当初の予定では、滝野はまっすぐ山梨へ帰る筈でした。なぜか、寄り道することになります(汗)。
今回のお話は、賛否両論別れる話だと思います。
ゆるキャン△アニメ二期後半 は、一部の人には不評だったらしいですね。
その理由が、簡単に言うと『伊豆キャンで、伊豆の名所ばかりが紹介されている。これは、伊豆PRアニメか?』というものです。
今回のお話が、天竜川沿いの名所巡りみたいになっていますので、同様の理由で不評かもしれません……。
なお、このお話に登場する地点は、全て私が訪れたことのある場所です。
挿絵は、私が撮影した写真をアプリで少々加工しております。行ったこと・見たことの無い方に少しでも参考になれば幸いです。
「お世話になりました。ありがとうございます」
「気を付けて。またいつでもどうぞ」
お礼を言って
昨日の夜は早く寝たのだが、余程疲れていたのか、起きたらそれなりに遅い時間だった。
俺たちは試験休みだが、カレンダー通りなら今日は平日。綾乃は学校が、お父さんは仕事があるから既に家を出ていっていた。
代わりに居たのは、夜勤明けのお母さん。
お父さんが綾乃経由で俺のことを知っていたのと同様に、お母さんも俺のことを知っていた。
しかし、それを知らない俺は、起きたら見知らぬ女性が家にいて、腰を抜かしてしまった……。
そんなことがありつつも、山梨へ帰るため、帰路につく。
事前にナビで道を確認しておいたので、バイクを発進させる。
三ヶ日インターチェンジから東名高速に入る。
サービスエリアの駐輪場にバイクを停めた。
「あれ……?」
駐輪場には、何となく見覚えのあるバイクが停まっている。
しかし、ナンバープレートを覚えていないので、そのバイクという確証がない。
まあ、似たようなバイクは何台もある。他人の空似ならぬ、他車の空似かな……と思いながら、トイレへ向かうが、
「ひょっとして、
似たバイクではなく、やっぱり見覚えのあるバイクだった。
「
トイレの前で出会ったのは、リンちゃんのお祖父さんの新城
「ああ、久し振り。しかし、こんなところでどうしたんだ?」
最もらしい疑問だ。新城さんは俺が山梨に住んでいることを知っている。
「今試験休みで四連休中なんです。なのでバイクで浜松へ来た帰りです」
「そうか……。でも、君のバイクは125CCだろう? 高速道路は走れない筈だが」
「ああ、それはですね。この前お会いしたときに代車に乗ってる話をしましたよね? あのバイクに乗ってきたんです。ビーノは部品交換でまだ戻ってきていないので」
「そういうことか。因みに、どんなバイクだ?」
「ヤマハ・トリシティ155です」
そう答えると、ますます驚いた表情になる。
「その、なんと言うか。最近の若いのは頑張るなぁ」
「まあ、確かにそうですね……。高速を走れるとはいえ、あくまで『走れる』って感じですね」
「155CCじゃあ、そんなものだろう。高速道路を走れる最低クラスとも言われているからな。おっと、こんなところで立ち話もあれだ。コーヒーでもどうかな?」
「えっ? はい……」
自販機で購入したコーヒーを手に、フードコートのテーブルへ。
「滝野くんはこれから何処へ?」
「家に帰るところです。実は、クリスマスにリンさんたちとキャンプすることになってるんですね。その時に、京都から俺の妹も来るんです。妹が『うなぎパイ』を食べたいって言うから、買いに来たんです」
「そのためにわざわざ浜松へ?」
「はい。せっかく高速走れるバイクがあるんだから、って思って」
俺の話を聞きながら、缶コーヒーを
「なるほど。さっき四連休といっていたが、滝野くんはいつまで休みなんだ?」
「日曜日まで休みです……。なので、ゆっくり帰ろうと思ってます。急いで帰る必要もないですからね……」
この時間なら、全てのSA・PAで休憩しながら帰っても、日没は迎えるだろうが今日中に帰れるはずだ。
「そうか。なら、せっかくの機会だ、私と一緒にツーリングでもどうかな?」
えっ?
「新城さんと、ですか?」
「こんな老人と走ってもつまらないかもしれないが」
「あ、いや。そんなつもりはなく。ただ、急な話なので驚いただけです。楽しそうな話ですし、時間もあるのでご一緒しても良いですか?」
新城さんがフッと笑う。
「それじゃあ、一緒にツーリングに行こうじゃないか。今晩は私の家に泊まると良い」
…………え?
新城さんの先導で浜松サービスエリアを出発。
出発前に聞いた通り、浜松浜北インターチェンジで流出。
料金所で通行料金を支払う……。あ、ここ自動精算機なんだ。通行券は……えっと、硬貨は……。
料金を払い、一般道……国道152号線に入り、北上してゆく。
天竜川を渡ると、一度
進んでいくと、左手に駅が右手にはSLが展示されているところを通った。
新城さんの後に続いて更に進んでいく。
しばらく進むと左手には天竜川が表れた。
さっき橋で渡ったところとは違い、水位が高く流れがほとんど無いのでダム湖だな。
トンネルが見えてきた。船明隧道……何と読むのだろう?*1 切り株を模した感じのトンネルだ。
川沿いの道を走ってゆく。
前方に、ダム湖に架かる橋が見えてきた。
その橋は国道より高い位置にあり、この先でその下を通ることになる。水道橋だろうか?
橋の袂には道の駅がある。
すると、新城さんが手で合図を出す。道の駅に入るらしい。
『道の駅天竜相津花桃の里』にバイクを止めた。
「滝野くん、足とかは大丈夫かな?」
俺より先に止めている新城さんから声が掛かる。
「ま、まあ。何とか……」
ちょっとお尻が痛いけれど、足の方は大丈夫。
「面白いものが見られるから、少し歩かないか?」
新城さんに
すると、そこはさっき国道から見た橋に繋がる遊歩道になっていた。
「この橋は『夢のかけ橋』という名前でね、元々は鉄道橋が架かる予定だったんだ。その予定が無くなって、橋桁だけが放置されていたのを、この橋を架けて遊歩道に整備したんだ」
「そうなんですね」
「ああ。さっき、高速降りてすぐのところに駅があっただろ」
「はい。
「ほお。よく覚えてるじゃないか」
「まあ……」
駅の反対側にSLがあったから、印象に残っている。
「その天竜二俣駅から、今向かっている中部天竜駅を結ぶ鉄道計画があったんだよ。昔」
なるほど……。
今度は橋と反対側へ向く。階段のところで遊歩道は終わっているが、路盤はその先へと続いている。
「この先には完成する前に工事が中止になった未成トンネルがあるんだ」
トンネル……。
ここからは見えないが、この先に山があるのは分かる。鉄道が計画されていたんだ、川があれば橋を架けるし、山があればトンネルを掘るのは普通のことだろう。
「その未成トンネルは、ワインセラーとして活用されているんだ。茶葉の熟成にも使用されるらしい」
そういう使い方も出来るんだ……。なるほどね。
道の駅をあとにし、天竜川沿いを更に北上してゆく。
次に止まったのは、川沿いの小さな駐車スペースだった。
「吊り橋、ですか」
止まった場所の先には、川に架かる吊り橋が見えている。
「この橋からは、ダムが正面に見えるんだよ。まあ、そんなに揺れないだろう」
『竜山橋』と書かれている。
バイクを止めて、新城さんと二人その吊り橋を渡ってゆく。
「思ったよりは揺れませんね……」
もちろん、揺れない訳ではない。想定内の揺れだ。
「そんなものだろう。大井川にあるこれより大きい橋は、風も強いしすごい揺れだったよ。ほら、あれが
大井川か。塩郷の吊り橋かな。それとも井川大橋? 気になるが、ダムを目の前にしている今、その話は後だ。
「おお!」
上流側にダムが見える。そこまで堤体は高くない。どちらかといえば、堰 だろうか。
この橋はダムの下流側にあるため、下の川面に流れは見られない。この所雨が少ないのも原因だろう。
ダムを見終え、橋を渡ってゆく。
秋葉ダムの上は車や人も通れるらしく、ぐるっと一周することにした。
「新城さんがさっき言ってた大井川の吊り橋って、塩郷の吊り橋ですか?」
「ほう。よく知っているじゃないか」
「大井川は吊り橋で有名ですからね。吊り橋以外でも
「良い橋が沢山あるからね。さっき話したのは、君の言う通り、塩郷の吊り橋だな」
大井川の吊り橋としては下流側にあり、SLが運転される大井川鐵道の線路を跨ぐため、写真撮影のスポットとしても有名だ。
「大井川を横断する吊り橋では、一番長いんだ。よく揺れる橋だよ」
だろうな。写真とかで見た感じだと、かなり揺れるだろう。
「井川大橋だと車も通れますよね」
「井川大橋も知っているのか。あそこはバイクでも渡れるし、良い橋だよ。ただね、上流側の橋だから結構遠いんだよ。おお、そうだ」
なにか思い出したらしい。
「井川大橋なら雨畑林道を抜ければ、山梨県側からも近い。滝野くんも行きやすいんじゃないかな」
そんな近道があるのか。後で調べてみよう。*2
秋葉ダムを渡って竜山橋(バイクを止めているところ)まで戻ってきた。
「さて、じゃあ先へ進もう。さっき見たと思うが、この先はトンネルの中に交差点がある。暗いし見通しも悪いから、合流するときは気を付けなさい」
「はい」
そう。この道の先、秋葉ダム堤体上からの道は、国道152号線とはトンネル内の交差点で繋がっている。
新城さんに続いて、その交差点を無事に通過。
平日だからか交通量が少なく、すんなり合流できた。
そのトンネルを抜け、秋葉ダムのダム湖を横に北上を続ける。
ここは桜並木になっている。時期に来ればとても綺麗なんだろう……。
とはいえ、桜吹雪の頃は目や口に花弁が入って大変だけど。
国道152号線から473号線に入る。
今までより狭くなった道を進む。
んー? 『原田橋』?
さっきからそう書かれた看板が増えているが、有名な橋なのか?
否、『通行止』の文字がある。
まあ、新城さんの先導で進んでいれば大丈夫だと思う。
お。ちょっと開けてきた。ここが佐久間の町だろう。
そして、いよいよ件の『原田橋』に差し掛かった。
立っている看板を見た感じだと、仮橋が掛けられているらしい。
誘導にしたがって原田橋の仮橋を渡った。
なるほど。河原に仮設の橋があるんだ。これだと川が増水したら通れなくなる。それに大型車は通れない。だから、迂回を呼び掛けるために、あちこちに看板が立っていたんだ。
この先も、山の中と集落の中を交互に通っていき、一時間ほど走った。
途中、県境を越えて愛知県東栄町に入った。
そして、
「ここが私の家だ」