病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第31話

 マリアを経由したチェリーからの伝言で美神達が原作通りブラドーの城へ向かったと知って、彼は内心で安堵したがそれ以上に喜んでいたのが冥子であった。

 

「令子ちゃん達がお城に行ったんだってー。これでもう安心ねー」

 

「そうですね。でも今は戦いに集中力して……っ!?」

 

 リュウダはブラドーの竜から自分に視線を向けて話しかけてくる冥子に注意しようとするが、丁度その時ブラドーの竜の首の一本がこちらに高圧水流を放とうとしていることに気づいた。

 

「冥子先生! 回避を!」

 

「し、シンダラちゃん! ……きゃっ!?」

 

「キィイッ!?」

 

 リュウダがとっさに回避を指示したお陰で高圧水流の直撃は免れたが完全には回避しきれなかったようで、翼の一部にダメージを負ったシンダラと冥子の悲鳴が上がった。

 

 式神と式神使いは精神が繋がっているため、式神がダメージを受けるとそのフィードバックを式神使いも受けてしまう。原作でも式神が大きなダメージを受けた際に、冥子はその影響を受けて意識を失っていた。

 

 幸い冥子はまだ意識を失っていないし、シンダラもまだ空を飛ぶことができる。しかし先程に比べて明らかに速度と高度が下がっており、このままでは次のブラドーの竜の攻撃は避けられないだろう。

 

「こうなったら……いよいよ俺の『切り札』を使うか」

 

 ブラドーの竜の攻撃により負傷したシンダラの翼を見て、自分の「切り札」を使うことに決めたリュウダは右手に意識を集中する。すると彼の右手に淡い緑色の硝子瓶が現れた。

 

 エスト瓶。

 

 北の不死院で出会った、不死者の使命を果たす旅の果てに力尽きた上級騎士から譲り受けた不死者の秘宝。生命の力を内部に溜め込むことができ、その生命の力はどんな怪我もすぐさま癒すことが可能。

 

 これこそがリュウダの「切り札」。今まで彼は強敵との戦いでは必ずと言っていいほど、このエスト瓶の力を頼っていた。そう……。

 

歴戦のダクソプレイヤーでエスト瓶のお世話にならなかった者などいるのだろうか? いや、いない!!

 

(よし、上手くいった。自分以外にエスト瓶を使うのは初めてだったけど、案外なんとかなるものだな)

 

「藤沼クン? それはーって!? ええっ!?」

 

「………!?」

 

 リュウダがエスト瓶を傾けると瓶口から光り輝く液体、生命の力がシンダラの翼に落ちた。そしてそれによってシンダラの翼はすぐさま元通りとなったのを見てリュウダが内心で安堵の息を吐いていると、冥子とシンダラが揃って驚いて彼を見た。

 

「これは最近使えるようになった俺の能力の一つ、ショウトラのヒーリング(心霊治療)のようなものです。これからは式神が怪我を負っても俺が治療します。だから安心して……ん?」

 

『『ーーーーーーーー!?』』

 

 エスト瓶が最近使えるようになったというのは嘘であるが、リュウダが冥子を安心させようと言おうとしたその時、突然ブラドーの竜の行動に変化が生じた。それまで上空にいるリュウダ達か海を走りながら移動しているチェリーを攻撃していたブラドーの竜であったが、急に攻撃を止めたと思ったら意味不明な行動を取るようになったのだ。

 

「あらー? 一体どうしたのかしらー?」

 

「恐らく美神達が何かをしたんじゃろうな。あの女達に嫌がらせをされてブラドーの奴もご自慢の竜の制御ができなくなったんじゃろうて」

 

 ブラドーの竜を見て冥子が首を傾げていると、マリアの上に乗って隣まで来たドクター・カオスが自分の考えを口にする。どうやらブラドーの竜の暴走は美神にあると考えているようだが、その考えにはリュウダも同感であった。

 

「確かに美神さん達ならあり得そうですね。とにかく今がチャンスです。このまま一気にたたみかけましょう」

 

 すでに下ではチェリーがこの隙を逃すまいとブラドーの竜に攻撃を仕掛けており、リュウダも冥子にそう言うと攻撃を再開した。

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