まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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三人称視点です。
どうにも登場人物が増え、群像劇としての要素がほんのりとすると、一人称では苦しい部分が。ほむらからまどかへの愛か、まどかからほむらへの愛が熱いだけの物語にならないようにと。


先輩の危機

 次の日。とある魔法少女がいつものようにパトロールをしていた。自身の研究と経験、二つを重ねて効率的に魔力を張り巡らして周辺を探る。人の負の感情が溜まりやすい、より優先順位の高い場所を集中して回っている。

 黄色の髪を左右で巻き、セーラー服に身を包んだ彼女の名前は巴マミ。見滝原中学の三年生である。そして前述の通りこの町の魔法少女の一人である。

 彼女の元にキュゥべえからこんなテレパシーが入った。

 

『マミ、美樹さやかが魔女の結界に囚われた』

 

 マミは比較的正義感の強い魔法少女であり、当然のようにキュゥべえに場所を聞いてその魔女の元へと駆け出した。

 急いで結界の場所に向かう途中、彼女はつい先日、キュゥべえが魔法少女に勧誘した少女――まどかと偶然出会った。

 

「どうしたんですか、マミさん?」

 

 珍しく走っているマミ。急いでいるなら声をかけるのも悪いかと一瞬躊躇ったまどかだが、無視するよりはいいだろうと尋ねた。

 魔法少女の危険性を知ってもらいつつ、それでも魔法少女になってくれたらいいのにと期待しているマミはここで隠し事をすることもないとまどかに話した。

 

「私もついていっていいですか?」

「もちろんよ。だって美樹さんのことだもの。あなたにも無関係じゃないわ」

 

 必ず守ってみせるわ、と言ったマミにたいして、まどかは守られる必要はないです、と言うのをグッと堪えた。

 マミはまだまどかが魔法少女になったことを知らないからくるセリフだ。しかしまどかからすれば、自分の方が強いから守られる必要なんてない、という傲慢なセリフと誤解されることを恐れたのだった。

 新人らしく、戦闘慣れしていないから守られながら魔女について観察しようとは、まどかもなかなかにしたたかである。

 そんなまどかの内心も知らず、先輩風を吹かせるマミはまどかにいい子ね、と言わんばかりにふわりと微笑んだ。

 

 まどかにとっては二度目の魔女の結界内だ。

 きゃはははと不気味な笑い声が響いている。魔女の気配と独特の雰囲気、足場があるのかないのかわからない結界内は少々歩きにくい。暗いようで決して足元が見えなくなることはない。謎の光と歪む視界に吸い込まれそうな錯覚さえ覚える。

 そんな中をまどかに気をつかいながらスイスイと歩いていくマミは確かにベテランなのだろう。

 魔女の結界内を歩いていた二人は後ろから近づく人影に気づいた。

 

「今回の獲物は私が狩る。それかせめて一緒に戦わせて」

 

 その人影はほむらだった。既に魔法少女に変身しており、戦闘態勢となっている。銀色の盾はその機能を隠して、薄く光を反射していた。

 今回の魔女は危ないと力説するも虚しく、不審に思われたマミによってほむらは縛られてしまう。リボンで吊るされ、動けば動くほど締まるようになっている。

 マミはマスケット銃とリボンを主体に戦う魔法少女である。繊細な調整もお手の物だった。

 口さえ塞がれ、喋ることができなくなっていた。

 

 まどかがマミを説得しようとするも、ベテランであるマミは自分一人で倒せるし、不安要素が後ろにいる方が怖いと主張した。

 この場合の不安要素とは、未だ隠し事をして怪しい提案をしてくるほむらのことだ。

 まどかはこのままだとほむらが縛られたまま一人になると心配してこんな提案をした。

 

「じゃあマミさん、私はここで残りますね。魔女を倒したらほむらちゃんを解放して一緒に逃げますから」

「危険よ? それでもいいの?」

「大丈夫ですよマミさん。ほむらちゃんがいますし、縛られたほむらちゃんの方がピンチかなーって」

 

 本人にその気はないが、縛られたまま使い魔に襲われたら死ぬのに、という皮肉のこもった反論にマミは黙るしかなかった。

 その口元を悔しげに歪める。

 

「また、私は一人なのね………」

 

 言葉の最初についた「また」。

 その呟きの裏にある以前のことをまどかは知らない。

 

「大丈夫です、マミさんは一人じゃないですから」

 

 気休め程度の脈絡のない励ましでもマミにとってはありがたかった。

 マミは気をとりなおして魔女の元へと急いだ。

 取り残された二人はマミの背中を見送った。

 

 

 

 マミが完全にいったところで、まどかはほむらの口を縛るリボンのみを外した。何か言いたげなほむらの様子を汲み取ってのことだ。

 

「もご……ぷはっ! お願い、私はいいから早くマミを追っかけて!」

 

 必死の形相で叫ぶほむらにまどかは違和感を覚えた。

 

「ほむらちゃんは何をそんなに慌ててるの?」

 

 まどかにはほむらの心配がわからなかったようだ。

 まどか以外どうでもいい、マミを助けるのはいざという時やワルプルギスの夜を倒すために戦力が多い方がいいからだ。

 ほむらは自分がそう思っていると思い込んでいるが、ほむらはまどかの優先度が高いだけで本当はマミのことだって助けたいと思っているのだ。

 多少残念な先輩でも、一方的に敵視する部分があれど、かつてまどかの次に憧れていた先輩なのだから。

 

「マミさんはベテランだしこの前の戦い方を見てたら大丈夫なんじゃないかな。今まで使い魔を倒しながらでもやりくりできてたし今回はちゃんとグリーフシードあるよ?」

「確かに彼女はベテランよ。私だって一回戦うだけなら確実に勝てるけど、何度も戦えば負け越すかもしれないもの」

 

 ほむらの魔法は時間を操る。

 時を止めれば人間や魔法少女相手に敗北することなどあり得ないかのように思える。

 だがまどか以外の全ての魔法少女が万能でないように、ほむらもまた、自身の弱点を自覚していた。

 巴マミは戦闘センスと判断力がズバ抜けている。何度も戦えば、その弱点は看破されかねないとほむらは言う。

 

「そうじゃないの…このままじゃ……」

 

 何度も、何度も見てきた。

 その中で、ほむらは一定の傾向を見つけていた。

 

「私の願いと過去については話したでしょう。繰り返した中で巴マミはあの魔女に高確率で敗北する。首を食べられ死んでいるのよ」

 

 一人じゃない。それを自覚することによる喜びは慢心へとつながり、油断を誘う――とまでは言わなかった。

 だがマミにとって孤独はネックである。

 正義の味方たろうとするスタンスは他の魔法少女との軋轢を生みやすい。その場その場で利害が一致する場合に協力して戦うことは問題なくとも、仲間として組むには不適切。そんな評価をくだされていて、学校での付き合いも少しずつ犠牲にして――そうして孤独になる自分を誰より自覚していた。

 故に、孤独を長く維持させてはいけない。

 故に、孤独を突然解消させてもいけない。

 それが巴マミという魔法少女が悩み、傷つき消えていく最大の要因である。戦闘の弱さや経験の不足ではない。魔法少女という生き物としての弱さだった。

 

 まだ、まどかのあのセリフだけでは慢心するかどうかはわからない。

 だがそれだけではなく、基本的にあの魔女と巴マミの相性は悪いのだ。

 

「あの魔女は最初本気を出せない。一度倒されたように見えてからが危ないのよ」

「そんな……じゃあほむらちゃんはほっていけないからマミさんとの約束もあるしちょっと我慢しててね」

 

 そう言うとほむらを縛っているリボンを掴んで結界内を進み出す。

 

「確かに私はいいからって言ったけど……」

 

 ほむらはというと、縛られたまま連れていかれることに不満を述べながらも、まどかの実力を信じているがゆえの安心、そしてまどかに縛られているというシチュエーションに満更でもない風であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お菓子の魔女シャルロッテとマミが対峙している。

 戦い慣れているマミは優雅にリボンと銃の乱舞の中で戦い、さやかは見惚れていた。

 使い魔をマスケット銃で撃ち抜いては捨て、撃ち抜いては捨てる。

 

 そして魔女が爆炎に包まれた。

 

 二人は魔女がリボンで縛られて身動きができないと思った。

 その瞬間、縛られた魔女はその姿を大きく変えた。可愛らしい人形のようなその姿、その口がぱっくりと開き、黒い姿をした本体が現れマミに襲いかかる。上から大きく牙をむいて、その身をうねらせながら急降下した。

 

 今度は身動きできなかったのはマミの方だった。

 

 マミは死を覚悟した。

 さやかが危険を知らせようと叫ぶ。

 

「マミさん!!」

 

 まさに食べられようとする瞬間、後ろから飛んできた一筋の桃色の魔力の光によって魔女が爆散する。

 

「間に合ってよかった! 大丈夫ですか?」

「どうしてここに……」

 

 ついさっき、ここで待つと言われて置いてきた後輩がすぐに追いかけてきたことにマミは驚いた。

 その後ろにほむらが繋がれていることも忘れてしまうほどに。

 

「まどか!」

「それにその姿……あなたも魔法少女になったのね」

 

 まどかは桃色を基調としたひらひらのスカートを身につけ、ソウルジェムを手にしている。

 さやかはピンチに親友が登場したことに、マミはまどかが魔法少女の姿をしていたことに驚いた。

 さやかはまどかを毎日見ているので、きっと覚悟を決めたのだ、とだけはわかっていたので何も不思議がる様子はなかった。

 

「黙っててごめんなさい。私、もう魔法少女だったんです。昨日から」

 

 まどかは人差し指を口に当て、内緒ね。と、まるでいたずらっ子のように微笑んだ。




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