【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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お待たせしました。今回は短いです。

『冬のゆるキャン△まつり』視聴ながら更新しています(笑)



 可児と缶コーヒー

 

放課後。

 

といっても、さっきまで先輩方に会うために屋上に行っていたので、それが終わってからだ。

 

朝の音楽室で、俺が呟いた(なぎ)の名を、可児に聞かれてしまい追及されそうになったが、その直後に予鈴が鳴り、続きは放課後ということであの場は逃げ切った。

 

つまり、これから追及されることになるのだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

可児は先に音楽室へ行っているだろうから、職員室へは寄らずに直接向かう。

 

『音楽室』

 

扉をノックする。

 

…………。

 

返事がない。まだ来ていないのだろうか? 否。彼女に限ってそれは有り得ない。

 

もう一度ノックする。

 

………………。

 

「どうぞ」

 

ようやく返事が来た。

 

って、この声……。

 

「失礼します」

 

そう言いながら扉を開く。

 

「先輩、遅いですよ!」

 

むすっとした表情で、どちらかといえば怒っている可児。

 

「お疲れ様っす……」

 

さっきの声の主であり、何故返事させられたか分からず、戸惑っている感じの大垣さん。

 

「やっぱり大垣さん来てたんだ……」

 

ゆっくり扉を閉める。

 

「かにミソに呼ばれて……」

 

呼んだ?

 

「まあ、丁度良いか。お土産渡せるし」

 

持ってきていたお土産を渡す。

 

「あ、サンキューです」

 

「その中に野クル部三人分入ってるから、一つづつ持ってって」

 

「了解っす!」

 

「それじゃあ」

 

俺が渡したお土産を持って出て行く大垣さんを見送る。この間、可児は特に何も言わずにこの様を眺めていた。

 

「さてと」

 

可児の方へ向き直る。

 

「朝の続きだっけか?」

 

黙っていても何も言う気配がないので、此方(こちら)から切り出す。

 

「はい……。でもその前に」

 

……?

 

「何処行っていたんですか?」

 

「ここ来る前か。水谷(みずたに)先輩に会いに屋上に」

 

「ああ! 先輩お元気でしたか?」

 

「変わらず。元気だったよ……」

 

「それは良かったです。それで、改めまして」

 

そう言って可児は姿勢を正した。

 

「先日は姉を助けていただいてありがとうございました」

 

そして頭を下げた。

 

「いや、別に良いよ。お姉さんからも礼言われたし、ああいうときはお互い様というか、助けられるならそうするべきだし……。別に、大したことはしてないから」

 

(まく)し立てるようにこう返した。

 

まあ、俺の思いは言った通りだけど、実は可児が素直に頭を下げたのが過去に例がなく、ちょっと怖いというのもある。

 

「先輩がそう言うならそれで構いませんが、姉にとっては大したことだったらしいです。トラブル……と言うほどのことではなかったらしいですが、ああいった経験は初めてだったみたいで……」

 

この様子だと、可児は姉が遭遇した事態を知らないらしいな。

 

「これ、姉からです」

 

「ん? ありがとう」

 

差し出されたのは缶コーヒーだ。お、まだ暖かい。

 

さしづめ、お金を渡されて『コーヒーでも買ってあげて』と言われたのだろう。

 

それなら、ついでに可児の分のお土産も渡してしまおう。

 

「俺からはこれをあげよう。野クル部のメンバーと同じやつだけど」

 

「ありがとうございます。何処のお土産ですか?」

 

そう聞きながら早速袋の中身を取り出している。

 

「『細寒天』は恵那市山岡の名物で、『うなぎパイ』はまあ、説明不要だよな……」

 

「そうですね! ありがとうございます」

 

そう言い袋に戻し、机へと置く。

 

「可児は冬休み中はどうしてた?」

 

「私は、年末は家でゴロゴロしてました。姉が帰省していたので、近所をバイクの後ろに乗せて貰って走ったりはしましたけど」

 

そうか。お姉さん、一度こっちへ来ていたのか。

 

「バイトがあるとかで、年明けてすぐに戻っちゃいましたけどね」

 

それで俺たちと遭遇したって訳だな。

 

「新年は、テレビ見て、近所散歩して、宿題片付けていたらあっという間でしたね。先輩は?」

 

ちゃんと宿題片付けたか。偉いねぇ。

 

「俺は年末は郵便局のアルバイトして、そのあと浜松行って、綾乃……野クル部の各務原(かがみはら)さんの幼馴染みの子な。彼女とツーリング行ったよ」

 

「ああ。なでちゃんの……。クリキャンの時に話だけ沢山聞きましたよ」

 

そう言ってから、少し考える素振りを見せて、続ける。

 

「なでちゃんから話だけは聞いているんですけど……。姉が会ったのもその子ですよね?」

 

「ああ。あの時も一緒だったけど。それが?」

 

「姉は『お汁粉を擬人化したような人』って言ってましたが、イマイチイメージ出来ないんですよね……」

 

『お汁粉の擬人化』か……。まあ、あの時は一言二言しか交わしてなかった筈だし、立ち姿だけ見たらそんな感じに見えるのだろうか……?

 

 

 

 

ふと、可児が時計を見た。

 

「おっと。話したいことはまだ沢山ありますけど、時間も勿体ないですし、練習始めましょうか」

 

おや。冬休みの話はこれで終わりらしい。

 

「よし。それじゃあ、来る来月の定演に向けまして……」

 

可児が楽器の準備を始めたので、それに続く。

 

因みに『定演』とはその名の通り定期演奏会のこと。

 

サークルとして活動する以上、『なにもせずに勝手に練習・演奏』しているだけでは駄目で、『何でも良いから何かやれ』という学校の指示のもと、2月末に放課後体育館を借りて演奏会をすることにしている。

 

因みに、去年も同時期に行ったが、奏者は俺一人、聴衆は水谷先輩とその知人数人だけ、という有り様だった。

 

とはいえ、開催実績さえあれば良かったから、大した宣伝はしなかったから、当然だろう。

 

 

まあ、今年は可児がいるから前回同様、とはいかないだろうが……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

そういえば、大垣さんって何のためにここに来ていたんだろうか?

 

ついでだと思ってお土産渡してそのまま返してしまったけど……。

 

 

 

あ。あと、何か話忘れている気がするんだけどなあ……?

 

 

 





今作は『よみあげ』機能を意識せずに執筆しています。ルビ振りも適当な範囲で抑えています。それ故、読み違いが……ね?

今回、新しい よみあげキャラ が登場したので、久々に使ってみたら、読み違いが多くて多くて……。
もっとルビ振りしておくべきだったなぁ。って思ってます。

『四尾連湖』の読み方には笑ってしまいましたけどね……。

なお、現時点では特に対策は講じておりません。気になる方はお知らせください。可能な限り対応します。
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