結論から言えばリュウダが立てた策は見事に的中した。
ブラドーの竜はダークソウルの湖獣と同様に上方への攻撃が苦手らしく、リュウダ達は上空の死角から一方的にブラドーの竜を攻撃して、その様子を見ていたピートが驚きの声を上げる。
「凄い……!? あのブラドーの竜と互角以上に戦えるなんて……!」
「確かにそれにも驚いたけど、私はそれ以上に冥子が使い物になったことに驚いたわ」
「同感。やっぱり藤沼の効果なのかしらね?」
美神の言葉にエミが深く頷いて同意する。
美神とエミ……というより冥子をよく知る全ての人達は、冥子のことを「せっかく優秀な能力と素質を持っているのにその甘ったれた性格のせいで実力を発揮できずいつまでも成長しない残念な子」だと思っていた。それがこの短期間でここまで成長できたのは、助手としてやって来たリュウダのお陰なのは誰の目から見ても明らかで明白だった。
「これは冥子の隣に立つのは藤沼クンで確定かしらね? ……横島クン、もう諦めたら?」
「いやじゃー! 冥子ちゃんは俺ンだー! というか同じ学校の生徒で、同じゴーストスイーパー助手という立場なのに、どうして俺と藤沼はこんなに扱いが違うんじゃー!? 納得いかーん!」
美神が意地の悪そうな顔になって言うと、横島は地面に寝そべって躾の悪い幼児のように手足をバタつかせながら大声で泣き始めた。するとそこに何処からか一人の人物が現れて美神達に話しかけてきた。
「美神クン。それに皆、思ったより元気そうだね」
「え? 貴方は、唐巣神父!?」
新たに現れて美神に話しかけてきた人物は、彼女の恩師であり今回の仕事の依頼人である唐巣神父であった。
「やれい、マリア!」
「イエス・ドクター・カオス! エルボー・バズーカ!」
ドクター・カオスの声に応えて彼を乗せて空を飛ぶマリアが両肘をブラドーの竜に向けると、両肘から内蔵されていたロケット弾が発射されてブラドーの竜に命中した。
「うわー! カオスさんにマリアちゃん、強ーい!」
「そうですね! あれだけ強い二人が一緒に来てくれたのは嬉しい誤算ですよ!」
(でも一番の嬉しい誤算は冥子先生がシンダラの操縦をしてくれたことだな)
ドクター・カオスとマリアの戦いぶりを見て冥子がはしゃいだ声を出すと、リュウダがアヴェリンを打ちながら返事をした後、心の中で呟く。
アヴェリンを初めとするクロスボウ系の武器は、発射速度に優れているが一度撃った後の矢の再装填に時間がかかる。それはこの世界でも同じで、一度アヴェリンを撃ったリュウダは、新しい矢を作るための霊力をアヴェリンに送るために一秒程動きが止まってしまうのだった。
だが冥子がシンダラを操縦してくれることで、攻撃後にアヴェリンに霊力を送っている間も移動をすることができ、アヴェリンの弱点を完全に克服されたのである。
(最近の俺と冥子先生って案外、結構いいコンビなのかもしれないな? 今の冥子先生と俺だったら、ゴーストスイーパーの仕事でも色々なことが…… ん?)
リュウダがアヴェリンでブラドーの竜を攻撃しながら考え事をしていると、美神達がいる島から何か小さい影が無数の水柱を立てながら水面を走りブラドーの竜へ向かっているのに気づいた。
「あれは……チェリー殿!?」
「キェエエエーーーーー!」
水面を走る小さな影はチェリーで、チェリーは信じられないことに凄まじい速さで水面を走り数秒でブラドーの竜の近くまで近づくと、大きく跳躍して奇声を上げながら持っていた錫杖でブラドーの竜の首の一本を殴打した。
「チェリー殿……。本当に人なのか? あの人?」
「相変わらず無茶苦茶な事をするのう、チェリーの奴」
常人離れしたチェリーの行動にリュウダが思わず呟くと、いつの間にか近くまで来ていたドクター・カオスの声が聞こえてきた。
「え? ドクター・カオスってチェリー殿とお知り合いなんですか?」
「うむ。チェリーとは五十年以上前からの付き合いじゃ。初めて会ったのはワシが研究費用を得る為に適当な海賊船を襲っていた時で、その時チェリーは何処からやって来て海賊船の食糧を盗み食いをしておったな。そういえばあの時も今みたいに海を走る曲芸をしとったぞ? 何でもナントカ・フーリンジとかいう格闘家から習ったとか」
「……フーリンジ? ………まさかな」
空を飛びながらリュウダとドクター・カオスが話をしていると、ドクター・カオスを乗せながらチェリーとブラドーの竜の戦いを観察していたマリアが、チェリーが戦いの最中にこちらに向けて何かを言っていることに気づく。
「ドクター・カオス。チェリーの・メッセージを・受信・しました」
「何? それでチェリーはなんと言っておる?」
「美神達・別働隊・現在・島の廃炭鉱より・ブラドーの城へ・潜入中。私達・このまま・ブラドーの竜・戦闘を・続けよ・と」
「……!」
マリアが告げたチェリーからのメッセージは、美神達が原作通りにブラドーの城へ奇襲に向かったことを意味しており、それを聞いたリュウダは小さく笑うのであった。