病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第13話

 リュウダ達が諸星に取り憑いた悪霊の退治を始めた丁度同じ時、どこかにある暗い部屋で地球儀の形をしたある装置が小さな反応を示した。

 

「………!? これは!」

 

 部屋の主は地球儀の反応に気付くと、それまでの作業を中断して急ぎ地球儀の側まで駆け寄った。

 

「どうかしましたか?」

 

 部屋の主が食い入るように地球儀を見ていると、従者らしき小さな影がやって来て声をかける。

 

「お前か……これを見ろ」

 

「っ!? こ、これはまさか……!」

 

 従者に話しかけられた部屋の主は、視線を地球儀から逸らさぬまま地球儀のある一点、日本がある部分を指差した。反応は日本から出ており、従者もまた日本から出ている反応を見て驚いた声を上げる。

 

「そうだ。これが反応を示したということはあの『伝説の地』の存在が人間界(物質世界)に現れたということ。それがどういう意味かは分かっているな?」

 

 自らの従者に問いかける部屋の主の声は隠しようのない歓喜に満ちており、従者はここまで喜んでいる部屋の主を見たことがなく驚きながら頷いた。

 

「は、はい。それはつまり『伝説の地』と人間界の境界が曖昧になっていることでして、そして……」

 

「そうだ! そしてこの事実は、この世界の秩序を決定して維持しているあの忌々しい『最初の火』が消えて『火の時代』が終わる時が近いことを意味している! この数百年、秘密裏に準備を重ね、計画の実行まで後僅かという時にこうなるとはなんたる皮肉か! それとも祝福か? まあ、どちらでもいい! 私の望みはもうすぐ叶う! フハハハハハッ!」

 

 部屋の主の笑い声は暗い部屋の中でいつまでも響き渡った。

 

 

 

「なるほど……。確かにコイツは今まで見たことがないし、タチが悪そうね?」

 

 神社の中で美神は諸星の身体から出てきた悪霊を見ながら言うが、リュウダにはその悪霊がどうしても「三人羽織」にしか見えなかった。

 

 三人羽織とはダークソウルの世界にあるマップの一つ「地下墓地」に登場するエリアボスである。そして三人羽織は厄介な特殊能力を複数持っており、その中でリュウダにとって最も厄介なのが「火属性攻撃への耐性」だ。

 

 リュウダが使う呪術は炎の業である為、攻撃用の呪術は全て火属性。だから火属性攻撃への耐性を持つ三人羽織は彼にとって戦い辛い相手であった。

 

(本当に奴がダークソウルの三人羽織だったら呪術の炎だとツラいな。まさかトゲの盾のシールドバッシュだけで戦うわけにもいかないし。……こうなったらいよいよ『アレ』の出番か?)

 

「………」

 

 リュウダが三人羽織とどう戦うか考えていると、三人羽織は三つの仮面を動かし周囲を周囲を見回した後、突然行動を開始した。

 

「来るぞ!」

 

 三人羽織の行動を最初に察知したのはチェリーで、チェリーの言葉通り三人羽織は高度を上げるとリュウダ達へと向けて急降下をした。そして三人羽織が最初の攻撃対象として選んだのは、怖かったのかリュウダ達から離れた位置にいた横島だった。

 

「お、お、俺ですかぁ!?」

 

「やらせるかよ!」

 

 恐怖のあまり体が動かない横島に向かって突撃する三人羽織だったが、三人羽織が横島に攻撃するより先にリュウダが行動に移していた。リュウダの右手が燃えて呪術の炎が現れると、彼は自分の右手を円を描くように振るい炎が鞭のような動きをとって三人羽織の顔を攻撃した。

 

 なぎ払う炎。

 

 ダークソウルの世界でクラーナから習った火炎の鞭で敵をなぎ払う原初の呪術。以前、不死の魅了を習うはずだったが取り止めになった時に、リュウダは代わりとしてこの呪術を習っていたのである。

 

「………!?」

 

「ヒーーー!」

 

 突然三つの仮面を火炎の鞭で攻撃されたことで三人羽織の動きが止まり、その隙に横島がまるで家庭内害虫のように高速の四つん這いで逃げて行く。しかし一旦動きを止める事はできたが三人羽織は特に大きなダメージを負った様子はなかった。

 

(クソッ! やっぱり効果無しかよ! これはいよいよダークソウルの三人羽織の可能性が高くなったな)

 

「二人共下がっておれ! ここはワシが! きぇええーーーーー!」

 

「……………!」

 

 チェリーは悔しそうに歯噛みするリュウダと横島にそう言うと、大きく飛び上がり両手に持つ錫杖を振り下ろす。錫杖には強大な霊力が込められているようで雷光のような光を纏っており、錫杖の一撃を受けた三人羽織はリュウダの時とは違って明らかにダメージを受けたようでよろめいた。

 

「……!? ………!」

 

「ふん! 甘いわ!」

 

 三人羽織はチェリーに向かってランタンから火の玉を放ち反撃しようとするが、チェリーは火の玉の全てを錫杖で叩き落とすと、曲芸のような素早い動きで三人羽織に近づき攻撃を加える。その戦いぶりを見てサクラと美神が思わず声を上げる。

 

「さ、流石は叔父上……!」

 

「ええ。悪霊や妖怪を前にするとまるで我を忘れた狂戦士のように戦う日本屈指の僧兵、錯乱坊。その名に偽り無しね」

 

「に、日本屈指のバーサーカー僧侶、錯乱坊……?」

 

「ま、マジか? あの坊さん、そんなに凄い人だったんか?」

 

 サクラと美神の言葉にリュウダと横島は唖然となってチェリーを見ると、チェリーは目にも止まらぬ動きで錫杖を振るい三人羽織を叩き伏せており、三人羽織も目に見えて弱っていた。

 

「おっ? これはもう終わるんじゃないか?」

 

(いや、まだだ。アイツは確か……)

 

 明らかに弱っている三人羽織の姿に横島が嬉しそうに言うが、リュウダは心の中で首を横に振る。するとリュウダの考えを肯定するかのように、チェリーと戦っていた三人羽織が次の行動に移る。

 

「これで止め……っ!?」

 

 チェリーが三人羽織に止めの一撃を喰らわそうとしたその時、三人羽織の一体から三体へと分裂するのだった。

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