【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

24 / 93

中々筆が進みません……。それでも、投稿頻度は下げないように頑張っています。

ここ最近、Twitterのトレンドに『ゆるキャン△』が入る日が多いですね。面白いです。


さて。今回は繋ぎの回なので短めです。不穏なタイトルですが、決して最終回ではないのでご安心ください。




 本栖高校吹奏楽サークル

 

期末試験が終わったので、部活禁止が解けた。

 

本当なら、昨日の放課後から再開出来たんだけど、生憎(あいにく)俺は仕事で甲府へ行ってたから、やっと部活に出れる。

 

土曜日で学校は休みだけど、部活のために学校へ向かう。

 

県道409号線を走って行くと、数台の車とすれ違った。

 

俺が今走って行くのと逆方向は行き止まりで、四尾連湖(しびれこ)にしか行けない。

 

つまり、地元民でない限りここを通った人は四尾連湖に向かっている訳だ。

 

とはいえ地元民は、俺には全員顔見知りだ。今日はデイキャンプも含め、数件の予約が入っている。すれ違った車の何台かはうちのお客様だろう。

 

そんなことを考えながら、県道414号線・県道9号線を経由し、国道300号線へ。

 

常葉(ときわ)の町中へ入ると国道から脇道へそれ、学校前の坂を登れば本栖(もとす)高校に到着。

 

そういえば、北宇治(うじ)高校の前も坂がある。学校の前に坂がある高校って、多いのだろうか……?

 

 

駐輪場にバイクを停め、チェーンロックで左前輪と駐輪場屋根の柱とを繋ぐ。

 

休校日の早い時間だからか、他にバイクや自転車はない。一番乗りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休校日の朝の職員室は先生方の数も少ない。

 

居る先生は限られる。

 

「失礼します。吹奏楽サークルの滝野(たきの)です。音楽室の鍵を借りに来ました」

 

「お、滝野。おはよう!」

 

職員室に入り、用件を告げれば誰かしら返事をしてくれる。

 

大町(おおまち)先生、おはようございます」

 

そう、今の大町先生のように。

 

「おはようございます」

 

「えっと、鳥羽(とば)先生おはようございます」

 

鳥羽先生も来ている。

 

今職員室にいるのはこの二人だけらしい。

 

「他の先生方、遅いですね……」

 

「ああ。みんな昨日遅くまでテストの採点してたからな。俺はテスト無いから、朝の当番って訳さ」

 

なるほど。

 

「鳥羽先生もですか?」

 

「えっ? ああ、はい。なんの話でしたっけ?」

 

急に振ったから話についてこれてなかった。

 

「テストの話ですよ。ほら、あたしはテスト関係ないから……って」

 

「ああ、そうでしたか。私も今回のテストは関係ないんですよ。田原(たはら)先生が作られた物ですから、代わりに渥美(あつみ)先生が採点されてますよ」

 

そうか。テストは田原先生が作ってったんだ。

 

急な産休に驚いた人は多かったな……。

 

「どのみち今日は土曜日だから、来る先生は少ないと思うぞ。誰かに用事か?」

 

「あ。いや、そういうわけではないです」

 

「じゃあ滝野、部活良いのか?」

 

おっと、話に夢中だった。

 

「そうですね。では、失礼します」

 

鍵を持って職員室を出る。

 

 

 

 

 

 

「あ、滝野先輩!」

 

昇降口で可児(かに)に会う。

 

「おはよう。朝から元気だな」

 

「私から元気を取り上げたら何が残るの? ってぐらい、元気ですよ」

 

「それは良かった。ところで、期末試験はどうだった?」

 

こう聞いた途端、さっきまでの元気は何処へやら。急に元気がなくなった。

 

「ま、まあ。再試にならない程度には……。そんな感じですが、何とか出来たと思いますよ」

 

視線がめちゃ泳いでいた。自信無いんだな。

 

「それなら良かった」

 

一学期の期末試験では数教科赤点で、再試に受かるまでの数日間、可児は部活に来なかった。そう考えればまだ良いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

音楽室に到着。

 

俺が持っている鍵で解錠。

 

一週間振りの音楽室だ。

 

少し来なかっただけなのに、やけに懐かしく感じる。

 

「先輩どうしました? そんな顔して。……もしかして、一週間振りの部室が懐かしいんですか?」

 

「何故分かった?」

 

「そんなところだと思いました。だから、昨日部活に来れば良かったんですよ。まあ、仕事じゃあ仕方無いですね」

 

全くだ。あのタイミングでぶつかるとはね。……分かってましたけど!

 

でもまあ、そのお陰で山川さんと別れの挨拶が出来たんだから、良しとしよう。

 

「所で、前から気になっていたんですが」

 

「どうした?」

 

「先輩のその仕事って、お金発生するんですか?」

 

「そりゃあもちろん」

 

詳しい仕組みは知らないが、観光振興協会……? あれ、観光推進機構だっけ? ……とにかく、そこから 一件幾ら という感じでお金が出るらしい。

 

「そもそも、バイクのガソリン代を考えたら、タダであんな仕事は出来ない」

 

「そうですか。それじゃあ練習始めましょう!」

 

あれ、この話はもう良いのか。前から気になっていたと言うわりには、あっさり切り上げたな。

 

「何吹く?」

 

「これです」

 

そう言い、譜面台を俺の前に置いた。

 

なるほど、悪くないね。

 

「了解」

 

 

 

 

 

♪~

 

 

「そういえば先輩。今度の試験休み、何処か行くんですか?」

 

試験休み? ああ。今週末にかけて四連休になる奴か。

 

「いや、今のところ予定はないけど。どうした?」

 

「特に意味はないです。その間部活どうするのかな……? って気になっただけですよ」

 

そういうことか。

 

「任せるよ。どのみち、可児はある程度自由に部活やってるじゃないか。俺としては、こんなこと聞かれても今更感半端無い」

 

「酷い言い草ですね。まあ、否定できませんけれど……」

 

音楽室が使えない場合は帰るし、土日も来るかはその日次第。でも、部員は俺と可児の二人しか居ないんだし、自由にやるのは構わない。先生に怒られない範囲でなら……。

 

「だいたい、今俺だけに吹かせてお前は見てるだけだっただろう?」

 

「え~。フライデーナイトファンタジーは、トランペットが格好いい曲ですよ? 私が邪魔したら悪いですから……」

 

言ってろ。

 

「次は可児も吹けよ」

 

「何を?」

 

「残酷な天使のテーゼ」

 

そう言うと、唇を尖らせた。

 

「何だそれ?」

 

「三角点です」*1

 

「意味が分からん!」

 

 

 

 

♪~

 

 

 

 

「先輩」

 

一曲吹き終えると、再び可児から声が掛かる。

 

「どうした?」

 

「先輩は、私と一緒に部活するの。嫌ですか?」

 

「いきなりどうした?」

 

普段、こんなこと聞かないのに。

 

可児の表情は、言うならば、真顔。この言葉の真意は読み取れない。

 

「言わなくたって分かってるだろ? 居なくなったら困る」

 

「例えるなら?」

 

「シュークリームの中身」

 

「意味が分かりません!」

 

「お前の三角点よりは分かるだろ!」

 

なんですか、これ? 漫才じゃないか。

 

「まあ、私にしてみれば、この漫才みたいなやり取りも、楽しいんですよね」

 

「それは俺も同じだ」

 

その通り。

 

『大会に出ること』『上を目指すこと』が目的ではなく、『楽しく吹くこと』。これがこの『本栖高校吹奏楽サークル』の目的だ。

 

『楽しく吹くため』の土台に、こういったやり取り(漫才)がある。

 

コンクールに出たくないのか? 上を目指すつもりはないのか? そう問われれば、否と答えるだろう。それでも、今はこれで良い。

 

 

 

 

「因みに先輩。さっきの『シュークリームの中身』って、どういう意味ですか?」

 

「自分で考えろ」

 

 

*1
原作9巻120頁参照。千明が笑って死にかけた あれ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。