あらすじに前から存在していながら該当話が無い『◇』のお話です。
独自設定てんこ盛り でお送りします。向こうの原作と矛盾する点が多数見受けられると思いますが、そこは目を瞑って頂けるとありがたいです。
※本話中の会話は、全て 京都弁 で行われているものとします。※
吉川:久し振り。今大丈夫?
滝野:構わんよ。どうした?
吉川:どの辺りにいるの?
滝野 :どの辺りって……山梨だけど
吉川:普段、友だちに説明するような表現で良いから
滝野 :?
滝野:学校出たところ
滝野:それが何か?
吉川:今すぐ甲斐常葉駅に行きなさい
吉川:大至急よ
滝野:なんで?
吉川:行けば分かるわ
という連絡を受け、言われた通り
部活を終えて帰路についたばかりで良かった。引き返すにしても、距離が長いと面倒だし、時間も掛かる。
というより、部活のために学校へ来ていて良かった。これが家にいた場合、30分以上掛かるからだ。
ものの数分で駅に到着したのだが…………なんで?
「なんでお前がこんなところに居るんだよ!」
思わず叫んでしまった。回りに誰も居なくて良かった(目の前の一人を除いて)。
「ご挨拶ね。私がここに居たらダメなの?」
さも、当たり前のようにそう言い放ったのは、北宇治高校吹奏楽部でほんの一時期一緒に過ごした仲間……ライバル? で、今は吹奏楽部の部長を務めている、吉川 優子だ。
肩掛け鞄をさげ、厚手のコートとズボンを着込んでいる。暖かそうな手袋を着用していて、寒さ対策バッチリといったところか。
トレードマークと言うべき頭の大きなリボンは健在で、むしろこちらが本体とも言えるだろう。
しかし、それ
「居たらダメとは言わんけどさぁ。急にどうしたんだ?」
京都に居る筈の人間が何でこんな所へ?
「ちょっと。リボンじゃなく、私の目を見て言いなさいよ!」
「すまん、そっちが本体だと思ってた」
「まあ良いわ。それでね……何と言うか、まあ。会いたくなったの」
「誰に?」
「あんたに」
「誰が?」
「私が。って、これ言わなくても分かるでしょ!」
「急で驚いたけど、まあ、久し振り。元気そうでなにより」
一年半位会っていないが、変わった様子は見られない。
「そっちも元気そうね。頑張ってる?」
「ラインで連絡した通りだよ。それなりにはな。……で、会ったは良いけど、この後どうするんだ? そもそもどうやって来たの?」
「これよ」
そう言い、差し出してきたのは……青春18きっぷ?
今日の日付で山科駅の入鋏印が押されている。既に三回使用されていて、今日が四回目。
つまり、電車を乗り継いで来たってことか。
「
「高坂……? 高坂って、トランペットソロの?」
「そうよ。よく知ってるわね」
「知ってるも何も。コンクールのCDに、手紙添えて送ってきたの吉川だろう!」
そもそも、高校生にしてあの演奏技術を有している。姓が同じだから、
「そうだったわね。それで、高坂から使いかけのこの切符を貰ってね」
おっと。話が脱線していた。
「どうしようか考えていたの。貰ったところで行く先が特にないから。考えてたらふと、あんたの顔が浮かんできたの。それで、明日まで冬休みだから、来たのよ」
なるほど。それで遠路遙々俺を訪ねてきたと。
「それで、俺に会ったは良いけど、この後どうするんだ? もう帰るには遅い時間だろ?」
時計を見る。14:15。
始発で来たとして、この時間。今日中には帰れまい。
「次の富士ゆきに乗れば、今日中に帰れるわ」
マジか! 意外と近いんだな。山梨⇔京都が日帰りで往復できるなんて、流石JR。
まあ、青春18きっぷを利用せずに新幹線に乗れば、もう少し遅い時刻でも帰れるのかもしれないが。
「そうか。じゃあ、気を付け帰れよ」
「帰るわけないじゃない。私があんたの顔見るためだけに、こんなところまで来ると思った?」
「…………。思いません」
「今の間は何? まあ良いわ。今夜は泊めなさい」
泊める?
「誰が?」
「あんたが」
「誰を?」
「私を。って、これ二回目なんだけど!」
俺の家がキャンプ場なのを彼女は知っている。
常備してあるヘルメットを渡し、後ろに乗ってもらって、
因みに、ヘルメットを被ってもらうために、リボンは
リボン無しの吉川を見たことがなかったので、半分冗談で「どちら様ですか」って言ってみたら、思いっきり蹴りを入れられた。間一髪のところで避けたけど……。
「聞かないのね」
ふと、後ろの吉川から声が掛かる。
「聞くって何を?」
「私が来た理由」
「別に。俺から聞いたら嫌らしいだろ。言ってくれるの待つつもりだったさ」
「そう…………」
ん? 何か続けて言ったけど、風に掻き消され聞こえなかった。
「今何か言った?」
風に負けないように、大きな声で言う。
「何でもない」
吉川はさっきから大きな声で聞こえるように言ってくれているから、さっき何か言ったように感じたのは間違いだったか……。
「でね。その理由だけど……って、わざわざ停まらなくても良いんだけど!」
丁度、言いかけたタイミングで停止せざるを得ず、怒られてしまった。
「悪い。信号だよ」
前方には交互通行の信号機。この辺りの道路は、時々落石等で交互通行の規制が敷かれている。
そもそもの交通量が少ないから、信号を置いてない場合もあるけど……。
「あら。ごめん、悪かったわ」
なら良い。
「青になったから動くよ」
「りょーかい」
「なんかね……」
動き出して少しして、吉川がまた口を開く。
「全国大会が終わって三年生が引退して、私が部長になったのね。部長だから今までみたいに過ごすわけにはいかないから……」
今まで通り?
ああ。
あの一年生退部騒動の後、吉川も退部を考えていたのだが、
同時に、彼女の努力が報われて欲しいと願っていたことも。
「時々、喪失感に襲われるのよ。
今はまだ、部活に来ないだけだけど、3月には卒業し、学校からも居なくなってしまう。
「なんか、不安になっちゃって。でも、部員たちにはこんな様を見せるわけにはいかないから、誰に相談しようか、って思ったら、あんたの顔が浮かんできたの」
なるほど。それでわざわざ山梨まで……。
「部長だから、みんなの
「でも!」
「でも、じゃない。それじゃあ水風船だ」
「……どういう意味?」
俺の口から出たある単語に、吉川が首を
「水風船ってさ、水を入れるじゃん?」
「そうね」
「口を縛らない限りは水の出し入れは可能。その『水』を、今吉川が抱えている物だと仮定する。水風船は吉川な。んで、話を戻すが、水風船に水を入れすぎたらどうなる?」
「……割れるわね」
「ああ、割れるな。割れてしまった風船は、二度と元には戻らない。そして、飛び散った水は周りをも濡らす」
「あ……」
俺の言いたいことに気付いたようだな。
「割れる前に口から飛び出した水で濡れた程度なら、まあ、周りは誰も怒りはしないだろう。でも、割れた時に飛び散った水で濡れたら、誰も良い気はしないだろうな。だから、少しは周りを頼れ」
返事はないが、俺の言いたいことは伝わったみたいだ。腰に回されている腕に力が強くなった。
「副部長が中川だっけか? 仲良いんだからさ」
しかし、あの中川が副部長か……。俺の知っている頃の姿からは想像もできん。
「同性相手で言いづらいなら男子だって……。って言っても、俺らの世代だと、残った男子は後藤だけか……」
元々吹奏楽部は男子が少ない。
俺らの学年も決して多くなかったのだが、件の退部騒動と俺の転校で、今は1人しか居ない筈。
「そうね。夏紀に言いづらいことがあったら、後藤に相談するわ」
「それが良いと思うぞ。あ、俺に言ってくれても構わんよ」
「そう? でも、今男子って言ったじゃない。私、あんたを男として意識したことは、一度もないけど……?」
「そりゃどうも」
慣れてますから……。
四尾連湖の入口に到着。
バイクを停車させ、ハンズフリーのまま電話をかける。
「父さん? 今帰ったよ」
『了解。来て良いよ』
「分かった」
確認が取れたので発進。
「今の何?」
やはり。このやり取りを不思議に思ったらしい。
「これから通るから分かると思うけど、この先の道がバカみたいに狭いんだよ。車が鉢合わせたら大変なことになる。だから、車両の有無を確認してから入るんだ」
「うわ。確かに狭いわね」
説明している間に件の場所に差し掛かり、吉川は想像していた通りの反応をする。
「着いたぞ」
ガレージの前に到着。
「…………っ!」
バイクから降りた吉川は、ここから見える湖を見て、言葉を失ったらしい。
「綺麗……」
「この四尾連湖は、流入河川も流出河川も無い。湧水だから綺麗なんだよ」
富士五湖には含まれないが、
「キャンプ場って聞いたけど……」
「湖の対岸のあの辺りがうちのキャンプ場だよ」
そう言いながら、手で大体の場所を示す。
「車が入れないから、利用者は一輪車で湖畔を回って向かうんだ。水場は無いしトイレも汲み取り、お風呂もない」
「不便ね……」
「でも、贔屓にしてくれるお客様は多いんだよ」
お陰様で繁忙期はそれなりに忙しい。
「そういえば、今お風呂無いって言わなかった? 今晩このままとか嫌なんですけど?」
「安心しろ。風呂はある。でなけりゃ俺たちはどうやって暮らしていると思ったんだ?」
「それもそうね……」
この時間から山荘やコテージの準備をしていたら大変なので、俺たちの居住スペースの空き部屋へ通した。
「ありがと」
「夕食出来たら呼ぶから、それまで好きにしてれば良いさ。といっても、暇潰しになることは無いか……」
「良いわよ。疲れちゃったから少し横になるわ」
「長旅ご苦労さん」
始発で出発したと仮定し、あの時間。6~7時間も電車に乗ってたら疲れるだろう。
「そうじゃないわ」
「は?」
「ほら、今日と明日が青春18きっぷが使える最後の休日じゃない? だから、混雑してて大変だったのよ」
ああ。言われてみればそうだった。
「そうか。尚ご苦労様だったな。風呂先にするか? すぐ準備するけど」
「私は後で良いわよ。突然押し掛けちゃったんだから」
「しかしだな……」
男が入った後のお風呂に入るのって、抵抗無いんだろうか?
「まあ……分かった。じゃあまた呼びに来るから……」
「うん」
そう言って戸を閉める。
「優子ちゃん、何かあったの?」
食卓へ入ると、夕食を作っている父から話し掛けられた。
「いや、別に何も。ただ、何となく俺に会いたくなったんだってさ」
「あれ? そういう関係だったっけ?」
「違うけど。まあ、詳しい理由は聞いてないから分からない。ただ、吹部の部長になって色々抱え込んでるらしいよ」
壁のカレンダーを一瞥。
「明後日から学校始まるし、明日には帰ると思う」
「なるほど。まあ、宇治と比べればこの辺りは空気も良いし、リフレッシュにはなるだろう……」
だと良いんだけど……。
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
今年中の完結を目指して頑張ろうと思います。
因みに、私は本作で 映画ゆるキャン△に相当するお話 を執筆する予定はないので、アニメ二期相当分が終われば完結という形になります。なお、その理由については次話のあとがきに記す予定です。