「あー、死ぬかと思った……」
(改めて思うと横島って、本当に悪運が強いよな……。そう考えると今回生き残れたのも横島のお陰なのかもな?)
「本当にね……。今回は流石にヤバかったわ……」
「ええ。冥子と藤沼がいなかったら死んでたワケ」
横から聞こえてくる横島の声を聞いてリュウダがぼんやりとそんなことを考えていると、近くから美神とエミの声も聞こえてきた。
「そんな……。私は藤沼クンの指示に従っただけよー」
「いえ、俺はただ指示しただけで、実際に動いてくれたのは冥子先生ですよ」
美神とエミの言葉に冥子は照れたよう、リュウダは何でもないように答える。しかしリュウダは謙遜したように言うが、今回皆が生き残れたのは彼の働きが大きかった。
八つ首の大蛇が専用機に向けて高圧の水流を放った時、リュウダは冥子に「緊急召還・参」という指示を飛ばしていた。それは細かい指示を出す暇もない緊急事態に備えて予め決めていたものであり、「緊急召還・参」というのはメキラの瞬間移動で退避した後、シンダラで安全な場所に着地あるいは着水するというものだった。
これによりリュウダ達は専用機が撃墜される前に海に避難して、八つ首の大蛇が何処かへ去っていくとリュウダは常に持っていたカバンから緊急用のゴムボートを二つ出し、現在皆はそのゴムボートに乗っていた。
「助かったのはいいんだが藤沼、お前よくゴムボートなんて持っていたな?」
「……今回の仕事は孤島って聞いていたからな。念のために海で使えそうなのを持ってきていたんだよ。それより冥子先生、サンチラを出してもらえませんか? サンチラに適当な島や船までゴムボートを引っ張ってもらって体勢を立て直しましょう」
ゴムボートはリュウダが原作を知っていたから用意できたものだが、彼はそれを誤魔化すと冥子にサンチラを出すように頼む。
「幸い目的の島はもうすぐです。できたらそちらへお願いできますか?」
「分かったわー。サンチラちゃーん」
リュウダが頼むとピートが目的の島の方角を指差し、冥子が呼び出したサンチラが島までリュウダ達が乗るゴムボートを引っ張って行く。とりあえず当面の危機が去って目的地までの移動手段を確保すると、リュウダは先程から気になっていたことをピートに聞くことにした。
「それでピート。さっきの大蛇は何なんだ? お前はアレを『ブラドーの竜』って呼んでいたよな?」
リュウダがピートに聞きたかったのは専用機を撃墜した八つ首の大蛇のことである。
皆には言っていないがリュウダはあの大蛇のことを知っていた。首の数が一本多かったが、あの大蛇はダークソウルの世界に登場するモンスター「湖獣」で、それが何故この世界にいるのか全く分からなかった。
「もしかしてあの大きな蛇さんを倒すのが今回のお仕事なのでしょうか?」
おキヌが聞くとピートは首を横に振って答える。
「いえ……。確かにアレも倒して欲しい相手ではありますが、本当の敵は別です。……敵の名前は『ブラドー』。最も古くて力のある吸血鬼の一人です」
「ブラドーじゃと? あやつめ、まだ生きておったのか? しかしブラドーがあんな魔物を飼っていたなんて初耳じゃぞ?」
ピートが口にしたブラドーの名前を聞いて、過去に一度戦ったことがあるドクター・カオスが驚いた顔となって言う。そして続けて言った、ブラドーが八つ首の大蛇を飼っていたなんて知らない、という言葉にピートが頷く。
「そうでしょうね。ブラドーがあの魔物、ブラドーの竜を手に入れたのは、奴が封印される直前でしたから。……ブラドーの竜は元々この世界の魔物ではなく、『伝説の地』と呼ばれる異世界から迷い込んできた魔物だと聞きます。そしてブラドーはあの魔物を捕らえると自分の力の大半を分け与えて、それによってブラドーの竜は元々七つの首が八つとなりブラドーに絶対服従となりました。これには多くの人々が酷く恐怖したそうです」
「それはそうじゃろうな。古い吸血鬼がかの八岐大蛇のごとき怪物を手懐けたとなれば、それはもはや意思を持つ天災と呼んでも過言ではないじゃろう」
「確かに」
チェリーの言葉にサクラが深く頷き、ピートもまた一つ頷いてみせると話を続ける。
「ブラドーの竜という怪物を手懐けたブラドーを恐れた人々は、ブラドーが力を取り戻す前に戦いを挑み、奴を怪物もろとも封印することに成功しました。しかしブラドーの竜が目覚めたということは……」
「古の吸血鬼、ブラドーはすでに復活しているということね」
ピートの言葉を美神が締めくくり、それを聞いたリュウダは内心で冷や汗を流す。
(マジかよ……? 吸血鬼の復活と言うだけでも厄介な話なのに、そこにダークソウルのモンスターが追加とか原作以上の厄ネタじゃないか……)