「全く、アイツらはいい加減にしろよな……」
学校が終わり自宅のアパートへの帰り道でリュウダは一人愚痴をこぼしていた。
リュウダが考えているのは今日の学校の出来事。久しぶりに登校した横島は、ルックスが整っている上に大金持ちという面堂の存在によって嫉妬心をたぎらせていたのだが、そこにいつものようにラムと一緒に教室に入ってきた諸星を見た瞬間、嫉妬を爆発させたのだった。
嫉妬に狂った横島は、まず滝のような涙と鼻水を出しながら諸星に掴みかかり延々と恨み言を言うと、次はラムの女友達を紹介してほしいと頼みこんだ。美人のラムの女友達だったらきっとその女友達も美人だろう、という横島の言葉に諸星も思わず反応すると、今度はラムが嫉妬を爆発させてそれから教室全体を巻き込むトラブルを起こしたのである。
リュウダはこの世界に転生した事を最初は喜んでいた。しかしそれは諸星や横島達が起こすトラブルに巻き込まれて気絶し、ダークソウルの世界に行く機会が増えることを期待していたからだ。今日のように気絶もできず、ただトラブルに巻き込まれて心身共に疲れるだけという結果になれば愚痴の一つも言いたくなるというものだ。
「今日はゴーストスイーパーの仕事が休みで本当に良かったよ……。帰ったら夕飯の支度の前に少し休もう」
ちなみにリュウダの自宅は横島と同じアパートの一室で、この世界での両親は海外赴任で外国に行っているため一人暮らしである。
アパートに着いたリュウダが自室のドアを開けるとそこには……。
全てが雪に包まれた銀世界が広がっていた。
「…………………………」
雪まみれとなった自室を見たリュウダは十秒くらい硬直すると、一度ドア閉めて目をまぶたの上から揉んで再びドアを開ける。しかし結果は同じで、彼の部屋は雪で覆われていた。
「こ、これは一体どう言う事だ………ん?」
今の季節で雪など降るはずがなく、リュウダが自分の部屋の惨状を前に呆然と呟いていると、すでにふすまが少し開いている物置の方で何かが動いたような音が聞こえた。
「だ、誰だ……って、え?」
「あら?」
もしかして泥棒かも知れないと考えたリュウダが緊張した表情でふすまを開けると、白い着物を着た美少女の姿があり、リュウダは彼女の姿に見覚えがあった。
おユキ。
うる星やつらの登場人物の一人で、海王星に住む妖怪の雪女に似た特徴を持つ宇宙人。ラムの幼馴染の一人であり、物静かでマイペースな性格をしているのだが、怒ると非常に恐ろしい一面を持つ女性だった。
(これってもしかしておユキが初登場した話なのか?)
白い着物の美少女、おユキの顔を見たリュウダの脳裏に原作知識が浮かび上がる。
おユキの初登場の話は、風邪をひいた諸星の部屋の押し入れと、海王星で雪かきをしていたおユキが雪を捨てるために異次元に開けた穴が偶然繋がり、そこでうっかり穴に落ちた彼女が諸星の部屋に登場するという展開だったはずである。それなのにどうしておユキが諸星の部屋ではなく自分部屋にやって来るのか、リュウダには全く理解できなかった。
(勘弁してくれよ、疲れているのに……。こういうトラブルに巻き込まれる役は俺以外にも適任がいるだろ? 例えば諸星とか横島とか諸星とか横島とか諸星とか横島とか……)
おユキの予期せぬ登場にトラブルの予感を感じたリュウダは、思わず内心で頭を抱えるのであった。