病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第11話

 うる星やつらに登場するサクラは巫女としての霊能力と常人離れした怪力を持つキャラクターだが、初登場時は子供の頃から様々な病気にかかっていて日常生活を送るのも困難な病弱体質であった。

 

 それがある日、ラムとの生活に嫌気がさして家出した諸星と出会い、彼のあまりもの不吉な人相を見たサクラは諸星の不運を祓おうとお祓いを実行したのだが、何故か自分に取り憑いていた無数の病魔を祓ってしまったのだ。そしてサクラの身体から出た無数の病魔は一つに集まって死神となり、今度は諸星に取り憑いたというのがリュウダの知るサクラが初登場した話の内容である。

 

 だが今回諸星に取り憑いたのは死神ではなく悪霊で、サクラはその退治に美神や冥子に協力を求めたのだった。

 

「そうだったんですか。それで冥子先生と美神さんはそちらにいるサクラさんとどういう知り合いなんですか?」

 

「私はねー、お母様とサクラちゃんの叔父様が知り合いなのー」

 

「私の方もママとサクラの叔父さんが知り合いでね。それで知り合ったのよ」

 

 リュウダがどうやってサクラと知り合ったのか聞いて冥子と美神が答えると、それを聞いた横島が美神に話しかける。

 

「美神さんと冥子ちゃんのお母さんの知り合い? それって誰です……?」

 

「不吉じゃあっ!!」

 

「うわあっ!?」

 

 横島が美神に話しかけようとした時、突然彼の足元から大きな声が聞こえてきた。その声を聞いた皆が声がしてきた方を見ると、そこには子供のように小柄な袈裟を着た僧侶が横島を指差していた。

 

「な、何だ? アンタは……?」

 

「お主の顔……! あの諸星あたると負けず劣らず不吉な人相をしておる。まるでこの世の全ての不幸を背負っているようじゃ……! しかもお主には女難の相もあって、それが不幸の始まりのように見える。……お主、これからは煩悩を捨て、女性に関わらぬように生きていけ。そうすれば人並み程度の幸せは得られるじゃろうて」

 

「絶対に嫌じゃ、アホ!」

 

 横島が聞くと僧侶は彼を指差したまま助言らしき事を言い、それを聞いた横島が怒鳴る。

 

「あら、『チェリー』じゃない。久しぶり」

 

「チェリーさん。お久しぶりー」

 

「おお、令子に冥子。今日を呼び立ててすまなかったのう」

 

 美神と冥子が小柄な僧侶の姿を見て親しげに話しかけると小柄な僧侶も手を挙げてそれに応えて、横島が美神と冥子に話しかける。

 

「え……? 美神さん? 冥子ちゃん? この坊さん、知っているんスか?」

 

「知っているわよ。彼は錯乱坊と言って、今言ったサクラの叔父さんなの」

 

「この坊さんが?」

 

 横島の質問に美神が答えて彼が錯乱坊と呼ばれた小柄な僧侶を見ると、小柄な僧侶は頷いてみせた。

 

「左様。拙僧、錯乱坊と申す者、どうぞチェリーとお呼びくだされ」

 

「チェリーさんですか。何だか可愛らしい名前ですね」

 

「錯乱坊だからチェリーって……上手いこと言ったつもりかよ?」

 

 小柄な僧侶、チェリーの自己紹介におキヌちゃんと横島がそれぞれの反応をすると、チェリーは次にリュウダの方に視線を向け、次の瞬間目を見開いた。

 

「………!? お、お主……!」

 

「お、俺ですか?」

 

「うむ。少年、お主もここにいる少年や諸星あたると同等な、次か次からと様々な不運がやってくる不吉な面相をしておる……! しかもそれだけではなく理不尽な死が襲いかかって来る死相も重なっているようにも見える。まるで二つの人生を同時に歩んでいるような……。このような面相、儂は今まで一度も見たことがない。……何はともあれ、不吉じゃ」

 

「……………!?」

 

 チェリーをリュウダに向かってそう言うと両手を合わせて祈りだし、それを聞いたリュウダは驚きのあまり声を出せずにいた。

 

(二つの人生って……もしかしてこの世界とダークソウルの世界のことを言っているのか? 今までダークソウルの世界については誰にも言っていないのに気づくなんて……もしかしてチェリーって霊能力者としては一流なのか?)

 

 内心でそう考えるリュウダだったが、思い当たるフシはいくつもあった。

 

 原作のうる星やつらのチェリーは、基本的に何処にでも現れては場を引っ掻き回すという役割が多かったが、霊能力者として活躍している場面も多くある。僧侶として妖怪を退治したこともあれば、諸星の不吉な未来を予想してはその全てを的中させている。

 

 今思い返してみるとチェリーは、気がつけばいきなり現れてその場にある食べ物を食い漁るという点を除けば、霊能力者としての実力は確かで困っている者(主に諸星)を見るとその力になろうとする(結果はともかく)一流の僧侶なのかもしれない。そう考えるとリュウダは他の皆のようにチェリーを呼び捨てにはできなかった。

 

「あ、あの、錯乱坊様……?」

 

「そう固くならんでよいぞ? 皆のように気軽にチェリーと呼びなされ」

 

「で、ではチェリー殿と。……俺や横島が不幸なのは置いといて、今日は諸星に取り憑いた悪霊を退治するのでは?」

 

 これ以上話しているとダークソウルの世界についても勘づかれそうな気がしたリュウダは、恐る恐る諸星の名前を出して話題を逸らそうとする。もし万が一ダークソウルの世界のことを知られたらチェリーがそれに関わってきそうな気がして、そのせいでダークソウルの世界に行けなくなってクラーナ達と会えなくなるのを避ける為だ。

 

「おお、そうじゃった! 急いで諸星に取り憑いた悪霊を退治せねばならんかった。皆の者、ついてまいれ」

 

 リュウダの言葉で当初の目的を思い出したチェリーは神社に中へ入っていき、他の皆もそれに続いて行く。その中でリュウダは上手く話題を逸らせたことに内心で胸を撫で下ろすのだった。

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