まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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杏子ちゃんもとうとう秘密を知りました。


新たなる影

 

 杏子は負けを認めた。かつて違う過去のループでキュゥべえが言っていたようにまどかは才能だけで杏子を越えることができる。その結果が出たにすぎないのだろう。

 

 元々杏子はまどかを倒したいわけではなかった。かつてペアを組んだマミ、彼女が新たに得た仲間の実力を知りたい。それは偽らざる本音であった。

 マミは明らかに実力不足の魔法少女とも組む可能性がある。かつて自分が育てられたように。ただ、自分がそうだったように、足手まといになるのならば傷の浅い今のうちに引き剥がしてしまおうとさえ思っていたのだ。

 蓋を開けてみればなんということか。むしろマミよりも圧倒的なその力。戦いの経験不足によってマミと対人戦を行った時にマミに軍杯があがるようであれば、彼女が育てようというのも無理はない。

 そう、まどかなら組む価値のある魔法少女だ。

 それを体で理解したからこその負けだ。もちろん戦いでも負けではあるが、それ以上に戦う理由を剥奪されての負けだ。

 それを恥ずかしがる風でもなく、杏子の方から本題をきりだした。

 

「で、話ってのはなんだい?」

 

 勝負に負けた杏子はマミの家につれてこられていた。マミの家が親の目もなく一番魔法少女の話をするのに向いているとは皮肉で切ない話だ。さやかも既に無関係ではいられず、この場に居合わせることとなった。

 自分のことを心配してくれていた杏子になんとも言えない喜びを感じたマミは終始ニコニコしている。

 

「魔法少女のことよ」

 

 まどかを抱きしめながら凛とした表情で語るほむら。実に台無しであるが、それを言える無謀な命知らずはここにはいない。

 

「あなた魔法少女のことどこまで知ってる?」

 

 実に意味深なセリフである。魔法少女の秘密を全て知っているかのような物言いには杏子を馬鹿にしたようなニュアンスはなかった。ピリッと杏子に緊張が走る。

 

「願いを叶えてもらう代わりに戦う運命を背負わされたやつだろ。ソウルジェムはその証で魔法の象徴」

 

 簡潔でいて、受け入れやすい理由。正義の味方だとか、思春期の人間のように特別を求める人間にとって、願いを叶える代わりに戦いの運命を背負えと言われれば、対等な契約のように思えるのだろう。

 しかしそれならばまどかのように願いを叶えられるだけの何かで魔女とやらを殲滅できるだけの存在を作ればいいのだ。従順で、それでいてもっと強力な壊れることのない秘密兵器。それならば魔女を殲滅するだけならば実に簡単だ。

 

「間違ってないけど足りないわ」

 

 杏子が知らないのは無理もない。キュゥべえが意図的に隠蔽していたのだから。

 魔法少女というのは人間の感情エネルギーを効率良く回収し、宇宙に還元することで世界を救おうとするシステムである。ソウルジェムはそのための補助器具で、魂を使った宝石は濁ると魔女となる。

 もちろん、魔女と戦わせることで急速に魔女化を早める効果もある。

 ほむらは杏子にそれらのひみつを話した。ソウルジェムの正体を、魔法少女の最期を、そしてインキュベーターの目的も。

 

「あいつらは私達魔法少女を家畜や燃料程度にしか思ってないわ」

 

 あの淫キュベーターめ、と忌々し気に呟く。感情がないのに淫乱とはこれいかに。

 杏子はうちひしがれるでもなく、絶望することもなかった。

 ほむらはそれを知っているからこそ、束縛も前置きもなく自由な杏子にこれを話したのだ。

 

「本当なのかよ、てめえ!」

 

「なんだか正体を知られるたびに吊るし上げられるのがお決まりになってきたよ」

 

 きゅっぷい、とゲップをして飄々とぬかす様はなんとも憎たらしく、杏子もこのままではまた一体、キュゥべえの体を壊してしまいそうだ。

 

「って言うわけでソウルジェム貸してね」

 

 ほむらは魔法少女にとって命より大切な宝石を渡せと要求した。

 

「なんでだ?」

 

 あれ? 真剣な場面じゃなかった?とさやかはツッコミが追いつかないことに焦った。

 

「今の話聞いて渡せるかよ」

 

「とにかく」

 

 ほむらは時間停止を使ってまで杏子からソウルジェムを取り上げた。

 もちろん壊すためでも痛めつけるためでもない。ほむらはまどかに杏子のソウルジェムを手渡した。まどかにもまた、何をするのかが伝わっていた。

 まどかはいつものようにソウルジェムを浄化した。手から銀色の光が照射され、杏子のそれは元の輝きを取り戻した。

 

「今度から魔女と戦ってる最中以外はソウルジェムが濁ったら私のところにきてね」

 

「そっか……お前の願いって……」

 

 杏子が何かを悟ったようにまどかにやや同情と憐憫の目を向けた。

 たったこれだけのやりとりと、キュゥべえからの情報だけでまどかの契約の一部を予測したようだ。

 やや普段の言動とは裏腹に、人の心に聡い杏子にさやかとマミは驚いた。あれだけでわかったのか、と。

 

「わかったよ、悪かったな。これで手打ちにしようぜ。食うかい?」

 

 これはいつもの杏子の仲直りの仕方であった。

 同じ釜の飯を食う仲間、という表現が杏子は好きだった。一緒に同じものを食べれば、多少のことは水に流せると思っている杏子なりの最大限の謝罪だった。

 

「ありがとう、よろしくね」

 

 まどかとほむらもまた、杏子は仲間として戦える、信用できる相手として見ているのでそれを受け入れた。

 また一人、魔法少女の仲間が増えた。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 いつものように魔法で手に入れた金などでホテルに泊まったり、公園で野宿するのはよくないと思っていたほむらの懸念も、次のマミの一言で解決することとなった。

 

「佐倉さんたち、もしよかったら私の家に泊まっていかない?私も一人では寂しかったし」

 

 両手を添えるように顔の前で合わせ、優しく微笑みながら言われて恥ずかしさで断ることさえできない杏子は大いに取り乱した。

 

「ままままマミがそういうなら仕方ないな。別に寝るところぐらいあるけどマミが寂しがるから仕方ないしな!」

 

「キョーコがそういうなら、おことばにあまえます。よろしくお願いします」

 

 ゆまの方がなんとも大人な対応に、これじゃあどっちがお姉さんかわからないね、とまどかが言った。

 そんなの、私がお姉さんよ、と立候補したのはマミだった。

 

「じゃあ私達はこれで、行きましょまどか」

 

 その後のことまでは知らないわ、とまるで自分もまどかの家に帰るかのようにほむらは言った。

 まどかもそれをさも当然のように受け入れているが、帰る家は違う。

 

「じゃーねー」

 

 三人が出て行った。

 マミがくるりと振り返り、先ほどとはまた違った笑みを浮かべた。

 目がキランと光り、いかにも良くないことを企んでいる。

 

「積もる話もあるし、今日は寝かさないわよフフフ……」

 

「マミ……さん? 顔が怖いよ? ゆまもいるしあまり変なことは……」

 

 思わず敬語になっしてしまうほどに警戒した杏子。じりじりと両手を前に構えながら後ろに下がる。その笑顔もしっかりとひきつっている。

 

「ん? ゆまお邪魔?」

 

「そんなことないから! お願いだからゆま一緒にいてくれ!」

 

 まるで私、空気読みましたとばかりに引き下がろうとするゆまに思わずすがりついた。

 役立たずでありたくないというゆまにとって私生活で杏子に頼られることは珍しいので思わずにやけた。

 

「冗談よ。取りあえずお風呂に一緒に……」

 

 先ほどの泊まるのとは異なり、本気で嫌がる杏子にちょっと残念そうにしながらマミは発言を撤回した。

 しかし度合いが優しくなっただけでその意味はさほど変わっていない。

 

「冗談じゃないじゃんか」

 

 杏子はぶつくさいいながらも三人で入った。どうせそれ以上は譲歩してくれまい。泊めてもらってるしそれぐらいなら、と様々な要因が杏子のタガを緩めた。

 その描写は杏子の名誉のために省略させていただいた。

 そのあとは三人で食事をとった。これまで出来合いのものばかり食べていて手料理に飢えていた杏子とゆまはマミの打算通り胃袋を掴まれてしまうのであった。

 

 食後のお茶を飲みながら、暖かな湯気に眠気を誘われたのか二人ともがもう寝ていた。

 ゆまは飲んでいる最中に、机に座りながら寝ていた。

 杏子は自分の判断で敷かれた布団に入っている。

 マミはゆまをお姫様だっこで布団まで運んだ。

 

「もう二人とも寝ちゃったのね」

 

 ゆまという存在があるからか少し普段はお姉さんぶっているところがあるが、こういうときはまだまだ可愛いとマミは寝顔を見つめて思うのだった。

 間も無くマミも寝てしまった。

 

 誰もが寝ている部屋で、一言ずつ寝言が聞こえた。

 

「もう一人じゃないもん」

 

「ふぁぁもうたべられねえよ」

 

「やめて……もうぶたないで」

 

 三者三様の寝言だった。まるでそれぞれの性格と過去を暗示するかのような。

 彼女らを起こすことなく夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 とある邸宅。その壁には様々な落書きやイタズラ……嫌がらせの跡が残っている。その上から白いペンキをぶちまけて無理やり隠してあるのが、うっすらと浮かび上がる色からわかる。

 それでいて庭は今も整備されており、立派なバラが植わっている。

 

 その屋敷の一室で、全体的に白い印象の少女が目を開けた。そのまわりにはふわふわと水晶玉のようなものが浮かんでいる。

 何かに集中していたかと思えば、それをやめて、"自身の見た結果"に驚いた。

 

「未来が……どういうこと?!」

 

 

 




指摘を受けて修正しました。
確かに元を辿れば一緒ですけど……そんなものを間違えちゃダメでしょ…………
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