前回のお話が、ちょっとリアリティーに欠けるなぁ……。と。私も思いましたので、速攻でこのお話を書き上げました。実は今、運転免許合宿で忙しいもので、所々誤字脱字等ありましたらすいません……。
いやあ。こういうときに オリキャラ がいると役立ちますね(汗)。
「リン。そろそろ教えてくれても良いんじゃない?」
この時間だと、他のお客さんは居ないみたい。
「はい、これ」
しかし、リンは私の言うことには答えず、ただタオルを差し出してきた。
「なにこれ?」
広げてみると、大きなバスタオルだ。バスタオルは私も持ってきてるけど……?
「服脱いだらタオルとそれを持っていくよ」
はい?
「浴室にまでバスタオル持っていくの?」
「うん」
服を脱ぎながら、さも当たり前のように返してきた……。
「ここ。その扉の向こうは女性風呂なんだけど、そこから混浴の千人風呂に繋がっているんだ。混浴だから、バスタオル着けて良いんだって」*1
やっぱり。だからバスタオル持って行くのね。
「って、混浴!」
驚いてしまった。
「千人風呂って混浴なんだね……」
「うん。だからバスタオル巻いて入るんだよ」
「リンそれ本気で言ってるの?」
だって、あのリンが。自ら進んで混浴に入るって言ったんだよ! 明日は大雪ですか? ってレベルの話だよ!
私はともかく、リンが! 大丈夫なのかな?
私は……皆様ご存知の通り、あの
ただ、中学校に入ってからは部活が忙しくなって頻度が減ってきたので、今は逆転寸前かもしれません……。
幼い頃は両親と共に車で(祖父だけはバイク)。小学校高学年の頃には両親と祖父がバイクで、私は後ろに乗って出掛けることもあった(勿論、四人で車の場合も)。
幼い頃こそ家族で一部屋だったり大きいテント一つだったのが、次第に男女で部屋やテントが別れ……。
それでも、家族風呂を利用したり、何度か混浴の温泉に入ったこともある。
奥飛騨とか東北とか。昔ながら(?)の秘湯の温泉には、未だに混浴が残っている所が多いみたい。
混浴に私や母のような若い女性が入ると、待機していた
だから、私は混浴に対する抵抗があまり無い。
勿論、他人に
ワニが待機していたら……と思ってしまうが、純兄が一緒だから大丈夫だろう。それに、混浴にワニは付き物だから。
話が戻る。今問題なのは、私とすら一緒にお風呂に入ったことのないリンが混浴に入ろうとしていることだよ……。
「リン。混浴なんて入れるの?」
「そういう凪は大丈夫なの?」
「私は……ほら。ね? まあ、バスタオル着用可なんだから巻けば何とか大丈夫でしょう?」
リンがフッと笑った。
「大丈夫じゃないんだな」
「いやいや。大丈夫だよ? むしろ、最初から分かってたら湯浴み着持ってきたんだけどね!」
「それはまぁ……ごめん」
「別に良いけど。それで、リンは大丈夫なの? 誰かと一緒にお風呂入るの物凄く嫌がってたじゃん」
「私もいつまでも子どもじゃないんだよ。まあ、あちこち小さいままだけどさ……」
ん? なるほどそういうことですか。
体つきにコンプレックスがあったんだろうね。下着姿となった彼女を見ながら、私も服を脱いでゆく。
ぺったんこだなぁ……。リンなら
あ、睨まれた……。考えてたことがバレた?
「お二人さん。そんなところでとろとろしてないで、早く入りませんかねぇ?」
突然、聞き覚えのある声が脱衣所に響く。
「えっ? あ、アヤちゃん?」
振り向くと、タオルで前を隠しながらバスタオルを持った
「やっほ~。来ちゃった」
そういいながら、タオルを持つ手とは逆の手を振っている。
来ちゃった、って……。
アヤちゃんのことは気になるけれど、目の前に温泉があるんだから、そっちが優先だ。話はお風呂でも聞ける。
脱衣所の扉を開くと、そこは女湯。*5
「凄いねぇ。木で造られてるんだ」
「床も湯船も木だね」
「本当だ。これ、硝子以外は全部木かも」
見渡す限り、木造の建物に湯船。他では見たこと無いかも……。いや、青森の
硫黄泉という泉質ゆえ、湯浴み着を着て入ると臭いが落ちなくなると聞いていたし、現地で販売しているもののみ着用可だったので、裸で入りましたよ。混浴といっても衝立あって男の人からは、殆ど見えなかったし。
おっと、話が脱線してたね。
「それじゃあ、準備は良いかな?」
「うん」
「オッケー」
アヤちゃんの問いに、リンと私は返答する。
今私たちは、胸から太股までをバスタオルで巻き、千人風呂(つまり、混浴)に繋がる扉の前に立っている。
「心の準備は良いかなぁ……?」
「い、良いよ」
うん? リンだけでなく、アヤちゃんも声震えてない?
「そう言うアヤちゃんこそ、準備大丈夫なの?」
「だ、大丈夫じゃないよ! 緊張してるに決まってるじゃん? 凪は何で平気そうなのさ!」
珍しくアヤちゃんが声を荒らげる。
「私は何度も混浴入ってるからね。男の人が居るかもしれないけど、それ気にしてたら入れないよ?」
私の指摘が
「私先行こっか?」
そう声を掛けると、無言で頷き鍵を渡される。この鍵が無いと入れないし、オートロックらしく、こちらに戻ることも出来ないらしい。
「さて。では行きますよ?」
後ろの二人に確認しつつ、鍵を開け、扉をゆっくり開く。
「おお」
湯けむりで視界は悪いけど、広いことが分かる。
すぐ右側に窓ガラスと扉。露天風呂みたい。
左側から奥へ、『これが千人風呂ね』って分かる。広くて長い浴槽が続いている。
おっと。お風呂に感動している場合じゃなかったね。どれどれ……。
「誰も居ないよ?」
二人に声掛ける。
「先輩は?」
「純兄すらいない。無人ね」
何処行ったんだろう? って、窓が少し開いてる。
「あ」
露天風呂に、純兄の背中が見えている。
「露天風呂にいるよ、純兄」
「なーんだ」
「まあ、誰もいないなら良し」
状況が分かり、安堵する二人。こっちへ入ってくる。
って、アヤちゃんバスタオル取っちゃうの!?
「誰も居ないんだから良いじゃん。もし見られても減るものじゃないし? むしろ、増えてくれた方が嬉しいし?」
そこ何故疑問形?
というか、別にそのサイズなら増えなくても十分だと思うけどな。リンなんか浴槽の縁に腰掛け羨ましそうな視線送ってるし……。
「泳いで大丈夫なのか?」
「他人に迷惑にならない範囲なら良いんだって」
アヤちゃんは深くてプールみたいな浴槽を泳ぎ始めた。
「自由だな……」
「まあ、良いなら良いんじゃない?」
私はリンの隣に腰掛ける。
「あ、お兄さん以外の人が来たらすぐバスタオル寄越してね~」
自由だよね。本当に。
「純兄は良いの?」
「良いの~!」
何が良いのだろう?
「あはは……」
隣のリンは苦笑い。
「で。どう? 勇気出して入った千人風呂は」
「想像以上だな。来て良かった」
「そっかー。なら良かった」
とはいえ、偶々運良く誰もいなかっただけ、だろうけど。でなきゃ今頃ワニに囲まれていたかもしれない。日頃の行いが良いからだろうね。
……三人のうちの誰かが。全員かな?
「ねえ凪」
「うん?」
「さっき、何度も混浴入ってるって言ってたけど……」
その話が気になるのか。
「東北の方は意外と多いよ。鶴の湯温泉*6とか酸ヶ湯温泉*7とか。酸ヶ湯はここみたいに『千人風呂』って名前だし。あと、伊豆近辺だとここの他に東伊豆町の海沿いにも、混浴露天風呂あるよ。すぐ目の前が海で、波が高いと被りそうなくらい海が近いの」*8*9
「酸ヶ湯温泉は有名だよな。旅番組で見たことあるよ」
「あ……」
そういえば、凄い体験思い出した。
「どうした?」
「いや。酸ヶ湯からそんなに離れてないところにあった野湯にも入ったの」*10
「野湯?」
「囲いも建物も何も無いの。森の中の拓けた所に温泉が湧いてるんだよ」
「マジで!」
「うん。それで、所々に穴が掘ってあってね」
私が体育座りすれば肩まで浸かるくらいの大きさ。
「折角来たんだからって、私だけ入ったんだけどね。みんなに呆れられちゃった」
『度胸あるわね……』と、お母さん。
『血は争えないと聞くが、誰に似たんだ?』は、お父さん。
『流石に私でも野湯には入れない』がお祖父ちゃん。
「それは叔母さんたちの言うことが正しいと思う」
リンまで言うのか……。
「でもね、そこの温泉が鉄分の多い泉質でね、タオルをお湯に付けると赤くなるの」
「マジで!」
「まあ、
「それは……後片付けとか大変そうだけど、入ってみたいかな。でも、その野湯しか無いんだろ?」
フフフ~。
「大丈夫。ちゃんとした入浴施設はあるから」
お湯が赤色だから、浴槽の足元が見えない。お年寄りの利用が多いみたいだったから、入るのとか大変だと思ったね……。*11*12
露天風呂に繋がる扉がゆっくり開く。
「あ、戻って来たよ」
丁度、アヤちゃんはその扉の前に差し掛かっていた。
「どうも……」
恥ずかしいのか、小さな声で呟くリン。
「純兄遅いよ」
別に待ってた訳じゃないけど、そんな言葉が出た。
あ。純兄の顔がみるみる赤くなってゆく。
今後の行程に影響しなきゃ良いんだけど……。
脚注多く、読みづらくてごめんなさい。
なお、私は 奥奥八九郎温泉に入ったことはありません。
しかしながら、本作品に登場している『千人風呂』(酸ヶ湯温泉・河内温泉金谷旅館・上諏訪温泉片倉館)全てに入ったことがあります。