まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです 作:えくぼ.
三人は他のメンバーを集めてそのことを話した。
「私がここにいていいのかな……」
決まりが悪いとばかりにさやかが言った。
そんなさやかを三人がとりなした。
「さやかちゃんを仲間ハズレになんてしないよ!」
「そうだぜさやか。お前も知ってしまった以上、無関係ではいられないんだからな」
「それに、なぎさちゃんは戦力としてカウントしてるんだから」
じゃあいいか、とさやかは話を聞くことを続行した。
「三十もいて、まだ足りないってどういうことかしら。ワルプルギスの夜相手でもそんなに集めないわよ。それに魔法少女はそこまで集団行動をするなんて聞いたことがないわ」
マミとはまた違った形での経験を持つほむらが一番に疑問に思ったのがそこであった。
舞はかつての自分がどう呼ばれているかを知っていて、それをどうこう言うことはなかった。
「それについては僕から話してもいいよ」
白い尻尾を上にピンと立たせたまま、キュゥべえがやってきた。
「聞いてあげてもいいわ」
「相変わらず敵意丸出しだね。近々魔法少女大戦が始まるかもしれないんだよ」
「魔法少女大戦?」
キュゥべえの言葉に一同は首を傾げた。
「数世紀に一度、世界のどこかで大規模に魔法少女たちが争うことになるんだよ。それはまるで運命のようにね。多分修正力とかいうものじゃないかな。宇宙のシステムに不都合ができると、それを是正しようと魔法少女たちを争わせることで魔女化エネルギーを補給するんだよ」
要するに口減らしってわけかい、と杏子は面白くなさそうに吐き捨てた。実際自分たちが家畜のように扱われることが面白くないのだろう。
「馬鹿馬鹿しい。そんなものにどうして私たちが付き合わなければならないのかしら」
「そうだ。あたしたちが他の魔法少女と戦う理由なんて今回みたいにふっかけられなきゃないだろ」
「多分今回の理由は日本全土に渡る縄張り争いじゃないかな」
キュゥべえによると、それは二、三年後にやってくるらしい。
だからのんびりと新人を育成している暇はなく、できるだけ即戦力とグリーフシードを抱えておきたいということなのだろう。
「それは本当かしら。彼女たちが勘違いしているだけとかないのかしら」
「僕はわからないな。あくまで統計的にそういう傾向がある、ってことと、最近魔法少女の数に対して魔女の数が少なく、縄張りに困ってあぶれた子がいるってことしか知らないからね。幾つかの地域ではそうして魔法少女を集めているみたいだね」
今まで黙っていた織莉子が発言した。
「残念ながら本当のことのようね。私の予知は十割ではないけれど、少なくともこのまま何もしなければ、そういった争いが起こる可能性は大きいと私の予知が告げているわ」
「防ぐ手立てがないわけじゃ……ないんだよね」
「未来は変わるわ。例えそれが明日のことであっても。ならずっと先の未来がどうなるかなんて、決まったことではないのよ」
誰よりも未来予知に長けた魔法少女の口から、そういった発言が出るのは珍しいことであった。
「不確定な未来よりも、今は目の前の戦いのことではないのか? 確かに妾の時代にもそういうことあったの。でももしもそうなったとしてもこのメンバーで勝てないなどとは思えん」
舞が言った。まどかに言われて敬語をやめた。代わりに、妾の一人称に相応しく、やや気品とプライドの高そうな言葉遣いとなっている。
「ええ、そうね。聞かせてもらえるかしら」
手紙に書かれているのは、五回の戦いの人数とルールであった。
・この戦いで勝ったチームは、相手側に人権を直接的に損なわない範囲で一つだけ要求をすることができる。チームの吸収合併なども、間接的には戦いで命を落とすが、このルールには触れない。
・同じ人が三回出るのは許されない。
・相手が降参した時点で敗北とみなし、それ以上の攻撃は逆に攻撃した方を敗北とする。
・双方が変身した状態で開始するものとする。
・お互い、その戦闘が始まるまでの攻撃や、始まってからの周囲からの妨害を禁じる。
・一般人を巻き込まない
・以上のルールを守っていれば、どのような魔法であろうと、どのような武器であろうと反則とはみなさない。
・この戦いにおける損失は挑戦した側のこちらが大半を受け持つ。
「ずいぶん紳士的な相手のようね。あなたが戦いを受けたっていうからどんな相手かと心配していたのだけど」
織莉子の言うことはもっともで、そのルールからはさほどかくような裏は見当たらなかった。
損失は補填されなくとも、グリーフシードなど腐るほどにあるのだ。
いらぬお世話ではあるが、それが一般の魔法少女にとって戦いを受けるネックとなるのは常識だ。
「大丈夫だよ、織莉子。どんな相手がこようと倒してしまえばいいのだろう? 殺さなくていいならみんな思いっきりやれるよね」
何人かの魔法少女を手にかけてきた
対人戦の経験においては、マミやほむらにも遅れを取らないのが彼女である。
「問題はこの試合表よね」
同じ人間が出るのは二回まで、と決められた試合表というのが、五回とも同じ人数同士の戦いではないのだ。試合によって出場者が違い、チーム戦と呼べるものもある。
一回戦、一人。
二回戦、二人。
三回戦、三人。
四回戦、四人。
五回戦、一人。
個人の強さとチームとしての強さを競えるようになっている。
「決まりだねっ! この二人っていう枠は私と織莉子がもらうよっ!」
織莉子大好きを表明するキリカが我先にと一番美味しいポジションをとっていった。
二人組で出たいというメンバーは他にいないだろうと特に反対することはなかった。
次の言葉は意外なものであった。
「ねえ、この先鋒は私にいかせてもらえない?」
そう、ほむらが先鋒、しかも一対一の決闘形式に立候補したのだ。
「無茶よ!」
「どうしたんだほむら。お前らしくないじゃないか。冷静さが売りだろ?」
「この闘いは要するに、新人や得体の知れない、または固有魔法の使えない私たちが強力な魔法少女に寄生しているのではないか、っていう難癖でしょう?」
「そ、そこまでは言われてないかなーって」
「新人のまどかやゆまちゃんは確かに強いのはわかっているし、それは舞やなぎさも一緒よ。純粋に魔法少女の戦闘力として弱く考えられるのが固有魔法も使えず、持つものは盾である、私」
「大丈夫だよほむら。しゃくだけど実力は全員認めているから」
ほむらは周囲の必死の説得を歯牙にも掛けない。
「ありがとう。それじゃあダメなの。それなら尚更、私を信じて任せてもらえないかしら」
まどかの作った武器で戦うほむらは確かに周囲から見れば寄生しているかのようにも思われるかもしれない。
だが固有魔法を使えないこと、そして固有魔法に全てを注ぎすぎたせいで微弱な他の魔法を使ってきたことがほむらに特殊な経験を積ませていた。
それを皆が認めているのを知っているから、ほむらはこの中にいること自体についてはなんら引け目を感じてはいないのだ。
「その無礼な人たちに認めさせてあげたいの。私は足手まといなんかじゃないって」
そんなほむらの決意に口を挟めるとすれば……と他の人の目がまどかに向いた。
「それは取りやめることはない?」
「これだけはまどかのお願いでも引けないわ」
「チーム戦で出るっていうのも?」
「そして舞にでも出てもらうのかしら? ダメよ」
一度決めたら退かないのはまどかとよく似ていた。
「約束してほしいの」
「まどか、あなたとの約束なら必ず守ってみせる」
「負けないで、じゃないし、死なないで、でもないよ。勝って。私はほむらちゃんを信じる。だから、余裕で勝って」
まどかにしては珍しく、強く、プレッシャーをかける言い方にほむらは微かに破顔した。
照れたのを隠すようにぷいっと顔を背け、ぶっきらぼうに言った。
「はじめからそのつもりよ」
織莉子、マミはその様子を微笑ましそうに見ていた。
二人の熱い信頼についてはさておき、彼女たちにはまだ決めることが残っていた。
大将……最後の一騎打ちについては文句なしにまどかが出場することが決まった。まどか自身もそれを望んだし、周りも一番適役だと考えた。
「三人のところは……」
「佐倉さんとゆまちゃんと私でどうかしら?」
マミがそのように提案した。
さほど不自然なことはない。三人選んで一番チームワークに優れるとすれば、この三人になるだろう。前衛に杏子、後衛にマミ、補助回復にゆまと攻守のバランスもよくとれている。
「問題は次ね」
「ええ。四人となると、普段四人組で動くことがないから」
「べ、ベベはさやかの護衛があるのです」
「大丈夫よ。無理には参加させないわ。当日は美樹さんと来てもらうけど」
あごに手を当てた杏子が真剣な顔で呟いた。
「やっぱりまどかは入れたいよな」
部屋が少し静かになった。
まどか以外の誰もが候補にこそあげていたものの、言い出しづらかったその選択を言い出した杏子に注目が集まる。
「何を遠慮してんだよ。二回でてもいいって言われてんならまどかに2連勝させりゃいいじゃねえか。勝つためならまどかに頼ることは悪いことではないぞ? 奴らの度肝ぬいてやろうぜ。それに、あたしたちが負けると決まったわけじゃねえしな」
それは確かに正論であった。
だが異論を唱えた少女がいた。
「いえ。まどかは大将戦に温存しておきたいわ」
ほむらはまどかを最終兵器としてとっておく方が大将戦に有利で、チームワークの必要な四人戦ではまどかを出す必要はないと主張した。
「大丈夫だよ。私の強さは特異性じゃないでしょ? 知られたって何も変わらないし、手札は無数にあるんだから」
「あなたの戦闘スタイルや無数に手札があるということがバレるのが問題なのよ」
自分を一番手として矢面に立たせるくせに、まどかのこととなれば急に過保護になるほむら。だが彼女の言うこともあながち間違ってはいない。大将をその直前の戦いで消耗させるなどあってはならない。まどかなら魔力は消耗しないし、傷も体力も魔法で回復できるかもしれないが、精神的な疲労まではなんともできない。
「じゃあまどか、ほむらと共に四人戦に出てもらいたいのじゃ」
舞からの提案はほむらの怒りに油を注いだ。
「舞、話を聴いていたのかしら?」
圧倒的な実力を持つ彼女に対してまでも、一歩も退かない姿勢はいっそ清々しい。
舞は簡単なことじゃ、と続けた。
「妾とそこのなぎさを出せばよい。何もしなくてよい。しいて言うならば妾に巻き込まれぬように防御結界を何重かに張って楽しく観戦でもしておればいい。それなら消耗も少ないのであろう?」
他の魔法少女は一様に言葉を失った。
たった一人で四人を相手にするというのだ。
「まあ保険として三人にはいてもらうが、おそらく出番はないの。妾が出たからには寝っ転がっておっても破片一つ飛んでこさせん」
彼女は時々まどかの対人戦の練習相手になっていた。
まどかの実力が魔法少女の中で群を抜いているという事実と、魔女との戦いにおいて、自分の力を把握したのだろう。
魔女だったころの規格外の出力用こそ衰えるものの、彼女の中に根付いた経験はいささかも衰えがない。
それを知るまどかはほむらよりも彼女の蛮勇とさえ見える自信の理由も悟り、そして自分のことを任せようと思った。
「ほむらちゃんを信じるって言ったのに……舞ちゃんを信じないわけにはいかないよね」
「身に余る光栄」
「かしこまらないでって」
「つい、の」
まどかは舞と対等な仲間でありたいと願い、舞は暗闇からすくいあげてくれたまどかに崇拝に似た感情と忠誠に近い想いを抱いている。
それが二人の会話を時々すれ違いさせる原因であった。
まどかに言われたことを守れるように、とあえてワルプルギスの夜であったころに道化役者の役割を持つ使い魔達にあれやこれやと世話されていたころの尊大な口調に戻している。それも気を抜けばすぐに戻ってしまうのであった。
「ふふふ。一番先輩の私が楽をさせてもらえそうね」
マミはどこか嬉しそうでさえあった。
「マミさんが強いのは認められているんだから、私たち新人勢に活躍の場を、花を持たせてくださいね」
「もちろんよ」
「へっ。よく言うよ。新人の方が強いってのにさ」
これで下手な手出しはされないと、戦いで力を示すことになんら躊躇わない三人。
「まどかに勝利を捧げるのが妾の仕事」
「私は織莉子と一緒にいられるならいくらでも本気を出せるさ」
「私の場合もまどかかしら」
ひたすらにその想い人のために全てを捧げる三人。
「まあ舞が任せろというなら任せるのです!」
「ゆまも役に立つって証明するんだから!」
よくわからないが、とりあえず参加する意思だけはある(?)二人。
こうして九人の配置が決まった。
どうしてシリアスなのにところどころコミカルなのかしら。
展開についてのアンケートは活動報告にて行なっております。もし興味ある方はそちらもどうぞ