病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第12話

 リュウダ達がチェリーとサクラの後について行き神社の中に入っていくと、中では諸星が一人うなされながら眠っていた。よく見れば眠っている諸星の顔色は非常に悪く、このままでは命が危ういのは明らかであった。

 

「ではこれより諸星あたるに取り憑いた悪霊の退治を行う。すでにこの神社には悪霊を逃さぬよう強力な結界を張っておるが、悪霊は極めて強力で凶悪。下手をすればこの中の何人かが死ぬであろう。……皆の者、覚悟はよいな?」

 

「へ、へぇ~……? 極めて強力で凶悪な悪霊、下手をすれば何人かが死ぬッスか……。それじゃあ、美神さんに皆、頑張ってください」

 

「何、馬鹿なことを言っているのよ!」

 

 チェリーが悪霊の退治について説明をすると、横島が顔を青くして逃げ出そうとするが、それを美神が捕まえる。

 

「悪霊を逃がさないように強力な結界が張ってあるって言ったでしょう? だから悪霊を退治するまで外に出られないのよ」

 

「イヤー!? 見逃してー! 勘弁してくださいよ、美神さん! 俺はただの助手ッスよ!? 強力で凶悪な悪霊が出てきたら何の役にも立ちませんよ!」

 

「ええい、見苦しい! 藤沼クンを見なさい!」

 

 美神の言葉に横島は滝のような涙と鼻水を出しながら必死に逃げようとして、そのあまりの往生際の悪さに美神は冥子の隣で悪霊退治の準備をしているリュウダを指差した。

 

「藤沼クンも横島クンの言うただの助手だけど、落ち着いているでしょう? ちょっとは見習ったらどう!?」

 

「藤沼は霊能力があって俺みたいな凡人とは違うッスよ! 前だって俺に取り憑いた低級霊を炎で焼いたし……って、待てよ? なあ、藤沼? お前だったら諸星に取り憑いた悪霊を退治できんか? ほら、諸星から出てきた瞬間に一気に炎を出したりして」

 

 美神に必死の形相で反論する横島は途中で良い事を思いついたとばかりに、リュウダに以前自分に取り憑いた低級霊を焼き尽くした呪術の火で諸星に取り憑いた悪霊も焼けないか聞く。

 

「いや……。俺の能力が本当に通用するなら試すけど……。でもサクラさん? 実際のところ諸星に取り憑いた悪霊ってどんな奴なんですか?」

 

 リュウダは横島の提案にそう答えると、次に諸星に取り憑いた悪霊について間近で見たサクラに聞いてみた。すると彼女は難しい顔をして口を開いた。

 

「正直なところ、私はあの様な悪霊を見たことがない。あの時私は自分から諸星に取り憑いた無数の病魔を祓ったのじゃが、その時に病魔達が何かに吸い込まれたかと思えば、空間を切り裂き例の悪霊が現れたのじゃ」

 

「要するに相手の情報はほとんど無しってことですか。……ふむ」

 

 サクラの言葉を聞いてリュウダは少し考えてから冥子に指示を出す。

 

「冥子先生。クビラとアンチラとビカラを出しておいてください。クビラは相手の情報を集めてアンチラは攻撃を担当、ビカラは冥子先生のガードと余裕があれば他の皆のサポートをお願いします」

 

「うん。分かったわー」

 

 リュウダの指示に従い冥子がクビラとアンチラとビカラを自分の影と繋がっている亜空間から出すと、その様子を見ていた他の皆が感心したような顔をしていた。

 

「随分と冥子と式神達を使いこなしているのね。でもちょっと過保護すぎない? そんなやり方じゃあ貴方の方が疲れちゃうでしょう?」

 

「いえ、もう慣れましたからそんなことはありませんよ。それに、今はこのやり方が冥子先生には一番良いと思っています」

 

 美神の言葉にリュウダは首を横に振って答える。正直、冥子にはもう少しメンタルを強くしてほしいと思ったことは一度や二度ではないが、急に彼女を鍛えようとしたらロクなことにならない事をリュウダは知っていた。

 

 原作に冥子があまりにも式神を暴走させることに怒った彼女の母親が、美神達を巻き込んで彼女を鍛えようとする話があったのだが、その話では散々苦労したのに冥子は全く成長せず、挙句の果てにはこれまでにない式神の暴走を引き起こしたのだ。そのためリュウダは一気に冥子を鍛えるのではなく、少しずつ成長させる道を選んだのである。

 

 戦いと勝利はどんなに小さなものでも、積み重ねていけばやがて勇気と自信となっていく。

 

 これがリュウダがダークソウルの世界で学んだ事実である。初めは雑魚敵の亡者兵士と戦うのもためらっていたが、今ではデーモンやドラゴンとも戦える彼だからこそ、冥子の成長を信じようと思ったのだ。

 

「冥子先生がもう少し成長して、一人で十分戦えるようになるまで、冥子先生は俺が守りますよ」

 

『『………………』』

 

 リュウダが左腕にトゲの盾を出現させて何でもないように美神に言うと、その場にいる全員が驚いたように彼を見た。

 

「? 皆、どうかしましたか? ……冥子先生?」

 

「えっ!? ううんー。何でもないー。何でもないわー」

 

 リュウダがこの場にいる全員が自分を見て、特に冥子が顔を若干赤くしていることに疑問を覚えて聞くと、彼女は慌てて彼から顔を背けた。

 

 そしてその様子を見て横島は心底不快だという表情となって「ケッ!」と唾を吐いていた。

 

 

「では行くぞ」

 

 それから全員が準備を整えるとチェリーが眠っている諸星に向けて霊力を放った。

 

「悪霊よ! ここにその姿を現せい! 喝っ!」

 

「………!」

 

 チェリーが更に霊力を強めると諸星の身体が一度大きく震え、彼の身体から黒いモヤのようなものが出てきて集まり、黒い人影となる。

 

 諸星の身体から出てきた黒い人影、悪霊は黒いローブを羽織って三つの不気味な仮面を被り、六本の腕で六つのランタンを持つ奇妙な姿をしていて、その姿を見たリュウダは思わず我が目を疑った。

 

(嘘、だろ……!? どうしてここに『三人羽織』がいるんだよ?)

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