【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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本文の最後、空行が続いているように見えますが、空行ではありません。そのヒントは上述の通りです。

まあ、いわゆる メタ発言 ですので、無視していただいても差し支えありません。



 純一、凪、ミク

 

「失礼します。吹奏楽サークル滝野(たきの)です。音楽室の鍵を……」

 

「滝野、それなら可児(かに)が持って行ってるぞ」

 

土曜日の午後。登校して職員室に行けば、いつもと同じやり取りが繰り広げられる。

 

今日は可児が用事があると言って、午前中の部活を無しにして、代わりに午後にしたんだ。

 

だから、家で昼食を済ませてからやって来た。

 

大町(おおまち)先生は今日も仕事ですか?」

 

「ああ。急ぎで片付けたいものがあってね。朝方は他にも何人か居たんだが、今残ってるのは先生と鳥羽(とば)先生だな」

 

そう言って向いた方を俺も見る。

 

鳥羽先生が自分の机で電話していた。

 

今室内にいるのは、大町先生と鳥羽先生だけらしい……。

 

「大町先生」

 

丁度、そのタイミングで鳥羽先生が顔を上げた。

 

「甲府一高の林先生が、大町先生ともお話したいそうです」

 

「分かりました」

 

大町先生が自分の机に近い電話を取ると、鳥羽先生は受話器を置いた。

 

「滝野くん、部活ご苦労様です」

 

電話を終えた鳥羽先生が俺に声掛けてくる。

 

「鳥羽先生もお仕事お疲れ様です。先生も急ぎの仕事ですか?」

 

大町先生がそうだと言っていたから、此方(こちら)もそうなんだろう。

 

「ええ。私もこう見えて忙しいんですよ?」

 

そう、真顔で返された。

 

しかし、酔った姿を知っている側からして、あまり説得力はないが。

 

「鳥羽先生。俺別に先生が暇な人だな……とか思ってるわけじゃありませんよ? 仕事を頑張っているからこそ、晩酌が美味しいんじゃないですか?」

 

「うっ……」

 

何も言えなくなったらしい。

 

「では。かく言う俺とて暇ではありませんから、これにて失礼します。あまり可児を待たせると、後が面倒なので……」

 

「そ、そうですね。それでは部活頑張ってくださいね」

 

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

職員室を出る。

 

 

 

 

音楽室へ向けて廊下を歩いて行くと、何処(どこ)からともなく楽器の音が聞こえてくる。これはトランペットだ。

 

しかも、『鳩と少年』じゃないか。俺の十八番(おはこ)

 

しかし、俺の演奏と比べれば下手だ。吹いているのは可児だろう。

 

ん? 次は聞いたことの無い曲だな。

 

おっと。音楽室の前で聞き惚れてしまった。さっさと入ってしまおう。

 

ノックする。

 

「どうぞ」

 

許可を得て入室。

 

「失礼します」

 

「先輩、待ってましたよ」

 

おお。普段なら『遅いですよ!』とか言われそうな状況だが、自分の都合で部活を午後にしたからか、可児が大人しい。

 

「お待たせ。職員室で先生方に捕まってた」

 

「先生方って……。先輩、何かしたんですか?」

 

「俺は別に何もしなくたって、職員室で先生方に捕まるのは日常茶飯事だろう……」

 

「そうでしたね」

 

分かってもらえた。全然嬉しくないんだが。

 

「そういえば、今トランペット吹いてたの、可児だろう?」

 

「そうですよ」

 

可児が立っている横の机に、トランペットが置いてある。その横には俺のトランペットケースが。準備してくれたらしい。

 

「何吹いてたの?」

 

「え~! 先輩曲名知らないんですか?」

 

『何故知らない?』みたいな言い方だな……。それなら俺も。

 

「知らないから聞いた。知ってたら聞かないだろう? 普通」

 

「まあ、確かにそうですよね。『鳩と少年』『宝塚記念ファンファーレ』『関東G1ファンファーレ』ですよ」

 

はい? 素直に教えてくれたのは良かったが、知らない曲だ。

 

ファンファーレ?

 

「な、なんの曲だって?」

 

「ファンファーレ。競馬のファンファーレですよ。『トランペットの格好良い曲』を調べてみたら、見付けたので」

 

なるほど……。

 

「確かに良いな。ところで、定演の曲どうする? 前回は俺一人だからトランペットのソロ曲適当に選んだけど、今年は可児もいるんだし、そうもいかんだろう?」

 

「別に私は何でも良いですよ。先輩に合わせますから。トランペット吹けって言うならそうしますし、フルートでもチューバでも、何でも」

 

これが可児の凄いところだよなぁ。まあ、どれも中途半端だけど。あ、ユーフォを除いて。

 

「あ~!」

 

突然、可児が絶叫した。

 

「な、なんだいきなり」

 

心臓が三秒くらい止まったんだが。

 

真面目な話、死なない限り心臓が止まることはないんだけど、それくらいの驚きだった。

 

「思い出した。今まで何で忘れていたんでしょう」

 

「何を?」

 

「先輩、『(なぎ)』って誰ですか!」

 

今更?

 

「忘れていたなら、忘れたままで良かっただろ? 何故思い出すんだよ!」

 

「仕方ないでしょう。思い出してしまったんですから」

 

「なら、忘れろ」

 

「そう言われると、尚忘れられませんよ」

 

はあ~。溜め息一つ。

 

下手に誤魔化すとかえって不自然だし、怪しまれる。

 

面倒な話になる前に、簡潔に説明してしまおう。

 

「俺の又従兄妹だよ。図書委員の志摩 リン(しまりん)って子知ってるだろ? 彼女の母方の祖父の、息子さんの娘」

 

「なるほど。……あれ? それじゃあその凪って人、リンちゃんの従姉妹にはなりますが、先輩とは関係あるんですか?」

 

「『又』が付くとややこしいんだよ。俺の母と、凪のお母さんが従姉妹なんだってさ」

 

あ。逃げを打てるようにリンの名前を出したけど、却ってややこしいことになりそうな気が……。

 

「それじゃあ先輩はリンちゃんとも又従兄妹の関係なんですね」

 

気付かれた。

 

「あ、でも。今の話を聞く限りだと、血縁関係は無いんですよね?」

 

「そういうこと」

 

「何で今まで黙っていたんですか! 隠していたんですか?」

 

こいつ嫌だ。いちいちこういうところにうるさいんだよねぇ。

 

これさえ無ければ可愛い後輩なんだけど。まぁ、これが無くなったら 可児 とは言えないんだけどさ。

 

「俺自身も知らなかった。何なら凪や凪のお母さんもな。俺の母は知ってたけど……」

 

縁戚となるとこういうものだろう。

 

「そうですか。なら、もしかしたら私と先輩も実は親戚だったりして?」

 

おいおい。何てことを言い出すんだこの子は。

 

「否定しきれないからやめれ」

 

「……ですね。この話題はもう止めましょうか」

 

練習始めよう。

 

 

 

「というわけで作者さん」

 

「誰だって?」

 

「作者さんですよ。先輩知らないんですか?」

「知らないなぁ。誰だ?」

 

「私と先輩は親戚関係だったりしますか?」

 

「おいおい、誰か教えてくれても良いだろう? ……考えてないんじゃないか?」

 

「まあ、可能性は高いですね……」

 

「言い出したらキリ無いからなぁ……」

 

「それに、先輩は先輩であるから良いんですよ。お兄さんだったら何か……ねぇ?」

 

「どういう意味だよ? まあ、確かに俺も可児が妹ってのは違和感あるからなぁ……。ところで、作者さんって誰だ?」

 

「えっ? 先輩、知ってて言ってると思いましたが?」

 

「まあ……、知ってるよ」

 

「あ、嘘だ」

 

 

 

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