病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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今回の話は前半がダイジェストな上、やや強引だと思いますが、ご容赦ください。


第32話

 美神達がブラドーの城を襲撃したことにより支配者からの制御を失ったブラドーの竜は、それでもやはり強敵であった。

 

 制御を失ったブラドーの竜は最早敵味方どころか生物か否かの区別もつかなくなり、目についたものに高圧水流を放ったり、その長い首を叩きつけるだけの行動しか取らなくなった。だが相変わらずその攻撃は余波を受けるだけで致命傷を負いかねない強力な上、山のような巨体に見合うだけの生命力もあって、リュウダ達も攻撃の手を緩めることはなかったが中々倒すことが出来ずにいた。

 

 それでもなんとかリュウダ達がブラドーの竜を倒したのは夜が明けて日が昇り始めた頃で、美神達がブラドーを倒して再封印したのも丁度その頃である。

 

 ブラドーの竜を倒して島に戻り美神達と合流したリュウダ達は、唐巣神父からこの島が純粋な人間が一人もいないヴァンパイア・ハーフばかりが住む島であること、ピートがブラドーの実の息子であるヴァンパイア・ハーフで彼がブラドーを倒したことなどを説明され、最後はピートを初めとする島の住人達に感謝されながら日本に帰国したのであった。

 

 そして日本に帰国したリュウダは、帰国してすぐに自分のアパートの部屋にある押し入れを開き、そこにある異次元につながる穴を通って海王星へと向かった。

 

 海王星へ向かう目的は当然、今回の仕事でしばらく出来なかった雪かきの手伝いをするためである。

 

 

 

「それじゃあ、皆さんいきますよ? ……火球乱れ射ち」

 

『『ーーーーーーーー!』』

 

 リュウダの右手から放たれた複数の火の玉が大量の雪を一瞬で蒸発させ、それを見ていた観客達から歓声が上がる。

 

 一人で数日分の作業をしてくれるリュウダの働きに海王星の女性達が歓声を上げるのはいつものことであるが、今日は女性達だけでなく普段は家の中にいる子供達のものも混じっていた。その理由はリュウダが持ってきた「お土産」にあった。

 

「リュウダさん。いつもありがとうございます。それに今日はあの様な『ご馳走』まで用意して頂いて……本当に感謝しております」

 

 雪かきが一段落つくとおユキは深々と頭を下げてリュウダに礼を言う。その後で彼女が別の方向を見ると、そこには大量の温かいお汁粉が入った複数の大型の寸胴鍋と、美味しそうにお汁粉を食べている女性達と子供達の姿があった。

 

 年中吹雪が吹く海王星ではまずマトモな植物が実らず、実るものと言えば周囲の気温を下げる風鈴のような外見的の木の実ぐらいである。温室でマトモな植物を作ろうにもそれには大量のエネルギーが必要で、日々生産しているエネルギーの大半をライフラインの維持に使っている海王星にはそんな余裕はない。

 

 つまり海王星の住人は普段、栄養重視であまり味がない合成食品ばかりを食べているのである。

 

 この事を雪かきの手伝いに来ているうちに知ったリュウダは、今回の依頼で入った特別ボーナスで大量のお汁粉の材料を買い、今こうして海王星の住人にふるまっていた。女性と子供が甘いものが好きなのはどこの世界でも同じで、美味しそうにお汁粉を食べている海王星の住人達を見てからリュウダは笑顔を浮かべておユキに返事を返した。

 

「気にしないでください。最近雪かきを手伝えなかったお詫びのようなものです。これぐらいだったらいつでも……ちょっと無理だけどまた用意しますよ」

 

「……本当に、ありがとうございます」

 

 リュウダの言葉におユキは小さく笑みを浮かべると再び頭を下げて礼を言うのだった。

 

 

 

「おお……! なんだかちょっといい雰囲気だっちゃね」

 

 リュウダとおユキのやり取りを、ラムと胸に鎖を巻いた勝ち気そうな女性が少し離れた場所から見ていた。

 

 胸に鎖を巻いた女性の名前は弁天。おユキと同じくラムの幼馴染みの友人である。

 

「………」

 

 弁天は何かを警戒するような顔つきでリュウダと同じくユキの二人を見ており、その事を不思議に思ったラムが彼女に話しかける。

 

「弁天、どうしたっちゃ? さっきから難しい顔して?」

 

「……なあ、ラム? あのリュウダって奴……大丈夫なのか?」

 

「大丈夫って……何のことだっちゃ?」

 

「馬鹿! オメェ、忘れたのかよ!? おユキは『海王星の女』なんだぞ!」

 

「っ!」

 

 首を傾げるラムに弁天はどこか怯えるような目を向けて言うと、それを聞いたラムは何かを思い出した表情となった。

 

 海王星は昔から資源が少ない貧しい星で、海王星の住人は数少ない資源を確実に手に入れることで今日まで生き延びてきた。そのせいか海王星の住人はいつしか欲しいものを見つけると、それを必ず手に入れようとする執着心と行動力を発揮するようになり、加えて言えばこの時の執着心と行動力は男より女性の方が断然強かったりする。

 

 そして「欲しいもの」には当然『異性のパートナー』も含まれており、いつからか多くの宇宙人は海王星の女性達をこう呼んで恐れるようになった。

 

 一度惚れた男はたとえ本人を殺してでも手に入れる海王星の女、と……。

 

「あたいが見てきた中じゃ、おユキは他の誰よりも海王星の女らしい女だ。もしおユキが本気であのリュウダに惚れた時、リュウダに他の女がいたらどうなるか分からねぇぞ……!?」

 

「だ、大丈夫だっちゃ。だってリュウダは浮気をするダーリンをいつも叱ってくれる真面目な奴だし、大丈夫だっちゃ。……多分、きっと」

 

 弁天の言葉にラムはリュウダをフォローしようとするが、彼の交遊関係にあまり詳しくないラムの声は徐々に小さくなっていくのだった。

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