まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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新章開幕。魔法少女の新たな真実、彼女たちの新たな戦い。敵や味方の入り混じる、魔法少女の物語は平和など迎えない。


初の試み

 

 ワルプルギスの夜を倒し、まどかとほむらも仲直りしたことで、見滝原にはつかの間の平和が訪れていた。

 もちろん、魔女は次から次へと出てくるし、戦いの日々が終わったわけではない。

 ほとんどの人間は魔法少女などというメルヘンな、しかしその実態はドロドロのSFである存在を知らずに生きていく。

 そんな中で魔法少女たちは今日も魔女と戦っていた。

 

 銃弾が、槍が、爪が飛び交う。

 魔女と使い魔の合間を縫うように回復魔法が交差し、次から次へと使い魔が爆散していく。

 最後に特大の攻撃が魔女に当たり、魔女はその結界ごと存在を崩壊させていった。

 

「やった! また倒したよ!」

「チッ敵わねーな」

「本当、すごいわね」

「織莉子もすごかったよ」

「今回も簡単だったねー」

「油断しちゃだめよ、ゆまちゃん」

 

 魔法少女というのはグリーフシードの需要と供給の問題で、あまり多人数で狩りをすることはない。

 だがグリーフシードの問題が解決した以上、共闘するデメリットはほぼなく、彼女らは魔女を見つけ次第できるだけ多人数で狩るようにしている。

 

 だが今回は珍しく全員いる。

 今ここには七人の魔法少女がいる。

 万能、幻惑、予知、遅延、回復、繋縛。

 七人のうち五人はその願いに応じた個性を持つ魔法を使うことができる。

 

 万能と後一人は?というのも、暁美ほむらである。

 

 ほむらは現在、強力な時間停止の魔法を使えない。普通の魔法を使うのでさえ困難だ。

 それは願いに関する魔法に期限があったからである。

 ワルプルギスの夜の襲来の時に彼女は契約し、時間逆行の魔法を手に入れた。時間停止の魔法が使えるのはワルプルギスの夜がくる時までだというのは後からほむらがキュゥべえに聞いた話である。

 

「じゃあみんな、ソウルジェムを出してくれる?」

 

 まどかのその言葉を聞くと、それぞれが自分のソウルジェムをまどかの前に差し出した。

 それぞれの衣装と同じ色の宝石。魔力の消費に伴い、その輝きをくすませている。

 ソウルジェムが壊れれば魔法少女が死ぬという真実を知っている彼女らからすれば、絶対の信頼がなければできない芸当である。

 まどかがみんなのソウルジェムに手をかざす。魔法少女達のソウルジェムが浄化されていく。

 これは七人の恒例となっていた。

 

「これでまた魔法が全力で使えるね」

 

 そんなほむらが魔法少女で在ることができる理由、それがこの少女、鹿目まどかのおかげである。

 

「はい、今回の補充分の弾薬、爆弾ね」

 

「いつもありがとう」

 

 まどかの願いは魔法少女に関するもので、その契約の中にソウルジェムが壊れないということがあった。

 あらゆる魔法を使えて、魔法を使っても穢れない、絶望で濁らない、ソウルジェムを持った最強の魔法少女であるまどか。

 彼女はその魔法でみんなのソウルジェムを浄化するとともにほむらに武器を作ることを提案した。

 

「ほむらさんだけズルい…….」

 

 武器を自由に作れるというのはこの夢見がちな先輩の琴線に触れるものだったらしい。ほむらのことを羨ましそうにいつも見ている。

 

(私だってまどかの贈り物を使い捨てになんてしたくないわよ)

 

 そんなほむらにも使い捨てじゃない武器が一つだけある。まどかとお揃いで色違いの弓矢である。矢はさすがに消費してしまうが、弓は同じデザインのものを使っている。

 

(これは一生の宝物ね)

 

 まどかの弓は桃色だが、ほむらの弓は暗い色の紫だ。ソウルジェムの色に倣ったのだろう。同じ色にすると量産品みたいに見えるからかもしれない。

 

(まどかが作ってくれたのならどんなデザインでも大事にするのだけど)

 

「エヘヘヘ。そんなに気にいってくれたなら嬉しいよほむらちゃん」

 

 ほむらが少しニヤつきながら弓矢を撫でていたのがばれたらしい。

 

「まどかがくれたんだもの。それに色違いだなんて」

 

 ほむらは思わず照れる。

 それを誤魔化すようにそっぽを向いて、そして頬をかいた。杏子もよくやる仕草である。

 

「作りやすかったのがそれだったの」

 

 なんだ深い意味はないのか、と目に見えて落胆するほむらに慌ててまどかがとりなした。

 

「いや、もちろんほむらちゃんにあげるなら一緒の武器がいいなっていうのもあったよ?」

「ありがとう、あなたがいなければ私は戦えなかったわ」

 

 平和じゃないけど絶望もない。

 

 それでいいのだ。ほむらは今、多分幸せなのだと戦いの日常を振り返った。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 まどかのおかげで、グリーフシードを使わなくなっている。

 ならば、と彼女たちはグリーフシードを一つだけ緊急時のために持ち歩き、残りをまどかとほむらに預けるようにしている。

 ほむらは盾の中にしまっており、まどかは腰にくくりつけている。

 

 そんな彼女たちは魔女退治が終わった後は思い思いに過ごしている。

 中でも、杏子とゆまは居候しているマミの家に、織莉子とキリカは自分たちの家に、そしてほむらとまどかは二人でほむらの家に行くことが多い。

 

「ねえ、思ったんだけど」

 

 先日、ワルプルギスの夜から得た巨大なグリーフシードを人差し指と親指でつまみ、転がしながらまどかが言った。

 

「どうしたのかしら」

 

 グリーフシードにはいい思い出がなく、それもまたかつては魔法少女の魂であったことを思うと軽々しくは扱えないほむらであった。

 まどかの仕草を訝しみながら聞き返した。

 

「魔法少女のソウルジェムが絶望で濁ればグリーフシードになって魔女になるんだよね?」

 

「ええ。その時には人間の肉体を捨てて中から魔女が生まれるわ。抜け殻となった人間の体は心臓麻痺などの不審な死を遂げたみたいになるわね」

 

「ふーん」

 

 まどかの返事は興味ない、というよりは何かを考えているような返事であった。

 だが次にまどかが提案したことは、魔法少女の常識をひっくり返すようなものであった。

 

「じゃあさ、逆にグリーフシードを浄化させてしまえばどうなるのかな?」

 

 時間停止の魔法を使ったわけでもないのに二人の時間が止まったようであった。

 

「なんですって?」

 

 ほむらはどう返答していいものか激しく迷った。

 確かに魔女が魔法少女の成れの果てである以上、ただ戦うのではいつか心が磨耗していくのではないかという不安はあった。

 特にマミ、そしてまどかはその心配が強かった。

 杏子やほむらは今更そんなことで悩みもしないし、織莉子やキリカは魔法少女狩りを決行したことがあるぐらいだ。

 だからといってその感覚を基準にゆまやまどか、マミを付き合わせるのはどうかとも思っていたのだ。

 まどかの力があれば、戦わずとも魔法少女のままソウルジェムを濁らせることなく過ごすことができるだろう。

 

 だからこそ悩むのだ。

 

 自分たちは戦う力があるのに、他の人の平和のために戦わないということに罪悪感さえ抱いてしまう。

 本末転倒で、自己犠牲にもほどがあるその考え方は、ほむらがまどかに危うさを感じる部分でもある。

 

 そんなほむらの心の内を読んだかのように、キュゥべえが現れた。

 

「本来はグリーフシードとソウルジェムの間で感情エネルギーをやりとりするときにロスが発生するから効率的な方法とは言えないけどね。だから僕も勧めたことはないし、どうなるかもわからない」

 

 ほむらはそれを支持していいものか激しく迷っている。

 キュゥべえの話を否定するわけではない。自分もまた、過去のループの中でそんなことをしたことがないのだから。

 誰にとっても前代未聞、だが考えれば自然と行き着いてもおかしくはない結論だ。

 

「まどかには関係のないことかもしれないけれど、それをした少女もいたけどその子も魔女になってしまったね」

 

「ええ。そうでしょうね」

 

 しかしもしもそれが可能なのだとしたら、そう考えるとほむらは自分の努力不足を痛感した。

 過去に仲間が魔女化しても、長い時間をかけてグリーフシードを浄化すれば魂だけでも戻ってきたのではないか。死体を魔法で保存すれば、その魂を肉体に戻すこともできたのではないか、と。

 過ぎてしまったことはどうしようもないし、今はこれが最善のように思われるのだから悔やんでも仕方はない。

 ほむらはそうして切り替えることがうまかった。

 カチリと何かのスイッチを入れるようにその思いを心の底にしまいこんでまどかとの話を続けた。

 

「してみても、いい?」

 

「どうして私に聞くのかしら? 貴女は貴女のしたいようにすればいいのよ。ただ──────」

 

「誰彼構わずこの力でソウルジェムを浄化するのはよくない。そう言いたいんだよね?」

 

「気づいていたの?」

 

「うん。私だって本当は全ての人を守りたい、救いたいと思う。けどね、それでほむらちゃんや他のみんなを守れなくなるなら私は心を鬼にしてこの力を隠すよ。だからキュゥべえ、このことを他の魔法少女に話すのはやめてほしいの」

 

「僕たちにとって君の力が広まることは非常に不利益だからね」

 

「約束しなさい。話さないわよね?」

 

「……君は疑り深いなあ。わかったよ。約束しよう」

 

 キュゥべえは嘘はつかない。

 逆に言うと、明言していないことはしてしまう可能性があるということだ。

 たとえこの場で、「不利益になることは話さない」と言っても、それは「まどかの力が知られることが利益になると判断すれば話す」ということになる。

 ほむらはキュゥべえのそういった性質をよく理解していたからこそ、約束を明言させたのだ。

 

「じゃあ、始めていい?」

 

「いいわよ」

 

 言うまでもなく浄化を失敗した時に最も危険なグリーフシードはワルプルギスの夜である。

 幸い、言い方は悪いがまどかのおかげで実験材料(グリーフシード)はいくつもあるのだ。

 ループを繰り返してきたほむらにいたっては、同じグリーフシードがあることもある。

 同じ魂が複数あるなどという事態になれば、さすがにどうしていいかわからないので、ワルプルギスの夜の他に実験するのは一つだけと決めた。

 もしも魔法少女に戻せたとしても、その全てに責任を持てるわけではない。

 と、いうわけで数あるグリーフシードの中から、ワルプルギスの夜ともう一つを選ばなければならない。

 

「どれがいいと思う?」

 

 まどかはこの件についてはほむらにアドバイスをあおぐと決めていた。

 魔法少女についての知識や魔女についての知識はほむらが一番豊富だからである。

 

「どれにしようかしら」

 

 ふと目についたのは因縁のグリーフシードだ。

 

 お菓子の魔女シャルロッテ。

 

 巴マミとの相性が悪く、早い段階で彼女の信頼を得られないと彼女がこの魔女に食い散らかされるという結末が何度もあった。

 

「これはどうかしら」

 

 まどかが最初に倒した魔女であり、こいつならば暴走しても二人で仕留められると思ってのことである。

 

「じゃあこれにしよっか」

 

 まどかとほむらは念のために場所を移そうと、家を出て空き地へと向かうのであった。





さあ、魔女から魔法少女へと還元できるのか。
新たなキャラクターの登場の予感?
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