適当なところにビーノを停車させ、スマホを操作する。……どれどれ。
浜松基地広報館・エアパーク、うなぎパイファクトリー、
まあ、今日は元日だから営業していないところもあるみたいだけど。
「おっと!」
スマホを操作していたら、着信が。
ライン電話だ……綾乃から?
「もしもし?」
ホルダーからスマホを取り外し、耳に当てる。
「綾乃? どうしたの?」
『あ、お兄さん。お久し振りです。明けましておめでとうございます』
「こちらこそ、今年もよろしく。で、どうしたの? 急に」
電話口はいつもののほほんとした声色、急な用件ではないみたいだが。
『お兄さん、今どの辺りですか?』
「えっ? えっと……」
どの辺り、と言われてもなぁ……。良く分からないんだが。
あ。
前方を見ると、バス停が立っている。
「
停名を見て、そう答える。
『えっ? もう浜松来ているんですか! 昼に出発するって聞いてましたけど』
「まあ、色々あってね……」
と言うほど深い理由でもないが。
『じゃあ、一度家に来ますか? あたしがバイトの間、もし何処かへ行くとしても、荷物置いていけば楽ですよね?』
「確かに」
さっき、
「じゃあ、今から綾乃の家行くわ」
『了解です。そこからなら5分くらいですね。待ってます』
「よろしく」
電話を切る。
さてと。
スマホをホルダーにセットし…………ん?
あれって、もしかして……いや、間違いないよな?
俺は今、協働センターの前に止まっていて、ここは国道から外れた脇道なんだけど、国道を見覚えのあるバイクが通過して行った。
「あれって……」
\シマリンビーノダヨ/
やっぱり。
しかし、なぜこんな所に? 山梨へ帰るって言ってたけど。
時間があるからかなり大回りをして行くのだろうか?
まあいいか。困ったことがあれば連絡がくるだろう。
綾乃の家に到着。
前に来てから1ヶ月も経っていない。来るのは二度目だが、不思議と『久し振り』という感じがしない。何故だろう……。
インターホンを鳴らす。
『はい』
この声は、確かお母さんだ。
「こんにちは、滝野です」
『ああ、純一くんね。いらっしゃい、今行くわ』
少し待つと、玄関が開いた。
「いらっしゃい。遠路遙々お疲れ」
話振りからお母さんが出てくるかと思ったが、出迎えてくれたのはお父さんだ。
「明けましておめでとうございます。今日はよろしくお願いします」
「明けましておめでとう。さ、上がって上がって」
お父さんに促され、上がらせてもらう。
さっき、ガレージに停めたビーノを二度見していた。とはいえ、何も言われないということは、停めた場所は問題ない、ということだろう。
この流れ、お父さんもバイクに詳しいのかな?
食卓に通される。
「あ、いらっしゃい。明けましておめでとう」
「お兄さん、あけおめことよろです」
綾乃のお母さんと綾乃からだ。
「こちらこそ。明けましておめでとうございます、本年も宜しくお願いします」
テーブルを見ると、おせち料理が並んでいる。
「あ、滝野くんも食べる?」
「あ、じゃあ少し……」
叔父さんのところで既にいただいているから、そんなにお腹はすいていない。
あ、でももうすぐ昼か。
「お兄さん、あたしはこのあとバイト行きますけれど、お兄さんはどうしますか?」
「ん? どうしようかな……あ~」
「ははは。滝野くんはお疲れのようだね。今日は家でゆっくりすると良い」
お父さんに笑われてしまったが、もっともな話だ。
久し振りの長旅で疲れている感じだから、少し寝させてもらおう……。
「それでしたら、お言葉に甘えて……」
「前の時の部屋にお布団準備してあるから、自由に使って良いわ。数日泊まるんでしょう?」
そういう話になってるの?
まあ、今更だし気にしない。
「ま、まずはご飯にしましょう。雑煮もあるわよ」
ご飯を頂いて用意された部屋で寛ぎ……寝てたけど。
目が覚めたのは夕方近く。そろそろ綾乃のバイトが終わる時間だ。
せっかくだし、散歩も兼ねて迎えに行くか。
部屋を出て食卓へ向かう。
綾乃のご両親はテレビを観ていた。
「ちょっと歩いてきますね」
そう声を掛ける。
「了解」
「気を付けてね」
「ありがとうございます。行ってきます」
玄関を出て、ガレージを覗く。
綾乃のバイクは停まったままだ。歩いて行ったらしい。
「さて。では散歩に行きますか……」
\キヲツケテナ!/
歩いても数分のところにあるコンビニへ到着。
「いらっしゃいませ~」
自動ドアを潜ると、店員から声が掛かる。
「あ、お兄さん」
入ってすぐのところに綾乃が立っていた。仕事が終わった後らしく、着替え終えている。
「綾乃、お疲れ様」
「お、土岐ちゃん終わりだっけ。……ん? 何方?」
俺が綾乃に声を掛けるのと同時に、私服姿の男性が声を掛けた。
「あ、店長。今日はこれにて失礼します」
店長のようだ。
「えっと、彼はツーリング仲間です。明後日の休みで一緒に走りに行くんですよ」
「そうか。因みに、君は何処から来たんだい?」
「山梨の市川三郷町からです」
こう答えると、店長は一瞬目線を逸らし考える素振りを見せてから、驚きの声を上げる。
「うわぁ……。遠いところからわざわざ来てくれたんだねぇ。可愛い彼女のために……」
…………えっ?
「いやいやいや! そういう関係では無いですよ!」
慌てて否定する。飛躍しすぎ。
「あらら? 違うのか」
「そうですよ店長。彼氏というよりは、お兄ちゃんといった感じですよ」
綾乃も否定した。しかし、それで良いのか?
「そうか、まあいいや。土岐ちゃん、明後日の休みがツーリングか……」
「はい。その予定です」
「……あっ! そうだ。そうだった!」
急に、店長が声を上げる。あまりにも大きな声だったから、店内の視線が集まった。
俺と綾乃は驚いてしまったが、店長は大して気にしていない様子。
「土岐ちゃん。実は俺、シフトミスしててね。3日だけ休みにしていたけどさ、4日も休んでもらって大丈夫だよ」
「えっ? ……すると、あたし三日間休みですか?」
「うん、そういうこと。急で申し訳ないんだけど、宜しくね。だからまあ、楽しんでおいで」
店長に目配せされる。なるほどそういうことか。
シフトミスが、本当なのか建前なのか別として、ツーリングに行く時間をくれた、ってことだろう。
棚から牡丹餅って感じだな。
店長へのお礼も兼ねて、お菓子を買えるだけ買って、綾乃と共に店を出る。
「そんなに沢山お菓子買ってどうするんですか?」
両手に提げたレジ袋を見て、呆れた声でそう言われた。
「休み増やしてくれた店長へのお礼も、って。それに、これを明日行く
「なるほど……!」
あれ? 納得してもらえた?
「それで? 明日は各務原さんの家に行くとして、明後日の予定は決まっているのか?」
「ん~。正直未定ですね。ただ、国一*2の方は混雑すると思うので、山の方へ行こうかな……って考えてます」
山の方か。新城さんの家も、ここから見れば山の方だな。
とはいえ、彼は明後日山梨へ行くわけだから、訪ねて行っても会えない。
「まあ、ゆっくり考えれば良いんじゃないか? 明後日だし」
二人並んで歩いて行く。
「そういえば、お兄さんバイク変えました?」
「いや、変えてないよ。あのトリシティは代車だったんだよ」
「代車?」
「そう。オイル交換に出したら、重要部品の交換が必要だったらしくて。その間の代車が、あのトリシティだったわけ」
そう答えるなり、綾乃がにやける。
「え、つまりその代車がパンクしたってことですよね~?」
「そういうこと。勘弁してくれって話だよ。まあ、そのお陰でこうして綾乃と知り合えたんだから、今となっては感謝だよな」
きっかけなど、些細なものだったりする。
「さて。家に着きましたよ」
「あ、本当だ」
話していたらあっという間だった。
\オカエリー/
書きたい・書こうと思っていること が多すぎて、うまく纏まらない……。
これ、原作だと5話(24話~28話 コミック5巻)で終わっている話が、まだ半分も終わっていない感じです(汗)
まあ、これはすなわち、綾乃の出番が沢山あるわけですから、お楽しみいただけると嬉しいです。