まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです 作:えくぼ.
まどマギで一番好きなカップリングはまどほむかその逆ですが、キャラ的に一番好きなのは杏子ちゃんです。
その頃、キュゥべえは隣町に来ていた。
街の夜景は夜空を煌々と照らし、キュゥべえの顔を不気味に下からライトアップしていた。
他のビルや鉄塔を眼下に見下ろし、隣で一人の少女がキュゥべえの話を不満げに聞いていた。
「ふーん。魔法少女になりたいからなった?そんなふざけた奴なんてどうせあまちゃんだろ。叩き潰してやる」
そう言ったのは赤い髪を後ろで結んでポニーテールにした女の子。強気な発言とは裏腹に、その風貌はまだまだ幼さの残る顔立ち、華奢な身体の中学生であった。手には長い槍を持っている。
「三人の内一人はとんでもない強さだし、もう一人は極め付けのイレギュラーだから警戒した方がいいよ」
さらっと付き合いの長い残りの一人を無視してキュゥべえは必要なことだけを伝えた。
そんなキュゥべえに微量の違和感を感じ、その魔法少女──佐倉杏子は胡散臭そうに足元の白い地球外生命体を見た。
「わかってるよ。やけに今日は情報をべらべらと喋るね」
「人間でいう所のヤケクソって感じだろうね。何もかもうまくいかないし、使い魔も魔女も僕も関係なく狩りまくるし」
キュゥべえにあるはずのない恨みがあるとすれば、最後の「僕も」に込められているだろう。
「どうしてあの街の魔法少女はどいつもこいつも」
何かを思い出したように吐き捨てたセリフはキュゥべえには届かない。
彼女はキュゥべえがあえて口にしなかった魔法少女のことを思い浮かべていた。
「まああの格好の餌場を見過ごすわけにもいかないし」
どこか言い訳じみたことを言う。
「僕は何も言ってないよ」
キュゥべえがデリカシーなく、言い訳に訂正を入れた。
マミのやつに新しい仲間ができたって聞いて調べにいくなんてまるでマミのやつが心配だからみたいじゃないか、と杏子は自分を誤魔化した。
まさにその通りなのだがそこまで気づく人もつっこむ人もいない。
「キョーコ、喧嘩するの?」
ふと後ろから来たゆまと言う少女が尋ねる。千歳ゆま。その姿はまだ幼く、そしてあどけない。発展途上しかダメだというキュゥべえの言葉を借りるならば彼女はもう発展途上にさしかかっていることになる。
彼女も魔法少女である。それも魔力の扱いに長け、精神力もある優秀な部類の。
経験を積めばその才能は杏子にもひけはとらない。
「ちょっと見に行くだけさ。なんならついてくるか?」
「一人で待つのも面白くないもん」
「じゃあ明日行こうな」
まるで久しぶりに友達に会うかのような気軽さで言うが、あくまで視察と交渉などといったものに出かけるのだ。
次の日、ほむら、まどか、さやか、マミの四人はマミの家で集まっていた。
まどかが紅茶に手をつけ、口まで運んでいこうとしたときのことだった。ピンポーン、と間の抜けるようなチャイムが鳴り響いた。
「あら? 誰か来たみたいね」
今の今まで、優雅まどか最高、とまどかに見惚れていたほむらは我に返った。
「あなたに人が訪ねてくるなんて驚きね。もしかして荷物でも?」
「こらっ! マミさんをぼっちみたいに言わないの!」
私たちか荷物以外で人が訪ねてくるわけないじゃない、とほむらの辛辣すぎる皮肉にまどかが追い打ちをかけた。
絶妙すぎるコンビネーションにさやかがげんなりとしている。
「あんたら……」
「うう……酷いわ……」
私の癒しは美樹さんだけよ、と泣きつきたいのをぐっとこらえて立ち上がった。
さっと服を整え、玄関まで向かい扉を開けた。
「あなたは!」
マミは玄関にいた相手に驚いた。
「佐倉さんじゃない」
そこにいたのは佐倉杏子。何故か律儀にリンゴの入った袋を土産代わりに持参している。
その後ろには千歳ゆまが杏子を盾にするように張り付いている。
「なんだ杏子ちゃんじゃない」
「へー、あの子が杏子ちゃん?」
ほむらが気安く呼びかける。それにまどかが応じた。
なーんだ、敵じゃないの、とほむらとまどかはすっかり気を緩めてしまっている。
杏子のルビは当然あんこである。
「ん? あんたら知ってるみたいじゃない?」
新たな魔法少女かっ!と妙な戦闘態勢に入った唯一魔法少女ではないさやかは拍子抜けしていた。
ほむらとまどかが気楽にしていて、マミさえもが親しげなところを見るとどうにも大丈夫であるようだ、とさやかもまた、彼女達に対する警戒を解いた。
「だれがあんこちゃんだ!」
「お友達?」
ゆまが見上げて尋ねる。
「違うっつーの!」
「佐倉さんじゃない。お久しぶりね。半月以来かしら」
結構頻繁に会っていた。
隣町の違う学校に通っている知り合いとしてはかなりの頻度である。
それになんだろうか。喧嘩別れしたときいていたのに、このマミの棘のなさは。
二人は因縁の関係だと聞いていたまどかは怪訝な顔をした。
「ゆまちゃんもいると言うことは……」
ほむらは別のことに気を取られていた。以前、ワルプルギスに集中していて揚げ足を取られた時のことを思い出していて、苦々し気に顔をしかめる。
「今日はどうしたの?」
能力が使えなくなったため、マミと組む事に抵抗を感じそのことを黙りながら半ば無理やり独立していた杏子。
彼女が仲間を持ったときは驚いたマミだが杏子の言動が読めるようになり余裕もでたようだ。
二人の間には仲違いした時の険悪さはもうない。
あの頃はお互い、余裕がなかったのだ、と折り合いがついてしまっている。
マミは見滝原で、杏子は隣町で。
縄張りを分けた方が効率がいいからそうしているだけである。
そんな彼女がわざわざ訪ねてきたということは何か用事があるのだろうとマミは隣にいる後輩たちを見た。
「マミの所に"なりたくて"魔法少女になったっていう馬鹿がいるって聞いてな」
そう言いながら杏子はさやかに視線を向けた。
「お前か? 見るからに人のためとかヒーロー!とか勢いでなりそうだな」
「毎回の事だけどどれだけ美樹さやかが気になるのよ。全てを守りたい。そんなお願いで私の不安要素を全て取り除いてくれたのはここにいる可愛いまどかよ」
さやかはなんだかよくわからないけど、バカにされたことだけは漠然と理解した。
しかし話がガンガン進み、取り残されていく感じにはまだ慣れない。
まどかはその様子を観察し、正確に理解していた。
「いや、ケンカするわけじゃなくってただちょっと実力がみたいだけっていうかなんていうか」
今も心の内に、組んでいたころの上下関係が残っている杏子はマミに叱られたくはなかった。
そう、今の彼女はマミに苦手意識も持っていた。
「ねえ、「マミさんの仲間になるやつがどんなやつか見にきた!だけどマミさんは渡さない!」みたいに聞こえるのは私だけ?」
「ごめんさやかちゃん、思ってたよりわかってたんだね」
「やっぱりそうだったの?キョーコの愛情表現はちょっぴりわかりにくいから」
さやかとまどか、ついでにゆままでが杏子の素直になれなさを小声で話す。
結局のところ、杏子はマミが心配だったのだ。それを素直に言えず、新たな魔法少女の実力を、などと言い訳してここにいるのだ。
「とにかくあんたらの使い魔まで倒す主義がムカつく!一回戦え!」
周囲の生ぬるい視線と、全部わかってますよ的な空気に居心地が悪くなり、半ば勢いのあまり彼女はまどかに宣戦布告した。
「やめといた方が賢明よ」
とりつくしまもないほどにほむらが言う。
それは脅しやハッタリでもなんでもなく、純粋なる感想であった。
「うーん、私はあまり戦いたくはないけどまあ練習相手ってことなら……」
「じゃあせいぜい頑張ることね、杏子」
まどかが戦っても良いとわかると、まどかの練習相手になるならば……と迷うことなく生贄にするかのような発言に杏子が言葉を失う。
「じゃあ魔女の結界の中で戦おうか」
ほむらの経験では今はちょうど落書きの魔女が出てくる時期だった。
魔女の結界内で起きたことは、普段生活するこの世界に影響を及ぼさないことがわかっている。どれだけ大規模な魔法を使おうが、どれだけ物を壊そうが、結界が消えれば何もなかったかのように元の世界が広がっている。
ただ、その中で傷ついた人だけは戻らない。死ねばそこで終わりだ。
見学組のほむら、マミ、さやかと戦う当事者のまどかと杏子はほむらに誘導されて魔女の発生予定場所で待機していた。キュゥべえはというとお留守番である。
周囲の人を巻き込まないように警戒していたが、それも結界ができれば別だ。
全員で乗り込んで行った。
「相変わらずとんでもないわね」
落書きの魔女の結界内でボロボロにされた後縛られ磔られ全く身動きできなくなった状態の魔女と使い魔を見ながら言う。
まどかは入った瞬間に、魔法の練習とばかりに魔女をサンドバックにした。
殺さないギリギリのラインをほむらやマミに示唆されながら寸止めした。
そしてマミの魔法を見よう見まねで再現し、魔力によるゴリ押しで強度を補強した魔力リボンで魔女たちを縛りあげたのだ。
「これで安心して戦えるね」
「どっちが悪役よ!」
「準備運動も終わったし」
さやかはどんどんツッコミ役になっている件については言及するまい。
「ふんっ舐めやがって。魔女を縛る魔力を使ったまま私と戦おうってのか。特別な魔法もあまりなさそうだしよ」
確かに万能であるが故にまどかの魔法に特性はない。
ただし抑えてる魔力の量に杏子が気づくのはいつなのか。
「じゃあ始めよっか」
杏子は最初、戦い慣れていないまどかは近距離でさっさと仕留められればいいと思っていた。だからこそ普段使い慣れている槍より、近接型の武器である三節棍の先に刃のついた武器を造った。
まどかもまた、杏子に合わせて近接戦闘の武器を魔法で生成する。鞭のようにしなり、生き物のように襲いかかるそんな武器。
しばらく杏子の三節棍とまどかの奇妙な武器が火花を散らし激突する。
「うーん、なかなかうまくいかないなー。近接戦闘はもういいや、しっくりこないし」
「なんだよっ、このパワーは!」
まどかは魔力操作の練習として緩急をつけていた。と言っても、攻撃の瞬間だけ魔力を抑えるのをやめるだけの技だが。
むしろ攻撃するのに力を抜くという奇妙な動作は杏子を混乱させた。しかし桁違いの魔力に押されて後ろに下がる。
一撃一撃が必殺の威力があり、マミほどではないがそこそこ経験のある近接型の魔法少女の杏子だからこそ防ぎ続けていたとも言える。
最初はこんな単調な力任せの攻撃、簡単に受け流せる、と舐めていた杏子もその考えを改めた。
単なる力任せ。だがその力が他の魔法少女と一線を画する。
元々、中距離の槍が得意な杏子は一度距離をとって持ち直した。
今度は槍で、と槍を造ったとき、目の前でまどかが全く異なる行為に及んでいることに気づく。
武器をやめて、両手から吹き出す魔力を制御しようとしていた。すぐに吹き荒れる魔力は制御され、そして収束していった。
するとまどかの前に複雑な巨大魔法陣が浮きあがる。
「なんだか魔法少女っぽいでしょ」
「かっこいいわ、まどか。私のハートもあなたのビームで撃ちぬかれたわ!」
はしゃぐほむら。人差し指で銃を撃つ真似をしている。もちろん撃つ先はまどかの胸。
「なっんだよありゃあ?!」
危険を悟った杏子が横に飛び退いた。さっきまで杏子がいた場所に光線が走った。はるか後ろに魔女のなにかがあったのかもしれないが跡形もなく消し飛んでいる。結界本来の色が後方に広がっていたのだ。
それを見た杏子に冷や汗が流れる。
「あんなの食らったらマミるわよ」
油断するたびに頭を食われたり吹き飛んだりと悲惨な最後を迎えやすい先輩をほむらはさりげなく馬鹿にする。
「なんの話よ」
過去のことなど知らないマミからすれば、言いがかりもいいところだ。
さやかはまどかの戦闘に魅入ってい、ツッコむほどの余裕もなかった。
「ちょ……なんだよあの魔力!どこから連れてきたんだよあんなバケモン!」
先ほどまでの攻防はまどかの規格外っぷりを知らしめるのに十分だった。
魔法少女何人分かという魔力とそれを活かす多彩な魔法に杏子は盛大に顔をひきつらせた。
「エヘヘへー今度は幾つかいっぺんに作ってみようかなぁ」
二人の周りにはあっという間に数十の魔方陣が展開されていた。そのどれもが杏子を捉えて逃がさないように縦横無尽に360度囲んでいた。
杏子、絶対絶命のピンチ……ではないが敗北フラグである。
まどかさん……魔法少女とかゾンビとか以前に人間やめてますよね
魔法陣多重展開って、しようと思えばソウルジェムがとても濁りそうです。
ああ、やっぱり更新が早すぎるのでしょうか。明日からは毎日一話にしておきましょうか。