お待たせしております。
前話にて、『来週ここで』と記載しましたが、あとがきに書きます。
では、まずは本編をどうぞ!
爪木崎を出発し、脇道から国道135号線に入る。
恐らく、車組は来るときに一度走ったであろう道だ。それを逆方向に走ってゆく。
国道は海岸を行くので、海が見れる。こちらは相模湾だろう。
まあ、海岸線の崖沿いを進むので、高潮で海水を被りそうな程の距離ではない。だからこそ、海が見れて良いんだよねぇ……。
まあ、こっちは運転中だから景色を楽しむ余裕は無いが……。
「ところで
『んー?』
「いつまで俺の後ろに乗るんだ?」
一応、当初予定では下田で合流後、車に移ることにしてたけど。
『楽しいから。眠くなるまで乗ってるよ』
「つまり、寝たくなったら車に行くのか……」
『
最後のはリンの声だ。
確かに、運転手三人は寝るわけにはいかない。
狡い、そう言ってしまえばそれまで。
だが、逆に捉えれば、無免許の人にとって俺たち免許持ちは、自由に動けて狡いと思われかねない。互いにそこは追求しない方が良いんだけどなぁ。
『お姉ちゃん。車ん中も楽しいで。いつでも来てや!』
「これ、車乗っても寝させてもらえない感じだな……」
『だね』
『
インカムから
「了解です」
『了解』
お。何かでっかい看板が建ってる。
伊豆オレンヂセンター……。オレンジじゃないのか。進行方向左手にあるその施設へ入る。
その際、後方の巻き込みを確認。
どちらかと言えば、ドライブインというより、お土産屋だ。
一杯飲んだら3年長生き!
ウルトラ生ジュース
どうやら、これが名物らしい。
それをみんなで頂いたり、お土産も購入。先生、みかんワインを買ってご機嫌な様だけど、お酒は夜まで我慢ですよ?
『そろそろ見えてきますよ』
オレンヂセンターで休憩しつつ、爪木崎から走ること30分。細野高原に到着したらしい。
『先生、目的地の三筋山はまだ先ですよ?』
あれ?
『細野高原はまだ先ですが、その前にキャンプ場があるんですよ。あ、ほら』
先生の言う通り、森の中を縫うように走る道路の両脇には、ツリーハウスのコテージが幾つか並んでいる。
『ここキャンプ場なんだ』
『ホントだぁ。林間キャンプ場だねぇ』
『こっちにもキャンプ場があったんやなぁ』
「ん? ヤギだ」
木にヤギが繋がれている。ここで飼われているのか。
『あ、見えて来たよ』
林の間を抜ける。
『ふおおおーっ! 凄いよ、何か凄いよここ!』
細野高原はススキの群生地として有名らしい。
さっきの爪木崎が水仙の群生地として有名だ。
しかし、ススキが10月から11月。水仙が12月から1月がシーズン。つまり、どちらも時期外れだ。
『あおいちゃん。ここに車置いて登るん? むっちゃ遠いで?』
『大丈夫。上にも駐車場あるみたいやで』
『リンちゃん、ブランケット先輩、聞こえてました?』
「ああ。上にも駐車場あるんだってね」
『分かった』
アスファルトではなくコンクリート舗装の道路を進んで行く。*1
山頂に一番近い駐車場へ至る道は、うちの入口に匹敵する狭さだ。対向車が来たらすれ違いは不可能。
加えてそこそこ急な上り坂。
『先生』
『大垣さん、どうしました?』
『先生って普段、車は軽ですよね』
『ええ』
車内の会話、言いたいことが分かったぞ。
『この車でこんな道入って大丈夫なんすか?』
『……っ!』
おいおい。この様子だとあまりよろしくなさそう。
『これ、前から車来たら避けれなくないですか?』
…………。
『皆さん、来ないように祈ってください』
神頼みかよ。
「祈ってどうにかなりますか?」
『先輩、そういう現実的な話は……』
「だったら、俺がリンを先行させて、対向車が行きそうなら、待ってもらう方が、よっぽどマシかと……」
『『あっ!』』
今になって気付いたようだ。
『帰りはそうしましょうね……』
まあ、無事に辿り着けたわけだが。
駐車場に車・バイクを止める。これ以上は車両で進めない。
階段があり、徒歩十五分で辿り着けるとのこと。
「15分ならプチ登山だね」
「うむ」
車組のメンバーはずっと座りっぱなしだったため、軽く準備体操をしている。
俺もそれに
「お兄ちゃん、バイクどうやった?」
あかりちゃんが俺の傍までやって来た。
「慣れない道走るのは大変やけど、やっぱり楽しいで」
「ほぇ~。せや、お兄ちゃんも一緒に頂上まで競争せん?」
「えっ?」
競争って、走るってことか。
「なでしこちゃんもな!」
「お。良いねえ! 受けて立つよ!」
「何々、純兄走るの?」
「凪まで喰い付くなよ」
凪まで!
「ちょっと待ったぁ! その勝負、あたしもやってやんよ!」
「大垣さんまでも?」
何だかんだで話が大きくなり、
「因みに、最下位はみんなにジュース奢りな?」
スタート直前に、あかりちゃんがとんでもないことを言い放つ。これ、本人が負けたら一番悲惨な奴じゃん?
「なあ、アキ大丈夫なん?」
「大丈夫だって」
犬山さんの心配を余所に、大垣さんは自信があるらしい。
笛吹公園のあの坂でバテた大垣さんだ。犬山さんのその心配は俺にも分かる。でも、本人が大丈夫だと言うんだから、大丈夫なんだろう。
否、たぶんダメだ。
「よーい」
スターターを努めるリンの声。
「ドン!」
それを合図に走り出す。
とはいえ、五人横に並んで走れるほどの横幅はない。自然と縦列になる。
先頭は大垣さん。ツインターボみたく大逃げを狙うつもりか?
続いて
「うわっ!」
あと半分、の辺りで前方を走っていたはずの大垣さんが、突如視界から消え去る。
といっても、急に立ち止まった彼女を追い越してしまっただけだけど……。
「ははっ。あんなに……飛ばすからだよ……」
凪が笑っている。というか、走りながらなのに余裕あるなぁ。
今の並びは、
もうすぐゴールだ。見えてきた。
さてと。
二人横に並ぶぐらいの幅はある。ラストスパート。とはいえ、女の子相手に本気を出すのも宜しくない。
この辺りで……。
ゴール。
結果は?
「ブランケット先輩……速いですねぇ……」
息を整えながら、近くのベンチに腰掛ける。
「
はは。もう息落ち着いてる。
「浜名湖を自転車で回って鍛えたのは、伊達じゃないことが改めて分かったよ」
「でしょう?」
お。後の二人がゴールした。
「も~! 二人とも小五相手に大人げないで!」
ゴールしてからその場にひっくり返り、息が整ってから、あかりちゃんのブーイング。
「ライオンはウサギを捕まえる時も本気を出すんです」
自慢気に語る彼女を見て、更に頬を膨らます。
「所で、勝ったのはどっち?」
凪の問いに、俺と
「どっちでした?」
「さて? 俺は同時だったと思うけど」
そう。女の子相手に本気を出すのは良くない。しかし、だからと言って手を抜くのも失礼。
ということで、俺は同着を狙った。
「ほぇ~、同時やったんか。じゃあ、なでしこちゃんの方がおっぱい大きいで、胸の差でなでしこちゃんの勝ちやな」
「それ、男の俺には勝ち目ないだろ……」
それでも構わないけどさ。
「まあまあ。私とブランケット先輩の同着ってことで良いよ。凪さんとあかりちゃんも同着だったよね?」
「うん。お姉ちゃん、ちゃんと手加減してくれたで」
自慢気に胸を張る凪。胸の話をしたからか、しっかり張る……。
結果 ( )
1なでしこ
〃純一
3凪
〃あかり
という感じになった。
……。
「誰か忘れとらんか?」
「何のことや?」
「だよねぇ」
「うん。忘れてないよ」
ベンチに四人並んで腰掛け、他のみんなが来るのを待つ。
「良いところだねぇ」
「そうだね」
「純兄、トランペット吹きたくなってるんじゃない?」
「それは凪も同じだろ?」
「だよね。まあ、明後日までの辛抱だよ」
「明後日……?」
「あれ?
学校の都合で仕方無く、最終日は全ての行程をキャンセル(?)して、学校へ向かう予定だ。
午後からリハーサルの予定だから、朝起きて出発すればじゅうぶん間に合う。
「なんや。じゃあ、お兄ちゃんとお姉ちゃんはカピバラに会えんのやな」
「せやで。まあ、しゃあないやろ」
カピバラにも飯田さんにも会えないが、仕方ない。学校がそう指定してきたんだから。
逆らって定演が中止になろうものなら、サークルを潰されかねん。定演だけじゃ物足りないから、他にも何かしろ、って言う先生が居るからね……。
でも、これなら途中まで綾乃と帰れるかもしれない。
「やっと着いたぁ……」
「みんな、待たせたなぁ」
「お待たせ」
恵那ちゃん、犬山さん、リンが到着。
「あれ? アキちゃんは?」
「途中でくたばってたよ」
くたばってた……。
まあ、状況は容易に想像できる。
しばらく寛いでいたら、ようやく大垣さんが到着。更に遅れて鳥羽先生が到着。
先生は運動不足なのか、暫く膝に手を付いて息を整えていた。
大垣さんは、拾った木の枝を杖代わりにして、今にも倒れそうなお祖父さんのごとくやって来た。
「アキちゃんやっと来たで」
「ホンマやな。ダントツ最下位」
「遅いよ~」
「無茶するからだね」
勝負に参加した人からの講評。……と言えるのか?
「み、皆まで言うな……」
「まぁ。でも、お疲れ様。俺の分はジュース要らないからね」
別に俺はジュース目当てに参加した訳ではない(後から決まった)し、『吹奏楽部は文化部』と思っている奴等への証明の意味もあった。世間はそろそろ運動部・文化部の括りを見直すべきだ。
ん? いや、野クル部にそう思っている人は居ないと思うけどね。
「せ、先輩……!」
「でもアキちゃん、うちら三人にはちゃんと奢ってや」
「……」
納得ずくのようだが、そう決めたのだから、仕方あるまい。
結果 (確定)
1なでしこ
〃純一
3凪
〃あかり
5千明
「へぇー。うっすら見えとったん伊豆諸島やったんか」
「あれが利島で」
「あっちの大きな島が伊豆大島みたいだな」
伊豆大島か。
「あの島は三原山の火山島だな。1986年11月に大きな噴火があって、島民が全員避難したことがあってね」
「ほぇ~。みんな無事やったん?」
「うん。ただね、一部役場職員は残っていたんだけど、その残った人に該当しない人影が、噴火口付近で目撃されててね。『いるはずのない歩く人影が映ってる』って話題になってね~」
あ、
「まあ、実際は避難指示に逆らったカメラマンが隠れてて、その人が映っただけらしいよ」
行方不明扱いされてたとか……。
「まあ、そんなわけであの島自体がジオスポに認定されてるんだよ」
「伊豆大島かぁ……。いつか島キャンも行ってみたいね」
「そうだな」
「志摩リン島根で島キャンプ」
三重県に志摩市がある。『志摩リン志摩で島キャンプ』の方がしっくりくると思うがな……。
「しましましまキャン~」
「くだらねー」
「あははは。風車のある風景って何か良いよね」
「いいよね。風車」
「一家に一本欲しいよね」
「省エネにはなるけど、騒音とか振動とか、大変だと思うぞ」
一番薄着で来ている大垣さんが、一発くしゃみをした。
「日も傾いてきましたし、そろそろ降りましょうか」
「ですね」
「流石に寒くなってきたなぁ」
「そんな薄着で登るからや」
車に乗り、一路黄金崎を目指して走る。
『そういえば今日、まだキャンプっぽいことって、買い出ししかしてないよね』
『いいのいいの。こんくらいの緩さが野クル部クオリティーってもんよ』
「四月に野クルを立ち上げ、初キャンプが十一月やったもんな」
『あ、あれはテントが届かなかったから、仕方なかったんっすよ……』
『夏キャン用に春に注文して、届いたのが秋やったんで……』
野クル立ち上げメンバーによる釈明。
届くまでそんなに掛かるなんて。見た感じ新品ではなかった*3し、フリマサイトで落としたのかな?
もっと早く俺と知り合っていれば、こんなことにはならなかっただろう……。
まあ、過ぎたことを言っても仕方無い。
この先の行程としては、一旦来た道を下田まで戻り、そこから半島を横断して、東側へ抜け、海岸沿いを北上する感じだ。
山登りで疲れたからか、車内は幾分静かになってきた。
車列の並びは変わっていないが、凪が車に移ったので、俺は一人でバイクに乗っている。
『先生、温泉はどうします?』
『キャンプ場へ行く途中で入っていきましょうか。日帰り入浴オッケーの温泉、調べてもらえますか?』
『分かりました』
先生がそう提案すると、
『……うわぁ~』
『ん? どうしたん? なでしこちゃん』
『温泉、沢山あるんだね……』
『そうですね。伊豆半島は昔海底火山だった関係で、温泉が多いんですよ』
『なるほどなぁ。この道沿いだけでも、すげー数だぞ。こりゃ温泉地獄だな』
大垣さんがしれっと面白いことを言う。地獄かぁ。絶妙な
『何言うとんのアキちゃん。温泉地獄やのうて温泉天国やんかー』
『そうだよー』
しかし、それに何人かは反論する。
『いやいや、温泉地獄だ。何処の温泉にするか決めかねている間に、全ての温泉の営業時間が終わり、結局入れなくなる地獄。だ』
ほれ。
恐らく、恵那ちゃんと犬山さんも同じことを思っただろう。山中湖でこういう考えからあの事件を起こしてしまったのだから。
「俺とリンが湯冷めするから、出来るだけ近いところにしてくれよ」
『分かりました!』
念のため、釘を刺しておいた。言わなくてもそれを考慮してくれるとは思うけどね。
極力、隊列を崩さぬように走っているが、信号のタイミングで、どうしても前との間が開いてしまう。
『あおいちゃん。後ろ、お兄ちゃん居らんくなった!』
『えっ? あ、ホンマや。リンちゃんしか居らんな』
こうなる。
「大丈夫だよ。ちゃんと追い掛けてるから」
みんな心配してくれる。有り難いねぇ。
「いざとなったら、これがあるから大丈夫だよ。それより、入る温泉、そろそろ決めて欲しいな」
『迷ってるんですよぉ~』
「いやいや。泣かなくて良いからね?」
温泉が決まらないが、行先は分かっている。
もし迷子になっても、場所を決めて合流すれば良い。
無理して違反したり事故を起こすよりかマシだろう。
そもそも、修善寺まで一人旅だったし、最初に戻ったような感じ……。
『ここはどうなん?』
『日帰りはやってないんやって』
『駄目やなぁ』
でもないか。
半島を横断して西側へ抜ける。
海岸沿いの国道136号線を北上して行く。此方側は駿河湾だろう。
お、西伊豆町に入った。
『恵那ちゃん、ここ良さそうじゃない?』
『うん? どれどれ……。岩壁に突き出した露天風呂で、潮風を感じながら堂ヶ島の海が堪能できます……。良いね』
お。リンの後ろ姿が。ようやく追い付いた。
『でしょ! キャンプ場からも遠くないし』
『堂ヶ島ならあと3キロですね。お二人とも、今の聞こえてましたか?』
温泉がやっと決まったみたいだ。
「堂ヶ島の温泉ですね」
『……分かりました』
今、リンが返事するまで間があったぞ。
「リン大丈夫か?」
『何とか……』
信号で停止して、首が斜めに傾いたんだけど……。
「居眠り運転には気を付けろよ? いざとなったら、ビーノその辺に止めて、車へ避難しろ?」
『車、定員一杯だよ?』
「凪に俺の後ろに戻ってもらう」
『うん? 了解。いつでも言ってね』
『そしたらバイクはどうするのさ?』
「明日回収に戻る」
『お兄さんそれ、本気で言ってる?』
「リンの為を思って言ってるんだぞ? 面倒だろうけど、居眠り運転して事故を起こすより安全だ」
『…………。そうならないように、がんばる』
『クスクス~』
うん? 笑い声が聞こえないか?
『愛されてるね、リンちゃん』
『先輩のこと、お兄さんって言ったよね?』
『お兄さん言ってるの聞くと、本当の兄妹みたいやな』
『ツーリングも楽しそうだよねぇ』
堂ヶ島の温泉に到着。
合流した時に車に預けたお風呂道具を受け取り、中へ入る。
リンは相当眠いらしい。お風呂の中で寝なきゃ良いんだけど……。
受付を済ませ、案内された通りに進んでお風呂へ。
ちょっと複雑だったが、無事にお目当ての露天風呂に辿り着く。
女性陣と別れて脱衣所へ。
おお! 目の前が堂ヶ島の海だ。そろそろ日没で夕日が美しい。
ん? 先客がいるらしい。
「あれ? 純一くん~!」
えっ、聞き覚えのある声なんですけど。
「あ。成田先輩。……と、もしかしてお父さん?」
「どうも。太志の父です」
「純一くんお疲れ~」
お風呂に浸かっていたのは、水谷先輩の彼氏である成田先輩と、成田先輩のお父さんだった。
「じゃあ、卒業旅行って伊豆だったんですね」
「ああ。太志と渋谷ちゃんが卒業旅行に行くって話してて。丁度僕も有給消化で仕事が休みだからね。一緒に行けるけど何処が良い? って」
「そしたらさ。渋谷が『純一が伊豆キャン行くって言ってたから、伊豆行きたい』ってね」
俺が行くからって……。
「今夜は黄金崎のキャンプ場で、明日は下田の金谷旅館に泊まる予定だよ」
えっ! 聞き覚えのある名前しか出なかったんだけど。
「黄金崎って、これから俺たちが行くところです!」
「マジか。こんな偶然、あるんだね……」
驚いた。
だって、予定通りにキャンプ出来ていたら、ここに来ることはなかったし、黄金崎に行く予定もない。
そうしたら、同じ 伊豆にいる のに、会うことはなかっただろう。
これこそ、怪我の功名って奴だ。
「そういえば。成田先輩免許取れましたか?」
免許取れなくても大丈夫と言っていたから、ここに居るってだけでは判断できない。
「勿論。俺も渋谷も無事にね」
それなら良かった。
正直俺には関係の無い話だが、それでもお世話になった先輩の話だ。気になってしまうのは人の性だろう。
「お。そろそろ日没だよ」
「ですね」
「綺麗だなぁ……」
ゆっくり日が沈んでゆく。
バイクで風に当てられて冷えた体をしっかり暖めて、良い頃合いで上がる。
成田先輩は水谷先輩が出るのを待つらしく、露天風呂入口で別れた。
ロビーの自販機コーナーへ行くと、女性陣は既に皆集まっていた。
普通なら男の方が先なんだろうけど、長湯していたから後になってしまったらしい。
「お待たせしました……。あれ?」
なんかお通夜の様な雰囲気なんだけど?
「……何かあった?」
「あ、ブランケット先輩」
「先輩、実は風呂上がりの一杯って先生がビール飲んでしまったんですよ……」
大垣さん、犬山さんが順に、呆れた声でこう言った。
鳥羽先生の方を見ると、やってしまったが故に青ざめているのと、酔いで赤くなったのと合わせて、顔が紫だ……。
「えっと……。キャンプ場までどうやって行くつもりですか?」
この場に運転免許を持っている人間は三人いる。
俺が普通二輪、リンは原付、鳥羽先生が準中型(5t限定)。つまり、車を運転できるのは先生だけだ。その先生が運転不能となってしまった。
「運転代行呼ぶしかありません。各務原さん、ちょっと調べてもらえますか」
普通に考えればそれ一択だろう。…………待てよ? さっきお風呂で!
「先生、俺に考えがあるので、代行呼ぶの待ってもらえますか?」
近隣の代行運転に電話しようとしている各務原さんやリンを止め、俺は再びお風呂へと向かう。
……というわけで、呼んできた。
「皆さん、お待たせ。運転手呼んできましたよ」
そう言って皆の前に戻ると、全員が首を傾げる。……鳥羽先生も含めて。
「先生……。三年生の授業持ってませんでしたっけ?」
俺がこう指摘すると、成田先輩が続く。
「鳥羽先生。成田です。成田 太志」
「ああ。成田くんでしたか。……あ! そういえば、お風呂に先客が居まして、見覚えのある顔だなぁって思ってましたが、あの子。水谷さんじゃないですか!」
気付いてなかったのか……。
「鳥羽先生。お風呂でこの二人に会ったので、事情を説明したら運転してくれるそうです。しかも、行き先は俺たちと同じ、黄金崎キャンプ場です」
「子どもがお世話になりました。成田 太志の父です」
そう言い成田先輩のお父さんが自己紹介をする。
しかし、鳥羽先生は顔が青い。
完全に『やってしまった』という顔だ。
「えっと……本栖高校教員の鳥羽です……。この度はご迷惑お掛けします……」
この様子、完全に酔いもさめてしまっただろう。
とはいえ、この状態では運転できない。
「あれ? 純一じゃん! こんなところで会うなんて奇遇だね! ……って、どうしたのこの空気?」
話が纏まったところで、事情を何も知らない水谷先輩が現れた。
前話の前書きに記載しました通り、先週の今頃は 運転免許合宿 の最後、卒業試験の日でした。
なんの偶然か、今話は 運転免許 の話に触れてましたね。たぶん、偶々です。
ところで、『車で聖地巡礼(執筆前の取材)に行ったって言ってたのに、何故今更免許合宿?』と思われた方もいると思います。
所謂 普通免許 ではないんですよ。私が行っていた免許合宿は別の物でした。
まあ、卒業試験もその後の学科試験も問題なく合格し、晴れて 大型二種免許 を取得しました。これで私も プロドライバー の仲間入りを果たしました。
……と、言ったところでスタートラインに立っただけですがね(汗)。
さて。伊豆キャンは唯一(?)のハプニング回に到達しました。皆様にとって予想外の展開かと思います。次回をお楽しみに……。
今後とも宜しくお願いします。