「ふぅー、食った食った……。ごっつぉさん。こんなに豪勢なメシを食ったのは久しぶりじゃわい」
「はい。お粗末様でした。……これでヤギ肉があればメインディッシュにヤギ肉のステーキが作れたんだけど」
「ヤギ肉のステーキ? 何でヤギ肉なんですか?」
食事が終わり、ドクター・カオスの言葉にリュウダが食器の後片づけをしながら言うと、それを聞いたおキヌが首をかしげる。
島に来るまでは予想外の出来事で散々であったが、休憩と食事をとってようやく皆の心に落ちつきがでてきた。しかしその時……。
ドォン!
「な、なんだぁ!?」
「っ! ま、まさか……!」
突然外から轟音が聞こえると同時に激しい地響きが起こり、驚く横島の隣でピートが窓を覗き込むと、そこには八つ首の大蛇がこちらにその巨大な口を向けている姿があった。
「ブラドーの竜! まさか村の建物を一つずつ破壊するつもりか!?」
『『……………………!?』』
ピートの視線の先にはブラドーの竜の高圧水流によって破壊された建物の残骸があり、彼の言葉に民家にいる全員の表情が強張る。それはリュウダも同様で彼は内心で舌打ちをする。
(チッ! 相変わらずの馬鹿げた射程! あれじゃあ、冥子先生の式神でも全員を逃がすのは不可能! 地下に逃げたくても地下の入り口って何処にあるんだよ!?)
原作の美神達は、島の民家に泊まった日の夜にブラドーに支配された島の住人達に襲われる。その時は今回の仕事の依頼人であり美神の恩師でもある唐巣神父のお陰で島の地下にある炭鉱跡に逃げられたのだが、リュウダはそこへ行く入り口を知らないし、そもそも原作崩壊にすでに起こっている現在、炭鉱跡があるかどうかすら疑問であった。
(あの高圧水流を防ぐのは無理。逃げるのも無理。だったら……!)
「冥子先生! 俺にシンダラを貸してください!」
リュウダはそこまで考えて覚悟を決めると冥子にシンダラを貸してほしいと頼み、冥子だけでなくこの場にいる全員の視線がリュウダに集まる。
「ふ、藤沼クン? シンダラちゃんを貸してってー、一体何をするつもりー?」
「今まで使っていませんでしたけど、俺には遠距離の敵を攻撃する手段があります。だからシンダラに乗ってアイツに空中戦を仕掛けます」
『『………………!?』』
一人であのブラドーの竜に戦いを仕掛けると言うリュウダに皆が驚いた顔となるが、リュウダは真剣な表情で再び冥子に頼む。
「冥子先生、お願いします。俺にシンダラを貸してください。……俺を信じてください」
「………」
リュウダの言葉に冥子は一度顔を伏せるが、すぐに顔を上げると口を開いた。
「分かったわー。でもー、私も一緒に行くからー」
「ッ!? 冥子先生! それは……」
自分も一緒にブラドーの竜と戦うと言い出した冥子を、リュウダはとっさに止めようとするが、それより先に冥子が話す。
「藤沼クン、式神を使ったことがないでしょー? それだったらー、私がシンダラちゃんを操ってー、藤沼クンが攻撃に専念した方がいいじゃないー?」
『『………!?』』
はっきりと自分の意見を言う冥子の姿に、以前の彼女を知る美神とエミが目を見開いて驚くが、リュウダはそんな二人を他所にしばらく考えてから冥子の顔を見る。
「……分かりました。冥子先生、どうかお願いします。その代わり、冥子先生のことは俺が絶対に守「こんな時に何しとんじゃー!」……だっ!?」
バコン!
リュウダが自分に協力してくれると言ってくれた冥子に礼を言って身の安全を守ることを約束しようとしたその時、突然横島がフライパンでリュウダの後頭部を殴った。
「ちょっ!? オイコラ横島! お前何すんねん!?」
「うるへー! それはこっちのセリフじゃアホンダラ! お前こそ何、どさくさに紛れて俺の冥子ちゃんを口説いてんねん!?」
思わず関西弁になって怒鳴るリュウダに、横島も関西弁となって中指を立てながら怒鳴り返す。そんな二人のやり取りを見て皆が脱力しかけた時、ドクター・カオスが進み出た。
「のう……。さっきの話じゃが、ワシも一枚噛ませてくれんかのう?」