「あ、悪霊が……!?」
「増えたー!?」
突然、三人羽織が一体から三体に増えたことにおキヌちゃんと冥子が驚きの声を上げる。そして驚いたのはチェリーも同じで、驚きにより動きが止まった隙に三人羽織が彼から離れる。
「し、しもうた!」
(やっぱりあの能力を持っていたか……!)
三人羽織が三体ともに逃げた事にチェリーが声を上げ、リュウダは内心で苦々しく呟く。
ダークソウルの三人羽織は体力が減ると分裂する能力を持っており、この三人羽織も同じ能力を使えるみたいであった。しかも三人羽織持つ能力はそれだけでなく……。
「………」
「き、消えた!?」
「っ! 冥子先生! クビラで索敵を!」
三体に増えた三人羽織は突然姿を消し、全員が驚き目を見開く。三人羽織は短距離だが瞬間移動をする能力を持っていて、その事を知っていたリュウダはいち早く冥子に指示を出す。
「わ、分かったわー。クビラちゃんー」
「!」
冥子の言葉に答えてクビラが眼から三本の霊視の光線を放ち、瞬間移動した三体の三人羽織の姿を照らし出す。しかし三人羽織はここで更なる行動に出る。
「………!」
「ま、また増えたーーー!?」
三体の三人羽織はそれぞれ身体を三つに分裂させ、合計で九体となった三人羽織を見て横島が悲鳴のような声を上げる。
「ええい! 数が増えるとは面倒な!」
「もうこうなったら目についた敵を一体すつ倒すしかないわね! だから自分の身は自分で守る! いいわね!?」
「良くない!」
九体の三人羽織を前にサクラが鬱陶しそうな声で言い、美神が全員にそう言うと横島が泣きながらリュウダの元へやって来て彼の足にしがみつく。
「っ!? お、おい、横島!? 何のつもりだ!」
「た、頼む藤沼! 俺を守ってくれ! 死ぬのはイヤー!」
「分かったから離れてくれ! このままじゃ身動きがとれな……っ!」
リュウダと横島が言い合いをしていると、そこに九体の三人羽織のうちの一体が二人に向かって来た。
「ぎゃー! 来たー! 死ぬんやああっ!! もうあかんー!! 死ぬ前に一度全裸美女で満員の日本武道館でもみくちゃにされながら……え?」
「………!」
もう助からないと思い、滝のような涙と鼻水を流しながらよく分からない妄言を言おうとした横島の目の前で、三人羽織の体が左右へ二つに分かれたかと思えば白い霧となって消滅していった。
「やっぱりコレの出番になったか」
「ふ、藤沼?」
横から聞こえてきた声に横島がリュウダの方を見ると、リュウダは内なる大力を使い黒いローブを羽織った姿となっており、その右手には刀身に不思議な刃紋が浮かんでいる一振りの刀が握られていた。
リュウダの内なる大力を使った魔装術もどきは、前世で彼がゲームのダークソウルのプレイヤーに装備させていた武装を具現化させる。そしてゲームのダークソウルのプレイヤーは、左右の手にそれぞれ二種類の武器を持たせることができ、リュウダがプレイヤーの右手に装備させている武器の一つが今持っている刀であった。
混沌の刃。
ゲームではクラーグを倒すことで手に入る彼女のソウルと刀系の武器を、神の都アノールロンドにいる巨人の鍛治師によって一つに合成してもらうことで手に入る、条件が揃えば刀系の武器で最高の火力を出せる武器である。
(一撃で倒せたのは予想外だったな。これもチェリー殿があらかじめ三人羽織の体力を削ってくれたお陰か。これなら……!)
三人羽織は確かに分裂して数を増やす能力を持っているが、元は一つの存在であるため体力や先程チェリーから受けたダメージも全ての三人羽織が共有している。そのため一撃で分裂した三人羽織の一体を倒すことができたリュウダは、すぐさま次の三人羽織に向かって攻撃を仕掛けた。
「はぁっ!」
「………!?」
リュウダが右手の混沌の刃を振るい、分裂した自分の一体が滅んだことで動揺した別の三人羽織はその刃を受け、己もまた一太刀で身体を切り裂かれ消滅していった。すると残った三人羽織の七体は分裂した自分を二体も倒したリュウダに意識を集中させるが、それは彼も望むところであった。
「皆! 俺が囮になります! だからその隙を上手く突いてください!」
この場にいる全員に向かってリュウダがそう言うと、七体の三人羽織は一斉にそれぞれが持つ六つのランタンから火の玉を放ち、その全てが彼に命中した。
「ふ、藤沼!?」
「藤沼クーン!?」
「ご心配無く。大して効いてませんよ」
七体の三人羽織による火球の一斉射撃を受けて一瞬で炎に包まれたリュウダに、横島と冥子は思わず声を上げるが、炎の中からリュウダの余裕がある声が聞こえてきた。炎の中のリュウダをよく見てみると、彼の身体は鋼鉄と化しており炎の光を反射させていた。
鉄の体。
自らに火の力を取り込み身体を鋼鉄にすることで、一時的に動きは遅くなるが物理攻撃や炎による攻撃に対して強い防御力を得る呪術。リュウダはこれを使うことで三人羽織の火球を受けてもほとんどダメージを負っていなかった。
「皆! 今です!」
「オーケー! 任せて!」
「分かったわー!」
「承知!」
「行くぞ!」
『『…………………!?』』
炎の中でリュウダが言うと美神に冥子、チェリーにサクラがリュウダに気を取られている三人羽織達に一斉に攻撃を仕掛け、不意を突かれた三人羽織は七体とも呆気なく消滅させられた。
「皆、世話になったのう」
「別にいいわよ。サクラとチェリーの頼みと言われたら断れないし。……でも次もこんな厄介な仕事だったら依頼料はもらうからね?」
「駄目よ令子ちゃん、そんなことを言ったらー。サクラちゃん、気にしないでー。私達お友達じゃないー」
三人羽織を無事退治して諸星を病院に運んだ後、サクラが礼を言うと美神と冥子が返事をする。そんな三人の会話をリュウダが少し場所で聞いていると、チェリーが彼に話しかけてきた。
「のう、お主。藤沼リュウダと言ったか?」
「え? はい、そうですけど、どうかしましたか?」
「先程の戦いを見させてもらったがお主は中々スジがいいみたいじゃな。聞けば自身の霊能力を鍛えるために夜な夜な悪霊と戦い、その縁で冥子達と知り合ったと。若いのに中々感心な奴じゃ」
「は、はい。ありがとうございます」
三人羽織との戦いを見てチェリーがただのギャグキャラではなく一流の霊能力者であると痛感させられたリュウダは、チェリーの言葉に恐縮して頭を下げた。
「そしてこれも何かの縁。もしお主が更なる力を望み修行をする気があるのなら、ワシが良い場所に連れて行ってやろう」
「良い場所? ……はい。その時はよろしくお願いします」
チェリーが言う「良い場所」が何処なのか分からなかったが、美神が日本屈指の僧兵と言うチェリーの言葉は、ギャグがメインの日常ならともかく今のような霊能力者としての場面なら信用できると思い、リュウダは頭を下げて頼むのであった。