巨大な卵から漏れ出た眩い光にリュウダ達が思わず目を閉じて、次に目を開くとそこは様々な植物が生い茂るジャングルの中であった。
「な、な……! なぁんじゃコリャーーーーー!?」
『『……………!?』』
突然景色がジャングルに変わったことに横島が力の限り叫び、他の面々も驚いた顔をして言葉を失う。そしてリュウダは一人だけ今の状況を理解して内心で頭を抱えていた。
(お、思い出した……! そうだよ、何で忘れていたんだ? これって間違いなく『うる星やつら』の話の一つじゃないか)
リュウダが思い出したのは漫画の「うる星やつら」にあった話の一つ。
その話は諸星がある日奇妙な卵を拾い、最初は手のひらサイズであった卵は徐々に大きくなって最後には学校の校舎並みに巨大化し、その卵が割れると諸星と彼のクラスメイト達が諸星の心の世界に迷い込む事になった、という内容であった。
見ればジャングルにある植物は全て、カップ麺が実った草にいやらしい動きをする草などの奇妙な植物ばかりであり、なんというか誰かの欲望というか欲求が透けて見えるような気がした。
「ううむ……。この場に充満する煩悩に満ちた空気……どこかで感じたような気がするわい」
(流石チェリー殿、正解です)
周囲を見回し難しい顔をして言うチェリーにリュウダは心の中で賞賛の言葉を送り、ここが諸星の心の世界であると確信を得るのであった。
「とにかくここにいても仕方がないですし、他にも誰かいないか探してみましょう」
原作知識からここに諸星達もいることを知っているリュウダが提案すると、美神達も異論が無いようで頷いてくれた。
「そうね。恐らく私達がここにいるのは、きっとあの卵の光が関係しているはずよ。そして卵が割れた時、私達の他にも人がいたから彼らを探しながらジャングルを探索しましょう」
この美神の言葉が決め手となりリュウダ達はジャングルの探索を始めたのだが、その道程は非常に困難なものであった。
何しろここは色欲の権化と言っても過言ではない諸星の心の世界、そしてジャングルの動植物は彼の欲求の産物なのである。そのためジャングルの探索中、動植物のほとんどが美神と冥子とサクラにセクハラをしようとして、それを防ぐために中々先に進めずにいた。
「あーっ! もう嫌っ! 何なのよ、このジャングルは!? どこを見ても横島クンみたいな生き物ばっかり!」
ジャングルの探索を開始してから数十分後。度重なるセクハラでストレスが溜まった美神は、自分の脚に絡み付こうとする草、ムセッ草を神通棍で力ずくで切り払いながら叫ぶ。
「ちょっと! 俺みたいって、どういう意味ッスか!?」
「うるっさい! そのままの意味よ! ……藤沼クン!」
「何ですかー?」
美神は大声を出す横島に叫び返すと、疲れた顔で冥子にセクハラをしようとしたムセッ草を混沌の刃で切り払っているリュウダに声をかけた。
「もういいからこのジャングル、藤沼クンの炎で焼き払っちゃって!」
「……いやいや、無茶苦茶言わないでくださいよ? そんなことしたら大火事確定ですよ?」
美神の発言に一瞬「それもいいかな?」と思ったリュウダだったが、すぐに考え直すと首を横に振る。しかし美神はよっぽどこのジャングルに怒っているのか、まだ怒ったままであった。
「別にいいわよ! こんなセクハラ植物、どうせ何の役にも立たないんだし……!」
「ブヒヒヒーーーーーン!!」
「………え?」
美神がリュウダに大声で何かを言おうとした時、茂みの向こう側から馬のような悲鳴が聞こえてきた。
突然の出来事にリュウダ達は顔を見合わせ茂みの向こう側を見てみるとそこには……。
頭が馬で身体が人間の妖魔のナイトメアが、ムセッ草に全身を縛り上げられていた。
『『…………………』』
予想外の光景にリュウダ達は全員言葉を失くし、ナイトメアはなんとかムセッ草の束縛から逃れようと体を動かしながら泣き叫ぶ。
「ブヒヒン! 何でボクがこんな目に!? せっかくまぬけそうな男から精神力をいただいて復活できたと思ったら、こんなの予想外よ! 何なの、あの桁外れな煩悩にまみれた精神力は! アイツ本当に人間!?」
泣き叫ぶナイトメアの言葉を聞いてリュウダは全てを理解した。
このジャングルに移動する前に諸星が乗っていた巨大な卵。あれはやはりナイトメアが封印されていた卵であったのだ。
ナイトメアは諸星の精神力を利用して、再びこの世界に復活した。そこまでは良かったのだが、一つ計算外のことがあった。
それは諸星の精神力が常人を遥かに超える煩悩にまみれた強力なものだったことで、そのせいでナイトメアが復活した際にこの異空間を具現化しただけでなくナイトメアの制御下を離れたのである。
他の皆もリュウダと同じ考えに思い至ったようでなんとも言えない表情を浮かべていたが、やがて気を取り直した美神が一枚の破魔札を取り出した。
「こんなアホな植物にいいようにされるなんて正直同情するけど、これも仕事なのよね。……極楽に行かせて上げるわ!」
「ブヒヒーン! そんなー!」
美神は身動きが封じられたナイトメアに破魔札を叩きつけ、それによってナイトメアは涙を流しながらあっさりと消滅していった。
「これでお仕事が終わったのはいいんですけど……私達、どうやったら帰れるんです?」
「さあー? 分かんなーい」
「そうじゃのう……。何しろこの世界を作った本人も分からんみたいじゃしのう」
ナイトメアが完全に消滅した後、おキヌの疑問に冥子が首を横に振り、サクラが別の場所を見ながら呟く。
サクラの視線の先には、ヤケになって宴会を始めている諸星と彼のクラスメイト達の姿があった。