「よお、藤沼。昨日はすまなかったな」
リュウダが冥子と一緒に面堂家の屋敷に行った次の日。リュウダが学校に登校すると、すでに教室に来ていた終太郎が話しかけてきた。
「? すまなかったって何のことだ?」
「昨日は色々あって、ちゃんともてなせかっただろ? いくら『友達』とはいえ、それは失礼だと思ってな。だけど許してくれるよな? 僕達は『友達』同士なんだから。……それでなんだが藤沼?」
終太郎はそこまで言うとリュウダに近づき、彼にだけ聞こえる小声で話しかける。
「……実は今週の日曜、了子と冥子さんがお茶会を開くみたいで僕もそれに呼ばれているんだ。だから藤沼もよければ一緒に来てくれないか……というか来てくれるよな? 僕達、友達なんだから」
まるで雨の降る日に捨てられた子犬のような目で必死に言ってくる終太郎の言葉に、リュウダは内心で苦笑すると共に納得した。
終太郎をからかうことが生き甲斐である了子と、終太郎にトラウマを植え付けた天敵である冥子のお茶会は、終太郎にとっては例え拒否しても逃げられない地獄のような時間だろう。だからこそ終太郎は了子と冥子のストッパーになりうるリュウダを呼ぼうとしているのだった。
「大丈夫だよ。そのお茶会には俺も冥子先生と了子さんに呼ばれているから俺も参加するよ」
「ッ! そ、そうか! それならその日は最高級のお茶菓子を用意しておこう! いやー、よかったよかった。藤沼、やっぱり僕達は友達だな」
リュウダもお茶会に参加すると聞いて終太郎は心から安堵した表情となってリュウダの背中を叩く。そして落ち着きを取り戻した終太郎はリュウダに話しかける。
「それで藤沼? さっきから気になっていたのだが……『アレ』は何だ?」
そう言って教室の隅を見た終太郎の視線の先には……。
「チクショー! チクショー! 久しぶりに学校に来たら金持ちの上にイケメンの転校生がいるじゃねーか! 羨ましいんじゃ、チクショー!」
終太郎の顔写真がついた藁人形を壁に釘で打ちつけている横島の姿があった。
「僕が女学生からラブレターを貰った時からああしているんだ。もう三十分くらいああしているかな?」
「横島……」
終太郎の言葉を聞いてリュウダは呆れたような声を出した。終太郎を見た横島の反応はリュウダもある程度予想していたが、実際に見るとやはり呆れてしまうのであった。
しかもよく見ると横島が釘で打ちつけている藁人形は一個ではなかった。終太郎の藁人形の隣りには諸星の顔写真がついた藁人形があり、横島は次に諸星の藁人形に新たな釘を打ちつける。
「諸星も諸星だ! 気がつけばラムちゃんとゆー、ビキニ姿の美少女と夫婦だとぉ!? 諸星の奴、許さぁーーーん!」
「……………はぁ。面堂、アレはああいう奴だから気にしなくてもいいよ」
横島の叫びを聞いたリュウダは一気に馬鹿馬鹿しくなり、終太郎にそう言うと自分の席へと向かうのであった。