まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです 作:えくぼ.
区切り良く切るためにやや短めです。
今もワルプルギスの夜の影響は残っていて、警戒のために人通りはないに等しい。
そんな中でキュゥべえと魔法少女たちだけが一つの場所に集まろうとしていた。
その集まろうとする場所には、一際満身創痍の魔法少女たちがいた。
立ち上がったキリカを見上げるようなゆま、そして仰向けに転がったままのまどか。二人の魔法少女の元へ息を切らしたほむらが到着した。
「まどかは無事?!」
「ほむらちゃん……心配してくれてありがとう。私はここだよ」
声がまともに出せるぐらいには体が元に戻っていた。その回復力さえも、契約の力で既に人の領域を超えていた。契約内容は「最強の魔法少女であり続けること」。それには身体能力や回復力の強化も含まれていたのだ。
「良かった……」
ほむらはそんなことを一切気にせずまどかを起こして力いっぱい抱きしめた。
「それに」
ゆまのほうを振り向く。
ゆまはもう変身を解いていて、武器もしまっている。
「まどかを守ってくれたのね。ありがとう」
まどかとは少し違う風だがゆまのことも抱きしめる。膝をつくかたちで、首に腕を回すように。
「ほむらお姉ちゃん、私は守りたいから守ったんだよ」
まどかは魔法少女としてのゆまに希望を与えてくれたんだよ?と微笑む。
遅れて様子を見にきた織莉子が現れた。
キリカは織莉子に謝った。
「織莉子、ごめんなさい」
「そう……ダメだったのね」
まどかがほむらの腕の中で眠っているのを見てどこか安堵したような表情でポツリと漏らす。責めるような様子は見られなかった。
「私は……」
「いいの!」
申し訳なさそうなキリカに織莉子が泣き顔ですがりついた。それ以上は言わないで、とキリカにだけ聞こえる声で耳元に囁く。
「謝らなければならないのは私なの。私が悪かったの」
キリカを見上げながら続ける。ずっと見て見ぬふりをし続けてきた。その思いを吐露するために。
「今まで酷いこと頼んでごめんなさい。キリカの意思も聞かずにあなたの好意を利用してごめんなさい」
「いいんだ。私は織莉子が悲しんでほしくなかったからっ……けどどうしていいかわからなくなったんだ」
「嘘つきの娘って罵られて、世界の為とか言って頑張ってきたけどもう疲れちゃったの」
汚職議員の娘として辛い思いを味わってきた。にもかかわらず、世界を救おうとする。それは何かを犠牲にしなければならなかった。その中の犠牲の筆頭候補は織莉子とキリカ、彼女ら自身の気持ちであった。
「もうやめちゃえばいいんだ、こんなこと」
投げやりにも聞こえるが、晴れ晴れとした爽やかな声音でキリカが言った。やっと年頃の少女らしさを見れたような気さえする。
「こんな最低な私でよければこれからも仲良くしてほしいんだけど」
言い終えると同時にボロボロと泣き出した。
「もちろんだよ。これからもよろしく」
二人とも泣いていた。
どちらの涙かもわからずにぐしゃぐしゃの顔が向かい合っていた。
ゆまはどうしていいかわからず、空気を読んで黙っていた。
まどかも、ほむらもそれを何か言うことはなかった。
彼女たちは自身の折り合いをここでつけたのだ。
折れやすく曲がりやすい。けれど立ち直るのも早い。若いという強さは生きる希望にとても近しい。
キュゥべえだけが、「わけがわからないよ」と彼女らの矛盾に首を傾げた。
その後はマミが来てまどかを介抱したり杏子が無事なゆまを見てホッとしたりしていた。
その手には巨大なグリーフシードが握られており、ここで使うのはもったいないとまどかが止めたため、まどかが管理することとなった。
最大のソウルジェムと最大のグリーフシード。二つが一同に会するのはなかなか壮観なものだ。きっと男の子ならばワクワクする光景である。
「なにがなんだわからないけど良かったな」
「もう、裏切らないでよね」
杏子とマミはぼんやりとだが何が起こったかを理解したようだ。
彼女たちの様子と満身創痍のまどかを見れば予想もつこうというものである。
「ありがとう」
「もう普通の魔法少女として生きるわ」
普通の魔法少女ってなんだよ、魔法少女って時点で普通じゃないだろ、と言いたいことは多くあるがぐっとその場の全員がこらえた。
織莉子は冗談もあったらしく、スルーされたことはやや不本意であったようだが。
「水をさすようで悪いのだけど」
まどかの為に過去を繰り返した身としては確認せずにはいられなかった。
「あなたたちはまどかのことは諦めてくれたのよね?」
やや語調にきついものが含まれる。
ずっと敵で、裏切られた直後に信じるのは難しい。
それでもまた信じようとするのは、彼女らもまた、自身の信条に従って生きている、という信頼に則ってのことである。
「いいえ」
否定されたことに思わず「えっ?」と声を上げる。
「あれ?やめそうなこといってなかった?」
だが、彼女はこれまでとは全く逆の誓いを、今までの中で一番自然な笑顔で宣言した。
「まどかさんとも友達になること、諦めてなんかないわ」
全く嘘の見られないその言葉に、ほむらは今まで敵であったことが馬鹿らしくなってきた。
「心配して損したわ」
呆れているようでいてそうでない。
ほむらは、これまでのループで懸念していたことが全て片付いたのを感じた。
マミの油断、さやかの失恋、杏子の後追い、まどかの魔法少女化……それに織莉子とキリカというイレギュラーに最大の目標ワルプルギスの夜。
何度も、何度も繰り返した。その繰り返しがようやくこの時間で終わらせられるという確信があった。
「私もこれで安心できるかしら」
自嘲気味でありながら、何かを悟ったような微笑み。
どこか遠くを見ながらほむらは誰にも聞こえないように呟いた。
ワルプルギスの夜編、終結