病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第2話

 学校で諸星と横島の様子を見る限り、まだ「うる星やつら」も「極楽大作戦!!」もまだ原作が始まっていないようだった。

 

 それによりトラブルに巻き込まれて気絶できる機会がないことをリュウダは残念に思ったが、それでもその日を終えると布団に入る。

 

「よし、今度こそクラーグ姉さん達の従者にしてもらうぞ。……アレ? そう言えば俺って前回篝火を全然使っていなかったけど、もしかして最初からやり直しなのか?」

 

 そんなことを考えている間にリュウダは眠りについて意識を一度手放した。そして再び意識を取り戻して目を開くと……。

 

 

 そこにあったのは、気色の悪い巨大な卵を背負って地面に這いつくばっている亡者の顔のドアップであった。

 

 

「………うわ~、最悪。本当に最悪だよ。いきなり嫌なものを見た」

 

「いきなりご挨拶じゃのう、小僧?」

 

 リュウダが自分の顔ごと視線を亡者の顔から背けて言うと、それを聞いた亡者が額に青筋を浮かべる。

 

「人の顔を見て嫌なものを見たとは一体どういう「クラーグ姉さんの顔を見ながら眠りについて、次に起きたらいきなり亡者のドアップを見せられたんですよ?」……確かにお主の言葉にも一理あるの」

 

 失礼なことを言ったリュウダに何か言おうとした亡者であったが、途中でリュウダが言った言葉を聞くとあっさりと納得した。

 

「……まあ、よい。ワシの名はエンジー。クラーグ様と姫様に仕えておる従者じゃ」

 

(やっぱり卵背負いのエンジーか)

 

 卵背負いのエンジー。

 

 元は不死人の呪術師であったという過去を持つキャラクターで、ゲームでは混沌の娘の従者として登場していた。そして今の言葉からやはり混沌の娘の姉であるクラーグにも仕えていることが分かった。

 

「クラーグ様から聞いたがお主、クラーグ様達の従者となりたいそうじゃな? ……全く、卵も背負えぬ未熟者でありながら大それたことを考えよるわ」

 

 そう言うとエンジーはリュウダから視線を別の場所に移し、リュウダもエンジーの視線の先を見る。するとそこにはクラーグと、クラーグと全く同じ姿を白に染めた外見をした異形の美女、混沌の娘の姿があった。

 

「クラーグ姉さん! 混沌の娘の姫様!」

 

「小僧、無礼じゃぞ! クラーグ様と呼ばんか!」

 

 クラーグと混沌の娘の姿を見てリュウダが思わず名前を呼ぶと、エンジーが血相を変えてクラーグの呼び方について訂正させようとする。しかしそれを呼ばれた本人であるクラーグが止めた。

 

「いいわよ、エンジー」

 

「は……? し、しかしクラーグ様」

 

 戸惑うエンジーにクラーグは首を小さく降ってからリュウダに視線を向ける。

 

「だから別にいいわよ。今更どのように呼ばれても私は気にしないわ。……それより貴方、気になることを言っていたわね?」

 

「気になること、ですか?」

 

「とぼけないで。貴方言っていたでしょ。……クラーナ姉さんが病み村にいるって」

 

「……ああ」

 

 クラーグに言われてリュウダは、彼女に従者にしてほしいと願い出た時に、クラーナが病み村にいることを話していたのを思い出す。

 

「本当にクラーナ姉さんが病み村にいるの? 私はこの数百年の間、何度も病み村に行ったことがあるけどクラーナ姉さんは見つからなかったわよ?」

 

(ここで数百年という言葉があっさり出るあたり、やっぱりここって時間の流れがねじ曲がっているダークソウルの世界なんだな……)

 

 リュウダはクラーグに疑問をぶつけられて変な感心をした後、疑問に答える。

 

「はい。これは聞いた話なんですけど、呪術の祖であるクラーナ様は病み村にいて、呪術の力を高めた高位の呪術師でしか会えないそうです」

 

 嘘は言っていない。ゲームでのクラーナは、呪術を使うために必要な装備「呪術の火」を限界まで鍛えた状態でしか会うことができず、リュウダの言葉にクラーグは考えるような表情となる。

 

「高位の呪術師でしかクラーナ姉さんを見つけられない? 確かにクラーナ姉さんは母さんから一番強く『火の力』を受け継いでいたけど……」

 

「でも……」

 

 そこで今まで無言のままリュウダとクラーグの話を聞いていた混沌の娘が初めて口を開いた。

 

「でもその話が本当だとしたら、私はもう一度クラーナ姉さんとお話をしてみたいわ。それで、できたらまた三人で仲良く暮らせれば……」

 

「貴女……」

 

 クラーグは自分の妹である混沌の娘の願いを聞いて何かを決めた表情となると、再びリュウダへ視線を向けた。

 

「貴方、名前は?」

 

「あっ、はい! 藤沼リュウダです! リュウダと呼んでください!」

 

「そう、それじゃあリュウダ。貴方、私達の従者になりたいと言っていたわね? いいわ。とりあえず貴方を従者として認めてあげる」

 

「……! ほ、本当ですか!?」

 

「そこで最初の命令よ」

 

 念願のクラーグ達の従者になれて感動するリュウダに、クラーグは指差して最初の命令を伝える。

 

「リュウダ。貴方見たところ呪術師なのよね。だったら貴方が病み村にいるクラーナ姉さんを見つけて私達の元へ連れてきなさい。……できるわね?」

 

「俺がクラーナ師匠を……。はい! お任せください! それじゃあ早速行って参ります!」

 

 クラーグから最初の命令、クラーナをここへ連れてくるようにと命令されたリュウダは、戸惑うどころかむしろ望むところとばかりに承諾すると、すぐさま行動に出たのであった。

 

 クラーグ達がいるクラーグの住処を出たリュウダが向かったのはクラーナがいる病み村……ではなく火継ぎの祭祀場。

 

 クラーナに会うには呪術の火を限界まで鍛える必要があるのだが、今回リュウダは最速でクラーグの住処に向かうことを優先していた為、呪術の火を全く鍛えていなかったのだ。クラーナよりクラーグ達に会うことを優先した理由については、これから先に説明する機会があるかもしれないが今は省略させてもらう。

 

 とにかくクラーナに会うために呪術の火を鍛えるためには、病み村に来るまでの間に最下層で助けて今は火継ぎの祭祀場にいるであろうキャラクター、大沼の呪術師ラレンティウスに会って彼に呪術の火を鍛えてもらう必要があるのだ。

 

 リュウダは途中で出会ったモンスターを全て叩きのめし、恐るべき速さで病み村から火継ぎの祭祀場へ到着。そして倒したモンスターや不死人の死体から奪い取ってきたソウルの全てをラレンティウスに渡して、自分の呪術の火を限界まで高めたのであった。

 

 そして再び病み村に戻ってきたリュウダは、毒が自分の体力を奪っていることを気にすることなく毒の沼地を進んでいた。

 

「え〜と……。確かこの辺りに……あっ、いた!」

 

 ゲームの知識を頼りに毒の沼を進んでいたリュウダは、沼地にある岩場の一つで座っている黒いローブを羽織った女性を見つけた。

 

 間違いない。彼女こそがクラーグと混沌の娘の姉、呪術の祖であるクラーナであった。

 

「ん? お前、私が見えるの……」

 

 

「ずっと前から好きでしたぁ!!」

 

「なぁっ!?」

 

 

 こちらに近づいてくるリュウダに気付いて声をかけようとしたクラーナだったが、それよりも先に憧れのキャラクターと出会い感極まった彼に抱きつかれたことで驚きの声を上げる。

 

「い、い、いきなり何をするか!? この変態がぁ!」

 

「ち、違っ! 俺は変態じゃ……あー!?」

 

 いきなり抱きついてきたリュウダを引き剥がしたクラーナは、怒声と共に掌から呪術の炎を発した。その呪術の炎はクラーナの怒りを表しているのか凄まじく、彼の身体を一瞬で炭に変えたのであった。

 

 YOU DIED

 

 

 

「う〜む。流石に抱きついたのはやりすぎだったか……」

 

 クラーナに骨ごと灰にされて元の世界に帰ってきたリュウダは、街を適当に歩きながらクラーナに抱きついた時のことを思い出して反省していた。

 

「でも、あの時ちょっとだけクラーナ師匠の顔が見えたんだよな……。クラーナ師匠、顔を赤くして可愛いかったなぁ……」

 

 ……しかし、それほど反省はしていないようではあるが。

 

「待てい! 早まるでない!」

 

「え? うわぁ!?」

 

「ん? アレは?」

 

 街を歩いていたリュウダは、橋の上にいた諸星が小柄なお坊さんに突き落とされる光景を目にして、あることを思い出す。

 

 今諸星が橋の上からお坊さんに突き落とされる光景は間違いなく「うる星やつら」の一話目にあったもので、そういえば横島もアルバイトの都合で数日間学校を休んで山奥の方へ行くと今日担任の先生が言っていた気がする。

 

 どうやら「うる星やつら」と「極楽大作戦!!」。ほぼ同時に原作が開始されるようであった。




やっぱり続かない。
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