まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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元最強の魔女の破壊力

 四人戦のメンバーを見たとき、束音側のチームは拍子抜けであった。

 と、いうのも、出てきた四人が予想外であったからだ。

 同じ人物でも二回出ても良い、というルールがあるのだから、大将をマミなりにして、ここは杏子や織莉子などの比較的消耗の少ない魔法少女を出してくると踏んでいた。

 しかし出てきたメンバーは。

 

「よろしくお願いします」

 

「まどか、わかってる? あなたは手出ししないのよ」

 

「ほ、本当になぎさは何もしないでいいのです?」

 

「妾もこの体で対集団戦というものをやって見たかったのじゃ」

 

 始めから順に、まどか、ほむら、なぎさ、舞の四人である。

 既に初見殺しのメリットを失ったほむら、明らかに戦いたくなさそうななぎさに、見た目は人畜無害なまどかと、魔法少女かどうか怪しい女性の四人である。

 

「ねえ、一般人を巻き込まないってルール覚えていますよね?」

 

 確認されたほむらが得意げに返した。

 

「一般人かどうかなんて戦ってみればわかるわ。それに、この戦いで足手まといなんて出してくるわけないじゃない」

 

 暗に自分もお飾りで出たわけではないと初戦の勝利という実績に裏付けられた自信を示す。

 四人中三人が初見である以上、人員の豊富さによる戦法の多彩さはメリットになり得ない。

 律花はそれを見抜いていたが故に、対応力のある四人を出した。個々の実力も高い魔法少女でありながら、固有魔法が対人戦に向いている魔法少女を選んだのだ。

 そんな彼女たちに対して、まどかチームは火に油を注いだ。

 

「ほれ、その中でいておればほとんどの魔法は防げるであろう」

 

 舞が三人の周りに強固な結界を張ったのだ。

 それは以前マミがまどかとさやかに張ったものや、ほむらがまどかに張ったことのあるものよりも遥かに格上の結界だった。

 魔女という結界を維持することに長けた存在でありながら、それを使わず戦ってきた舞。彼女がその力を少しでも結界に向ければこうなるのだ。

 対戦相手の一人がこめかみに青筋を浮かべながら怒りを押し殺すように尋ねた。

 

「確かにその結界は強いみたいだけど、その中にいたら戦えないよ。どういうつもりかな?」

 

 舞は当初まどかたちに出会った時と同じ紫のドレスに優雅な日傘、そして四つの歯車を周囲に浮かべた魔法少女(?)姿に変身した。

 

「察しの悪い奴らだの。妾一人で相手してさしあげようと言っておるのだ」

 

 その言葉は怒りを通り越して彼女らを呆れさせた。

 舐めているにも程がある。その実力差を見せてやる、と開戦と同時に四人が一斉に舞に向かって飽和攻撃を仕掛けた。集中、ではなく飽和。その言葉が示すのは、もはや弾幕とさえ言える魔法と武器の集中砲火であった。

 

 一人が魔力を込めたビームのようなものを打った。もう一人が電撃のような魔法を使った。

 二人の後衛の攻撃を処理した隙に、もう二人が前衛として突っ込む算段であったらしい。

 しかしここで彼女達にとって予想外であったのが、舞の対応力の高さである。

 

「何年戦っておると思うておる」

 

 彼女は最初のビームを日傘を広げて前に突き出すだけで防ぎきってしまった。

 避ける隙か、防ぐにしても数秒は持つと確信していた攻撃が一瞬で、しかもろくに魔法も使われないままに相殺されてしまったことに律花も眉間にしわをよせた。

 

「あれは何者……?」

 

 戦っている最中の彼女たちがそれを口に出すわけにもいかず、前衛もその攻撃をやめることはない。

 舞は一度開いた日傘を閉じて、日傘にさらに強化魔法をかけて武器と打ち合わせた。

 老練な魔女は二人の少女の繰り出す武器を日傘一本でいなした。

 数撃打ち合い、立つ場所が入れ替わったところで電撃魔法が舞に向かって飛んだ。

 

 舞と雷撃の間に、歯車が割り込んだ。

 割り込んだ三つの歯車が縦に並び、雷に当たった瞬間下の歯車へと雷を伝えていった。

 まるで誘われるかのように雷は伝わり、そして地面へとかき消された。

 

「何をされたのっ!」

 

「精進が足りぬ。所詮はただ(・・)の雷。歯車を使って地面へと逃がしてやっただけじゃ。魔法少女なら物理法則ぐらい捻じ曲げてやるぐらいの気概がないとな。その程度じゃ妾に傷一つつけられん」

 

 実際は歯車にも舞の魔力がこもっており、魔力で出来た雷をさらにひきつけるようにされていたことまでは解説しなかった。

 ただわかったのは、舞は戦いの片手間に雷を防いでみせたということだけである。

 その間にも二人の魔法少女と真正面からうちあっている。

 

「まだ……!」

 

 彼女はもう一度、今度は歯車を避けるようにと集中して雷魔法を使い直そうとする。

 舞はそれを止めようとはしなかった。まるで面白いものでも見るかのように放置している。

 舞は二人をその膂力で弾き飛ばした。

 

「今よっ!」

 

 二人が離れたことで雷の操作も二人を避けるのではなくて舞に当てることだけに集中できるようになった。

 舞はそれさえも想定済みで、ジグザグと空気の通路を枝分かれしながら進む雷に見事歯車を当てた。技量でも勝てるはずがないのだ。

 そして歯車が雷を逃がした場所は今度は地面ではなかった。

 

「きゃぁぁぁっ!!!」

 

「うわぁっ!!」

 

 先ほどまで舞と打ち合っていた魔法少女の前衛二人に向かって誘導されきった雷が襲いかかった。

 とっさに魔法で防御するも、元々防御しにくい雷という魔法に多少の傷は負ったようだ。

 

 

 戦っていない魔法少女たちからも様々な反応が見られた。

 

「凄い……本当に圧倒してる」

 

「当然よ。まどかには負けるものの、まどかの練習相手になれるだけおかしいのよ」

 

「ふわあ……寝ててもいいです?」

 

 防御結界の中ですっかり観戦者気分の三人。

 それも仕方ないだろう。防御結界を張ってあるにもかかわらず、時折後衛から放たれる攻撃も歯車が完全に防御してしまうのだ。

 

「鹿目さんに比べればマシよ」

 

「そうだな、あいつは魔力限界がないもんな」

 

 マミに杏子はまどかを知っているからこその感想であった。

 

「私と織莉子が全力で戦っても歯が立たないだろうね」

 

「未来視を使うまでもなく見えているわね」

 

 キリカと織莉子も舞を相手になどとは考えたくないようだ。

 

「四人と張り合える魔力量とあの精度の歯車操作……」

 

 律花はゾッとしていた。

 あの人間離れした魔法がもしも敵として現れたら、そう考えたのだ。

 そしてこうして舞の戦闘を観れたことは幸運だと考えた。四人でも敵わないとはいえ、魔力のでかさや魔法の技量だけが勝負ではない。歯車を扱う余裕さえなくせばなんとかなるかもしれない、と。

 律花は大将戦に出るのは舞だと勘違いしていたのだ。そしてまどかが毎回戦い終わった仲間の魔力を回復しているなどと知らなかったのだ。

 

 

 舞は遊んでいた。

 まどかと練習試合をするときなどは、お互い試し魔法の撃ち合いや力の配分などばかりを鍛えていたので、こうして技量やコンビネーションの複雑な要素が問われる戦いは珍しく、その技術を吸収して自分のものとしようとしていたのだ。

 ここまで強くてなお強さに貪欲な舞の本心を知る者はいないが、四人は手加減されていることだけはわかったため憤慨していた。

 

「くそっ! くそっ!」

 

「見ておれ。ビームとはこうするのじゃ」

 

 それはまどかが使っていたそれを教わり、舞なりに特化させたものであった。

 無造作に日傘を後衛のビームを出した子に向けると、傘の先から光がほとばしり、彼女を襲った。

 彼女は吹き飛ばされ、その衣装をボロボロにしながら気絶した。だが絶妙な手加減によってソウルジェムも肉体も無事であった。

 

 目に見えて動揺した一人が、傘に薙ぎ払われて戦闘不能。

 もう一人が腹と頭に歯車を受けて倒れた。

 自分一人になったと知って、雷魔法を使った黄色の魔法少女は慌てて降参しようとした。だが口を開く前に舞の妙な魔法が炸裂して倒れた。

 歯車が並び、まるで一つの武器か魔法陣となるように空中に静止し、そこから飛び出した実体ある鉄の棒のような魔法によって敗北したのだ。

 

 あまりの早期決着に歓声さえ沸き起こることはなかった。

 




元ワルプルギスさん、生き生きしてますね……
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