「ねー? 藤沼クン?」
「どうかしましたか、冥子先生?」
学校が終わってから数時間後。いつものように仕事で冥子の所へ行ったリュウダは、彼女と一緒に冥子の屋敷のリムジンに乗せられて何処かへ移動させられていた。すると同じ車内にいる冥子が話しかけてきた。
「なんだかーとっても疲れているように見えるけどー、どうかしたのー? 大丈夫ー?」
「……ええ、まあ大丈夫ですよ」
リュウダは苦笑を浮かべて冥子にそう答えると、自分が疲れている原因、今日学校で起こった出来事を思い出す。
朝、リュウダが諸星やラム達と話をしていたあの時、彼らの教室に一人の転校生がやって来たのだ。そしてその転校生というのが諸星達と負けず劣らずクセが強く、転校生が起こしたトラブルによって直接な被害は出ていないが精神的に疲れたのだった。
「実は今日、クラスに転校生が来て、その歓迎で疲れたと言うか……」
学校で起こったトラブルを正直に言っても冥子に信じてもらえないと思ったリュウダは言葉を濁した。クラス委員を決めるだけのはずが何故か諸星と転校生との決闘になり、しかもその決闘内容が「大砲を撃ち合ってお互いの頭の上に乗せたリンゴを粉砕する」だなんて、話だけでは絶対信じてもらえないだろう。
そんなリュウダの考えを他所に冥子は「転校生」という単語を聞いて楽しそうな顔をする。
「あらー。転校生が来たのねー。新しいお友達ができてー良かったじゃないー。私も今からーお友達のところに行くのよー」
「? 仕事じゃなかったのですか?」
てっきり今日もいつものように悪霊退治だと思っていたリュウダが聞くと冥子は頷いてみせた。
「もちろんお仕事よー。私のお友達にーオカルトグッズに興味がある人がいてーそのお友達にオカルトグッズを届けに行くのー。でも普通の人がーオカルトグッズを無闇に扱ったらー危ないでしょー? だからーこういったオカルトグッズの取り扱いを指導するのもー私達ゴーストスイーパーのお仕事なのー」
「なるほど。それで今日はどんなオカルトグッズを届けに行くんですか?」
「それはねーこれよー」
仕事内容を理解したリュウダの言葉に、冥子は先程から手に持っていた箱を開いてその中身を見せる。箱に入っていたのは、藁で作られた人形、呪いのアイテムの定番中の定番である藁人形であった。
「じゃーん! 六道家厳選藁人形十個セットー! これに呪いたい人の髪の毛を入れたらーどんなに霊力が低い人でもー簡単に呪いがかけることができるのー」
(な、なんて物騒なものを……!? あれ? 藁人形? オカルトグッズ? そう言えばそんな物を使っているキャラがいたような気が……?)
冥子が持っているオカルトグッズにドン引きしていたリュウダだったが、何かを引っかかるものを感じて首を傾げていると、二人を乗せたリムジンが目的地へと到着したのだった。
「まあ、なんて見事な藁人形! 冥子様。いつも良質な呪いの品を持ってきていただき、ありがとうございます」
(そうだった……。そう言えば彼女がいるんだった)
リュウダと冥子を乗せたリムジンがついた先は小さな町と言ってもいい程の規模の大豪邸だった。そしてその大豪邸の一室で着物を着たいかにもお嬢様といった少女が、冥子が持って来た藁人形を見て嬉しそうな笑顔を浮かべ、反対にリュウダは内心で渋面を作っていた。
面堂了子。
うる星やつらに登場するキャラクターの一人で、日本屈指の名家であり大財閥である面堂家のご令嬢。外見はおしとやかな美少女なのだが、大のイタズラ好きで登場する回では必ずタチの悪いイタズラをして諸星を初めとする多くの人を巻き込んでいた。
「了子ちゃんに喜んでもらえてー私も嬉しいわー。でもー何回も言うけどねー、あくまでコレクションとしてよー? 一般人の了子ちゃんはー使っちゃ駄目だからねー?」
「ええ、もちろん。いくら私でもこれを使おうだなんて夢にも思いませんわ。おほほ」
(嘘つけ)
友人である了子の嬉しそうな笑顔を見て喜びながらもゴーストスイーパーとしての注意を忘れない冥子。それに対して上品に笑いながら答える了子に、リュウダは思わず声を出しそうになった。
了子は大のイタズラ好きであると同時にオカルトグッズの収集家でもあり、原作では手に入れたオカルトグッズを使ってイタズラをしたこともあった。
(それにしても冥子先生のお友達がまさか彼女とは……。でも考えてみれば充分あり得るか)
冥子も了子も名家のご令嬢同士な上、オカルトという共通点があるため、付き合いがあってもおかしくはない。そんなことをリュウダが考えていると、部屋の外から足音が近づいてきた。
「了子! お前、また怪しげな物を買ったのか!?」
部屋の扉を勢い良く開け放ち大声を出したのは、今日リュウダのクラスに転校した転校生である了子の兄、面堂終太郎であった。