まどかは願いで最強になって魔法少女の問題をねじ伏せるようです   作:えくぼ.

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 今回は長めです。理由は……勢いです。各部分を分けて加筆修正していると、思った以上に濃密な部分が出来てしまうんです。
 いつものことながら若干、ほむらやマミのキャラが崩壊気味です。 シリアルのタグをつけた方がいいんじゃないかってぐらいにはシリアス場面を壊してしまいます。シュールを目指しております。
 楽しんでいただけたら幸いです。


大いなる力には責任が伴う

 

 

 激しい金属音が庭に鳴り響いた。

 

 当然襲いかかったのはキリカで、襲われたのはまどかだった。

 しかしその刃……爪はまどかに届くことなく防がれた。透明の何かがまどかの周りに薄く張っていて、それが爪を食い止めていた。爪の当たっている部分が歪み、時折虹色に光る。

 

「いきなりなにするの……?」

 

 まどかは怯えた表情で尋ねた。

 魔法少女となったとはいえ、今まで戦ったことがあるのは魔女か杏子の決闘ぐらいである。

 明確な殺意をもって人に攻撃されたのは初めてだったのだ。

 怯えるなという方が無理だろう。

 キリカは胡乱な目つきで自らの在り方をぼやいた。

 

「織莉子以外のことなんて脳の容量がもったいないよ」

 

 だから考えることを放棄した、と。

 

「織莉子が困るなら客人を故人にしてしまえばいいんだ」

 

 カキン、と爪同士が当たる音がしてまどかは一歩後ずさった。

 ほむらはいつでも魔法が発動できる状態になっている。

 

「やめなさい!」

 

 織莉子が感情を露わに怒鳴りつけるのを見たのは初めてかもしれないとほむらは思った。

 ほむらは決して無策でまどかを危険に晒すようなことはしない。

 今回無事だったのにも事前の策がうまく機能したことに他ならない。

 

「気をつけることね。見た目が制服だからわかりにくいことさもしれないけど今のまどかは常に変身状態よ」

 

 本来魔法少女はスマートフォンやパソコンのようなものだ。

 電源を消すにはソウルジェムを引き剥がす。電池を節約するには人間状態でいることだ。変身状態は画面をつけているような状態であるし、魔法を使うのは動画を見たりするような、より多く電気を食う動作だ。

 

 つまり常に変身した状態でいるというのは無駄に魔力を使い続けるようなものであり、魔法少女にとって危険極まりない行為であるということになる。

 さらにはその魔法少女の衣装の見た目を魔法で変換し、制服のようにして過ごすなど、魔力の無駄極まりない行為である。

 

 ただ、まどかにそれらの常識は通用しない。

 どれだけ使っても濁らないソウルジェム、そしてその大きさはまどかの持つ魔力量を示す。

 

 誰よりも大きなソウルジェム。

 

 使い続ける持久力だけなら、まどかにとって魔力の限界とはないようなものだ。

 あとは変身状態で周囲にマミがした防御結界魔法を張ることで確実な安全をとっていたのだ。

 

「相手の手が読めないうちに突っ込まないでね」

 

 それは交渉のこともあるだろうが、それ以上にキリカを危険な目に合わせたくないのだろう。

 

 キリカが崇拝レベルで依存している織莉子。その意に反することをしてしまったキリカは目に見えて落ち込んでいた。

 

「大丈夫、怒ってないわ」

 

「本当かい? よかった」

 

 まるで犬のように、くるくると織莉子の一言に一喜一憂しているその様は本性さえ知らなければ微笑ましいものであった。

 二人のそんな信頼と呼べるかわからない関係にほむらがぽろっと漏らした。

 

「妬けてしまうわ」

 

「何言ってるのほむらちゃん、私だってほむらちゃん大好きだよ」

 

 まどかはそんなほむらの心情を手に取るように理解していた。

 ここしばらくは冷静沈着なキャラでループしていたため、素直に愛情を示されることがなかったほむら。久しぶりの言葉に顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。普段はあれだけ過激なことを思っているくせに妙なところでウブだった。

 

「で、交渉の話しだけど」

 

 ほむらは誤魔化すように話を進めた。

 

「その話で私達にメリットは?」

 

 そう、理由もなく襲うのをやめろと言われてやめられるようであれば最初から襲っていない。

 そのことをほむらがわかっていないはずがなく、ならば何か止める材料を持ってきたのだろうと織莉子は推測している。

 

「わかっているのでしょう、利益がほしいのではなく不利益を減らさなければいけないと」

 

 織莉子とキリカは何かが欲しくてまどかを襲うわけではない。自分たちを守りたくてまどかを襲うのだ。

 大多数が知れば賛否両論の意見であるが、彼女たちはそれを正当防衛だと思っている。

 

「確かに、目先の利益に惑わされて諦められるものでもないわ」

 

 そのことをほむらはよくわかっている。

 彼女がまどかを譲れないように、彼女たちにもまた、譲れないものがあるのだ。

 だがその理由とはまどかが魔女化することで成立する。

 

「できたのよ、あなた達がまどかを狙わなくても済む理由がね」

 

「それは魔法少女に変身し続けていることと関係ある?」

 

 先ほど説明したように、本来魔法少女が変身し続けて偽装するというのは自殺行為である。

 それができるカラクリに、まどかの秘密というものがあるのではないかとは織莉子でなくとも予想がつくことである。

 

「言わなくても進んで楽だわ」

 

 ほむらは察しのいい人間は嫌いではない。

 元来口下手で、現在も無口を通すことの多い彼女にとって、それぞれの魔法少女を説得するために一から十まで説明するというのは拷問であった。まどかのことでもなければこんなめんどうくさいことをしているはずがない。

 だから織莉子がそうして一を聞いて二を知る以上の理解力があるのは非常に喜ばしいことなのだ。説明する量が半分にまで減るのだから。

 

「私が魔法少女になった時の願いを聞いてほしくて」

 

 今のまどかがどんな魔法少女が説明する。それに至るまでの経緯と共に。

 

「それでもあなたが絶対に安全だという保証がないわ」

 

 キュゥべえがどんな手を使ってくるかわからないのだから。

 だから彼女たちはまだその話を肯定することはなかった。

 

「キュゥべえは嘘をつかないし、契約で壊れない穢れないソウルジェムを手に入れたまどかが魔女になるわけがないわ」

 

 契約は絶対である。

 どのループでさえも、キュゥべえが叶えた願いに嘘だけはなかった。

 助けてと言ったマミも、確かに家族ごとではないが瀕死から本人だけは助かっている。

 信心を得るのではなく、人に話を聞いてもらうことを願った杏子は、何かあればあっさりとその信心も離れていった。

 その絶対のルールだけはほむらは信じていた。

 

 だが織莉子の危惧するところはそれだけではなかった。

 

「強い力には責任が伴うわ」

 

 いつかその力に溺れるかもしれない。誰かがそれを妬み願いで変えるかもしれない。織莉子はそれらのことさえも危惧しているのだ。

 遠い未来は性格には視れない。そのことは彼女が未来予知を過信できない理由でもある。

 

「だけど───」

 

 まどかは自分はそんなことにならないと言おうとした。

 大切な人を守るためだけにこの力を使えるはずだ、と。

 

「だからよ」

 

 織莉子はまどかの言葉を遮るように続ける。

 

「だからあなたが魔女化しそうになったらすぐに楽にしてあげるわ」

 

 二人が誤解していたことがわかった。

 だが已然としてほむらは二人を睨みつけている。

 ほむらとしては、まどかに少しでも危険が及ぶような選択はとりたくなかったのだ。

 

「いいのほむらちゃん!」

 

 今度は今にもほむらが飛びかかりそうであった。

 それを止めるようにまどかは両手でほむらの肩を抑えている。

 

「できるかわからないけど、あなたが明らかに人間に害をなそうとするならいつでもそのソウルジェムを撃ち抜いてあげるわ」

 

「私は……そういう仲間が、いや敵視してくれる人がほしかったんだから」

 

「客人は自傷趣味があるのかい? 変わってるね」

 

「どういうことなのまどか」

 

「いくら願いでとかキュゥべえが嘘をつかないとか言ってもね」

 

 すべての物事に絶対なんてないから。

 

「私がいつかこの大好きな世界を壊す側にまわってしまうことが何より怖いの」

 

 誰よりも強いその力を誰よりも恐れるのはまどか自身だった。

 強く、誰かの役に立てるそんな存在を目指して、本末転倒にならないために。

 彼女は覚悟とともに、その力を行使して人を傷つける側にまわるぐらいならば仲間の手で殺してほしいとさえ思っていたのだ。

 

「そんなことは……」

 

 ほむらはそれを否定しようとした。

 自分の知るまどかという人間は、どんな時でも人を傷つくのを黙って見ているぐらいなら自分の身を魔法少女として投げ出すような人間だった。そんな少女が力に溺れるはずがない、と。

 しかしあまりに強いその瞳を見て、何も言えなくなったのだ。

 初めて会ったときの憧れた少女と何も変わらない。出会った時間に差があれど、その人の性質に何ら違いはないのだと改めて実感させられた。

 

「ないと言える? 違うわよね」

 

 織莉子もまた、まどかの危険性を見過ごすわけにはいかないと知ってい人物だ。

 ほむらと違い、まどか個人に何の思い入れもない。

 ほむらがまどか以外の人間とまどかを天秤にかけられたら躊躇いなくまどかを選べる人間だとすれば、織莉子は全く逆の人間なのだ。

 

「何度繰り返したの? あなたの存在が証明してる。鹿目まどかは幾つもの時間軸で危険な存在になったことを」

 

 そしてほむらがそれを止められずに過去に戻ったことを。

 

 キリカは今も納得がいかないようだ。織莉子がそんなに困るなら今殺せばいいじゃないか、どうして待たなければならないのか、と。

 

「ほむらちゃんの静止を振り切ってまで魔法少女になっといてずいぶんと勝手だと思うけど」

 

 苦し紛れに笑うまどか。その顔はどこか悲しげに歪む。

 

「これから一緒にいてくれますか? 織莉子さん、キリカさん」

 

 魔法少女としていくら強くても。心はまだまだな鹿目まどかのために。

 

「織莉子が重い荷物を背負うっていうなら一緒に背負うだけだよ」

 

 どんな選択でも最終的には織莉子に従う。キリカが織莉子を慕うのは筋金入りである。

 

「本当に私達でいいの?」

 

 ほむらは変な顔をしていた。怒りたいのに怒れない、泣きたいけどそれを堪えている、そんな微妙な顔であった。

 

「あなた達だからですよ」

 

 いざという時、本気で私を救ってくれるあなた達だから。

 まどかは言外の信頼をその笑顔に込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほむらは自身の知る中で最も敵意を持ちまどかを害しようとする魔法少女の停戦をこぎつけられてほっとしていた。と同時に、まどかが敵さえ自分の抑止力と見ていた、そのいつまで経っても変わらない自己犠牲に悲しさを覚えてまどかに飛びついた。

 まどかは何も言わず、ほむらを抱きしめて背中をさすっていた。

 ほむらは泣くわけでもなく、「ばか」とまどかをひたすら罵倒していた。

 

 その光景を横目に、キリカは織莉子に尋ねた。

 

「よかったのかい?」

 

「あんな風に真正面から信頼されたら……応えるしかないじゃない?」

 

 そういうキリカはどうなのか問い返そうとしてやめた。

 

(私を崇拝レベルで依存している彼女だもの)

 

 答えが予想できるし、それを聞くのは少しだけ胸がチクリとするのだから。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 もうみんなで集まるのがマミの家が普通になってきているのはマミが寂しいとかそういうわけじゃないとマミの体裁のために付け加えておく。

 

 決してマミさんが「え?集まるの?私の家なら空いてるわよ!」とか言ってないし、杏子が「元のマミさんはどこ……」とか泣いてなんかいない。

 

「と、いうわけよ」

 

 おきまりの説明描写の省略により、ほむらがそう締めくくったところに場面は移る。

 魔法少女狩りをしていた過去を説明するところが一番のネックではあったが、それはマミがソウルジェムの秘密を知ったときに暴走しかけたことを語りフォローを入れてくれたおかげでさやかにも受け入れやすく話すことができた。

 

「美国織莉子です。よろしくお願いします」

 

「織莉子大好きキリカだよ。よろしく」

 

 深々とお辞儀する織莉子に、軽い調子のキリカが対照的である。

 その印象は概ねよかった。元々ここにいるメンバーは魔法少女の中でライバル意識というものが低い。一時は杏子とマミが争う構図になっていたが、今では同居している。グループとしては他の魔法少女を仲間として受け入れることにあまり抵抗がなかった。

 ただ一人を除いては、だが。

 

 両拳を握り締め、俯いてただならぬ雰囲気の人物がいたのだ。

 

「お前……織莉子って言ったな」

 

 杏子がその容姿と名前を聞き、そしてゆまの怯える反応を見て態度を変えた。

 

「そういやゆまちゃんが魔法少女になったのってそこの白いののせいよね」

 

 この時間とは別の時間で、まどかが織莉子に殺されたことがある。

 その時もゆまは魔法少女であり、その理由には、織莉子が関わっていた。

 

「やっぱりか」

 

 織莉子が必死で弁解する。あの時はまどかを魔法少女にさせないためにキュゥべえの目を逸らすと同時に杏子に死なれるわけにもいかなかったことなど。実際ゆまが来ていなかったら杏子は死んでいたかもしれない。杏子は面倒見がいいこともあり、命の恩人を無下にもできないでいる。そしてゆまと今も一緒にいることが、ゆまが魔法少女になったことについて杏子が強く責めることができないことを表している。

 だからそんな織莉子を見て拍子抜けしたのか、手をぷらぷらと振って、魔法少女にさせたことについて水に流すことにした。

 

「もう魔法少女の件についてはいいよ。まどかがそれを解決してくれたしな」

 

 戦わなくても定期的にまどかのところに行けばいい。

 杏子が使い魔も魔女も倒して、回復だけゆまに頼めばいい。

 杏子はそう思っておくことにした。

 

「それよりもが!」

 

 杏子は噛んだ。

 どうして一番大事なときに、と全員が心の中でツッコんだが、空気を読んで黙っていた。

 

「それよりもだ! 許せねえのは魔法少女にするとき、ゆまのことを"役立たず"って言ったそうだな!」

 

「確かに言ったわ……」

 

 弁解はしなかった。

 あの時ゆまに魔法少女になることを強制させるには一番効果があったのだ。

 未来予知でもその言葉で魔法少女になる運命が見えていたからこそ実行したのだから。

 

「それを……それだけは撤回してやってくれよ」

 

 杏子は振り絞るように言った。

 その声には、ゆまが魔法少女になったことについて誰よりも自分を責める気持ちが滲んでいた。

 

「佐倉さん……」

 

「親にも必要とされなかったあいつがどれだけその言葉を嫌ってるか知ってて言ったあげく謝罪もないままならこいつらを仲間と認めるどころか近くにいるのも嫌だね」

 

「キョーコ……」

 

 ゆまは自分は魔法少女だから杏子に必要とされていると思っていた。

 だが今の杏子を見て、彼女がそんなことを関係なく自分を思っていてくれたことを理解した。

 そうではあっても未だ彼女の役に立ちたいという気持ちが薄れることはないのだが。

 

「ごめんなさい」

 

「もういいの、こうやって魔法少女になったからキョーコの隣で戦えるし、もう役立たずなんて言わせないから」

 

 ゆまも杏子も強かった。

 

 織莉子が頭を下げたからといって怒りの全てが消えるわけではないが、それでも水に流してしまえるのが杏子のいいところだった。

 

 ほむらはかつてさやかを励ます時に一度跳ね除けられたリンゴを手にしてもう一度励まそうとした杏子を思い出していた。

 

(あんこちゃんマジ女神)

 

(私はマジ空気)

 

(そういう過去があるなら早めに言ってよね……)

 

(ごめんなさいまどか)

 

(こいつら……もう目で会話してやがる……私と恭介だってまだなのに)

 

 ほむらにとって、こんな風に仲間が増えたのは初めてであった。

 最も順調に仲間が増えたのが織莉子に初めて会ったループであった。それでも三人だったから。

 

 その時のループではまどかが織莉子に刺し違えられたのだが、それはまた別の話。いや、別の時間。

 

 度々過去を思い出しては泣きそうになるほむら。

 一人呟くその想いを聞き取る者は誰もいない。

 

「このままワルプルギスの夜と戦えば、まどかがいれば終わる。そうして魔法少女は日常を取り戻すの。その時になれば私はきっと……」

 

 ほむらは愛おしそうに盾を撫でた。

 その盾の全ての機能を理解している彼女は、自分に残酷な期限があることを知っていたのだ。




 ワルプルギスまで残すところあと僅か。そしてまどかの願いが違う以上、劇場版(叛逆ルート)への突入の予定がございません。そしてオリジナル展開はそこから始まります(多分)
 感想などは大歓迎でございます。どんな感想でも喜んでおります。
 そして読んでいただいている方はありがとうございます。

PS.ソウルジェムを武器にすればいいんじゃね?とかは言わないでください。まどかがちょっぴり痛がります。そしてほむらが発狂します。
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