【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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※サブタイトル は、後程変更します※

といったものの、正直今話にぴったりのサブタイトルが浮かびません……。
どなたか、良いタイトル考えてみませんか?



野クル部と吹奏楽サークル それぞれの……
 (仮)繋ぎの回


 

「もしもし、父さん。帰ったよ」

 

『お帰り。今出ていく車はないから入れるよ』

 

「了解」

 

電話を切り、バイクを発進させる。

 

電話口の父の声は、機嫌が良いのか何処(どこ)か上擦った感じだった。

 

 

 

ガレージにバイクを入れ、ビーノの顔色を窺いつつ戸を閉める

 

…………。

 

大丈夫らしい。

 

 

 

家に入ろうと思ったが、テラスの方から何やら笑い声が聞こえてきたので、そっちへ行ってみる。

 

「おお! 純一(じゅんいち)くん!」

 

俺の名を呼ぶ声。

 

「ああ、飯田(いいだ)さん」

 

「純一くん、お久し振りです」

 

「お帰り」

 

テラスには、伊東市(いとうし)で酒屋を経営している飯田さんと、その娘の美晴(みはる)さんが居て、俺の父と酒を飲み交わしていた。

 

「お久し振りです。あれ、今日泊まっていくんですか?」

 

宿泊予約はなかったと思うんだけど。

 

「いんや。今日はデイキャンプだに」

 

「飲んでるじゃないですか……」

 

「美晴は飲んどらんから、帰りは運転してもらうでよ~」

 

「はい。私がハンドルキーパーです」

 

なるほど。良く見れば彼女は酒ではなさそうだ。

 

「再来週、水上飛行機同好会のメンバーで集まって、山中湖で飛ばす予定でよ。打合せに来たついでで寄ったんだわ」

 

そういえばそんな話をしていたっけ。

 

飯田さんは水上飛行機の同好会に参加していて、山中湖や河口湖で飛ばしていたのだが、富士山が世界遺産に登録されて以降、河口湖がラジコン飛行禁止となり、新たな場所を求めていた所で、四尾連湖(しびれこ)を見付けたらしい。

 

それで半年に一回ぐらい、うちに飛ばしに来ている。といっても、他のキャンパーの迷惑にならないよう、うちと隣のキャンプ場とも予約がゼロの日にしか来ないけど……。

 

「所で、何飲まれてるんですか?」

 

「あ、純一くんはダメだよ~」

 

「いやいや。俺は飲みませんよ」

 

「これはね、池池っちゅー酒なんだわ」

 

『純米原酒 池池』一升瓶にはそう書かれている。

 

「伊豆高原で育てた米で作られた日本酒です。限定生産ですから、購入されるならお早めに……」

 

なるほど。

 

まあ、俺は酒の話はさっぱりだし、買うにしてもそれを決めるのは父やスタッフさんで、俺ではない。

 

大垣さんなら、酒屋でバイトしているし、多少は酒にも詳しいと思うけど……。

 

「そんじゃあ、私らはそろそろ帰るわ」

 

「おお。今日はありがとう」

 

飯田さんが椅子から立ち上がり父にそう告げると、父も立ち上がる。

 

「伊東へお越しの際は是非、うちの店に寄ってください」

 

美晴さんが俺にそう言う。

 

伊東か。地味に遠いなぁ……。

 

って、浜松に行って400㎞、そこまで行く往復340㎞をバイクで走り回った人が言う台詞ではないか。

 

それに、俺に対してこう言ったってことは、知ってて言ったな……。

 

「それじゃあ」

 

「お気を付けて」

 

帰って行く飯田さん親子を、こちらも親子で見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新学期が始まって数日が経った。

 

お正月、綾乃(あやの)とツーリングに行ったときは、たった数日があんなに長く感じられたのに、やっぱり月日はあっという間に過ぎてゆく……。

 

放課後、部活に行こうと教室を出たところで、スマホが震えた。

 

 

 

可児:先輩、急用に付、本日部活は欠席致します

 

可児:埋め合わせが必要なら、明日の朝お願いします

 

 

 

……。

 

…………?

 

いつになく畏まった文面だな……。

 

そう思いながらも承知した旨メッセージを送り、スマホを仕舞おうとしたら、再び震える。

 

今度は父からだ。

 

 

 

 父:学校帰り、身延のカリブーに行って欲しい

 

純一:身延店?

 

純一:珍しいね。どうしたの?

 

 父:甲府店の海津さんから。注文した商品の在庫が無く、身延店から融通するらしい

 

純一:急ぐ?

 

 父:部活後でも良いけど、忘れないように

 

純一:了解

 

 

 

身延のカリブーに行く用事ができた。

 

うちが贔屓(ひいき)にしている。というか、普段取引しているのは甲府のカリブーなので、久しく行っていないが、彼処(あそこ)のスタッフにも一応顔は利く。

 

急ぎではないみたいだけど、可児が休みだし音楽室行っても俺一人だろうから、このまま向かおうか……。

 

 

 

 

校舎を出て、駐輪場へ。

 

\マッテタヨ/

 

今日はビーノだ。

 

このところ、ビーノとトリシティには交互に乗っている。だからか機嫌は良い。

 

鍵を解錠し、俺が乗車の準備を整え、跨がり、エンジンを始動させる。

 

「いざ、身延へ」

 

\マカセトケ!/

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました~!」

 

用件を終え、カリブーを出た。

 

受け取った物(といっても、OD缶だ)をリアのボックスへ入れる。

 

さて帰ろう……と思ったが、ここまで来て手ぶらで帰るのもつまらない。折角身延へ来たんだ。身延まんじゅう でも買って行こう。

 

歩いて行けない距離ではないので、ビーノをカリブーの駐車場に停めたまま、歩いて向かう。

 

身延の街並み。所謂(いわゆる)『しょうにん通り商店街』だ。

 

「純一く~ん!」

 

歩いていると、何処からか名前を呼ばれる。

 

声がした方を見ると……。

 

「あ。店長!」

 

俺は今『手打ちそば藤本』の店の前に差し掛かっているんだけど、声の主はそこの店長だった。

 

「久し振りだねぇ。どうしたの? こんなところで会うなんて、珍しいね」

 

この店長との初対面は……。何時(いつ)だったっけ?

 

ああ。俺が住んでいた下宿の主人がこの人の母親で、月に二回ぐらい、夕食をここの天丼やお蕎麦の出前にしてくれたんだっけ。その配達の時だ。

 

「お久し振りです。お母さん、お元気ですか?」

 

「元気だよ。あの人からそれ取り上げたら何が残るの?」

 

「確かに。えっと、俺はカリブー寄ったところです。うちの取引先の甲府店が在庫切れで、身延店に融通してもらったので、それを取りに来たんです。で、折角ここまで来たんだから、身延まんじゅう買おうかと思って」

 

「おお、それは良いね」

 

ふと、店長の手にある紙が目に入る。

 

「店長、その紙は……?」

 

「ああ。求人だよ」

 

『パート・アルバイト募集中』と書かれている。『高校生OK』とも。

 

「長いこと勤めてくれたパートさんが辞めちゃってね。夕方が人手不足なんだよ」

 

そうなのか。

 

でも、この辺りの高校生も働ける求人はあまり多くないので、競争率が高い。わりとすぐに見付かるだろう……。

 

「あら? 滝野くん」

 

ふと、俺の名を呼ぶ、店長とは別の声が聞こえてきた。

 

「桜さん」

 

見慣れた車が止まっていて、そこから降りたであろう各務原(かがみはら)さんのお姉さん、桜さんがいた。

 

「こんなところでどうし……? ん?」

 

俺にそう話し掛けながらこちらへ歩いてきたのだが、店長の持つ紙へ視線が向き、表情が険しくなった。

 

あ。こんな表情でも怒っているわけではない。各務原さんなら表情を読めるらしいけど……。

 

「それは……?」

 

店長にそう尋ねる。

 

「求人広告。興味あるの?」

 

「はい。でも、私ではなくて、私の妹がね」

 

ああ。各務原さんに紹介するのか。

 

「妹さんが? 高校生ですか?」

 

「はい。彼の一つ後輩です」

 

二人で話していたのだが、揃って俺の方を見た。いやね、こっち見なくて良いですよ?

 

「滝野くん、その子どんな子?」

 

俺に聞かないでください。家族が居るのに。

 

「店長、川本*1の副店長から聞いてません?」

 

「ああ! 彼が言ってた子か!」

 

誰か分かったようだ。納得して頭上に『!』を浮かべる店長の横で、『?』を浮かべる桜さん。

 

「商売人の情報網、舐めたらアカンよ。妹さんのこと、あちこちに知れ渡ってます。もちろん、良い意味で」

 

「そ、そうなのね……」

 

若干引き気味。

 

「面接したいんだけど、日取りは何時が良いかな?」

 

「その件なんですが、折角ですから一芝居打とうかと思いまして。もう開店ですか?」

 

「うん? すぐ開けるよ」

 

「分かりました。では、妹に連絡しますね」

 

 

 

 

 

このあと、桜さんが各務原さんに打った芝居の内容を、俺は知らない。

 

ただ、身延まんじゅうを買って、富士川を眺めながら食べていたところ、わき目も振らず(もちろん、俺の存在にも気付かず)、一目散に藤本へ走って行く各務原さんの姿は確認できた。

 

 

 

*1
酒の川本。千明のバイト先であり、年末年始に なでしこ も働いた。

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