明荘キャンプ場です』
すぐに繋がった。
「
『ああ、純一くん。どうしました?』
「予約状況、確認したいんですが」
『良いですよ。
「えっと、今週末だから……。12月2日です」
『12月2日ですね。少々お待ちを』
電話口からキーボードを叩く音が聞こえている。
そうか、もう12月か。今年は雪の量多くなければ良いけど……。
『お待たせしました』
そんなことを考えていたら、返答が来た。
『泊まりのお客様一組、だけですね』
やっぱり。
「分かりました。ありがとうございます」
『いえいえ。ところで、何かありました?』
「ああ、俺の後輩がキャンプに行くかもしれないので、念のため……」
『そういうことですか。分かりました。まあ、まず大丈夫だと思いますが、一応仮押さえしときますねー』
「ありがとうございます。じゃあ、失礼します」
よし。
本当に来る来ないは別として、これで大丈夫だろう。
図書室に戻る。
「あ、滝野先輩」
「話は
「はい! お姉ちゃんに車出してもらえるはずだから、二人で木明荘に焼肉キャンプ行きます!」
そうか。それなら良かった。
もし、野クル初キャンプみたく、最寄り駅から歩くって話だと、たぶん死ぬな。
最寄の市川大門駅から歩いたら、軽く三時間は掛かるからなぁ……。あれ、
「了解。予約はどうする? 一応、今電話して仮押さえしといたから。電話してくれても良いし、俺が聞こうか?」
「えっ! 本当ですか。ありがとうございます!」
かなり嬉しそう。
うずうずしながら小さくガッツポーズ。ここが図書室でなかったら、ピョンピョン跳び跳ねているだろう。流石に場所を
「お姉ちゃんの予定確認してから、電話で予約しますね」
「了解」
「やった~。リンちゃんと焼肉キャンプ~!」
さて。話が纏まったことだし、せっかくもらったこの生チョコまんじゅうを食べよう。
……そういえば俺、なんのために図書室に来たんだっけ?
四尾連湖キャンプが決まりましたね。
因みに、『山県さん』というのは、雇っているスタッフさんです。
木明荘、湖畔のキャンプ場にロッヂや山荘もあるので、それを滝野父一人で管理するのは不可能でしょうから。他にも数人雇っている設定です。