まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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 皆様エイプリルフールにはどんな嘘をつきましたか?
 
 なかなか「嘘」というのは難しいものです。リアルに影響を及ぼさず、人を不快にさせない、傷つけないものでつく意味のあるものとなると。
 嘘をジョークにおさめられるように。そういう楽しみ方のできる日、というのはなかなか面白いものです。皆様は嘘を楽しめましたか?


 そんなわけで最終回です


魔法少女の戦いは終わらない

 まどかは両親と向き合ったときの名状し難い感情を自らの意思だけで押さえ込んだ。

 今のまどかならば、おそらく自身の感情さえ魔法で騙せただろう。杏子が幻惑で人々に話を聞いてもらえたように、自身の弱さを魔法で塗りつぶして見えなくしてしまうこともできたはずだ。

 しかしそうはしなかった。簡単なことだ。まどかがそれを良しとしなかっただけだ。両親は自身の鏡である。育ててくれたからこそ、色濃く自分の過去が反射する。それに対して魔法で押さえ込んだとしよう。そうして両親に全てを話すことができたとして、それは本当に「強さ」なのか? そう問いかけられたときに胸を張って頷くことはできない。

 荷物を背負ったのではない。覚悟を背に、責任を負ったのだ。一から十まで全部自分の意思である。何年経ってもそう後悔せずに言えるように。

 

 

 ◇

 

 あれだけのことがあり、これまでずっと見てきたはずのキュゥべえの態度になんら変わりはなかった。いつものように赤く透明なだけの瞳と、媚びたような白いフォルムながらこちらの価値を認めない、悪い意味でのマスコットキャラクターとしてまどかを出迎えた。

 

「キュゥべえ、答えて」

 

 嘘は(・・)ついたことがない。質問を絞れば、答える気のない相手でも真実に辿りつけるはず。キュゥべえとはそういう生物だ。

 

「どうしたのかな?」

「魔法少女大戦って宇宙のエネルギー問題が解決したら未然に防げるんだよね」

「そうだね」

 

 その返答にまずは一段階はクリアだ。と安堵を表に出さぬように次の質問をする。

 

「私たちの魔法を使うエネルギーってどこからきてるの?」

「君たちの感情エネルギーだよ」

「やっぱりそうなんだ」

「それがどうかしたのかい?」

 

 まどかは自分の契約内容についてこれほど感謝したことがなかった。

 

「じゃあ私が、魔法を使ってエネルギーを生み出すことはエントロピーを凌駕して宇宙のエネルギーを増やすことに繋がる?」

「それだけではダメだろうね。僕が契約で魂をソウルジェムに変えるように、エネルギーもまた宇宙で利用可能な形へと僕が変える必要がある」

 

 できない、とは言わなかった。

 

「私が協力する」

「どういうことだい?」

「私ならどれだけ魔法を使っても絶望しないよ。じゃあ感情の起伏を魔法のエネルギーにしてキュゥべえに渡せばエネルギー問題の一部は解決されるでしょ」

 

 魔法少女が魔法を使うということは、日常生活での感情エネルギーを利用している。それを使ったからといって感情がなくなることはない。それはまるで上にある水が下に行くときに水車を回すように。確かに感情は動くが、その過程が少しだけ変化するだけだ。

 普通の魔法少女ではあり得ない。日々の微々たるエネルギーを、ソウルジェムの濁りも気にせず渡せるはずがない。因果の糸に絡めとられたような彼女だからこそなせる技だ。

 

「確かに……それはそうなのかもしれないね。魔法が使い放題の魔法少女に前例がないからわからないよ」

「いいの。キュゥべえも私たちと邪魔しあうよりも多分楽になるよ」

「本部に連絡をとってみるよ」

「じゃあ、そういうことだから」

 

 まどかは言いたいことを言い終えるとさっさと立ち去ってしまった。鮮やかな色のリボンが風に揺れる。その後ろ姿をキュゥべえは眺めていた。

 

 キュゥべえはふと背後から声がかけられた。同時に何気ない仕草で銃が突きつけられる。周囲には人がいない。万が一いたとしても、キュゥべえは普通の人には見えないために助けを求めることはできないだろうが。

 

「行ったみたいね」

「これでよかったのかい?」

「ええ」

 

 それは暁美ほむらだった。銃の引き金にかけられた指が少し緩む。ただの挨拶代わりのようだ。

 彼女はキュゥべえと話すためにこの公園にやってきていたが、まどかが来たことに気づくと隠れてキュゥべえに幾つかのことを要求した。

 一つは自分が隠れていることをまどかにバレないように最低限気遣うこと。バラしたり、そっちに目をやったりしないようにということ。二つ目はまどかの要求を呑むこと、三つ目はまどかの話を自分に教えることであった。

 ほむらが引き換えにしたのは、これからのキュゥべえの活動を徹底的に邪魔するのをやめるというものだ。それではただの脅しである。

 とはいえ、ほむらもまた決めているのだ。キュゥべえの邪魔をしないということは、他の魔法少女を間接的に見捨てるということでもある。キュゥべえの勧誘に対して、真実をぶち巻き続ければ騙される少女は増えにくくなるだろう。それをやめれば、ほむらの責任ではないにしろ被害者は確かに増える。今回、まどかを傷つけられても何もできなかった無力さに言い訳をしているように感じられてどこかうしろめたささえあった。

 

「なんだったのかしら、あの魔法少女は」

 

 キュゥべえからまどかの話を聞いて一息。ほむらは話題を変えた。

 

「可能性の高い、というか確証がないだけでほぼ真実の僕の推測でよければ話せるよ」

 

 ここに来てややキュゥべえは人間味が増した。真似事だけでも人の感情を理解せねばこの先やっていけなくなることを察したのかもしれない。

 ほむらは自分で聞いておきながらそっけなく返す。

 

「一応聞いておくわ」

 

 ほむらは髪をすいてはらう。いつもの癖だったそれは、ここしばらくしていなかった。もしかすると、あれは不安な自分を紛らわせるためにしていたのかもしれない。――じゃあ今は。まどかへの庇護欲だったものが信頼に変わっているのかもしれない。手入れを怠ったわけでもないのに以前よりも少しだけ通りの悪い髪に自身の変化を感じ取る。

 自分が傷つけてきたはずの相手に銃口をつきつけられながら平然として話を続ける。これがキュゥべえのキュゥべえたる所以。感情を理解せず、スペアとはいえ自身の肉体を蔑ろにする。

 

「これは鹿目まどかという少女が君によって因果を背負ったことに由来するんだけどね」

 

 キュゥべえ曰く、因果とは糸のようなものであるという。背負うだけではない。絡まり、繋がり、結んで切れるそんなものであると。

 まどかの因果は時間逆行者暁美ほむらの活動の副作用として多重に絡みついていた。太く、長く大量に。ではその糸は誰に繋がっているのか。

 ここでキュゥべえは一つ尋ねた。

 

「見滝原に魔法少女が多いことに疑問はなかったかい?」

 

 その問いかけはほむらに別のことを思い返させた。それは初めのループ、つまり自分が魔法少女ではなかったころの見滝原のことである。当時、自分の知る魔法少女はまどかとマミだけであった。美樹さやかや呉キリカなどは魔法少女ではなかったのだ。ほむらはそれにより、ループによって生じた変化が他の少女たちに影響を及ぼし、彼女たちが魔法少女になった可能性がある、という推測に至った。

 

「なるほどね。やはりか」

 

 他のまどかの因果の糸の先に結びついていて、結果魔法少女という選択肢を手に入れた少女達がいたということだ。そういった少女達はまどかの近くでまどかの運命に深く関わってきた。まどかの因果の糸に影響を受け、本来素質がなかったものさえもが強力な魔法少女へと。

 まどかの願いがそれを押し上げた。最強の魔法少女で在り続ける、という契約はまどかだけのものではない。最強というのは周囲と比べて成り立つものである。戦闘面や精神面での強さは確かに彼女たち自身のものだが、その限界が一つ消えたと言えばわかるだろうか。

 まどかの願いはまどかが敗北しない範囲でその周囲の強さを引き上げた。

 

 だが、全然関係のなさそうなところでまどかの因果を共に背負い込んだ者がいたとしたら?

 

 まどかの因果を何本も背負えばまどかほどで無いにしてもかなり強力な魔法少女となるはずだ。しかしさやかなどはお世辞にも強力な魔法少女になるとは言えない。

 

 余った糸がまるでカーペットのしわ寄せのように二人の少女に集まった。特に感情の強い少女に。

 

 そうやって、その因果の全てを呪いに費やした暗殺特化型魔法少女が誕生したのだろう。まどかの因果の一部を欠陥品のままそちらに偏らせて。

 あの因果の量はあり得ないほどではないが、偶然にしてはできすぎていた。単なる推測ではあるがまどかの元で死んだのもわかる気がするというものだ。

 だから強大な力と多重の因果に絡まったまどかはこれからも周囲に強烈な影響を与えていくのだろう。

 

 とキュゥべえが暁美ほむらに語り終えたとき、おそらく怒りの表情といえるのだろう顔で彼女は告げた。

 

「まどかなら大丈夫よ。道を踏み外さず、正しく使えばその影響はきっと」

「そう上手くいかないのが君達だろう?感情という精神疾患があるから」

 

 良いことをしても正しく生きても、良い影響や正しい結果に繋がらない。全ての答えがその瞬間だけのものである。

 

「このことはみんなに言うのかい?」

「言わなくてもいいけど、あなたが言っても全然構わないわ」

「まったくわけがわからないよ」

「もう、みんな大丈夫なはずだから」

 

 まどかだけを救えればいい。そんな風に諦めかけていた頃に比べてなんと恵まれていることか。願いそのものを解決に使う、そんな簡単なことだったのだ。

 ほむらは知らせただけで、自分がまどかを救うことも守ることもできなかったことを今でも少し負い目と感じている。また救われてしまった、永遠の迷路から。また守られてしまった、魔法少女の呪縛から。ならば、自分にできることはひたすらに陰日向に渡ってまどかを支えることだろう。

 それはただ救うためにループしてきた頃よりもずっと前向きで、強く鮮やかな意志だった。

 

「魔法少女との戦いがなくなっても、魔女が雑魚ばかりでも、あなたというラスボスとの戦いは終わらないのね」

「戦いではなく歩み寄りだよ」

「さっそく壊されたいのね」

 

 余計なことを言って耳を吹き飛ばされる。落ちた耳の肉片を口から回収し、再び耳が再生した。キュップイとゲップの音を鳴らしながら「確かにそこらの魔法少女が数人絶望するよりも、まどか一人が魔法で協力してくれた方がエネルギーの量は多い。けどやっぱり絶望してくれた方が僕としてはありがたい」と不吉なことを言う。

 思わず目の前の白い人形(ぬいぐるみ)を全損させたくなったほむら。ただ、以前ほどの必死さはない。これからの行く末を囁くように願う。まるであの時のように同じ祈りがほむらの口から零れた。

 

「そうね……まどかならきっと」

 

 まだ魔女はいるし、少女としての生活もまだまだ続く。それもまどかのたった一つの願いを魔法少女システムに捧げたその犠牲の上にある仮初めの平和である。蠱毒の問題についてはシステムの不備もあるから、とキュゥべえが対処するらしいが。

 言うなればそれは、魔法少女の戦いは終わらない、となろう。もっと熱く、真面目くさっていい終わり方のように締めくくるならば。

 

 魔法少女の戦いはこれからだ。

 

 といったところか。そんな綺麗なものでも、大団円でもないにしろ、気分だけでもそんなふざけた謳い文句で終えたい。ほむらは足裏にキュゥべえを感じながら爽やかに思うのであった。

 

 




全体の後書き

 こことは別の場所で書いた、初めての二次創作であったまどマギ。見直してみると拙い部分が多く、展開がぽんぽん進みすぎて恥ずかしくなるのです。その時はその時でやはり真面目に書いていたのだろうし、手を抜いたりしたわけではないんです。だがやはり、文章力など書いていれば上がるものなのだなあと実感した次第です。ここに書いたものは一応同じ題材で序盤は書き始めていましたが、描写の量、細かなところでの展開の違い、そして途中から別の話などもうほとんど別物になったと言えるでしょう。
 オリ主転生も、クロスオーバーも嫌いではないのですが、原作に出てきたものだけを使って改変したいなあと出来上がったこの作品。物語を見ていた時に、「こうだったらもっとうまくいくのに」と結果論で思ったことはないでしょうか。そんな話です。まるで一発ネタに聞こえますが、主人公最強だからこその冗長感やただ活躍して終わるのではなく心情や世界観にも気をつけて書けていればなあと願うばかり。誰もが思いつきそうで、やってこなかったことをあえて。自分としてはもっとまどか以外にも焦点を当ててもよかったですが、このバランスで今となっては「こんなものかな」と。

 長らくお付き合いくださりありがとうございます。途中、受験やらですぽんと抜けておりますが、無事完結させることができました。小説家になろうでのオリジナルと合わせて完結しているのは二作品ですかね。楽しんでいただけたのなら幸いです。
 次回作はまどマギではないかもしれませんが、またそのうち書き始められればなあと。(番外編?どうしましょう。気が向いたら書くかもなどと)

 書いている間はノリの良い感想もいただき、読んでくださっている方も一体になって楽しめたかなと。読んでくださった、楽しんでくださった方々に感謝を。


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