※今話も例のごとく、一部で 文字色を変更する特殊タグ を使用しています。※
お待たせしました。いやあ~、アニメseason3始まりましたね。
なんと、本作品が既に『season3第1話 過去パートの聖地巡礼している』んです……!
書いた本人が一番驚いております(滝汗)。
驚きのあまり、フライング投稿です。
曲の練習
放課後。
本当は部活のために、すぐ音楽室へ行くつもりだったんだけど、
特に用もなく野クル部の部室へ行ってみても誰もいない。みんなバイトがあるのだろう。
そう思って図書室へ行ったら、
「へぇ~。ブランケット先輩、卒業式の指揮やるんですね」
「先輩指揮出来るんですね」
「マジカヨ……」
三人に昼のことを話すとそれぞれこの反応。三者三様で面白い。
面白いのだが、一人失礼なのが混じってませんでした?
「出来るよ。一応、吹奏楽サークルの部長なんだし」
10年以上音楽に関わってきたのだから、これぐらいは問題ない。
まあ、ピアノ弾けって言われたら断るけどさ。
「それより、三人とも校歌歌えるよな? 流石に」
「もちろんです」
「当たり前じゃないですか」
「どんな歌だっけ?」
おい。そこの人。
「まあ、
入学した頃に音楽の授業で練習するが、各務原さんはそれを受けていないので、大目に見よう。
因みに、この授業を受けていないのは俺も同じだ。
「二人はちゃんと知ってるようで良かったよ。『知りません!』って言われるんじゃないかって」
「あ、でもあきちゃんは覚えてないって言ってましたよ」
やっぱり居たよ!
「恵那ちゃん、それ本当?」
「はい。先日、何の気なしに話していたら、そう言ってました」
なるほどなるほど。
「これはあれだね。今度、
「本当ですか!」
お。目輝かせながら飛び付いてきた。そこまでの話とは思えないけど……。
「でも、そんな暇あるか? みんなバイトあるだろ?」
野クル部の部室が無人で、各務原さんがここにいるってことは、つまりそういうことだろう。
「そうなんですよ! あきちゃんもあおいちゃんもバイトで……」
なんだか寂しそうだ。しかし、以前の『私一人だけバイトが見付からない』時の表情とは違う。
「確かに。でも、なでしこちゃんもバイト見付かって良かったじゃん」
「うん! 楽しい仕事だし、賄いも美味しいんだよ」
「しかし、この辺競争率高いのに良く見付かったな」
リンが突っ込む。これはつまり、リンもそうだったのだろう。
「お姉ちゃんが見付けてくれたんだよ! 求人誌に載せる前の情報だったから、採用してもらえたんだ」
「それは運が良かったね」
「うん! 求人誌広げても、甲府とか山梨市ばっかりだし、身延があっても、フルタイムやドライバーだからねぇ」
ふと、恵那ちゃんと目が合う。
「先輩なら普通二輪の免許あるから、郵便局のバイト、配達も行けますよね?」
おいおい。
「言われたよ。採用面接の時に。断ったけど」
一年目は『土地勘がない』と断り、二年目はそちらは募集が終わっていると逆に断られ……。『来年こそ配達行く?』って最終日の終わりに言われたけど、来年(今年)は受験があるから働けません、って返したら驚かれた。
『家業継ぐんじゃないの!』だってさ。
「そうでしたか……」
「まあ、そんなわけだから、私たち四人で臨時野クル部やらない!?」
各務原さんが唐突に言い放った。
「おっ、いいね! なでしこちゃん!」
「しれっと私を入れるな」
リンは嫌がってるが、恵那ちゃんは乗り気。
なのに、鞄を肩に歩き出す。
「と、思ったけど私も今日は用事あるんだ」
「え~」
恵那ちゃんが図書室を出て行く。
残ったのは、俺、リン、各務原さん。
俺は近くの椅子に座って楽譜を広げる。
二人はカウンターを挟んで向かい合って喋っている。
「それでなでしこ、ソロキャン行くって本気なの?」
ソロ?
「うん! 今週末行こうと思うんだ。バイト休みだから」
「何でまた……」
「ほら、リンちゃんお正月のキャンプの感想、ここで『ソロキャンプはみんなでやるキャンプと全く別のアウトドアだ』って言ってたでしょ?」
それ、俺も奥浜名湖の展望台で聞いたな。
「それ聞いて私もやってみたくなったんだよ」
なるほど。
まあ、俺が綾乃にキャンプを勧めたのも、そもそも各務原さんからキャンプを始めたって話を聞いて興味を持っていたからだ。
人は誰しも他人に影響されることがあるんだな……。
「今日はリンちゃんにソロキャンの始め方をじっくり聞こうと思って」
ソロキャンといえばリンだ。彼女に聞くのが良いだろう。
ん? キャンプ道具を借りたい場合は、俺に言ってくれれば良いんだよ?
「と。その前にトイレ……」
荷物を置いたまま、各務原さんが図書室を出て行く。当然だが、トイレは室内に無い。
結果的に俺とリンだけになる。
「リン?」
今がチャンス。聞いてしまおう。
「昨日のあれ、何だったの?」
「……
又従兄妹か。確かにそうだけど。
「俺は別に気にしないよ。ただ、周りがどう思うか、それは俺に関与できないから……」
女同士というものは怖い。俺たち男子には関与できない部分が山ほどあるのだ……。
「まあ、リンの好きにすれば良いさ」
タメ口だろうと呼び方だろうと。こういうのは自由な方が良い。
「分かった。でも、二人の時だけだよ」
「ほーい」
お。ラインが来た。可児からだろう。
スマホを確認。
「可児から呼び出されたから、音楽室行ってくる」
「了解、頑張って」
音楽室に到着。
ノックして許可を得てから扉を開く。
「オッケー?」
「はい。お待たせしました」
可児がピアノの前に座ったまま返事をした。
「じゃあ、早速始めよう。校歌から?」
「はい」
ピアノと良い位置にある机に楽譜を広げる。譜面台? 別に今はいらない。
構え。手を振りだす。
♪~
曲が終わり、手を止め、降ろす。
「校歌は大丈夫だな?」
「もちろん」
良い返事だ。
「じゃあ次は……」
うん? 誰かが扉をノックしたぞ。
可児と顔を見合わせる。
『誰?』
『知りません。先輩は?』
『俺は知らんよ』
声を出さずとも、アイコンタクトと首振り腕振りで会話が出来る。これ、端から見たらどう思われるだろうか?
「どうぞ?」
あまり待たせても申し訳ないので、誰か心当たりの無いまま返事をした。
「入るよ~」
扉が開くと共にこの声。なんだ、
「あれ? 純一今日は楽器なし? あ! ミクちゃん。久し振り~!」
次々と言われても答えられないんだが……。
「お久し振りです水谷先輩~!」
ピアノの前から立ち上がり、やって行く先輩とハグ。見てる分には微笑ましいのだが、この次に俺にも同じことを要求するんだよなぁ。この人は……。
「どうしたんですか? 急に」
俺とのハグを終え、少し離れた先輩にそう尋ねる。
「いや。別に理由とかは無くてね。たまには顔出そうと思って来たんだよ」
「まあ、先輩がこの部屋に来るのに理由があったことはありませんからね」
「ちょっと! ミクちゃん、それ酷くない? アタシが暇人みたいじゃん」
「違うんですか?」
「違わないけど」
それで良いのか、この人……。
「ところで。二人は何してたの? これは……?」
水谷先輩がピアノの前へ行き、広げられた楽譜を覗き込んだ。
「滝野先輩と私で、卒業式の校歌と卒業生の歌う歌の指揮・伴奏を担当することになりました」
「へぇ~。凄いじゃん!」
「でしょう?」
何故そこで可児が自慢気になるんだよ。
「今はその練習かな? それなら純一が楽器持ってない理由になるし」
「その通りです」
え……。
「水谷先輩、何ですかその目は」
「
「……渋谷先輩」
「う~ん。まあ良いや。今から 旅立ちの日 に練習するんだ?」
「はい。校歌は一回やって確認できましたから」
「アタシ歌うから、やってみてよ」
その目はそういうことですか。イタズラを思い付いたかのような目で見てくるから、何事かと思ったけど。
というか、さらっと名前で呼ばされた……。
「えっ! 先輩歌ってくれるんですか!」
可児は嬉しそうだ。
「分かりました。じゃあ準備してくださいね?」
譜面を広げる。
可児とタイミングを取り、構え。
手を振りおろす。
♪~
えっ? 先輩の歌声はって?
いや、今ここで先輩の歌聞いてもらうと、歌詞掲載になって処理がねぇ……。ってなってしまうので、今回は我慢してください。
~♪
手を止め、降ろす。
歌っているときの真剣な眼差しから一変、おやつをねだる子猫みたいな目に変わる。
「何ですか?」
「楽しいね、純一」
「それは良かったですね……」
棒読み。もうね、この人の相手疲れた。
「ねぇミクちゃん!」
ピアノの方を向く。
「はい」
「アタシ、もっと歌いたい!」
猫みたいだな……。本当に。
「じゃあ、この曲は?」
♪~
そう返しながら、可児がピアノを弾き始める。
……あ。これ『桜ノ雨』*1だ。こちらも卒業式定番の曲。
「オッケー」
歌えるんですね……。
前奏が終わって、先輩が歌い始める。
その後も『旅立ちの時〜Asian Dream Song〜』*2や『旅立ちの日に…』*3といった、卒業式に関係のある曲を可児が弾き、先輩が歌っていた。
先輩の歌声は綺麗で、聞き惚れてしまう。
とはいえ、二人の独壇場と化している。俺、既に用無し?
二人を横目に、黙って退室。そのまま帰路へとついた。
当然ながら、翌朝、黙って帰ったことを可児と水谷先輩に怒られるのだった……。