ダークソウルの世界から現実世界に帰ってきたリュウダが学校に行くと、教室には悪霊に取り憑かれていたため数日間休んでいた諸星の姿があった。
そして諸星はリュウダが教室に入ってきたことに気づくと手を上げて話しかけてきた。
「よお、藤沼。この間は世話になったな」
「何のことだ?」
「何のことって、悪霊を退治してくれた時のことだよ」
最初は本当に諸星の言っていることが分からなかったリュウダだが、次の諸星の言葉を聞いて思わず動きが止まった。
「……………覚えていたのか?」
「まあな。苦しくて身体は動かなかったけど、あの時のことは全部覚えてるぜ」
「あの時のことって、どういうこと?」
リュウダが美神やチェリー達と一緒になって諸星に取り憑いた悪霊を退治したあの時、諸星は意識を失っていると思っていた。しかし実際は意識を保っていて当時のことを覚えていた諸星がリュウダに答えると、そこにしのぶが話に加わってきた。
「この間、俺が悪霊に取り憑かれて、それをチェリーが退治してくれただろ? その時にチェリーの奴、ゴーストスイーパーの助っ人を何人か連れて来て、その中に藤沼がいたんだよ」
「ええっ!? それじゃあ藤沼クン、ゴーストスイーパーなの!?」
「いや、違……」
諸星の話を聞いて思わずしのぶが大きな声を出し、教室中の視線がリュウダ達に集まる。そこでリュウダは何か言おうとするのだが、それより先に諸星が話し始めた。
「あの時の藤沼は凄かったぜ。手から炎を出したり、何もないところから刀を出して悪霊を何匹も倒して。それで最後はチェリーや他のゴーストスイーパーも藤沼の言葉に従っていたんだよな?」
諸星の話のせいでクラスメイト達の視線が更にリュウダに集まる。確かに諸星の言っていることは間違っていないが、このままでは自分が主体で悪霊を退治したことになるリュウダは、首を横に振って誤解を解くことにした。
「あれは、チェリー殿が前もって三人羽……悪霊を弱らせてくれたお陰だ。俺は単なるゴーストスイーパーの助手だよ」
「でも助手ってことは霊能力? っていうのは使えるのよね?」
しのぶを初めとするクラスメイト達が好奇心で満ちた目をリュウダに向け、仕方なく彼が掌から呪術の炎を出したり、何もないところから混沌の刃とトゲの盾を取り出してみせるとクラスメイト達からざわめきの声が上がる。
「……少し前に霊能力に目覚めてな。使いこなそうと自分で訓練しているうちに色々あって冥子先生……諸星の悪霊を退治したゴーストスイーパーの一人の助手になったんだよ」
「っ! そうだ! そうだった!」
リュウダがそう言うと何かを思い出した諸星が、両手にメモ帳とボールペンを持ってリュウダに詰め寄る。
「あの時チェリーが連れてきたゴーストスイーパー! 二人とも凄い美人なお姉さんだったよな!? ゴージャス系とお嬢様系の! あの二人、名前何て言うんだ!? それと住所と電話番号……わはあああっ!?」
バリバリバリバリ!
諸星がリュウダに美神と冥子の情報を聞き出そうとした時、諸星の頭上から比喩表現ではなく実際に雷が落ち、リュウダが上を見上げるとそこには緑色の髪で虎柄のビキニを着た女性が宙に浮かんでいた。
「ダーリン! せっかく元気になったと思ったら! 浮気は許さないっちゃよ!」
ラム。
うる星やつらのメインヒロインで、地球を侵略しにきまインベーダー。地球の命運を賭けた鬼ごっこで諸星に負けてからは彼の「妻」を名乗っているのだが非常に嫉妬深い性格をしており、諸星が他の女性に近づく度にこうして制裁の雷を降しているのだった。
「全くもう……。ウチ、本当に心配していたのに……。それにしても」
「な、何?」
電撃を受けて気絶した諸星を見下ろしてため息を吐いたラムは、リュウダに近づくと興味深そうな目を彼に向けた。
「手から火を出したりするだなんて、地球人も中々器用だっちゃね?」
「そ、そうかな?」
目の前まで来て自分を見てくるラムにリュウダは視線を逸らして返事をする。この世界で実際に彼女を見たことは何度もあったが、ここまで間近でファンだったアニメのメインヒロインに見られたことはなかったので思わず照れてしまったからだ。
「どうしたっちゃ? 目を逸らしたりして?」
「いや……。仮にも夫がいる人妻が他の男に近づくのは不味いだろ? ほら、浮気とか言われるかもしれないし?」
「え? ……あっ!? そ、そうだっちゃね」
「おい、藤沼!? お前は一体何を言っとるんだ!?」
照れ隠しで言ったリュウダの言葉に、今度はラムが照れて顔を赤くし、諸星がとっさに気絶から目を覚まして大声を出す。
本心ではラムのことを大切に思っているくせに、中々本音を言おうとしない諸星を見て、リュウダは少し意地悪をしてやろうと思い口を開いた。
「何を言ってるんだはこっちのセリフだ。諸星、お前がラムさんにプロポーズをしたのは世界中の人達が知っているんだぞ? それなのにやっぱり結婚しませんとか言ったらラムさんはいい笑い者だぞ?」
実際、あの鬼ごっこの最終日に諸星は地球とラムの星の人々が見ている前で、本人はしのぶに言ったつもりでもラムに求婚し、ラムもそれに応じている。それなのに結婚しないなんてことになったら、リュウダの言う通りラムは周囲でいい目で見られることはないだろう。
「諸星。お前は浮気性のある女好きだが、女性が嫌がること、女性に恥をかかせるようなことはしない男だと思っていた。でもそれは俺の買いかぶりだったのか?」
「うぐ……! そ、それは……!」
「おお〜。お前、結構いいヤツだっちゃね」
「ふ、藤沼クン!? 何アホなことを言っているのよ!」
リュウダの言葉に痛いところを突かれたという顔となる諸星。それを見てラムが嬉しそうに拍手をして、しのぶが机を手で叩いて怒る。するとその時……。
「おい。アレは何だ?」
クラスメイトの一人が窓の方を指差して、リュウダを初めとする教室中の人間もそちらを見ると、窓の外では白いパラシュートがゆっくりと下へ降りていっていた。そしてそのパラシュートにはひょっとこみたいなマークが描かれているのをリュウダは見た。
(あのマークは……そういうことか。ここで『彼』が登場するのか。……とりあえず、今日の授業は潰れるだろうな)
ひょっとこのマークが描かれてパラシュートを見たリュウダは、これから様々なトラブルが起こるのを確信したのだった。