病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第16話

 人喰いミルドレット。

 

 ゲームではカークと同じ、プレイヤーが生者状態で出現エリアに訪れた時に何処からか現れて襲いかかってくる「闇霊」と呼ばれるNPCとして登場している。だが一度倒すと次は、特定のエリアボスで協力してくれる「白霊」と呼ばれるNPCとなりクラーグ戦で共闘してくれて、その事から敵なのか味方なのか判断に迷うキャラクターであった。

 

 そしてそんなミルドレットがいきなり目の前に現れたリュウダは今……。

 

 

「ほら、焼けたぞ。熱いから気をつけろよ?」

 

「……♪」

 

 デーモン遺跡でミルドレットに焼肉料理を振る舞っていた。

 

 

 病み村でミルドレットがいきなり現れたのは、リュウダが灰にした蓑虫亡者の匂いに釣られたからで、その目的はやはり蓑虫亡者の肉であった。

 

 リュウダはミルドレットが「人喰い」の異名で呼ばれていることを知っていたので亡者の肉を食べることにはあまり驚かなかったが、それでも目の前で食人行為をされるのは気分が良い話ではない。なので彼は「もっと旨いものを食わせてやるぞ」と言って彼女をこのデーモン遺跡に連れてきたのである。

 

 現在リュウダが焼いているのは山羊頭のデーモンの肉。

 

 爛れ続けるものがいなくなったデーモン遺跡には、山羊頭のデーモンがモブモンスターとして複数出現するようになっていて、その内の一体をミルドレットと協力して撃破。それから後は彼女が持つ大型の刃物、肉断ち包丁で山羊頭のデーモンを解体して、溶岩の熱で天然のホットプレートと化した地面の岩で焼いていたのだった。

 

 山羊頭のデーモンも胴体は人間なのだが、それでも元は完全に人間だった蓑虫亡者を食べるよりかはずっとマシだろう。……多分、きっと。

 

「……うん。やっぱり匂いのクセはあるけど美味しいな、山羊頭のデーモン。ミルドレットはどうだ……って、聞くまでもないか」

 

「………! ………♪ ………! ………♪」

 

 山羊頭のデーモンを食べるのはこれで二回目(一回目は不死街下層)のリュウダが一口食べてからミルドレットを見ると、彼女は一心不乱に焼き上がった山羊頭のデーモンの肉を食べていた。

 

(こうして見るとミルドレットって美人だよな)

 

 ミルドレットは山羊頭のデーモンの肉を食べるために 頭に被っているずだ袋を半分程まくり上げていて、そこから見えた彼女の素顔はリュウダより少し歳上くらいのポッチャリ系の美人という感じであった。

 

(こんな美人が一体どうして『人喰い』なんて物騒な異名で呼ばれているんだ? こうしてデーモンの肉も食べているってことは人しか食べれないってことじゃないよな?)

 

「……ね?」

 

 リュウダがミルドレットについてぼんやり考えていると誰かの声が聞こえてきた気がした。

 

「え?」

 

「誰か、と、食べる、お肉って……。こんなに、美味しかった、んだね?」

 

 リュウダが顔を上げると聞こえてきたのはミルドレットの声で、彼女は心から嬉しそうな笑みを浮かべていた。そしてその笑顔は彼が思わず見惚れてしまうくらい綺麗な笑顔で、だけどどこか泣いているようにも見えた。

 

「ミルドレット、お前……」

 

「お肉、なくなっ、た……。バイバ、イ……」

 

 笑顔を浮かべてみせたミルドレットにリュウダは何かを言おうとしたが、デーモンの肉を全て平らげた彼女はそれに気付くことなく立ち上がると何処かへ行ってしまった。

 

 

 

 後日。それからリュウダが病み村に来ると高い確率でミルドレットが彼の元に現れるようになり、その度に彼女は「お、土産」と言って彼に、山羊頭のデーモンを倒した時にドロップする特大剣「デーモンの大鉈」を何本も渡してきた。

 

 そして出会う度に何本ものデーモンの大鉈を渡されるリュウダは「お前は山羊頭のデーモンを絶滅させる気か?」と真顔になってミルドレットに言うのだが、それはまた別の話。

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