まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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模試だの文化祭だので忙しくってやや少なめの投稿になります。
改稿で分量を増やすやもしれませんが、今日はとりあえずこれぐらいで。
また一週間以内に二話ほど投稿するつもりです。


連携、存在証明、遅延

 今まで一歩も動かず補助に回っていた柳が立ち上がって織莉子を見据える。

 二人は完全に勝利を確信した顔であった。

 

「見事に食らったよねー」

 

 生命活動をも停止に近づける固有魔法の空間に飛び込んだキリカはうつ伏せのままだ。

 二人は背後のキリカに目も向けない。

 

「……どうする? もう一人しかいなないし、後衛一人では勝てない」

 

 それは疑問ではなかった。簡潔な降伏勧告。勧めにのらないならば袋叩きに合わせるだけと言わんばかりである。

 そんな二人に織莉子は嘲るように口元に手を当てて嗤った。ハイライトの消えた目に二人は不気味なものを感じて気圧される。

 もう相手は袋のネズミ、なすすべなどないはずなのに。

 

「わかってないわ。私がこれまで補助に回って手を出さなかった理由を、そしてあの子の魔法も」

 

「わかってない? あんな魔法、ある程度の魔法少女なら見ればわかるさ!」

 

「あんなの……ハッタリ」

 

 珠香と柳は武器を構えなおした。

 窮鼠猫を噛むというように、追い詰めたのならば一層注意してかかるべきだと先ほどの戦いや今回の戦いから痛いほどに教えられている。

 しかし織莉子は未来視で一つの光景を目の当たりにして微笑む。

 

「キリカは居場所を求めた。私は存在理由を求めた。そんな私たちは依存し合うようにして生きている。ねえ知らないでしょう? 一人で屋敷の中で絶望のままに座り込んだ時に差し伸べられる手の暖かさを」

 

 全く戦闘態勢に入らない織莉子に珠香と柳は襲いかからんとする。

 しかしその行動は背後の言葉に遮られた。

 

「そうだ。君たちに私の愛のなにがわかるというんだ」

 

 キリカだった。多少踏まれたりの傷は残っているものの、固有魔法を受けたとは思えないほどに軽微な負傷に二人が首を傾げた。

 

「そうよ。私はあなたに頼ることでお互いの居場所を作った」

 

 そう、キリカは固有魔法の不意打ちを受けてはいなかった。

 キリカは今回、常時周りに遅延魔法の結界を張っていた。

 鎮静の魔法が結界に衝突して速度を落とした瞬間に、魔力でそれを相殺していたのである。そして完全に食らう前に身を引いて当たったフリをして倒れていたのである。

 彼女が攻撃を受けてまでボロボロになったフリをしていたのはこの瞬間を作り上げるためと、魔力を溜めて練り上げる時間稼ぎであった。

 織莉子もまた、それを理解し、未来視したために時間稼ぎの挑発を行っていたのだ。

 織莉子はというと、少なくとも友達の復活を信じる時の顔ではなかったが。

 

「死に損ないがっ!」

 

 再びキリカに狙いを定めて二人がかりで攻撃しようとしたが、もう遅かった。

 彼女は全力の遅延魔法を二人にかけた。

 今までは戦闘の間ずっとだから、一人しか範囲に入らないから、全体にかけると長期戦に向かないからなどと自重してきた固有魔法、その全力が間近にいた二人を包んだ。

 

「 な に が 」

 

「……う…………そ…………」

 

 言葉を発することもままならない二人はキリカに手を伸ばす。その手は遅すぎて届くことはなかった。瞬きさえゆっくりと、まるで時間が止まったかのようなほどの遅さに魔法を理解していた周りでさえもが驚愕した。

 

「キリカはもともとチーム戦じゃなくって対集団戦が得意なの。後ろからちまちまやられるぐらいならば一瞬でまとめて接近戦で仕留めたい、ね」

 

「さすがにこれでは動けないんじゃないかな」

 

 織莉子だって接近戦ができないわけでも、ましてや手が出せないほど弱いわけではない。

 ただ、今まで一人で狩ってきたキリカにとって二人で組むなら織莉子の手間を取らせないぐらいが当然と思っていたふしがある。

 織莉子はその意思を尊重し、キリカに役目を与えることで活かしたのである。

 

「じゃあまたね」

 

 かすかに喜色を残した顔でその爪を二人に突き立てる。

 全身に斬撃の切傷が走り、花火のように血飛沫が舞った。

 急いで戦い中止の合図がされ、キリカと織莉子の勝利が決まった。

 

 

 

 

 ◇

 

 次は三人の戦いである。しかしこちらは何の危なげもない。

 内二人は熟練でありつつ、息ピッタリの三人が組んだのだ。当然と言えよう。

 向こうもそれはわかっていたからか、二人組の負けが決まった時点で非常に落胆していた。

 しかしまだ諦めていたわけではなく、試合前にこんな交渉をしてきた。

 

「もしも、四人戦や大将戦で負けたならば、その負けた人かあなたを引き抜いてはダメかしら」

 

「勧誘なら好きにして頂戴。私は大事な仲間を弱いもの扱いされて結構怒ってるのよ? これからも一戦たりとも負けてあげるつもりはないんだから」

 

 あまりに強気な発言に、大将戦はマミが出ると思っていた相手も怯む。

 そんな彼女たちが実際の大将戦の相手を見ればどう思うのか。

 

 戦いはなんとも面白みのない結果となった。

 それはあくまで、バトル的展開としては、であって試合、魔法少女同士の魔法対戦という意味では非常に高度な興味深い戦いとなっていた。

 

 槍というリーチの長い武器がマミの援護射撃の精度を高め、回復役でもあるゆまの支援を楽にした。二人で襲おうと固まればそこをすかさずマミの援護射撃が飛ぶ。てきかくな判断能力からくる絶妙な援護に相手も舌を巻いた。

 衝撃波という防御も攻撃も抵抗しづらいゆまに翻弄された相手は全員距離をとるという作戦に出たが、そこをマミがリボンで罠に嵌めるという展開になった。

 

真紅の幻影(ロッソ・ファンダズマ)!』

最後の魔弾(ティロ・フィナーレ)!』

衝撃球(アルテマドン)

 

 最後は三人同時のコンビネーションアタックが決まり、爆炎の中から吐き出されるように三人が吹き飛ばされた。その後動かなかったことで勝利が決まった。

 一応手加減はしていたため、あれほどの攻撃にもかかわらず誰一人として部位欠損級の重傷を負った者はいなかった。

 

 魔法少女同士の連携、魔法の巧みさや判断能力など魔法少女としての技能がつまった初見殺しなどではない純粋な技量の戦いとなったと言えるだろう。

 特に魔法少女にかっこよさを求めていたさやかなどはこの戦いが一番面白かったようで、「やるじゃん杏子!」「やっぱマミさんかっこいい!」と大はしゃぎであった。

 それを見るだけでもここに連れてきてよかったな、とまどかは思うのであった。

 

 もちろんまどか陣営の勝利が決まったからといって、まどか陣営全ての実力が認められたわけではない。

 よって本来の目的である「実力を認めさせる」までのまだ実力を隠したままの怪物勢が残っているのだ。

 

 これまでは魔法少女としての実力は拮抗していて、単に戦闘経験と僅かな運が味方したといえる勝利であったが、これからはなんともあっけない戦いになることだろう。

 

 ほむらも、マミも、織莉子もそのように思っていた。




次回から強烈な戦いが始まります
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