まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです 作:えくぼ.
風がカーテンを押し、花瓶を撫でていく。
無機質な真っ白な壁に周りを囲まれた病室に一人の少女がいた。
彼女の病気は急に容体の変わるものでもなければ、一度環境を整えておけば安静にするだけのものだ。特に問題もないと見られている彼女の周りには看護師も、医者も親もいない。たった一人、個室で自分の体の具合を確かめる。
ただ、それを寂しがる余裕もなければ、それを気にするような繊細さも随分と前に捨ててきてしまった。
長い黒髪を鬱陶しそうにかきあげた。しかしその指は髪を梳いても絡むことはなく、下まで通り抜けた。髪がふぁさと効果音を立てるようになびく。長すぎる髪を梳く。それはいつからか彼女の癖となっていた。
彼女の名前は暁美ほむら。
時間逆行の魔法に少し失敗し、一週間早い時間に戻ってきてしまったいわゆる魔法少女というやつだ。
グリーフシードは節約し、白い悪魔の誘惑からまどかを守り、できるだけ魔法少女を残してワルプルギスに挑む。
何度も、何度も繰り返したこの作業。一週間すら誤差でしかない。時間が増えたところですることはあまり変わりはない。
眼鏡を取り去り、ベッドから半身を起こした。ペタペタと体を確かめ、そしてその手が胸のところにきたところでため息をついた。
魔法で体を強化しているため、もう入院の必要がない。病弱だった心臓も、悪かった視力さえもが常人となんら変わりない強度となっている。
この体はもう、人間と断言するには随分と頑強なものとなっている。そう、まるでゾンビのように。千切れても、心臓を貫かれても魔力次第で治すことができる。これを人間の体というのにほむらは違和感をおぼえていた。
だから体の検査を受けるのには抵抗があったが、魔法少女の肉体が通常の人間とは変わりないことを経験から知っている。ただ、人間から見てわからない程度に変わらない、というだけだが。検査の結果、問題がないと判断され、あっさりと退院して学校に通うこととなった。
海外で働く親に、だいたいのことを任せられているため、自分で手続きを済ませてしまう。それは愛されていないのではない。自身の高額な治療費を払うために海外で働いているのだ。そう思うとこうしてズルのようなもので治してしまったことに若干、心苦しさを覚えた。
まるで、彼らの努力を無下にしてしまったかのような、そんな心苦しさを。
すぐに転入が決まり、登校することが決まった当日。
校門の前でほむらは何かを思いついたように呟いた。
「そうね……まどかならきっと」
言葉こそまどかという少女を信頼するものであるが、その表情は暗い。ほむらは見てきてしまっているのだ。何度も、大切な少女の絶望と死を。それでも諦めないでここまで来た。ひとえに、彼女の精神力はまどかに依存していると言ってもよかった。
それだけに、これまで同じ時間を繰り返してきた中で、何度もまどか以外を見捨てたことさえある。それについては今更思うところがなかった。
それでも必ず終わらせてみせる、と決意を胸に学校の門をくぐった。今までの作業を作業から思い出に。
新しく、見慣れた一ヶ月。
さあ今回こそは─────
プロローグなので文字数は少なめですが、次からは三倍ぐらいまでには文字数を増やしていきます。
今でこそやや重苦しい雰囲気ですが、もっとライトに軽いノリで進みたいと思います。