まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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さあ、叛逆で良い仕事をしていたマミやさやかのパートナー的なあの子の登場です(作者は叛逆を見ていないなどと言えない)



ふかふかの孵化

 

 手に二つのグリーフシードを持って、人の少ない廃工場へと向かう。こういった場所は不良の溜まり場であったり負の感情の掃き溜めで魔女の苗床であったりと治安は二重にも三重にも悪いのだがそれを気にする理由はない。

 

 出てくるのが不良や魔女程度で済むならば随分安いものとさえ言える。

 

 今のまどかに生半可な実力では傷一つつけられないということがわかっている。不良が集団で出てきたからといって、その気配を察知できないほど愚鈍でもない。

 つまりは油断さえしなければまどかに危険な場所などないのだ。

 

「ここでいいかな」

 

 わざわざこんな場所まで来たのは、魔女が穢れを取り除かれたからといって無害だとも限らないからだ。いきなり襲いかかられた時に罪のない人々を巻き込むつもりはない。できるだけ広くて人のいない場所まで来る必要があった。

 ホコリの中に、かすかに油の匂いがする。ここが機能しなくなって随分経つが、染み付いた匂いというものはなかなか取れないらしい。

 

「本当にするのかい?」

 

「もう一度聞くけど、グリーフシードを浄化した場合、どうなるか予想もつかないのね?」

 

「そうだね。ただ一つ言えるとすれば、暴走することはないんじゃないかな」

 

 暴走することはない。

 その言葉から読み取れるのは、もしもグリーフシードの元の魔法少女の人格が現れたからと言って、自分たちの味方になるとも限らないということだ。あくまで感情を失わないだけで、彼女らは彼女らの意思でほむらとまどかを襲うかもしれない。

 結局、警戒することには変わりがないのだが、キュゥべえが嘘を付かない以上、このことに関して隠していることはないと言える。

 

「始めるよ」

 

 今はまどかは制服の上に魔法をかけて強化していた。その制服姿から変身して魔法少女へとなる。変身の基本形態の時の武器は弓矢である。

 まどかは弓を隣に置いて、ほむらの手のひらの上にあるグリーフシードに両手をかざした。

 

 魔法少女のソウルジェムは魂の色に似るという。

 魂の色は髪に出やすい、なら必然的にソウルジェムは髪の色、ということになる。

 だがグリーフシードは大抵が同じ色に染まる。

 漆黒。グリーフシードに溜まった穢れの元は絶望だと言うならば、やはり絶望の色は黒なのだろうか。

 

「止めないのね」

 

「それがもしも成功すれば僕たちに不利になることはあるかもしれないけれど、元々まどかがいるだけで僕たちは損をしているんだ。失敗する可能性があるだけこちらに賭けた方がいいんだよ」

 

 つまりはまどかの失敗狙いであえて止めないのだという。

 それぐらいしないとまどかの排除に繋がらないということでもあろうか。

 

 まどかは今もその銀色の光をグリーフシードに注いでいる。

 浄化よりも何倍も遅い速度でじわじわと黒いもやのようなものがグリーフシードから抜けていく。

 

「できるかな?」

 

「魔法少女の魔法は感情に左右されるわ。願いがエントロピーを凌駕するかさえも、ね。できると思えばできるのよ。かつて偉人が夢を叶えてきたように」

 

「私は自信がないけど、ほむらちゃんが信じてくれるならきっとできる。私を信じるほむらちゃんなら信じられるから」

 

「……本当は無理しないで、できなくてもいいから、そう言いたかったのだけど。貴女のそんな顔を見せられたら頑張れってしか言えないじゃない」

 

「いいんだよ。応援してて」

 

 キュゥべえは未だわからない。

 自身が発明したシステムでありながら、感情に左右されるエネルギー生産システムというものの本質が未だわからない。

 彼女らの言う信頼というものがわからない。

 したこともない取り組みにたいして今までの能力からできるかどうかの確率を冷静に評価する以外何をするというのだろうかと考えている。

 魔法少女というものを理解するにはそういったところから理解しなければならないとわかっていてさえ、自ら精神疾患になるというのが既に不合理だと避けている。

 

 だから。だからキュゥべえの赤い瞳には何もうつらないのだ。

 

 廃工場に柔らかな光が灯る。

 まどかの額にはうっすらと汗が滲んでいた。

 ほむらはそんな真剣な顔のまどかに見惚れていた自分を恥じ、途中から盾から取り出したハンカチでその汗を拭ってやっていた。

 まどかがびっくりしてほむらを見つめると、ほむらは何故か慌てた。

 

「な、何よ。ちゃんと洗うわよ」

 

「ほむらちゃんは何を心配しているの?」

 

 盛大な自爆もまどかには届かなかった。何を?と純真な目で尋ねられれば「なんでもないわ」といつものように答えるしかないのだ。

 

「あ、できたっ!」

 

 グリーフシードだったものから完全に穢れが取り除かれ、元の色である薄紫色に戻っている。

 

「まだよ」

 

 ほむらは今こそが正念場とばかりにグリーフシードを睨みつけている。

 グリーフシードはもぞもぞと動いている。

 そしてまるで卵から雛が孵るように、グリーフシードもといソウルジェムから一つの異形が誕生したのだ。

 出てきたそれは長い袖でまるで汗を拭うような動作とともに奇妙な自己紹介を始めた。

 

「ふー、魔法少女の味方、べべ解放! なんと、その正体は……」

 

 それが言い終わるよりも早く、ほむらがその小さな何かをはたいて黙らせた。

 

「何をするのです! べべが何をしたというのです!」

 

「なんだか別の世界線の私が、事情を知らないままあなたに振り回されておちょくられるような気がしたのよ」

 

「冤罪なのです!」

 

 そう。完全な濡れ衣であった。

 ほむらの勘のみによって刑罰が執行されたという事実にさすがのべべと名乗る謎の存在も抗議せずにはいられなかったようだ。

 

「ねえ、ほむらちゃん……」

 

「ごめんなさい、私としたことが取り乱してしまったわ」

 

 取り乱したで済ませてよいものなのか、だがまどかはほむらのごまかしを追及することなく話を進めることを選んだ。

 

「あなたのお名前は?」

 

「うーん、シャルロッテなのです」

 

「そっちじゃなくって」

 

「ああ! べべを爆散させた人!」

 

「魔法少女が魔女になるってことは知ってるんだよね」

 

「忘れてました。こうですか」

 

 今までシャルロッテをデフォルメしたようなそれは、ぼわんと間抜けな音をたてて変身した。

 その姿は千歳ゆまと変わらないほどの年齢の白い髪の少女であった。

 ピンクに白の模様が入ったスカートをはいている。

 

「あなたの人間としての名前は?」

 

「百江なぎさなのです」

 

「どれぐらい記憶はあるのかしら」

 

「魔女時代の記憶はちょっとしかないのです。怖くないのですか? べべは魔法少女でも魔女ですよ?」

 

 なぎさは不安げに尋ねた。

 まどかはそれに意味深な脅しで返した。

 

「あのね、この世にはもっと怖いものがあるの。魔女ぐらいでいろいろ言うようならこんなことしてないよ」

 

「そうね。でも聞いておくわ。あなたは私たちの敵?」

 

「ち、ちちち違うのです! なぎさは善良で優しく立派な魔法少女を夢見た馬鹿な女の子なのです! 今更熱いバトルなんて求めていないのです! チーズさえ食べられればそれでいいのです!」

 

 後半はただの欲望であったが、彼女の慌てる様は嘘には見えなかった。

 

「じゃあこの子にはチーズで誰かの護衛でも頼む?」

 

「護衛? 誰を?」

 

「あなたの友達で何かと襲われそうな人いるんじゃない?」

 

「うーん、仁美ちゃんとかさやかちゃんとか?」

 

「もう面倒くさいからさやかでいいんじゃないかしら」

 

 二人の雑談になぎさは不穏なものを感じて割って入った。

 

「なんだか厄介払いされている気がするのです」

 

 厄介がなぎさ本人のことなのか、それともさやかの護衛という仕事なのかはわからないが、彼女らの口調からこれをそのまま引き受けるのは問題があるかもしれないと思ったのだ。

 

「大丈夫よ。まだマシな方」

 

「さやかちゃんを悪く言わないの」

 

「それに引き受けたら護衛成功につきチーズを買ってあげるわ。それにさやかと仲良くなればチーズなんて毎日食べれるかもね」

 

「報酬はいらないのです! 引き受けたのです!」

 

 ほむらは思った。

 こいつ、チョロい。と。

 まどかは悪い顔で微笑むほむらに思うところもあるようだが、ほむらのことだ、信じよう、という気持ちが先にきた。

 

 こうして実質まどか、ほむらを筆頭とする見滝原魔法少女連合に、謎の魔法少女らしき何かが加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 だがまだ問題が残っている。

 シャルロッテより何よりも、現れたときの行動も強さも予想がつかない凶悪な魔女、ワルプルギスの夜。

 舞台装置の魔女と呼ばれる特異性の高い魔女だが、それを味方につけられるのであれば大きい。

 だが敵にまわった時は以前よりも苦戦を強いられることだろう。

 力任せに暴れていただけの魔女が、理性と意思を取り戻して、魔法少女の技術を使って相対するのだ、

 まどかとほむら、そして新たに加わったなぎさを加えれば、勝てない魔女などいるはずもない。

 それでもなお、心配させるのが次のグリーフシードである。

 

 そんなものをどうして孵化の逆をしようというのか?

 

 暴走しても倒せるし、暴走しなければ魔女や魔法少女の知識について知れるかもしれないのだ。

 

 欲をかいたと言われればそれまでだ。

 だがこれまでに見ない挑戦は、感情のないキュゥべえにもその結果を知りたいと思わせるような魅力があった。

 まるでエデンの園における知恵の実のように。

 もしもアダムとイブが、リンゴを食べて知恵を得ることで人間という種の先を左右すると知っていたとしたら止めただろうか?

 いや、食べたに違いない。

 

 ほむらとまどかもまた、魅了されていたのだ。

 

 ゴクリと息を飲む音だけが響いた。

 緊張して目を合わせるも、この先に進めるのはまどかしかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルロッテの時と同じ様に浄化をし終えた時、まどかとほむらは清々しい顔をしていた。

 

「くるわよ……」

「どんな子かなあ……?」

 

 ワルプルギスの夜。彼女はどんな魔法少女だったのか、そして何を思い、何を感じていたのだろうか。

 その疑問が解消されれば、ほむらの過去の説明もつくのだろうか。

 二人は待った。グリーフシードがソウルジェムへと逆行するその瞬間を。

 

「君たちは魔法少女の歴史的な場面にいるのかもしれないね。まどか自身が魔法少女の歴史の中でも重大事件と言えるけど」

 

 キュゥべえもまた、それを妨害することはなかった。

 キュゥべえはワルプルギスの夜がどうやってできているのかを知っているはずだが、魔女から魔法少女と若返る──条理の覆る瞬間を見届けたいのだろうか。

 

 二人の前にいたのは長いスカートに傘をさした貴婦人のような格好の魔法少女であった。





 ワルプルギスの夜のキャラの性格について活動報告にて募集いたします。
 候補としては、

1、ツンデレお嬢様
2、落ち着いた上品系
3、テンションと理想の高いはっちゃけた子
4、狂気を感じるビースト系
5、姉御肌

 その他にも魅力ある候補がございましたらご自由にどうぞ。一日経っても何もなければこちらの方で決めて次話を投稿いたしますので。
 返信の方はもしよければ活動報告の方にお願いします。
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