【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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お待たせ致しました。今回は短めです。


先週、京都旅行の話をしたと思いますが、地下鉄の駅で電車を待っていたら、高橋李依さんの声が聞こえてビックリしました。どうやら、何かイベントがある関係で、その予告(?)だったみたいです。

とはいえ、前話を投稿した直後の話で、しかもあとがきで『からかい上手の斉藤さん』とか書いた後だったので、尚ビックリしたという……。

……本編どうぞ。



 朝の演奏

 

目が覚めた。

 

えっと……外はうっすらと明るくなっている。

 

……今は5時か。

 

 

♪~

 

 

ん? 何処からともなく音が聞こえてくる。

 

 

♪~

 

 

これは……トランペット?

 

マジか。

 

今の俺は滅茶苦茶餓えている。なんたってこの数日間、全くトランペットを吹いていないからだ。

 

前に大垣(おおがき)さんが、『部費に困ったら、トラ先輩に演奏会を開いてもらい、入場料を取れば良い』と言っていた。そう言ってもらえるくらいに俺はトランペットが上手いんだ。

 

もちろん、『吹いている人がいる』→『吹かせてもらえる』などと、都合の良いことを考えているわけではない。自分が吹けなくても、生の演奏が聞けるなら何でも構わない。

 

布団から起き上がり、手早く着替えて部屋を出る。綾乃は起きる気配がない。寝かせておこう……。

 

 

 

 

トランペットの音は、家の外から聞こえてきている。

 

スピーカーから聞こえてくる音声だったら……と一瞬思ったが、生音声のようだ。

 

玄関の鍵は開いている。音の主はこの家の住人だろうか?

 

靴を履き、玄関の戸を開く……。

 

「あ、おはようございます」

 

音が止み、代わりにこの声。

 

「ああ。おはようございます……」

 

音の主は玄関先に立っていた。

 

俺に気付いて演奏を止めたらしい。手には白銀の輝きを放つトランペット。

 

「ペット吹いていたの、(なぎ)さんだったんだ……」

 

「私です。あ、ご迷惑でしたか?」

 

表情が少し曇る。

 

「あ、いや大丈夫だけど……。近所迷惑には……ならないんだね」

 

隣の家とは離れている。この距離なら国道を通る車の騒音と変わらないだろう。

 

「はい。むしろ、私の演奏は近所でも評判ですから……。高校に入学した今は寮生活ですから、こうして私が帰省することで演奏が聞けるって、喜ばれたくらいです……」

 

ということは、演奏歴も長いのだろう。

 

「高校って……。今高校生なの?」

 

「はい。高一です」

 

年下かよ。大人しいというか、物静かな感じだったから、年上……大学生辺りだと思ってた。

 

浜松海浜(はままつかいひん)高校*1に通ってます」

 

……。

 

…………。

 

浜松海浜高校?

 

えっ! この辺りでは有名な学校じゃん。

 

今年度から共学になった元女子高。吹奏楽部は東海地区では有名で、全国大会常連の強豪校だ。

 

今年度も当然のように全国大会に出場し、銅だったはず。

 

マジか。それじゃあ相当の実力者なのかな?

 

「演奏、聞かせてもらっても良い?」

 

「えっ? ……私の演奏で良ければ……」

 

少し迷ったらしい。

 

しかし、トランペットを構えて、口を……。

 

 

♪~\

 

 

やっぱそうなるよね……。

 

「止めちゃってごめん。冷えちゃったよね。無理しなくて良いから」

 

俺が演奏を止めてしまった間、ペットが冷えてチューニングが狂ったらしい。

 

「いえ、大丈夫です。もう一回……」

 

 

♪~

 

 

 

朝、俺が起きた時から吹いていた『鳩と少年*2』、『海の見える街*3』『HANABI*4』。この他、曲名は知らない短い曲も数曲。

 

聞いてて思ったのが、上手い ということだ。

 

俺は常々自分の演奏技術を『プロ並みに上手い』と自負しているが、彼女も同じか俺より上。

 

演奏を終えたのか、ペットを下ろしこちらを見る。

 

如何(いかが)でしたか?」

 

「流石」

 

拍手。

 

こんなに凄い演奏を聞かせてもらったんだ、寒さや叩きすぎで手が痛くなろうが構わない。

 

「何て言えば良いんだろう……。上手い(たと)えが見付からないんだけど、とにかく上手かった」

 

「ありがとうございます。中学の頃から毎日欠かさずに練習してましたから。腕には自身あります」

 

欠かさずにって……。

 

「ペットは何時(いつ)から吹いているの?」

 

「小学校入学の頃です。はっきりと何時だったか覚えてはいないんですが……。一個上の親戚のお兄さんに勧められて、そこからずっと……」

 

……。

 

…………?

 

親戚のお兄さん。

 

そういえば、俺も親戚の女の子にトランペットを勧めたことがある。

 

小さかったから、はっきりとしたことは覚えていない。

ただ、互いの名前の漢字が難しくて読めず、俺は純一(じゅんいち)の一から取って『一男(いちお)』と呼ばれていて、彼女は漢字一文字の名前だからと『一子(いちこ)』と呼んでいた。

 

「そのお兄さんが、私に言ったんですよ。『トランペットは最高に格好良い楽器だから、それを最高に格好良く演奏出来る奴は、最高に格好良い』って。何に被れたのか、面白い言い回しでしょう?」

 

 

待て待て待て。

 

俺も同じ台詞言ったぞ?

 

今となっては最高に恥ずかしい臭い台詞。

 

まさかこの子が……? こうなると決定打が欲しい。

 

「凪さん。その親戚の人の名前って覚えてる?」

 

「えっ? ごめんなさい、名前覚えられなくて。小さかったし、その、名前の漢字が難しくて……。あ、でも、そのお兄さんの妹は平仮名なんですよ」

もう一押し!

 

「そのお兄さんのこと。何て呼んでたの?」

 

「えっ? 『一男(いちお)兄ちゃん』って……」

 

やっぱり!

 

「そっか……そうだったんだ」

 

「えっ?」

 

「凪さんが『一子(いちこ)ちゃん』だったんだね。ごめん、思い出せなかった」

 

「えっ? それじゃあ、純一さんが『一男(いちお)兄ちゃん』ってことですか!」

 

繋がった!

 

 

 

 

 

 

「そういうことだったんですね! だからだ。昨日の夜会った時、初めて会うって感じがしなかったのは……」

 

「えっ? 凪さんは分かったの?」

 

「いや。何となくですよ。ってか、『凪さん』はよそよそしいです。親戚なんだから……」

 

「それじゃあ……凪?」

 

「うん! それで良し。私も敬語要らないよね? それに……純兄(じゅんにい)って呼んでも良い?」

 

「構わんけど……」

 

急に饒舌(じょうぜつ)になったな。

 

「凪は何時気付いたの?」

 

「いや、最初会った時に、何となく見覚えあるなぁ……って思ったんだよね。滝野(たきの)という苗字も聞き覚えあったし……」

 

ああ。あの時のあの反応はそういうことだったんだ。

 

「でも、確証無くて。そもそも、お祖父ちゃんの知り合いって聞いていたから、同じくらいの人だと思ってたんだもん。その衝撃が大きくて……。しかも、妹さんの名前『綾乃』だから。人違いかなぁ……って」

 

…………。

 

「凪、綾乃は妹じゃないぞ……」

 

やれやれ……。

 

 

ところで、俺たちってどういう関係なんだろう……?

 

 

*1
※実在しません。なお、モデルにしたのは、浜松聖星高等学校(2016年度まで 浜松海の星高等学校)。

*2
1986年公開の映画 天空の城ラピュタ 挿入歌。もはや説明不要の名曲だろう。

*3
1989年公開の映画 魔女の宅急便 挿入歌

*4
Mr.Childrenの曲。テレビドラマ コード・ブルーードクターヘリ緊急救命ー 主題歌。





オリジナル展開・オリジナル設定 てんこ盛りでお届けしております(滝汗)。滝野だけに滝汗って? そんなつもりはなかったのですが……。

なお、マミさんが『新城さんの息子の嫁』とあるように、滝野はリンちゃん含め志摩家や新城さんとは血縁関係はありませんので、予め記しておきます。
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