まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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事前準備会(作者的視点からだと事前準備回)



ワルプルギスの夜って?

 

 休みの日、マミの家では三人の少女がいた。家主のマミ、そして居候の杏子とゆまだった。

 一人暮らしの寂しさを紛らわすためか、それともそういった趣味がもともとあったのか。マミはお菓子作りと紅茶を好み、よくお茶会のようなものをしていた。何を隠そう、まどかとさやかが最初にここに来た時も、マミにケーキと紅茶を御馳走してもらったのだ。

 身寄りのないゆまは本来ならば、役所などの公的機関に届け出て、しかるべき施設に面倒を見てもらうことが正しい。しかしそれをすれば、ゆまの魔法少女生命は絶たれ、ソウルジェムの浄化もままならないことをゆまは自覚していた。

 もともとゆまは両親の虐待によって、まともに学校には通えていなかった。現在はマミが基本的な勉強を教えている。そして正式にではないがマミが杏子とゆまの保護者、とでもいう形になるのだろうか。

 

「暁美さんに家に来てほしいと言われたけど何かしら……?」

 

 杏子は手作りのケーキを頬張っている。ほっぺが少し膨らんでいる。子供っぽい彼女はどこか小動物的な可愛さがある。

 

「いいのかよマミ。こんなおいしいお菓子もらって」

 

 マミの疑問を気にするでもなく杏子はマイペースにお菓子へのお礼を述べた。居候なのだから最低限の電気に水、食事さえ与えられればいいと思っていた杏子は甘いものが食べられて満足そうだ。

 

 ゆまがカップを口につける。年齢に似合わぬ優雅さである。ゆまはここで暮らすようになってから、生来の聡明さに磨きがかかっている。

 

「マミさんの紅茶はおいしいね」

 

「いいのよ。貴女達が喜んでくれたら私も嬉しいわ」

 

 マミも自分だけ目の前で食べて見せびらかすなどと性格の悪いことをして楽しいわけではない。

 食べる時はみんな仲良く。それが一番だ。

 

「美味しいという感覚はわからないけどね」

 

 キュゥべえが尻尾をくるんと振って言った。いつもどこか皮肉っぽいというか、余計な一言を足す生物だ。それこそ感情が理解できないと言われるからであるが、それは同時に空気が読めないと同義であった。

 

「じゃあ飲むのやめなさいよ」

 

 マミは当然、気分を害して紅茶とケーキを取り上げようとした。キュゥべえのしたことを考えれば、それらが与えられていたことに驚きである。

 

「え? いや別に飲みたくないとかマズイとかじゃないから」

 

「だいたい貴方よくあれだけのことをしていてのうのうと家に居候したまま必要もないお菓子を食べたりできるわね」

 

「い、いや。体の調子とか成長のない僕たちにとって食事はエネルギー補給で、最近魔女化が起こらないせいで僕へのエネルギー補給が滞ってるんだよ。だからせめて糖分ぐらいは取らないと……」

 

 なんだかんだ言って紅茶を飲み続けるキュゥべえ。杏子が少し睨むが意にも介さない。ほむらが見れば、あれ?この白豚に感情なんてものがあったかしら?と首をかしげていたことだろう。

 

「マミさんは優しいね」

 

 ゆまの言葉の裏には多くの意味が込められていた。

 マミはキュゥべえの所業について、ゆまやキリカのようにどうでもいいか、杏子やまどかのように割り切るか、ほむらのように憎む、そのどれも中途半端にしかできない。

 たとえどんな理由があっても、されたことは許せるものではなく、しかしキュゥべえがいなければこうして自分は生きる喜びも、正義の味方としての誇りもなかった。命の恩人(?)であり、そして孤独を癒してくれたのも事実だった。

 ゆえに、許すことはできず、憎みきることもできないでいた。

 

「そろそろ暁美さんの家に行く?」

 

「そーだな」

 

 三人はマミの家をあとにした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 杏子たちはほむらの家の近くで二人の少女と出会った。

 つい先日、ほむらとまどかの紹介で仲間になった魔法少女、美国織莉子と呉キリカだった。

 杏子は二人を見つけると声をかけた。

 

「あ、お前ら」

 

「貴方たちも暁美さんに?」

 

 マミは自分たちが呼ばれたのだから、彼女たちもまた呼ばれたのだろうという自然な成り行きに行き着く。

 

「ええ。ここよね」

 

 ほむらの家は未来予知の応用でわかるとは言え、来るのは初めてなのだ。

 

「私としては織莉子との時間を遮られて不愉快なんだけどね」

 

 相変わらずの織莉子馬鹿具合には慣れてしまい誰もツッコまない。

 

「みんなで集まってなにするんだろう?」

 

「嫌な予感はするんだけどな」

 

 家の二階の窓からほむらが顔を出した。隣には既にまどかがおり、二人して上から五人を眺めている。

 

「あら、あなたたちもう来てくれてたの。中に入って」

 

 五人は一人暮らしにしてはやや広い家を見て少し驚いていた。

 本来は家族がいるはずの家なので、大きいのは当然である。

 

「今日集まってもらった理由を言う前に、少し話すことがあるの。気づいてる人も聞いた人もいるでしょうけど」

 

 ほむらはまどかと目配せしたあと、五人の顔を見て言った。

 

「まず私の過去から話そうと思うの」

 

 まだ正確には語っていなかった過去を。

 

 

 

 ◇

 やけに天井の高い部屋へと通され、机を七人で囲んでいる。

 

「全部知ってるのは私だけなのかな?」

 

「そうね。私の魔法は……」

 

 ほむらの過去が他の魔法少女に知られることとなった。

 紅茶も少し冷めてしまいキュゥべえもその話に耳を傾けている。

 実はさやかには既に話しているのだが、彼女は魔法少女ではないのでここには呼んでいない。

 

 ほむらは自分の過去を話した。

 仲間でいる以上、いつかは話さなければならないことであるし、これを話すことがこれから話すことを信じてもらうための布石でもある。

 

「と言うことなの」

 

「へぇそれなら君の存在に説明がつくね」

 

 キュゥべえはほむらをずっと警戒していた。

 確かに自分たちの技術が使われているのに、自分たちが使った記録がないのだ。

 暁美ほむらという結果だけがそこにあるというのは、感情のないキュゥべえにも何か恐怖のようなものを抱かせていた。

 ようやく知ったその真実に、魔法少女は理を覆す存在、まどかを知ってしまえば今更、そんなことではなんともないと言ってのけた。

 

「ミステリアスな魔法少女、その過去にこんな悲劇があったなんて」

 

 マミは多少のめり込むところがある。ロマンチックな話や切ない話に入れ込む、そんなところが残念な先輩と言われるのだが、年頃の女の子だもの、ちょっとぐらい幻想に憧れたっていいじゃない。

 

「納得したよ」

「そうでしょうね」

 

 事情を知るには裏があると予想のついていた二人は軽く返した。杏子はまどかの願いを予想した時、同時にほむらの願いもきっとまどか絡みなんだろうという予想をしてあた。織莉子は予知で多少は知っていた。

 

「まあほむらお姉ちゃんやまどかお姉ちゃんが困ってるならがんばるよ?」

 

「織莉子が困ってるならなら手伝うさ」

 

 よくわかっていないがブレない二人。この二人はいつでも魔法少女関連になると精神力の強さがいつも高い。何のまよいも見られない。

 

(この子達、今までのループで仲間にできれば良かったのに)

 

 何故今まで黄色や青色の豆腐メンタルどもを仲間にしてきたのかと少し残念に思ったほむら。ことあるごとに自暴自棄になる二人はどうにも魔女化を食い止めるのが大変だった。

 

(まどかと杏子は別だけど)

 

 どの過去でも精神力が強く、話がわかり協力的で他の魔法少女との関係もよくなる可能性が高い杏子はほむらの良きパートナー的存在だった。

 

 まどかは別格だが。

 

「とりあえず君の無駄なほどのまどかへの執着の理由はわかったよ」

 

 心を読んだのか、まどか愛について馬鹿にしたように言うキュゥべえにほむらは怒った。

 

「黙りなさい」

 

 ほむらは呼吸をするようにキュゥべえを銃で撃った。

 過去の中で何度も、何度も撃ち抜いてきたのだ。

 キュゥべえのしたことを思えば誰も責めることはできない。

 

「やめてよね。代わりがきくからといって無限ではないんだから」

 

 すぐに替えの肉体が現れる。そして飛び散った肉体をむしゃむしゃと食べてしまい、後には何も残らなかった。自分で自分の死体を処理する様子はいつ見てもシュールにしてホラーである。

 

 ゆまがおぞましいものを見るような顔になっている。

 

「よしよし。怖くない怖くない」

 

 杏子に撫でられて安心した顔に戻る。今は杏子の膝の上に座っている。

 

「で、本題だけど」

 

 そうだ。ただ昔話をするために呼んだわけではないのだ。

 

 

 七人に緊張感が走る。

 いつになく真面目な顔のほむらは今ばかりはまどかを抱きしめることもない。

 バン、と机に手をついて彼女は六人に向けて宣言した。

 

「ここに一週間後、ワルプルギスの夜が来るわ」

 

 ヨーロッパで春にあるお祭りの由来で国中の魔女達が集まる大規模な夜祭ではない。

 だいたいそれは4月30日から5月1日であるし、来るものでもない。

 

「なんで……って何回も繰り返してんだよな」

 

 杏子はほむらに情報の出処を聞こうとしてすぐに思い当たる。

 そう、これを信じてもらうためだけにほむらは自身の過去を晒すことを決意したのだ。

 

「そうよ、統計の結果」

 

 机の上に地図を広げる。その中央に赤で丸が記してある。

 

「ここが出現予測範囲よ」

 

「確かものすごく強い魔女よね」

 

 ワルプルギスの夜とは超弩級にして災害レベルと言われる最悪の魔女にして災厄の魔女の呼び名である。

 一度現れれば、国さえ滅ぶと言われた魔女だが、現代文明は優れたものでワルプルギスが現れてもせいぜい一つの町や市が滅ぶだけだ。

 といって見過ごせるものではない。

 

「倒すだけならなんとかなるんですけど」

「今のまどかなら余裕でしょうね」

 

 市街地への被害を考えているのだ。

 何も考えず倒すだけなら、まどかは無傷で、かつ楽に倒すことができるだろう。

 

「確かにまどかのやつが本気を出すと町どころの話じゃねえな」

 

 実際に戦った相手だからこそそのエネルギーの馬鹿でかさを知っている。杏子は二度と受けたくないと思っている。

 

「結局倒さなきゃここら一帯が滅ぶんだから全力で倒せばいいじゃないか」

 

 キュゥべえは言外に、魔法少女である君たちは無事なんだから、とエゴの塊の様な意見をぶつけてくる。

 

「そこのマスコットもどきは無視無視」

 

「でね、みんなの住むこの場所を守る為に手伝ってほしいなって」

 

「任せなさい、正義の守護魔法少女になって見せるわよ!」

 

(この残念な先輩、誰か黙らせてくれないかしら)

 

「ええとそうじゃなくってマミさん」

 

 まどかはマミに慎重に頼んだ。

 建築物を守るのではなくて、もっと大切なものを守ってほしい、と。

 

「建物には私が防御魔法をかけるから、人を避難させたりとかでお手伝いしてほしいんです」

 

「ああ、そういうこと」

 

 こころなしか残念そうに見えるのはきっと気のせい。

 

(あ……でも人しれずみんなを避難させて護りぬくっていうのもかっこいいじゃない)

 

「避難させるメインは杏子よ」

 

 杏子の幻覚魔法を取り戻してそれで避難させようというのだ。

 杏子が固有魔法を失ったのは、自分の契約への思いを否定したからであった。

 ならばそれを認めれば戻るというのがキュゥべえとほむらの共通の見解だった。

 

「確かに戻りかけているけどさ」

 

「避難させたあと誰も入ってこないように、とかそういったケアをマミさんと織莉子さんに任せるわ」

 

 広範囲に魔法がきき、探査も得意やベテランのマミと、未来予知で応用がきき、冷静な織莉子を組ませる。

 これでかなりのことに対応ができるだろう。

 

「織莉子さんについては避難させ終わり次第私に合流して計画と作戦指揮の手伝いをしてもらうわ」

 

 まどかへの抑止力と守る力を一つにしておく。

 キュゥべえはさすがにここでワルプルギス討伐の協力を拒むことはなかった。

 おかげでテレパシーが通じるので、指揮はぐっと楽になった。

 

「私はどうすれば?」

 

「あなたにはゆまちゃんと共にまどかの側にいてもらうわ」

 

 この中で一番魔力消費の効率が良く、戦闘においては便利な力を持つキリカをまどかのそばに置く。

 

「よろしく、まどか」

 

 これは織莉子がいつでもキリカに指示を出してまどかの魔女化を防ぐことができるようにとまどか自身が頼んだことだった。

 

 そんな歪な信頼関係。

 

「じゃあワルプルギスの夜の特徴を言うわ」

 

 通称"舞台装置の魔女"ワルプルギスの夜の全貌が明らかになっていく。

 

 大きさ、使い魔、攻撃方法。

 

 しかしいつもほむらが戦うときは外から兵器をぶつけるだけで持久戦に持ち込んだことがない。

 本気を出される前に負けているのだ。逆立ちのままで蹂躙されてきた歴史は拭いされるものではない。嫌なことを思い出したとほむらは顔をしかめた。

 

 まどかの場合、願いで強化された魔女化するほどの一撃などによってワルプルギスを葬ってきたのでその真の実力はわからない。

 

 それに今回のまどかは願いによって素質を色々な魔法とソウルジェムの強化に振り分けているので弓自体の強さは今までのループに比べると弱いかもしれない。

 防御魔法まで町にかけながら戦うと多少長引くだろうというのが織莉子、キュゥべえ、ほむら、まどかの共通の予想である。

 

  「だからその間、人が防御結界内に入らないようにしてほしいんです」

 

 五人はそれぞれに承諾した。

 

「ワルプルギスの夜は絶対倒すから」





ワルプルギスの夜「私は巡り、舞台を作り上げる。だけどそれには役者が足りないの。もっと、もっと素晴らしい舞台を!」
キュゥべえ「君はもしかしたら番外編以外にロクな出番がないんじゃない?」
ワルプル「最近空気の貴方に言われたくないわ!」
キュゥべえ「魔法少女たちに馴染んでいると言ってほしいね。まああの子たちから回収するのは絶望的になったけど」
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