【完結】本栖高校吹奏楽サークル   作:小林司

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本作(本話)に登場する カリブー店員

 揖斐川 早紀絵……身延店の店員。原作では『揖斐川』(姓のみ登場)。

 山川 瑞穂……富士吉田店の店員。原作では名前無し。原作6巻 アニメseason2 5話に登場する人物で、千明のハンモックの相談に応対した人。


山川さん。アニメでの声優さんが、まさかの ぼっちちゃんと同じ人 でした……。



 カリブー富士吉田店と山中湖

 

日曜日の朝。

 

身支度を整えてガレージへ向かう。

 

今日は富士吉田まで行くので、何かあった場合に備え、トリシティで行く。これなら、仮に高速道路や自動車専用道路を使うことになっても大丈夫だからだ。

 

 

 

 

昨日はちょっとした事件が起きたが、事故にはならずに済んで良かった。

 

ある人物が気付いてくれたお陰で大事に至らずに終わったんだけど、その救世主の家の前に差し掛かったら、当人が玄関先に立っていた。

 

「リン……。どうしたの?」

 

リンがスマホ片手に立っている。

 

「先輩、昨日千明(ちあき)たちが山中湖にキャンプに行ったんだけど……。知ってた?」

 

「いや。俺も知らなかったよ」

 

「も?」

 

えっと、何が言いたいんだろう?

 

「リンが鳥羽(とば)先生に連絡したとき、俺ちょうど先生の側に居たんだよ。急に山中湖って言って立ち上がるからびっくりしたさ。そうしたら三人山中湖に居るらしいって聞いて、なおびっくり」

 

そういえば、あのあと連絡ないけど、大丈夫なんだろうか? まあ、鳥羽先生が一緒だしな……。

 

「これ見る?」

 

「どれ?」

 

そう言いながらスマホの画面を見せてくる。

 

 

 

恵那:無事に夜を越せたよ。

   りん、心配してくれてありがとね

 

恵那:【画像】

 

リン:山中湖みやげ

   よろしくな

 

 

 

写真が添付されている。

 

湖畔らしき砂利の場所で、四人が何か囲んでいる。……ワカサギの天ぷらか。キャンプで天ぷらとは頑張るねぇ。

 

まあ、楽しんでいる様子でなにより。

 

「良かった。無事に過ごせたみたいで」

 

「ところで。先輩は何かしたの?」

 

「何かって……。リンから先生に連絡があって、たまたま山中湖に知り合いが居たからさ、俺はただ先生が着くまでの間、助けて欲しいって連絡しただけだよ」

 

そのお陰で三人は無事に朝を迎えられたわけだが、そもそもリンがそのピンチを教えてくれたから、俺が連絡できた。今回の功労者はリンだと思う。

 

「だけって……。その電話一本で全く違う結果になったと思うけど」

 

「そうかな……?」

 

「そうだよ。少なくも私はそう思う」

 

「なら、そういうことにしておこう」

 

「それで、先輩はこれから何処か行くの?」

 

「富士吉田のカリブー。甲府でお世話になっていた人が、転勤でそっちに行ったから。年始の挨拶も兼ねて顔を出そうと思って」

 

年始、といっても既に1月も下旬……。

 

「なるほど。じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

 

あれ?

 

「『一緒に行きませんか?』って言うと思ってた」

 

「……言いたいけど、私のビーノじゃ、トリシティについていけないから、今日は遠慮しとく」

 

「別に良いのに」

 

「その代わり、今度ついてきてもらうから。あの約束、忘れないでよ」

 

あの約束……。揖斐川(いびがわ)の図書委員の件だな。

 

この様子だと、何処まで連れていかれるか、想像つかんな。岐阜? それとも東京……?

 

「分かったよ。じゃあ、行ってきます」

 

「気を付けて」

 

切っていたエンジンを始動させる。

 

上げていたシールドを下ろし、出発。

 

「行ってらっしゃい。……お兄さん!」

 

そう言うリンに手を上げ、見送る。

 

 

……。

 

 

…………えっ? 今何て?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅富士吉田に到着。カリブー富士吉田店は、この道の駅の施設になっている。

 

隣接して富士山レーダードームがあり、富士登山の登山客が必要な物をここで買っていくらしい。

 

入口の自動ドアを潜ると、カリブーくん がお出迎え。

 

カリブーのマスコットみたいなものだが、社員という設定のはずだ。

 

因みに、このカリブーくんは売り物だ。お値段何と360,000円!

 

まあ、この大きさ(等身大)だから妥当な金額だろう。しかし、幾つか売れているというのだから驚きだ。

 

 

 

カリブーくんを通り過ぎ、店内を歩く。

 

今日は特に買うものがあるわけではないので、適当に見て回る。

 

……あれ? 普段なら店内を巡回している店員がいて、声を掛けられる場合もあるんだけど……。

 

仕方ない。

 

「あのー。すいません」

 

「はい?」

 

こうなりゃレジだ。

 

「山川さん、いらっしゃいますか?」

 

「山川さんですね。さしつかえなければ、お客様のお名前を頂戴できますか?」

 

滝野(たきの)と申します。多分それで分かると思いますので」

 

そう告げるとその店員はバックヤードへと引き上げて行く。

 

ん? 今、そこはかとなく笑っていたような……。まさか?

 

そう思いゆっくり後ろを向く。……居た。

 

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

 

「わざとらしいですよ? 探し物……強いて言えば貴方でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

「身延の早紀絵(さきえ)ちゃんから連絡もらってね。来るのを待っていたんですよ。瑞穂(みずほ)ちゃん」

 

そう話すのは、さっきレジで応対してくれた店員だ。ここの店長で、垂井(たるい)さんというらしい。

 

「ええ。ツーリングのことや、家のお手伝いのこととか。色々聞きたかったんですよ。純一(じゅんいち)くんの話は、話し方が上手いからか楽しいのよね」

 

そうかな……?

 

でも、そう言ってくれるのなら、俺に話し得ることを話していこう。

 

因みに、ここは店のバックヤード。山川さんと垂井さんは休憩中だ。部外者であるはずの俺は、客人のようにもてなされている……。

 

 

 

 

クリスマスキャンプ・お正月のツーリング。先日身延店でのプチ騒動(?)を、順に話した。

 

「スクーターで……。瑞穂ちゃんから聞いてたけど、君凄いのね……」

 

やはり、垂井さんは俺がビーノで浜松へ行ったことに驚いていた。

 

「でも良かったですね。割れなくて。揖斐川さんは『彼は持ってる子』だって言ってたけど、そう言う意味なのね」

 

先日の騒動を聞いた山川さんはこう言う。

 

『持ってる』って何だよ?

 

「あれの替えグローブ高いからねぇ。割れてたらその子涙目だよ」

 

まあ、割れなくてもあの状況にビビったのか、少し泣いてた気がする。あ、俺にビビったのか……。

 

「流石にそうなった場合は弁償しますよ……」

 

「高いよ?」

 

「いやいや、その話は今聞きましたよ」

 

「そうじゃなくて」

 

「えっ?」

 

どういうことだ?

 

「聞くところによると、その子が初バイトで買ったものらしいじゃん? それを自己責任とはいえ、買ってすぐに目の前で壊れるんだよ? 私なら一生忘れないわ。まあ、恨むとかそういうんじゃないけど」

 

言われて気付いた。確かにそうだ……。

 

「ですよねぇ……」

 

隣で黙って話を聞いていた山川さんは苦笑いしている。

「山川さん、経験あるんですか?」

 

「ええまあ……」

 

「瑞穂ちゃん、早紀絵ちゃんが初バイトのお給料で買った耐熱グラス、落として割っちゃったのよ」

 

なんと! 山川さんは濁したのに、それを垂井さんがあっさりカミングアウト。

 

落として割った……。それは……ね。

 

「隠したかったのに何で言うんですか!」

 

「別に良いじゃない? 滝野くんしか聞いてないし」

 

「まあ……純一くんになら……」

 

一瞬、怒ったのか声を荒げたのだが、垂井さんが俺の名前を出すと、山川さんは元通り。

 

この二人、どういう関係なんだろう? 店長と部下、だけではない気がする……。

 

 

 

 

 

「それでは。今日はありがとうございました」

 

「それは此方の台詞ですよ。私も楽しかったですし、久し振りに会えて良かったです」

 

「またいつでも来てね」

 

二人に見送られ、バックヤードから出る。

 

さて。そろそろお昼時だし、隣のフードコートで昼食にしよう。

 

その後は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅のフードコートでお昼御飯を食べ、まだ昼過ぎだし、まっすぐ帰ってもつまらないと思い、山中湖一周へ向かう。

 

山中湖を反時計回りで走っていると……。

 

「お。純一く~ん!」

 

通りすがったコンビニの駐車場から名前を呼ばれた。誰だ? といってもあの声は一人しかいないけど。

 

一旦、通り過ぎてから引き返し、駐車場へ入る。

 

「飯田さん!」

 

やっぱり。飯田さんだった。ご主人だけで、美晴さんの姿はない。

 

「どうしたんですか? こんなところで?」

 

「それはこっちの台詞だよ。私らはこれから帰るところだけど」

 

なるほど。

 

「というか、よく俺だって分かりましたね?」

 

「背格好が似てたから。もし違っても、素通りしておしまいだろうから、言ってみたんだよ」

 

……。まあ、確かに。

 

「昨日はありがとうございました。お陰で何事もなく朝を迎えられたようで……」

 

ヘルメットを脱いでから頭を下げる。

 

「なぁに。大したことはしとらんよ。ほっといたら死んでまうでな」

 

笑いながら、何でもないように手を振る飯田さん。

 

「むしろ、一緒に鍋楽しめたでね。お礼言うのはこっちもだよ」

 

「鍋ですか」

 

「うん。私らはもつ鍋、嬢ちゃんらはきりたんぽ鍋だったよ」

 

きりたんぽ鍋。……秋田の方の郷土料理だよな? どうしたんだろう。その辺で売ってるものではないと思うんだけど。

 

「先生もいい呑みっぷりでね。本当に楽しかったよ」

 

「それは……まあ……。良かったです……」

 

酔って迷惑かけてなきゃ良いんだけど。まあ、この様子なら大丈夫だったんだろう。

 

「それで。純一くんはこんな所でどうしたのよ?」

 

「ああ。俺は富士吉田のカリブーに行ってきました」

 

「カリブー……。キャンプ用品の店だね」

 

「はい。前、甲府店に勤務しててお世話になった人が今は富士吉田店にいるので、会ってきました」

 

「それは良かったねぇ」

 

「お父さん、お待たせ……あら?」

 

美晴さんが戻ってきたようだ。

 

「純一くん。お久し振りです」

 

といっても、先週会ってる。

 

「昨日はありがとうございました」

 

再び頭を下げる。

 

「いえいえ。あれくらい大したことありませんよ。困ったときはお互い様です。ね、お父さん」

 

「そうよ。『助け合いの精神が、社会を明るくする』って」

 

「なんですか、それ?」

 

聞いたことがない。まあ、言いたいことは分かる。その通りだから。

 

「忘れたよ。何だっけな。それで、純一くんはこれから帰るんけ?」

 

「はい。まだ時間があるからと思って、山中湖一周して帰ります」

 

「そりゃあ良い」

 

ヘルメットを被る。

 

「では、失礼します」

 

エンジン始動。

 

「おお、気を付けて。また遊びに行くけど、良かったら家にも来てよ?」

 

「お待ちしてます」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

お礼を言って出発。

 

 

 

山中湖を離れ、河口湖や精進湖を見つつ、来た道を戻って帰った。

 

 

 

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